異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ

文字の大きさ
130 / 248

【降臨5日目】 所持金3万0743円 「もっと優しくしてやればよかった。」

しおりを挟む
昨日、エモやんが余っていた鞄や服をくれた。
葛飾のマンションでコーヒーをご馳走になっている時に、クローゼットから一式を用意してくれたのだ。



「トイチさんは、これからどないしはるんですか?」



『キョンを100匹殺す予定なので、千葉での拠点を探します。』



「その行動に何か意味は、あるんですね?」



『詳しい事は語れませんけど、社会に対しての害意はないです。
殺生を楽しむつもりもありません。』



「いやいや、トイチさん滅茶苦茶嬉しそうでしたよ?」



『え? マジですか?』



「昭和の体罰教師みたいな笑顔をしてました。」



『最悪ですね、俺。』



「何せ、もう令和ですから。
アップデートして行きましょう。」



『あ、はい。
戒めます。』



《殺生を楽しむな。》
《まかり間違っても、殺生を楽しむ人間と思われるな。》
やや冗談めかしながらもエモやんはそう警告してくれている。



「では、ここから具体的な話。

トイチさんの脚、かなり悪いですよね?
申請したら障害者手帳貰えるレベルやと思いますよ?」



『先週まで下半身不随に近い状態だったので。』



「でしょうね。
本来、治療とかリハビリに専念せなアカン段階ですよ。

カネも車もない、検索したらとんでもない事になってる。
普通の人間やったら人生詰んでますよ。

…でも後藤響に寄生する気はないんですよね?」



『恩は返したいですけど、別にこれ以上は。』




「本来、トイチさんは東京で纏まったカネを確保してから、千葉で活動するべきやと思います。」




いや、東京で原資を貯める為にも、もう数%だけ日利を引き上げておきたいのだ。




『そうですね。
どのみち、もう二桁原資が欲しいです。』



「トイチさんは、彼女さんが港区に住んでおられるんですよね?
その方の支援は…。」



『…女に借りを作るのって好きじゃないんです。』



「…そうですか。

話を戻します。
キョンを殺す事に必然性はあるんですね?」



『願掛けと言いましょうか、ジンクスと言いましょうか。』



「多く殺せば脚が治るとか?」



『…まあ、そういう神頼みです。』




「…じゃあ足は関係なくて、殺害数と金額が比例しているとかですね?」



やはり鋭いな。
5分でアンダースローを修得する天才には勝てないわ。



『…否定はしません。』



「忠告しておきますが、トイチさんのお考えは俺以外でも普通に見抜いて来ますよ。」



『そうでしょうか。』



「考えてもみて下さいよ。
神頼みする様な弱い人間は、甘やかしてくる女がおったら絶対に頼るに決まってるやないですか。

女すら突き放すトイチさんが、神如きに何を祈るんですか。
貴方がそんなアホな事する訳ないでしょ。」



…そうかー。
そういう見方もあるか。

あ、女ってそういう使い道があるんだな。
それに耽溺したり愛着を持っている素振りを見せれば、庸人の安心を買えるのか。
今度試してみよう。




「建設的な話をさせて下さい。」



『はい。』




「キョンを100匹殺せば、トイチさんの生活は安定するんですね?」



『します。
周囲を食わせていく位は。』




「レベリングですか?」



『ッ!』




「反応から肯定と解釈します。

いや、わかりますって。
俺らも普通に漫画とかアニメとか見ますもん。
異世界から帰って来はった人が必死で殺生しとったら、それレベル上げ以外に動機ないやないですか。」




『恐れ入ります。』




「要は貴方はキョンを殺す事で経験値を蓄積させ、自らの能力を向上させるノウハウをお持ち、と。」




『はい。
20匹殺せば、次の段階に到達します。』




「20の次は30ですか?」




『いえ、恐らく40です。
あくまで全部仮説ですけど。
きっちり20匹だけ殺して、次の段階に進めたなら、仮説に信憑性が増します。』




「オッケーです。
では、まずは次の20匹の殺害をアシストします。」



『…勿論、謝礼は致します。』



「俺の望みなんてご存知ですよね?」



『はい、後藤さんに危害が及ばない事です。』



「謝礼、期待しています。
トイチさんは契約を重視される方なので、必ず約束を守って下さると楽観しております。」



『恐縮です。』




俺がエモやんのマンションに泊まったのは、そういう遣り取りがあった為である。
夜通し、キョンを大量殺戮する方策を練った。
後藤は大学の課題の為に蒲田に帰っている。



「考えた結果。
ロードキルを試す場面やと判断しました。」



『ロードキル?』



「車で轢き殺すことですね。」




『俺は免許を…
そういうことですか。』




「トイチさんには無免許運転をして貰います。
言うまでも無く、これは犯罪です。
当然、発覚した場合はトイチさんだけでなく車の所有者である俺も厳しいペナルティを受けます。
なので、後藤響の居ない今のみ、この手段で協力します。」




『そんなの、エモやんさんに何のメリットも無い話じゃないですか。』




「あって良い訳ないでしよ!
己の得の為にこんなんしおったら、先輩への裏切りですわ!」




『…。』



「トラックなら兎も角、この車でキョン20匹を轢き殺すのは現実的やないです。
最初の何匹かで、すぐに車がおかしなるでしょう。

でも、トイチさんに対して貴重な練習機会を提供出来る筈です。
数匹轢き殺すだけでも、何らかのノウハウは得られるんやないですか?
他のもっと強い動物を殺すヒントになるかも知れません。
車で殺して経験値になるんかは知りませんけど。

それに当然ロードキルに適した場所には他のキョンも棲息しているでしょう。
俺、石を当てるだけなら自信ありますんで。
トイチさんには十二分に貢献出来ます。」



『はい、昨日エモやんさんの動きを見せて貰いました。
後藤さんが仰ってたように、どんなスポーツでもこなせる人だと思ってます。』



「ははは、野球以外なんかどうでもええのですけどね。
…中々上手く行きませんわ。」



エモやんは寂しそうに自分の手を見ていた。
俺よりやや大きい程度の体格。
遠目にはアスリートとわからない細身の身体。
知恵を振り絞って生き残って来た、というのはその語り口から嫌でも想像出来た。



「さっきも言うてはりましたけど、トイチさんは人に借りを作るの嫌いでしょ?
義務感強い人やから。

でも、今回は敢えて俺に借りを作って下さい。
それで、こっちの願いを聞き届けて欲しいんです。」



『後藤さんには危ない橋を渡らせないようにします。
あの人は勝手に火の粉を被るタイプなので、事前にエモやんさんに一報入れて状況の悪化を防ぐ事を約束します。』



「ありがとうございます。
年長の方に色々と生意気を申し上げました事をお詫びします。」



『いえ、何から何までエモやんさんの仰る通りなので、返す言葉もありません。
謙虚に受け止めたいです。』



エモやんは、そこまで異世界漫画やアニメを見ていた訳ではないが、頭の良い男なので数作見ただけで大体の概要は掴めていた。
レベルとかステータスとか、オタクの基礎教養的な概念は身につけている。



「1個謎なんですけど。」



『?』



「何で俺に手の内明かすんですか?
正直、そこが理解出来ませんわ。」




『いや、私もペラペラ話す気はないのですが。
エモやんさんが推理して当てちゃっただけなので。』



「都合の悪い部分はちゃんと否定して下さいよ。
こっちが反応に困るやないですか。」



『後藤さんが、エモやんさんだけを紹介して来た時点でそういう事ですからねえ。』



「え?
俺以外とは会ってへんのですか?
佐々木さんとか立石さんとか、いつも一緒に居る先輩らは?
ウーバーの中でも大きいグループ入ってますよ、あの人。」



『さあ、その人達は名前すら出て来ませんでした。』



「…人たらしか。」



『そういう訳で、エモやんさんだけを紹介してくれた事自体が
彼からの暗黙のメッセージだと解釈しております。

私は貴方に対しては、特に誠実に接したいと考えております。』



「俺は…
響さんから連絡頂けた時、トイチさんのトの字も無かったです。
だから、正直驚きました。」



『あ、そうなんですね。
申し訳ありません。』



「いえ。
抜き打ちで紹介されたという事は
《自分の頭で考えて判断しろ》
という意味なので…

俺なりにお二人に対してベストを尽くします。」



『…尽くすだなんて。
私には不要ですよ。
野球やったこともないし。』



「いえ、先輩の御友人なら、その方も先輩です。
こんなん理屈やないです。」



体育会系の秩序というのは未だに良く分からないのだが、異世界で見て来た騎士文化とか冒険者文化の延長で捉えた方が良さそうだ。
ああ思い出した。
コレット親衛隊とかは、明らかにそういう本人同士にしか理解し得ない絆や理屈で動いていたよな。
俺にとっては、あの得体の知れない情念が本当に脅威だった。



『エモやんさん。
手の内の話に戻りますけどね?』


「はい。」


『当然、隠蔽すべきだと思ってます。』


「だったら、フリくらいはして下さいよ!」



『…線引きに関しては
後藤さんとかエモやんさんが何とかしてくれるでしょ。』



「人任せですか!?

おかしいですよ!
俺にしても後藤響にしても、ここ数日の付き合いでしょ!」



『相手はちゃんと見てます。

見た上で、従うべき人の忠告に従います。』



「そんなん詭弁やんか!!
たまたま響さんみたいな人に出会えたから良かっただけで
それが悪い人間とかズルい人間やったらどないするつもりなんですか!」



『やっぱり後藤さんはアタリですか?』



「当然です。
少なくとも、あの人は野球の世界では英雄であると同時に聖人なんです。
実力と人格が両立している人間なんてプロの世界でも天然記念物ですよ。」


『そういうことです。
私を信じろとは申しません。
でも、初日に後藤さんを引き当てた私は信じて下さい。』


「…トイチさん、ヒキは強い方ですわ。
それは認めます。

ああ、先に言うときますけど俺はハズレですよ?
単なるボンクラです。
スカウトの人らからも響さんのオマケ程度にしか扱われてませんから。」



『甲子園行った人がオマケはないでしょう。』



「センバツで完投した日にスカウトさんに言われたことが
《後藤君のLINE教えて》
ですからね。
リトルの時からずっとそんな扱いなんです。
流石に心折れますよ。」



『…ああ、それは酷いですね。

でもそれ、エモやんさんにも非があると思いますよ。』



「え!?」



『だって貴方自身が後藤さんのオマケ的に扱われる事に誇りを持ってるでしょ?』



「!」



『スカウトの人も貴方に気を遣って後藤さんの話題振ってるんじゃないですか?
後藤さんが無視されたら、貴方怒るでしょ?』



「…そういう面も、あるかも知れません。」



『俺はエモやんさんを大事にしたいです。
だから、その為にも後藤さんにも誠実に向かい合います。

それでいいですか?』



「…。」



車は千葉県の御宿町(おんじゅくまち)という場所を目指している。
九十九里浜の南にある海沿いの町だ。
俺は知らなかったが海水浴場として有名ならしい。
そしてキョンが出る。

昨日、何人か話した千葉人はキョンの話題になると全員「オンジュク」の名を挙げた。
…間違いなく、そこに群棲しているのだ。



途中、広い敷地の自然公園のような場所に車が停まる。


『ここは?』



「無料オートキャンプ場です。
敷地は広いのですが日当たりが悪いです。
南北に位置する人気キャンプ場は海が見える上に水回りが充実しているので、皆がそちらに行きます。

さて、ここで無免許運転の練習をして貰います。」




『…はい。』



「たかが無免許運転とは言え立派な犯罪です。
トイチさんは、こういう違法行為をあまり好まない事も存じております。
少なくとも、犯罪自慢して喜ぶタイプではないでしょ?

ただ、最も摘発リスクの少ない場所がここでした。

万が一自損事故を起こしても俺がやった事にしますので
伸び伸びと運転に慣れて下さい。」



1時間、己の鈍臭さを痛感させられる。
公道を走る自信は付かなかったが、生き物を轢殺する自信は付いた。
後ろからなら相手が誰でも確実に殺す自信はある。



「このオートキャンプ場を選んだ理由は極度に客が少ない点と…

あ、右前です!
2時の方向! キョン!
一旦停車して下さい!

キョンの目撃事例が多かったんです。
バーベキューの邪魔をされたとか、鳴き声がうるさくて眠れなかったとか。
それが過疎ってる原因なんですけど。

今の我々にとっては好都合かな、と。」



『轢いていいですか?』



「あそこは起伏があります。
アイツらが平らな部分に出るまで…

あ、動き出しましたね。
もう少し引き付けてから  …うお!!!」



ウイイイイイイイイイイイイイイイン、ドゴッ!!!



『トドメを刺します。』



数メートル先で痙攣している2匹に照準を合わせて
真芯で轢殺する。



「うわっ!
少しは躊躇って下さいよ!」



『あ、すみません。』



「うわーーー、あれは完全に死んどるわ。
しかも、完璧に首を捉えてるし…

トイチさん、運転はかなり苦労してはったけど
轢く方は天才ですね。」


『恐縮です。』



別に何かの才能がある訳ではない。
コレットの馬車が群衆を無慈悲に轢殺する場面を何度か見ただけのことである。
あの少女御者は明確な殺意を持って命に向かって疾走していたし、それを真似れば俺でもそこそこのアベレージは出せるだろう。



『さて、問題は車の破損ですね。
後で弁償させて下さい。』



「いや、俺から提案したことなので。」



2人で車体をチェックする。
車の事はよくわからないのだが…
少しだけ凹んでる?


「うーーん。」



『結構ダメージ深刻ですか?』



「警官が通りかかったら、まず呼び止められますね。
ここは千葉やから《キョンにやられました》で済むんですけど。
葛飾に戻った時に見つかったらアレコレ言われそうです。」



『いや、何と申し上げればよいのか…』



「兎に角、これがロードキルです。
ここは公道ではないので、厳密なロードキルの定義からは外れてるかも知れませんが。」



『バンパー修理、幾らくらいしますか?』



「一般的に5万前後。
ただ今はビッグモーターの件で現場が混乱しているみたいなので
修理出しても時間掛かるみたいです。」



『え? ビ?  何?』



「ああ失礼しました。
トイチさんが異世界行ってる間に中古車屋の不祥事が事件になったんです。
ゴルフボールで客の車壊したり。」



『え?  何で?  
ゴルフ? え?』



「オモロイのは異世界に限った話ではないってことです。
葛飾戻ったら直近のニュースをまとめてプリントアウトします。
お手数ですが目を通しておいて下さい。
皆が知ってる有名ニュースを知らんってヤバいですから。」



『はい、もう何から何まで。
掛かりそうな経費に関しては全額教えて下さい。
早急にカネを用意してお支払いします。

当然エモやんさんの日当もです。』



「朝も申しましたが、報酬は受け取れません。
意地になって言ってる訳やないんです。
筋の問題です。

トイチさんは後藤響経由の紹介です。
なのに先輩に内緒で千葉なんか来てね?
その時点で裏切りですやん。
その上、勝手に給料貰うとか…
人間としてあり得ませんよ。
少なくとも自分がこんな事を後輩からされたらその場で縁を切ります。

俺は響さんから切られる覚悟で今日ここに居ります。
仮に切られても俺は一生あの人の後輩ですから
一生トイチさんからの報酬は受け取れません。」



『…はい、申し訳ありません。』



あー、やっぱりそうか。
彼らのようなマジモンの体育会系を相手にしようと思ったら
コレット隊やヒルダ隊に接するような細心の注意が求められる訳か…
特に彼らの内部秩序や内部序列は神聖極まりないものだから、部外者の俺は絶対に口を出してはならない。
確かにな。
俺は何気なく提案したが、先輩を飛ばして後輩に報酬を提示するなんてあまりに軽率だった。
サッカー続けていれば、俺もそういう体育会秩序をちゃんと身に着けれたのかも知れないな。





その後、キョンが出て来た方向の林に踏み込む。
鈍い俺でも5匹は確認出来た。


「トイチさん、さっきの死体をこの林に放り込みますよ!」



『え?』



「あの辺はテントサイト言うて、車ごと入って来てテント張る場所です。
悪目立ちしますから!」



『ああ、ゴメン!』



2人でキョンの死体を林に放り込んで隠蔽するも、俺が轢いた箇所の血痕は結構目立っていた。



「後、18匹殺せばいいんですね?
ロードキル続けますか?」



既に2匹殺した。
もしもロードキルも経験値に加算されるのなら、残り18匹殺した時点でレベルが上がる筈だ。
(地球でも異世界式の累乗レベルアップが適用されればの話だが。)
なので、後の18匹はどんな手段でも構わない。
楽なのは轢殺なのだが、これ以上エモやんにリスクは負わせられない。
たった2匹を撥ねただけで、あの凹みである。
これ以上凹ませたら、著しく彼の世間体を損なう可能性がある。



『いえ、ロードキルには拘りません。
このキャンプ場内で殺害数を稼げたらと思います。』



「了解しました。
ただ一カ所で殺し過ぎるのは流石にマズいです。
5匹殺害or1時間経過or誰かが来た時点で切り上げて、ここを立ち去りましょう。」



俺が心底驚いたのは、エモやんが10分も経たずに5匹を俺の目の前に引きずってくれたことだ。
先端に重りがついたロープをヒュンヒュン回す手際などは、まるでバトル漫画の名シーンを読んでいるような気分にさせられた。



『エモやんさんなら異世界でも通用しますよ。』



「プロで通用せんかったら意味ないですわ。」



…野球って過酷な競技だよな。
車内に戻ってエモやんが周囲を検索し続ける。



「すみません。
複数アプリを同時に起ち上げてるので、少し時間掛かります。」



『え? アプリ?』



「ほら警察無線とか傍受しとかなヤバいじゃないですか。
この辺の国道って一本道やから、変な場所で警察車両と鉢合わせたら絶対に止められますよ。」



『な、なるほど。』



「この後、この御宿のある夷隅郡を回ります。
《房総カントリークラブ》っていう廃ゴルフ場にキョンが溜まってるらしいので
そこに向かいます。」



『は、はい。』



兎に角、エモやんは仕事が出来る。
判断が非常に早く、常に何かを考え続けている。



「トイチさん10時の方向!
多分、キョンです!
公道キル行けますか!?」


『行けます!』


「ここで席代わります!
山道とは言え油断せんとって下さいよ!
誰が見てるかわからへんので!
後続が抜き終わったら、GOです!」


『は、はい!』



人生初公道無免許ロードキル。
万が一警察に見つかった時の想定問答はさっきエモやんに仕込まれた。
1匹殺害。
全身から冷や汗が流れ出る。


「トイチさん。
目撃なしなので安心して下さい。
やや表情硬いので平静を装って下さい。
その様子は逆に怪しまれます。
さあ、ココア飲んで。」


『あ、はい。』



結局、全てエモやんプロデュースで16時までにきっちり20匹を殺した。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【殺害記録】

7匹  おひさまオートキャンプ場
8匹  房総カントリークラブ跡  
4匹  ケアセンター寿楽園跡
1匹  公道(夷隅郡)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『申し訳ありません、流石にこのバンパーはヤバいですね。』


「今から血痕だけ洗い流します。
その後、地元の板金屋… ああここはヤンチャ系なので選んだ訳ですが
そこに車を持ち込んでから電車で一旦ホームに帰りましょう。」


『あ、はい。』



俺は本当に何の役にも立たなかったので、タオルをコシコシして必死に役に立つフリをする。
野球界隈では俺みたいなボンクラは《使えない先輩》と呼称されて嘲笑の的になるらしい。
正直、異世界以上に異様な世界ではある。



「トイチさん申し訳ありません。」


『はい?』


「手元の現金が70万強しかないんです。」


『え?』


「いや、現金集めてはるんですよね?
響さんからも全力で支援するように指示されてるんですけど。」


『あ、はい。』


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

1万4176円
 ↓
71万8905円

※江本昴流から70万4729円を借入。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『あ、エモやんさん。
私の能力の詳しい解説なんですけど。
これから…』



「それ、後藤響には説明済なんですか?」



『あ、いえ
彼にはまだ詳しい話は全然。』



「年長の方にこういう事を申し上げたくないんですけど。
どう考えても先に後藤に話を通すべき場面ですよね?
物事には順序ってものがありますよ。

俺の言うてること間違ってますか?」



『あ、いえ。
申し訳ありませんでした。』



コイツ怖いな。
でも、この厳格さ真面目さこそ後藤に愛される所以であるのだろう。



17時が近づくと、エモやんは腕を組んだまま固く目を瞑った。
《いや、どう考えてもオマエは俺の能力全部把握してるだろ。》
とツッコミたかったのが、怒られるのが怖いので黙っている。



「カネカネカネナンマイダー。」



突如、エモやんが念仏を唱え始めたのでビクっとなるが、時計を見ると16時59分だった。
律儀な男である。



『カネカネカネナンマイダー。』
「カネカネカネナンマイダー。」
『カネカネカネナンマイダー。』
「カネカネカネナンマイダー。」
『「カネカネカネナンマイダー。」』




《2万1567円の配当が支払われました。》



よし、日利が3%に上がってる。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

71万8905円
  ↓
74万0472円

※配当2万1567円を取得


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『では元本をお返しします。
出来れば配当も受け取って欲しいのですが…
やはり駄目ですよね?』


「駄目です。」


『はい。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【所持金】

74万0472円
  ↓
3万5743円


※江本昴流に元本70万4729円を返済。
 配当に関しては受取を拒絶。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



結局、板金屋がその日のうちに修理してくれるようだったので、任せることになった。


「最近、全然儲からんのよ。」


板金屋の親方が笑いながら缶コーヒーを勧めてくれる。



『不況ですか?』



「鉄の価格が急落した。
それでスクラップ価格とかも暴落して…

こうやって利益度外視で依頼を請けてるんだよーww
あーーー、夜に作業したくなーーいw」



『ははは、それは申し訳ない事をしました。』



バンパー修理5万円というのが果たして利益を度外視しているのか、俺には判断が付かない。
いずれにせよエモやんに平身低頭して領収書の金額を控えさせて貰う。
受け取って貰える自信はなかったが、出世払いを宣言する。



「ビッグモーターの奴らが手口バレやがったから
俺達にまで疑惑の目が向くんだぜ?

今は水没車なんて売ってねーっつーの!」



どうやら自動車業界は大変らしい。
鉄の暴落というのは、俺達一般人にとっては良い事に思えるのだが、車をスクラップして利益を得ていた者…
更には屑鉄業界にも大打撃らしかった。



「千葉の近くにあるらしいんだよ。」



『え?』



「新しい屑鉄屋。
探しても見つからないんだが、その屑鉄屋が嘘みたいな量の鉄を扱ってやがるんだ。
…オリンピックも終わったし、そういう関係のストックを独占したのかねえ。」



結局、修理が終わった時には23時を過ぎていたので、地元のオートキャンプ場に泊まった。
流石にここのサイト代くらいは出した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

3万5743円
 ↓
3万0743円


※夷隅総合キャンプ場にサイト代として5000円を支払い。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



リア充のお兄さん達がBBQをやっていたので、肉を食わせて貰う。
雰囲気からして金持ちグループだった。

聞けば巨大キャンピングカーで合コンしながら全国を遊び歩いているらしい。



『はええ、世の中にはそんな豪勢な遊びがあるんですねえ。』



エモやんと2人でポカンと口を開けて感心する。



「いやいや、僕達なんて界隈では貧乏人として笑いものにされてるから。
ガチの人達は互いの持ち物件を棟ごとオモチャとして貸し合っているんだ。

最近の超金持ち連中なんかは、由緒正しい寺や神社を貸し切る事にハマってるみたいでさ。
そこで富裕層だけで集まって婚活パーティー的な事をしてるみたいだよ。
40代50代のオッサンが二十歳の女の子と見合いしてるんだぜ?
最近出来たんだよ、東京にそういう大富豪の為の特権クラブが。

いやいや! 僕達みたいな雑魚がそんなグループに入れて貰える訳ないじゃん。
僕の実家なんかマンション5棟しか持ってない極小地主だよ?」



  「オマエなんかまだ恵まれてるよ。
  ウチなんてたかが会計事務所だぜ…」


  「アンタらなんて恵まれてるわよ。
  アタシの実家なんか、1店舗経営のパチンコ屋。
  嫌われるし、そんなに儲かってないし最悪。」



へえ、地球の方が金持ちの階層って厳しいんだな。
今思えば、ピット会長って滅茶苦茶フランクでいい人だったよな。
もっと優しくしてやればよかった。



その後、エモやんがアンダースロー的当てを披露すると、彼らは大興奮して余っているシャンパンを何本かくれた。
彼ら程の金持ちが「背伸びして買ってみた」と言ってたので余程の高級品なのだろう。
素直に貰っておくことにした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





【名前】

遠市厘



【職業】

無職



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)

《LV》  3
《HP》  ?
《MP》  ?
《力》  ?
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 ?
《精神》 ?
《幸運》 ?

《経験》 30 (仮定)

※キョンの経験値を1と仮定
※ロードキルの有効性確認済



【スキル】

「複利」 

※日利3%


新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。



【所持金】

3万0743円



【所持品】

ヒルダのワイシャツ。
警察病院パジャマ     (本来貸与品なので返却義務あり)
エモやんのアンダーシャツ (貰った。)
エモやんの海パン     (ズボン代わり)
エモやんのパーカー    (スポーツブランドの結構上等なもの)
シャンパン        (いい銘柄っぽい)



【約束】

古屋正興     「異世界に飛ばす」
飯田清麿     「100円を1万円にして返す。」
後藤響      「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」
江本昴流     「後藤響を護る。」

ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる」




しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」

銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の 一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の 関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事 を裏でしていた。ある日のこと学校を 出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ こりゃーと思っていると、女神(駄)が 現れ異世界に転移されていた。魔王を 倒してほしんですか?いえ違います。 失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな! さっさと元の世界に帰せ‼ これは運悪く異世界に飛ばされた青年が 仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの と商売をして暮らしているところで、 様々な事件に巻き込まれながらも、この 世界に来て手に入れたスキル『書道神級』 の力で無双し敵をバッタバッタと倒し 解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに 巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、 時には面白く敵を倒して(笑える)いつの 間にか世界を救う話です。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

処理中です...