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緋い記憶
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即答する隆哉に、「なに?」と彬が片眉を上げる。眉間に皺を寄せて、呆れ半分の声を発した。
「じゃあ、さっきのはなんだ? 壁に拳をあてた時は、えらい形相で怒ってたろうが。何もそこまでって言うぐらいよ」
「そこが、変なんだよね」
口元に手をあてた隆哉が、考え込むように首を傾げる。
「ああ?」
「俺はあの時、最後にあいつの手を握り返した時。俺は、心を遺してきたんだから。あいつに」
口元から手を離し、自分の掌を見下ろす。
「心?」
「そう。俺の愛情とか願望とか、そういうモノ全部。だから俺の心には、いつもポッカリ大きな穴が空いている。俺に生きてく理由なんてない。俺の想いは、全てあいつに向いていたから。もう、これから人を好きになる事もないし、何かやりたい事をみつける事もない。俺は只待ってるだけなんだ、いつか死ぬ瞬間を。あいつが迎えに来てくれる、その『瞬間』だけを」
遠い目をした隆哉に、彬は目を瞠った。
――なんて、強い。
表情や声音からは、到底窺い知れない程の『想い』。そんなモノが、こいつにあったなんて……。
「何を、縁起でもねぇ」
「じゃあ、さっきのはなんだ? 壁に拳をあてた時は、えらい形相で怒ってたろうが。何もそこまでって言うぐらいよ」
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「ああ?」
「俺はあの時、最後にあいつの手を握り返した時。俺は、心を遺してきたんだから。あいつに」
口元から手を離し、自分の掌を見下ろす。
「心?」
「そう。俺の愛情とか願望とか、そういうモノ全部。だから俺の心には、いつもポッカリ大きな穴が空いている。俺に生きてく理由なんてない。俺の想いは、全てあいつに向いていたから。もう、これから人を好きになる事もないし、何かやりたい事をみつける事もない。俺は只待ってるだけなんだ、いつか死ぬ瞬間を。あいつが迎えに来てくれる、その『瞬間』だけを」
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(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
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