81 / 248
【転移81日目】 所持金222兆3687億7337万ウェン 「手元に小銭が無いんだ」
しおりを挟む
出国の際、てっきり検問所で足止めされるかと思っていたが、妨害はされなかった。
冷静に考えればそうか。
連邦の大使が公務の為に帰国するのだ。
(ちゃんと命令書っぽい書簡も持っている。)
妨害してしまったら、そりゃあ問題になるだろう。
昨晩、そのまま出立した。
途中、馬車と御者を一回交替し、検問所付近で御者を連邦人のそれに交替させる。
メッセンジャーは常時5騎程を馬車周りに随伴させ、各部署に矢継ぎ早に書簡を送り続けている。
基本は謝罪だ。
本心から申し訳ないと思っている。
そして《カネを出してる俺から謝罪したら相手も矛を抑えざるを得ないだろう。》という汚い計算も念頭に入れている。
「ね?
何事もやってみれば簡単でしょ?」
ポールの言う通りである。
自由都市に居た間、息苦しくて仕方なかった。
俺以外の都合に振り回され続けていた気がする。
転移して来た頃の俺は…
自分の意思で好きな物を喰い好きな獲物を狩って…
何より己の意思で創意工夫を凝らしていた。
大きくため息をつく。
ようやく俺は解放されたのだ。
馬車の外には荒野が広がっている。
美しい…
もう自由を騙る街を振り返る気も沸かなかった。
そしてグリーブが合流。
彼は先日の教団襲撃事件を詫びようとするが、俺が制した。
『もういいじゃないですか。
グリーブさんが俺を思って伏せていたのだと信じてます。
でなければ、こんな風に声を掛けたりしないですよ。』
道中をゆっくり進む。
馬車の窓越しにグリーブと様々な話をした。
「これからの人生も、平穏と戦闘を程ほどのバランスで楽しみたいです。」
それがこの男の本音なのだろう。
妻子を自由都市に住ませたまま、自分は荒事の世界に身をおいていたい。
戦士として非常に健全なあり方だと思う。
途中、グリーブは話をやめて何度も騎馬を突進させた。
狼やトカゲ、双頭の蛇などを自慢の大槍で一突きに仕留めては戻って来る。
「コリンズ社長。
見えますか、あそこ。
ジャイアントタートルです。」
『おお、懐かしいですねえ。
グリーブさんと農場で凍結弾を投げました。
今と違ってあの頃は本当に楽しかった…』
「これからいっぱい楽しんで行きましょう!
貴方はまだお若いんです。
まだまだ人生始まったばかりですよ!」
『はい!!』
脚は依然動かない。
だが、感覚は戻って来ている。
左手の握力も物を掴むのは無理でも、引っ掛ける程度は出来るようになった。
(クュ医師曰く、脚よりも握力の回復の方が困難とのこと)
『ねえ、皆さん。
俺、手足が治ったら。
ちゃんと身体を鍛えて。
冒険者になってみたいです。
そしたら、俺も連れて行ってくれますか?』
「必ず治ります。
だから、一緒に行きましょう。」
==========================
途中からケルヒャー隊も合流。
先程同様、総本山襲撃計画を内緒にしていた事を詫びられる。
『ケルヒャーさん。
頭を上げて下さい。
秘密なんて誰にだってありますよ。』
そう、秘密なんてあって当然じゃないか。
俺だって…
そりゃあ色々あるよ。
複利のギミックとかさあ。
後、ヒルダの胎の中なんかも深刻な秘密だよな。
ケルヒャー隊の報告。
情勢は好ましくない。
首長国の農民が大量に国境を越えて、移民申請or占領統治を嘆願している。
連邦的には答えはNOだ。
メリットが乏しい上に、国際関係上のデメリットが大きすぎる。
『俺は何をしたらいいんですか?』
「ミュラー卿曰く。
《兎に角こっちに来て仲裁して欲しい》
とのことです。」
『仲裁と言われても…
俺、そんな事したことないし。』
でもまあ、俺は適任だろうな。
《大金持ちが仲裁に来る》
そう聞いた群衆はどんな反応を示すだろうか?
これは憶測に過ぎないが、彼らは少しおとなしくなると思う。
カネが貰えるかも知れないから。
俺が群衆の1人ならそう期待する。
変な暴れ方はしない。
カネが貰えなくなるかも知れないから。
『作戦を発表します!』
「おおお!」
『と言ってもカネを配るだけですけど。』
「それを実践出来る人が貴方しかいないから貴重なんですよ。」
だよな。
この能力は反則だ。
そりゃあ、カネ配るのが一番に決まってるじゃん。
俺だってカネ貰えるならおとなしくするよ。
『ただ、この作戦には弱点があるんですよねえ。』
「弱点?」
『俺、手元に1兆ウェンしかなくて…』
「ゴメン、意味がわからない。」
『しかも、その全部が10億ウェン分のミスリル貨なんですよ。
ミスリル貨だけ1000枚あってもねえ。』
「ゴメン、その悩みが異次元過ぎて…
リン以外に理解出来ないと思うよ?」
だろうな。
地球でもこんな奴殆どいなかっただろう。
『誰か両替してくれませんかね?
金貨、普通の金貨が大量に欲しいんです。』
「君は大金持ちなんだから、金貨くらい腐るほど持ってるだろう?」
『ところが…
ミスリル貨しか無くて困ってるんですよねー。
みなさん、どうすればいいと思います?』
「いや、そんな悩み…
ゴメン、金額が大きすぎてそもそも実感出来ない。」
だよな。
肝心の俺自身が意味不明なのだから
他人に理解を求める方が間違ってる。
『皆さん!
アイデア募集!
もしくはこの事態を収拾できるスキルを持っている人募集!』
「手からパンを出せるスキルとか存在したら…
最高の打開策になるんだろうけどね。」
『そんなスキルあるんですか?』
「そんな奴居たらパン屋開業してるでしょ。」
確かに。
俺がそいつでも必ずそうする。
『ちなみに皆さん、どんなスキル持ってます?
カインさんは雷系って聞きましたけど。』
「ええ、私は雷魔法全般。」
『グリーブさんは…
傭兵だから手の内晒しちゃまずいですよね?』
「いえ、軍時代の記録から簡単に遡れますから。
私は身体強化系です。
MPを毎秒消費して、攻撃力と防御力と速度を爆発的に上昇させる能力です。
基本は接敵して切り結ぶ距離まで近づかないと使わないですね。
私の中では緊急離脱手段なので、大抵の場合は温存しております。」
『シンプルなだけに恐ろしいスキルですね。
基礎スペックの高いグリーブさんが使ったら洒落にならない事になりそうです。』
「うーーん。
継続時間が短いですからね。
私の中では外れスキルかな?」
『ドナルドさんは…
聞いても大丈夫?』
「私はハズレだよ?
初級水魔法。
入れ物に水を満たすだけだから。」
『何か使い道多そうじゃありませんか?
お風呂とかに使えそう。』
「いや、普通に使用人が沸かしてくれるし。」
『なるほど。』
「こういう事いうと嫌われるんだけどさ。
魔法なんかより人件費の方が遥かにコスパ安いから…
カネを持ってる人間ほど魔法使わないんだよ。」
『た、確かに。』
「前に計算した事あるんだけだけど。
浴槽に水を張るのに、500万ウェン程度の魔法触媒が必要になってくるのね?
これ、ベテランの御者と年間契約出来る値段だから。」
『おおお。』
「じゃあ魔法で風呂を満たすなんてバカなこと出来なくなるよね?
あ、ちなみに私は経営者だから労働単価が滅茶苦茶高いです。
風呂に水を満たすまでに3時間くらい掛かるんだけど。
私の休業補償、3時間ってかなり高いよ?
そりゃあ、ミスリルを触媒に使えたら一瞬だけどさ。」
『ああ、流石に使う気になれませんね。』
「父親からは《砂漠で水を売って来い》っていつも言われてました。」
『ははは。
如何にも商売人の家系です。』
水魔法使いに雷魔法使いか…
電気分離させ続けたら水素と酸素が大量に獲得出来るけど…
使い道がわからんな。
今度、学者を見つけたら考えて貰おう。
『あ、ポールさんは?
貴方も何か持ってるんですよね?』
「…持ってない。」
『そうなんですか?』
「あははは、コイツは凄いスキル持ちなんですよ」
『え? なになになに?
興味ある興味ある。』
「俺はいいんだよー。」
『ポールさん教えて下さいよー。』
「言わない。」
『ちなみに俺は複利と言って』
「「「リンは言っちゃ駄目!!!」」」
『…はーい。』
まあ、その配慮は正解だよな。
俺のスキルは特殊だから、ギミックを知ってる人間は少しでも少ない方がいい。
「ハア。
わかったよ。
このままじゃリン君が納得しないだろうしね。」
『すみません。
強要しちゃったみたいで。』
「俺のスキルは【清掃】。」
『え!?』
「このスキルが判明した時、親父も社員たちもみんな喜んだんだよ。
そりゃあそうだよね。
清掃会社の跡取り息子が【清掃】スキルなんて持ってたら、会社は安泰さ。
取引先にも絶好のPRになるしさ。」
確かに。
どうせ清掃会社を選ぶなら、跡取り息子が清掃スキルを保有している会社を選ぶよな。
「でもさ。
そういうの嫌だったんだ。
家業を継ぐ為に生まれて来たみたいに言われて…
それで反発して色々な仕事を転々としたんだけど。
ほら、俺って無能だろ?
結局、掃除以外で褒められたことなかったよ。」
みんな、人生色々あるんだな。
俺、自分だけが数奇な運命辿ってるみたいに錯覚してたけど…
思い上がりもいい所だったよ。
それにしても、なーんか使い道ありそうなんだけどな。
電気分解で生み出された酸素と水素を使って掃除する?
うーん、こじつけようと思ってもイメージがわかん。
人文系ばっかり読んでたツケが回って来たな。
もっと自然科学も真面目に勉強してりゃ良かった。
==========================
連邦首都フライハイト。
自由都市に近いという理由で近年作られた後発都市。
首都としての歴史的な正当性がないので、連邦人は大した愛着を持っていない。
《自由都市に近くて便利だから》
ただそれだけの即物的な理由で作られた街である。
俺達はここを仮の拠点に定め、状況把握に専心する。
ケルヒャーに諸連絡をお願いする間、俺達は馬と車輪を交換する。
御者には懇切に礼を述べ、チップを後日必ず届けさせることを約束した。
ゴメン、本当にゴメンな。
今、手元に小銭が無いんだ!
くっそ、せめて大白金貨(1000万ウェンの価値)くらいを持っておくべきだった。
やっぱり金貨(1万ウェンの価値)か…
金貨持ってないと何も出来ないよな…
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
うおっ!!
配当はこっちに出現するのか!?
なんで?
今までちゃんと金庫用倉庫に沸いてくれたのに。
国境を跨いだから?
クッソ?
袋とか持ってないぞ!
『カインさん!
まだ、そこに居られますか!?』
「?
問題発生?」
『す、すみません。
《例の恩寵》が、ここで発動してしまって…』
「え?
それはマズいですよ。
大きな声じゃ言えませんけど。
連邦は貧困国家です。
ここで大金を見せるリスクは他国でのそれと比較にならないです。」
『あの、ここなんです。
馬車の座席。』
「うわあ。
また派手に祝福されたねえ。
これ、どうします?
すぐに隠さなきゃ。」
カインが古い木樽を貰って来て、その中にミスリル貨を隠してくれる。
「リン。
不躾な質問になってしまうけど。
今の資産ってどれくらいあるんですか?」
『いや、わからないんです。
数え切れなくて…』
「ん?
ステータス欄を見ればいいよね?」
俺が信者称号の話をするとカインは笑い転げた。
「あはははは
リンは面白いですねえ。
本当に君といると退屈しない。」
同感。
この異世界では色々あったが、まあ退屈だけはしてないよな。
ケルヒャーが再建された冒険者ギルドを見て欲しい、と言ったので挨拶だけしにいく。
おお、結構いい。
ラノベ系アニメに出て来るようなコテコテの冒険者ギルドである。
冒険者同士の喧嘩に、酒盛りをしているパーティー。
賭け事をしている一団まで居た。
これこれ!
やっぱり異世界って言ったら、冒険者ギルドだよな!
くーーーーー、テンション上がって来た。
今夜は俺も夜通し呑むぞ!!!
『あ、でも。
女性の冒険者とかは流石に居ないんですね。
俺、女冒険者とパーティー組むのが夢だったんですけど。』
俺のその発言を聞いて、ケルヒャーが目を丸くして振り返る。
『ん?
ケルヒャーさん、俺また何か言ってしまいました?』
「いや。
女子で戦えるような人材は全員ヒルダ様の指揮下にありますから。
ここには来ないです
見たでしょう?
総本山でのあの活躍っぷりを…」
…そっか。
今日は疲れてるし、風呂入って寝るわ。
冷静に考えればそうか。
連邦の大使が公務の為に帰国するのだ。
(ちゃんと命令書っぽい書簡も持っている。)
妨害してしまったら、そりゃあ問題になるだろう。
昨晩、そのまま出立した。
途中、馬車と御者を一回交替し、検問所付近で御者を連邦人のそれに交替させる。
メッセンジャーは常時5騎程を馬車周りに随伴させ、各部署に矢継ぎ早に書簡を送り続けている。
基本は謝罪だ。
本心から申し訳ないと思っている。
そして《カネを出してる俺から謝罪したら相手も矛を抑えざるを得ないだろう。》という汚い計算も念頭に入れている。
「ね?
何事もやってみれば簡単でしょ?」
ポールの言う通りである。
自由都市に居た間、息苦しくて仕方なかった。
俺以外の都合に振り回され続けていた気がする。
転移して来た頃の俺は…
自分の意思で好きな物を喰い好きな獲物を狩って…
何より己の意思で創意工夫を凝らしていた。
大きくため息をつく。
ようやく俺は解放されたのだ。
馬車の外には荒野が広がっている。
美しい…
もう自由を騙る街を振り返る気も沸かなかった。
そしてグリーブが合流。
彼は先日の教団襲撃事件を詫びようとするが、俺が制した。
『もういいじゃないですか。
グリーブさんが俺を思って伏せていたのだと信じてます。
でなければ、こんな風に声を掛けたりしないですよ。』
道中をゆっくり進む。
馬車の窓越しにグリーブと様々な話をした。
「これからの人生も、平穏と戦闘を程ほどのバランスで楽しみたいです。」
それがこの男の本音なのだろう。
妻子を自由都市に住ませたまま、自分は荒事の世界に身をおいていたい。
戦士として非常に健全なあり方だと思う。
途中、グリーブは話をやめて何度も騎馬を突進させた。
狼やトカゲ、双頭の蛇などを自慢の大槍で一突きに仕留めては戻って来る。
「コリンズ社長。
見えますか、あそこ。
ジャイアントタートルです。」
『おお、懐かしいですねえ。
グリーブさんと農場で凍結弾を投げました。
今と違ってあの頃は本当に楽しかった…』
「これからいっぱい楽しんで行きましょう!
貴方はまだお若いんです。
まだまだ人生始まったばかりですよ!」
『はい!!』
脚は依然動かない。
だが、感覚は戻って来ている。
左手の握力も物を掴むのは無理でも、引っ掛ける程度は出来るようになった。
(クュ医師曰く、脚よりも握力の回復の方が困難とのこと)
『ねえ、皆さん。
俺、手足が治ったら。
ちゃんと身体を鍛えて。
冒険者になってみたいです。
そしたら、俺も連れて行ってくれますか?』
「必ず治ります。
だから、一緒に行きましょう。」
==========================
途中からケルヒャー隊も合流。
先程同様、総本山襲撃計画を内緒にしていた事を詫びられる。
『ケルヒャーさん。
頭を上げて下さい。
秘密なんて誰にだってありますよ。』
そう、秘密なんてあって当然じゃないか。
俺だって…
そりゃあ色々あるよ。
複利のギミックとかさあ。
後、ヒルダの胎の中なんかも深刻な秘密だよな。
ケルヒャー隊の報告。
情勢は好ましくない。
首長国の農民が大量に国境を越えて、移民申請or占領統治を嘆願している。
連邦的には答えはNOだ。
メリットが乏しい上に、国際関係上のデメリットが大きすぎる。
『俺は何をしたらいいんですか?』
「ミュラー卿曰く。
《兎に角こっちに来て仲裁して欲しい》
とのことです。」
『仲裁と言われても…
俺、そんな事したことないし。』
でもまあ、俺は適任だろうな。
《大金持ちが仲裁に来る》
そう聞いた群衆はどんな反応を示すだろうか?
これは憶測に過ぎないが、彼らは少しおとなしくなると思う。
カネが貰えるかも知れないから。
俺が群衆の1人ならそう期待する。
変な暴れ方はしない。
カネが貰えなくなるかも知れないから。
『作戦を発表します!』
「おおお!」
『と言ってもカネを配るだけですけど。』
「それを実践出来る人が貴方しかいないから貴重なんですよ。」
だよな。
この能力は反則だ。
そりゃあ、カネ配るのが一番に決まってるじゃん。
俺だってカネ貰えるならおとなしくするよ。
『ただ、この作戦には弱点があるんですよねえ。』
「弱点?」
『俺、手元に1兆ウェンしかなくて…』
「ゴメン、意味がわからない。」
『しかも、その全部が10億ウェン分のミスリル貨なんですよ。
ミスリル貨だけ1000枚あってもねえ。』
「ゴメン、その悩みが異次元過ぎて…
リン以外に理解出来ないと思うよ?」
だろうな。
地球でもこんな奴殆どいなかっただろう。
『誰か両替してくれませんかね?
金貨、普通の金貨が大量に欲しいんです。』
「君は大金持ちなんだから、金貨くらい腐るほど持ってるだろう?」
『ところが…
ミスリル貨しか無くて困ってるんですよねー。
みなさん、どうすればいいと思います?』
「いや、そんな悩み…
ゴメン、金額が大きすぎてそもそも実感出来ない。」
だよな。
肝心の俺自身が意味不明なのだから
他人に理解を求める方が間違ってる。
『皆さん!
アイデア募集!
もしくはこの事態を収拾できるスキルを持っている人募集!』
「手からパンを出せるスキルとか存在したら…
最高の打開策になるんだろうけどね。」
『そんなスキルあるんですか?』
「そんな奴居たらパン屋開業してるでしょ。」
確かに。
俺がそいつでも必ずそうする。
『ちなみに皆さん、どんなスキル持ってます?
カインさんは雷系って聞きましたけど。』
「ええ、私は雷魔法全般。」
『グリーブさんは…
傭兵だから手の内晒しちゃまずいですよね?』
「いえ、軍時代の記録から簡単に遡れますから。
私は身体強化系です。
MPを毎秒消費して、攻撃力と防御力と速度を爆発的に上昇させる能力です。
基本は接敵して切り結ぶ距離まで近づかないと使わないですね。
私の中では緊急離脱手段なので、大抵の場合は温存しております。」
『シンプルなだけに恐ろしいスキルですね。
基礎スペックの高いグリーブさんが使ったら洒落にならない事になりそうです。』
「うーーん。
継続時間が短いですからね。
私の中では外れスキルかな?」
『ドナルドさんは…
聞いても大丈夫?』
「私はハズレだよ?
初級水魔法。
入れ物に水を満たすだけだから。」
『何か使い道多そうじゃありませんか?
お風呂とかに使えそう。』
「いや、普通に使用人が沸かしてくれるし。」
『なるほど。』
「こういう事いうと嫌われるんだけどさ。
魔法なんかより人件費の方が遥かにコスパ安いから…
カネを持ってる人間ほど魔法使わないんだよ。」
『た、確かに。』
「前に計算した事あるんだけだけど。
浴槽に水を張るのに、500万ウェン程度の魔法触媒が必要になってくるのね?
これ、ベテランの御者と年間契約出来る値段だから。」
『おおお。』
「じゃあ魔法で風呂を満たすなんてバカなこと出来なくなるよね?
あ、ちなみに私は経営者だから労働単価が滅茶苦茶高いです。
風呂に水を満たすまでに3時間くらい掛かるんだけど。
私の休業補償、3時間ってかなり高いよ?
そりゃあ、ミスリルを触媒に使えたら一瞬だけどさ。」
『ああ、流石に使う気になれませんね。』
「父親からは《砂漠で水を売って来い》っていつも言われてました。」
『ははは。
如何にも商売人の家系です。』
水魔法使いに雷魔法使いか…
電気分離させ続けたら水素と酸素が大量に獲得出来るけど…
使い道がわからんな。
今度、学者を見つけたら考えて貰おう。
『あ、ポールさんは?
貴方も何か持ってるんですよね?』
「…持ってない。」
『そうなんですか?』
「あははは、コイツは凄いスキル持ちなんですよ」
『え? なになになに?
興味ある興味ある。』
「俺はいいんだよー。」
『ポールさん教えて下さいよー。』
「言わない。」
『ちなみに俺は複利と言って』
「「「リンは言っちゃ駄目!!!」」」
『…はーい。』
まあ、その配慮は正解だよな。
俺のスキルは特殊だから、ギミックを知ってる人間は少しでも少ない方がいい。
「ハア。
わかったよ。
このままじゃリン君が納得しないだろうしね。」
『すみません。
強要しちゃったみたいで。』
「俺のスキルは【清掃】。」
『え!?』
「このスキルが判明した時、親父も社員たちもみんな喜んだんだよ。
そりゃあそうだよね。
清掃会社の跡取り息子が【清掃】スキルなんて持ってたら、会社は安泰さ。
取引先にも絶好のPRになるしさ。」
確かに。
どうせ清掃会社を選ぶなら、跡取り息子が清掃スキルを保有している会社を選ぶよな。
「でもさ。
そういうの嫌だったんだ。
家業を継ぐ為に生まれて来たみたいに言われて…
それで反発して色々な仕事を転々としたんだけど。
ほら、俺って無能だろ?
結局、掃除以外で褒められたことなかったよ。」
みんな、人生色々あるんだな。
俺、自分だけが数奇な運命辿ってるみたいに錯覚してたけど…
思い上がりもいい所だったよ。
それにしても、なーんか使い道ありそうなんだけどな。
電気分解で生み出された酸素と水素を使って掃除する?
うーん、こじつけようと思ってもイメージがわかん。
人文系ばっかり読んでたツケが回って来たな。
もっと自然科学も真面目に勉強してりゃ良かった。
==========================
連邦首都フライハイト。
自由都市に近いという理由で近年作られた後発都市。
首都としての歴史的な正当性がないので、連邦人は大した愛着を持っていない。
《自由都市に近くて便利だから》
ただそれだけの即物的な理由で作られた街である。
俺達はここを仮の拠点に定め、状況把握に専心する。
ケルヒャーに諸連絡をお願いする間、俺達は馬と車輪を交換する。
御者には懇切に礼を述べ、チップを後日必ず届けさせることを約束した。
ゴメン、本当にゴメンな。
今、手元に小銭が無いんだ!
くっそ、せめて大白金貨(1000万ウェンの価値)くらいを持っておくべきだった。
やっぱり金貨(1万ウェンの価値)か…
金貨持ってないと何も出来ないよな…
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
うおっ!!
配当はこっちに出現するのか!?
なんで?
今までちゃんと金庫用倉庫に沸いてくれたのに。
国境を跨いだから?
クッソ?
袋とか持ってないぞ!
『カインさん!
まだ、そこに居られますか!?』
「?
問題発生?」
『す、すみません。
《例の恩寵》が、ここで発動してしまって…』
「え?
それはマズいですよ。
大きな声じゃ言えませんけど。
連邦は貧困国家です。
ここで大金を見せるリスクは他国でのそれと比較にならないです。」
『あの、ここなんです。
馬車の座席。』
「うわあ。
また派手に祝福されたねえ。
これ、どうします?
すぐに隠さなきゃ。」
カインが古い木樽を貰って来て、その中にミスリル貨を隠してくれる。
「リン。
不躾な質問になってしまうけど。
今の資産ってどれくらいあるんですか?」
『いや、わからないんです。
数え切れなくて…』
「ん?
ステータス欄を見ればいいよね?」
俺が信者称号の話をするとカインは笑い転げた。
「あはははは
リンは面白いですねえ。
本当に君といると退屈しない。」
同感。
この異世界では色々あったが、まあ退屈だけはしてないよな。
ケルヒャーが再建された冒険者ギルドを見て欲しい、と言ったので挨拶だけしにいく。
おお、結構いい。
ラノベ系アニメに出て来るようなコテコテの冒険者ギルドである。
冒険者同士の喧嘩に、酒盛りをしているパーティー。
賭け事をしている一団まで居た。
これこれ!
やっぱり異世界って言ったら、冒険者ギルドだよな!
くーーーーー、テンション上がって来た。
今夜は俺も夜通し呑むぞ!!!
『あ、でも。
女性の冒険者とかは流石に居ないんですね。
俺、女冒険者とパーティー組むのが夢だったんですけど。』
俺のその発言を聞いて、ケルヒャーが目を丸くして振り返る。
『ん?
ケルヒャーさん、俺また何か言ってしまいました?』
「いや。
女子で戦えるような人材は全員ヒルダ様の指揮下にありますから。
ここには来ないです
見たでしょう?
総本山でのあの活躍っぷりを…」
…そっか。
今日は疲れてるし、風呂入って寝るわ。
181
あなたにおすすめの小説
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」
銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の
一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の
関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事
を裏でしていた。ある日のこと学校を
出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ
こりゃーと思っていると、女神(駄)が
現れ異世界に転移されていた。魔王を
倒してほしんですか?いえ違います。
失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな!
さっさと元の世界に帰せ‼
これは運悪く異世界に飛ばされた青年が
仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの
と商売をして暮らしているところで、
様々な事件に巻き込まれながらも、この
世界に来て手に入れたスキル『書道神級』
の力で無双し敵をバッタバッタと倒し
解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに
巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、
時には面白く敵を倒して(笑える)いつの
間にか世界を救う話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる