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白い影
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「それでも。その苦しみの中――死の瞬間でさえも、彼女の心にあったのは君の事」
「えっ?」
「ちょっと待て。相沢」
驚きの表情を浮かべる秀行をチロリと見遣って、彬が割って入った。
「ヒデには、心当たりがねぇんだよ。その子のさ。だから、もう少し詳しく言ってくれねぇ? その子の、特徴とかさ」
「ない? 心当りが?」
「あ、ああ」
信用していないのか、隆哉はカクリと首を傾げて彬と秀行とを交互に眺める。「マジだぜ」と口の中で呟いた彬に、微かに瞼を揺らして、胸に手をあてた。
その手が、何かを握るようにカタチどられる。
「彼女は、たぶん呼吸器系の病気。息が出来なくなって、苦しくて苦しくて……。こんなに傷が残る程咽喉元を掻き毟ったのに、それでも片手は何かを握っていたんだ。それは、彼女にとってとても大切なモノ。『トモダチのしるし』と、彼女は言ってるよ。失わないよう、大事に大事にしてたのに、苦しみの中、誰かに奪われてしまったんだ。霞んだ視界で、懸命にそれを探したけれど、結局は見つけられなかった」
「友達の……証し……」
「えっ?」
「ちょっと待て。相沢」
驚きの表情を浮かべる秀行をチロリと見遣って、彬が割って入った。
「ヒデには、心当たりがねぇんだよ。その子のさ。だから、もう少し詳しく言ってくれねぇ? その子の、特徴とかさ」
「ない? 心当りが?」
「あ、ああ」
信用していないのか、隆哉はカクリと首を傾げて彬と秀行とを交互に眺める。「マジだぜ」と口の中で呟いた彬に、微かに瞼を揺らして、胸に手をあてた。
その手が、何かを握るようにカタチどられる。
「彼女は、たぶん呼吸器系の病気。息が出来なくなって、苦しくて苦しくて……。こんなに傷が残る程咽喉元を掻き毟ったのに、それでも片手は何かを握っていたんだ。それは、彼女にとってとても大切なモノ。『トモダチのしるし』と、彼女は言ってるよ。失わないよう、大事に大事にしてたのに、苦しみの中、誰かに奪われてしまったんだ。霞んだ視界で、懸命にそれを探したけれど、結局は見つけられなかった」
「友達の……証し……」
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