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【転移86日目】 所持金1033兆6512億1951万ウェン 「勝利の定義とかあるのかね。」
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戦闘音で目が覚める。
深夜2時、遥か前方で誰かが誰かに夜襲を掛けたのだろう。
恐らくは、首長国正規軍と独立軍の交戦。
いつの間にか起床していたミュラーが警戒レベルの引き上げを号令していた。
警戒レベルC(仮眠のみの即応態勢)から警戒レベルB(総員起床状態で武器防具を着装)へ移行。
俺も軍輿に乗り上がって息を潜める。
ミュラーの従卒が大きな防矢布を掛けてくれた。
「コリンズ様。
前方5キロの位置で首長国人同士の戦闘が発生しております。
野営中の首長国正規軍を独立派が襲撃したと予想されます。」
その従卒氏(中学生くらいの年齢だろうか?)が早口で説明してくれる。
俺の仕事は起きて情勢の変化を把握しておくこと。
その一点に尽きる。
じゃないとミュラーが咄嗟の判断を迫られた場面で動きが鈍るからである。
1発だけ火矢が撃ち込まれる。
矢盾が1枚だけ焼損するが、ミュラーの指示で無視する。
「さっきの火矢について、ワシの推測を述べるね?
首長国正規軍の陣営を独立派が夜襲した。
だが手ひどく反撃されてパニックになっている。
で、火矢を撃ち込んでワシの部隊を引きずり出して正規軍にぶつけようと企んだ。
恐らくそんな背景による一射。」
『そんなに簡単に行くものなのですか?』
「ワシも若い頃、似たような手口を試したことあるけど。
あんまりいい結果が出た記憶はないなあ。
そういう泥仕合の演出ならケルヒャーが詳しいよ。
アイツ、王国相手に相当派手にやり合って来てるからさ。」
小一時間して、今度は3本、2本、3本の計8本の火矢が飛んでくる。
素人の俺から見ても、陣幕に当たらない様に恐る恐る撃って来たことが理解出来た。
今度はギュンター卿が斥候小隊を出して発射点を探らせる。
どうやらこれみよがしに正規軍の軍旗(端っこが破れている)が立てられていたらしい。
ミュラーが思わず苦笑する。
「やったやった、ワシも若い頃こういう手口は色々試してきた。」
戦争のプロであるミュラーが今その手法を取らないということは、借刀殺人は即興でハマるほど簡便な計略ではないのだろう。
「リン君、防音蹄装着の馬蹄音ってわかる?
かすかに響いてるんだけど。
これ首長国の精鋭騎兵団だよ、多分独立派を追撃してるんだと思う。
ああ、これ独立派が相当打撃受けてるね。
ひょっとすると、わざと夜襲を誘うような位置に布陣したのかな?
首長国は優秀な軍人が多いからねぇ。」
『わかるんですか?』
「ワシらは首長国さんとは年中ドンパチやってる間柄じゃから。
アイツらの事はよく知っているよ。
それこそ女房子供以上にね。」
早朝4時。
やや空が白み始め、素人目にも戦局が見えて来る。
正規軍はかなり大規模な掃討戦を開始している。
「あー、このエリアは奪還成功かな。」
『じゃあ首長国正規軍が優勢ですか?』
「いや、あれは首長国の第4師団。
対帝国戦の部隊だから、こんな所に居るのはおかしい。
うーん。
かなり無理してシフトを組み替えているのかな?
あまりいい旗色じゃなさそうじゃなあ。」
==========================
完全に日が昇った頃。
掃討戦は完全に一段落した所為か、この陣に第4師団からの使者が来訪した。
まずは越境築城への抗議。
ただ、この抗議は形式的なものなのか、然程の怒りは伝わってこない。
ミュラーが形式的に謝罪し撤兵を約束すると、越境築城の話題はあっさり終わった。
ついでミュラーから。
ベルトラン卿の首級を返還し哀悼の意を表明、更に殺害実行犯(を称していた者たち)の死体を引き渡す。
どうやら地元のヤクザ兼冒険者だったらしい。
また、婦女暴行被害者の遺骸を共同で埋葬し皆で合掌した。
この手順を踏んだことで、ミュラー軍は首長国側との正式な交渉権を得る。
俺の工作資金もかなり効き始めているらしく、敵国の閣僚としてではなく善意の名士として扱って貰えた。
第四師団長も当然王族。
現国王陛下の腹違いの弟(27歳差)のテオドール殿下。
ピアニストとしても高名な花実兼備の士と聞いていたが、今は表情にかなりの疲労が見える。
「アンリ王太子の親衛師団が付近に展開中です。
もしも王太子が会談を望まれた場合、コリンズ社長は御同行頂けますか?」
『はい。
テオドール様。
このまま罪人として連行して頂いても構いません。』
「社長が篤志家であるとは伺っておりますが
罪を犯したという話は一つも聞いた事もありません。」
『…。』
「では王太子にその旨の伝令を送らせて下さい。
進軍ルートが確保出来るのであれば、王太子は連邦に伺う形となることも厭わないでしょう。」
王太子が自国を移動するのに、軍隊を使って進軍路をこじあけなくてはならない。
…末期だな。
==========================
その後、テオドール殿下と立ち話(俺は車椅子だが)の形式で雑談。
経済支援への感謝と減税攻撃への怨嗟を同時に述べられる。
「ようやく理解出来ました。
減税を戦略手段として用いて来られるミュラー卿と異なり
コリンズ社長は減税そのものが目的なのですな?」
別れ際にそう指摘される。
言語化した事はなかったが、第三者にとっての俺はそうなのだろう。
テオドール殿下を見送ったポールが呟く。
「ねえリン君。
かつて、首長国の建国者は巨大なハーレムを作ったそうなんだ。
規模は縮小しているけど、今もそれはあるみたい。」
『ポールさんの目標なんでしょ?』
「いや、逆だよ。
俺は制度や権力で女の子を集めたいなんて思った事は無い。
俺の夢や魅力に価値を見出してくれた子だけが集まって欲しい。
他の男を好きになったなら、それも祝福する。
当然、相手の男も祝福する。
俺は愛されたいだけであって、俺を愛することを義務付ける気はないよ。」
『それも首長国が苦境に陥っている原因だと?』
「近所の美人が根こそぎ王族のハーレムに送られるんだよ?
それが強制なら王は憎まれるだろうし、女の子が嬉しそうならもっと腹が立つ。
さっきのピアニストは自覚なさそうだったけどさ。」
『…。』
「何かを独占するという事は、結局は誰かから奪っている事を意味する。
それがカネであれ女であれ、ね。」
だから首長国王族が滅びるのは仕方ない。
そういう文脈の話だ。
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
『俺も… みんなから奪ってるんですかね?』
「それが良くないと解ってるから。
必死で配り方を考えてるんでしょ?」
『結構な額をばら撒いているつもりなんですが。
満遍なく行き渡らせる事が出来なくて。』
「ひょっとしてリン君って。
1000人居たら、1億ウェンずつを1000人に配るタイプ。」
『…いえ、はい。』
「そのやり方は意味無いよ?」
『え?』
「その1000人の中には、凄く悪い奴や狡い奴も混じっている。
…何せ人間だからね。
悪い奴は残りの999人を殺して1000億を独占しようとする。
悪く無い奴も身を護るために、そうする。
首長国が三公七民になった所で、その七を民衆が奪い合って終わりだよ。
本当はリン君もわかってるんだろう?」
『首長国の荒れぶりを見て、楽観する意欲が無くなりました。』
「君はもう正解に辿り着いてるんだから、そっちを続ければいいんだよ。」
『せ、正解ですか?』
「ほら。
港湾区限定で配給やってるじゃない。
貧しい労働者だけを狙って生活必需品を渡して行く。
アレが正解なんだよ。」
『アレは規模が小さすぎます。』
「でも正しい。
リン君は真面目に働いている人に報いたいだけなんだろ?
別に機械的にカネを配りたい訳じゃないんだろう?」
『真面目に働いてる人間は報われるべきだと思います。』
「じゃあ、モデルケースをちゃんと見せて行かなきゃ。
配給を広めて行きなよ。
ここでさ。」
『…ここで?
どうやって?』
「俺は馬鹿だから分からないけど。
そういう答えが解る人間を探すのがリン君の仕事なんじゃない。
リン君の周りで一番賢い人って誰?」
『…ヒルダ。』
「…二番目は?」
『…じゃあポールさんで。』
「俺以外で!」
『ドナルドさんやカインさんにはずーっとお知恵を借り続けてます。』
「なら、もっとそういう事を相談し続けなよ。
カネを持て余すのはキミの自由だけど。
カネに縛られるのは見ていて可哀想かな。」
『ねえ、お二方!
今の話の流れどう思います!』
「結論、カネそのものは配らずに、生活必需品が勤労者に行き渡る様にせよ。
です!」
『この戦場でそれを成し遂げるにはどうすればいいんですか?』
「勝者になることです!」
…この状況で勝利の定義とかあるのかね。
そんな事を考えていると早馬が飛び込んでくる。
首長国から脱出した難民達が、ここから15キロ南方の渡河地点を越えようとして連邦の防衛部隊と交戦。
おびただしい数の民間人が…
いや、報告聞くまでもないわ。
丁度、目の前の河が血で染まり始めた。
あ!
ヤバいな、この流血量。
100人200人のものじゃない。
あ…
死体も流れ始めた…
配給する話の流れが一発でぶち壊しだな。
ミュラーは部隊には陣地を守らせたまま、即座に本陣を畳んで再度連邦側に戻り防衛線を引き直す。
弓戦シフトへの移行を指示しているという事はそういう意味なのだろう。
今度は独立派でも何でもない、純粋な民衆の群れである。
何万人居るのだろう、いや、そんな桁ではないか?
人の群れ、どこまでも後続が続いていく。
女子供老人が多い。
「越境を図る者は撃つ!!!」
等という警告を聞くような者なら国境に押し寄せる筈もなく、無数の善男善女が渡河を図る。
当然、連邦軍は片っ端から射殺していく。
善男善女は泣きながら何事かを懇願するが、泣きたいのは大量の異民族の侵略を受けようとしている連邦人だろう。
河に入った者を徹底的に撃ち続けた事が功を奏したのか、流民は河向こうで足を止めた。
1人の女が赤ん坊を頭上に掲げながら何かを訴え渡河を図る。
その2名が射ち殺された事で、ようやく流民全体に連邦の意志は伝わった。
連邦兵は剣を工具に持ち替え、大急ぎで川沿いに防護柵を並べている。
警戒レベルAは勿論不眠不休の態勢を意味していた。
深夜2時、遥か前方で誰かが誰かに夜襲を掛けたのだろう。
恐らくは、首長国正規軍と独立軍の交戦。
いつの間にか起床していたミュラーが警戒レベルの引き上げを号令していた。
警戒レベルC(仮眠のみの即応態勢)から警戒レベルB(総員起床状態で武器防具を着装)へ移行。
俺も軍輿に乗り上がって息を潜める。
ミュラーの従卒が大きな防矢布を掛けてくれた。
「コリンズ様。
前方5キロの位置で首長国人同士の戦闘が発生しております。
野営中の首長国正規軍を独立派が襲撃したと予想されます。」
その従卒氏(中学生くらいの年齢だろうか?)が早口で説明してくれる。
俺の仕事は起きて情勢の変化を把握しておくこと。
その一点に尽きる。
じゃないとミュラーが咄嗟の判断を迫られた場面で動きが鈍るからである。
1発だけ火矢が撃ち込まれる。
矢盾が1枚だけ焼損するが、ミュラーの指示で無視する。
「さっきの火矢について、ワシの推測を述べるね?
首長国正規軍の陣営を独立派が夜襲した。
だが手ひどく反撃されてパニックになっている。
で、火矢を撃ち込んでワシの部隊を引きずり出して正規軍にぶつけようと企んだ。
恐らくそんな背景による一射。」
『そんなに簡単に行くものなのですか?』
「ワシも若い頃、似たような手口を試したことあるけど。
あんまりいい結果が出た記憶はないなあ。
そういう泥仕合の演出ならケルヒャーが詳しいよ。
アイツ、王国相手に相当派手にやり合って来てるからさ。」
小一時間して、今度は3本、2本、3本の計8本の火矢が飛んでくる。
素人の俺から見ても、陣幕に当たらない様に恐る恐る撃って来たことが理解出来た。
今度はギュンター卿が斥候小隊を出して発射点を探らせる。
どうやらこれみよがしに正規軍の軍旗(端っこが破れている)が立てられていたらしい。
ミュラーが思わず苦笑する。
「やったやった、ワシも若い頃こういう手口は色々試してきた。」
戦争のプロであるミュラーが今その手法を取らないということは、借刀殺人は即興でハマるほど簡便な計略ではないのだろう。
「リン君、防音蹄装着の馬蹄音ってわかる?
かすかに響いてるんだけど。
これ首長国の精鋭騎兵団だよ、多分独立派を追撃してるんだと思う。
ああ、これ独立派が相当打撃受けてるね。
ひょっとすると、わざと夜襲を誘うような位置に布陣したのかな?
首長国は優秀な軍人が多いからねぇ。」
『わかるんですか?』
「ワシらは首長国さんとは年中ドンパチやってる間柄じゃから。
アイツらの事はよく知っているよ。
それこそ女房子供以上にね。」
早朝4時。
やや空が白み始め、素人目にも戦局が見えて来る。
正規軍はかなり大規模な掃討戦を開始している。
「あー、このエリアは奪還成功かな。」
『じゃあ首長国正規軍が優勢ですか?』
「いや、あれは首長国の第4師団。
対帝国戦の部隊だから、こんな所に居るのはおかしい。
うーん。
かなり無理してシフトを組み替えているのかな?
あまりいい旗色じゃなさそうじゃなあ。」
==========================
完全に日が昇った頃。
掃討戦は完全に一段落した所為か、この陣に第4師団からの使者が来訪した。
まずは越境築城への抗議。
ただ、この抗議は形式的なものなのか、然程の怒りは伝わってこない。
ミュラーが形式的に謝罪し撤兵を約束すると、越境築城の話題はあっさり終わった。
ついでミュラーから。
ベルトラン卿の首級を返還し哀悼の意を表明、更に殺害実行犯(を称していた者たち)の死体を引き渡す。
どうやら地元のヤクザ兼冒険者だったらしい。
また、婦女暴行被害者の遺骸を共同で埋葬し皆で合掌した。
この手順を踏んだことで、ミュラー軍は首長国側との正式な交渉権を得る。
俺の工作資金もかなり効き始めているらしく、敵国の閣僚としてではなく善意の名士として扱って貰えた。
第四師団長も当然王族。
現国王陛下の腹違いの弟(27歳差)のテオドール殿下。
ピアニストとしても高名な花実兼備の士と聞いていたが、今は表情にかなりの疲労が見える。
「アンリ王太子の親衛師団が付近に展開中です。
もしも王太子が会談を望まれた場合、コリンズ社長は御同行頂けますか?」
『はい。
テオドール様。
このまま罪人として連行して頂いても構いません。』
「社長が篤志家であるとは伺っておりますが
罪を犯したという話は一つも聞いた事もありません。」
『…。』
「では王太子にその旨の伝令を送らせて下さい。
進軍ルートが確保出来るのであれば、王太子は連邦に伺う形となることも厭わないでしょう。」
王太子が自国を移動するのに、軍隊を使って進軍路をこじあけなくてはならない。
…末期だな。
==========================
その後、テオドール殿下と立ち話(俺は車椅子だが)の形式で雑談。
経済支援への感謝と減税攻撃への怨嗟を同時に述べられる。
「ようやく理解出来ました。
減税を戦略手段として用いて来られるミュラー卿と異なり
コリンズ社長は減税そのものが目的なのですな?」
別れ際にそう指摘される。
言語化した事はなかったが、第三者にとっての俺はそうなのだろう。
テオドール殿下を見送ったポールが呟く。
「ねえリン君。
かつて、首長国の建国者は巨大なハーレムを作ったそうなんだ。
規模は縮小しているけど、今もそれはあるみたい。」
『ポールさんの目標なんでしょ?』
「いや、逆だよ。
俺は制度や権力で女の子を集めたいなんて思った事は無い。
俺の夢や魅力に価値を見出してくれた子だけが集まって欲しい。
他の男を好きになったなら、それも祝福する。
当然、相手の男も祝福する。
俺は愛されたいだけであって、俺を愛することを義務付ける気はないよ。」
『それも首長国が苦境に陥っている原因だと?』
「近所の美人が根こそぎ王族のハーレムに送られるんだよ?
それが強制なら王は憎まれるだろうし、女の子が嬉しそうならもっと腹が立つ。
さっきのピアニストは自覚なさそうだったけどさ。」
『…。』
「何かを独占するという事は、結局は誰かから奪っている事を意味する。
それがカネであれ女であれ、ね。」
だから首長国王族が滅びるのは仕方ない。
そういう文脈の話だ。
《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》
『俺も… みんなから奪ってるんですかね?』
「それが良くないと解ってるから。
必死で配り方を考えてるんでしょ?」
『結構な額をばら撒いているつもりなんですが。
満遍なく行き渡らせる事が出来なくて。』
「ひょっとしてリン君って。
1000人居たら、1億ウェンずつを1000人に配るタイプ。」
『…いえ、はい。』
「そのやり方は意味無いよ?」
『え?』
「その1000人の中には、凄く悪い奴や狡い奴も混じっている。
…何せ人間だからね。
悪い奴は残りの999人を殺して1000億を独占しようとする。
悪く無い奴も身を護るために、そうする。
首長国が三公七民になった所で、その七を民衆が奪い合って終わりだよ。
本当はリン君もわかってるんだろう?」
『首長国の荒れぶりを見て、楽観する意欲が無くなりました。』
「君はもう正解に辿り着いてるんだから、そっちを続ければいいんだよ。」
『せ、正解ですか?』
「ほら。
港湾区限定で配給やってるじゃない。
貧しい労働者だけを狙って生活必需品を渡して行く。
アレが正解なんだよ。」
『アレは規模が小さすぎます。』
「でも正しい。
リン君は真面目に働いている人に報いたいだけなんだろ?
別に機械的にカネを配りたい訳じゃないんだろう?」
『真面目に働いてる人間は報われるべきだと思います。』
「じゃあ、モデルケースをちゃんと見せて行かなきゃ。
配給を広めて行きなよ。
ここでさ。」
『…ここで?
どうやって?』
「俺は馬鹿だから分からないけど。
そういう答えが解る人間を探すのがリン君の仕事なんじゃない。
リン君の周りで一番賢い人って誰?」
『…ヒルダ。』
「…二番目は?」
『…じゃあポールさんで。』
「俺以外で!」
『ドナルドさんやカインさんにはずーっとお知恵を借り続けてます。』
「なら、もっとそういう事を相談し続けなよ。
カネを持て余すのはキミの自由だけど。
カネに縛られるのは見ていて可哀想かな。」
『ねえ、お二方!
今の話の流れどう思います!』
「結論、カネそのものは配らずに、生活必需品が勤労者に行き渡る様にせよ。
です!」
『この戦場でそれを成し遂げるにはどうすればいいんですか?』
「勝者になることです!」
…この状況で勝利の定義とかあるのかね。
そんな事を考えていると早馬が飛び込んでくる。
首長国から脱出した難民達が、ここから15キロ南方の渡河地点を越えようとして連邦の防衛部隊と交戦。
おびただしい数の民間人が…
いや、報告聞くまでもないわ。
丁度、目の前の河が血で染まり始めた。
あ!
ヤバいな、この流血量。
100人200人のものじゃない。
あ…
死体も流れ始めた…
配給する話の流れが一発でぶち壊しだな。
ミュラーは部隊には陣地を守らせたまま、即座に本陣を畳んで再度連邦側に戻り防衛線を引き直す。
弓戦シフトへの移行を指示しているという事はそういう意味なのだろう。
今度は独立派でも何でもない、純粋な民衆の群れである。
何万人居るのだろう、いや、そんな桁ではないか?
人の群れ、どこまでも後続が続いていく。
女子供老人が多い。
「越境を図る者は撃つ!!!」
等という警告を聞くような者なら国境に押し寄せる筈もなく、無数の善男善女が渡河を図る。
当然、連邦軍は片っ端から射殺していく。
善男善女は泣きながら何事かを懇願するが、泣きたいのは大量の異民族の侵略を受けようとしている連邦人だろう。
河に入った者を徹底的に撃ち続けた事が功を奏したのか、流民は河向こうで足を止めた。
1人の女が赤ん坊を頭上に掲げながら何かを訴え渡河を図る。
その2名が射ち殺された事で、ようやく流民全体に連邦の意志は伝わった。
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間にか世界を救う話です。
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