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【降臨12日目】 所持金196万4160円 「俺、弱くてニューゲーム。」
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目が覚めると早朝10時30分。
寝そべったまま、心地良い気怠さを楽しむ。
「トイチ君、朝ご飯食べる?」
『あ、はい。
ちょっとお腹すきました。』
見ていると寺之庄はキャンプ場でも使っていたスキレットでホットサンドを作ってくれた。
「あ、ゴメン!
オイスターソース入れ忘れちゃった。」
『あー、いえいえ。
作って頂けるだけで恐縮ですよ。
ゴロゴロしてばかりで申し訳ありません。
何か、お手伝いできることはありませんか?』
「うーーん。
君が手でも怪我しちゃったら大変だからね。
温存の方向で!」
『ははは、それ皆から言われますよ。』
まあ、早かれ遅かれ《作業》はさせて貰えなくなるよな。
俺が寺之庄でも同じコメントをするだろう。
「さっき安宅さんからメッセージ来たよ。
銀行回ってからだから、こっちに来るのは午後になるって。」
『あの人、ヒロノリさんから見てもおカネ持ってますか?』
「そりゃあ、あの人は事業でやってるからね。
その気になればかなりのキャッシュを用意できるはずだよ。
あ、それとトイチ君ゴメン。」
『はい?』
「手元の現金400万ちょっとしか無かったよ。
ゴメンね。」
『あ、いえ。
端数が無ければ幾らでもOKです。』
「江本君は友達と一緒に来るって。
後藤って子、面識あるんだよね?」
『はい、元々後藤さんの紹介で江本さんと会ったので。』
あれから日も経ってないが、和解したのだろうか?
まあスポーツマンってさっぱりしたイメージがあるからな。
切り替えてくれたものと信じたい。
まあ体育会系秩序に俺なんかが入り込める訳もないし、問題があってもスルーの方向で。
「ああ、なるほど理解した。
真姫も来るけど大丈夫?」
『あ、どうぞ。』
俺は別に構わないんだが…
婚約者さんは弓長さんが入り浸っていること知ってるのか?
いや、話が通ってないなんて、流石にそれはあり得ないよな。
うん。
年上の人同士の男女関係なので、スルーの方向で。
『それで昨夜の続きですが…』
「警察病院の人?
えっと、僕はそういうの疎いんだけど。
お巡りさんってことなのかな?
トイチ君、逮捕されちゃったりしない?」
『あ、いえ。
看護師さんですね。
かなり熱心に売り込んで来られたので…
顧客にしてあげる約束はしています。
もしもヒロノリさんから見てNGなら連絡は取りません。』
「…こういう言い方良くないんだけど
トイチ君がどんな面子を顧客に選んだのか、かなり興味ある。
飯田さんだったよね?
彼さえ差し支えなければ歓迎するよ。」
『じゃあ、ちょっと呼びに行きます。』
「人力で?」
『俺、スマホ持ってませんし。』
「いやいや!
江戸時代の人でも狼煙とか飛脚とか使ってたよ!
僕の端末、使ってくれていいから。
着信に応じてくれるかは相手次第だけど。」
『ああ、気を遣わせてしまって恐縮です。
これ先方の番号です。
イイダキヨマロさんです。』
「了解。
トイチ君、どうぞ。」
寺之庄が無造作にスマホを渡してくる。
『あ、スミマセン。
操作方法がわからなくて…』
「あー、失礼失礼。
じゃあ一旦僕からコールするね。
(ピ・ポ・パ)
もしもし突然の電話申し訳御座いません。
私、遠市厘先生の代理で連絡させて頂いております寺之庄煕規と申します。
はい、ええ。
飯田清麿様。
はい、伺っております。
ははは、御丁寧にありがとうございます。
こちらこそ是非、宜しくお願い致します。
あの、遠市先生が居られるのですが
代わっても宜しいでしょうか?
はい、はい。
お気遣いありがとうございます。」
改めてスマホを渡される。
『あ、清磨さん。
どうも、御無沙汰しております。』
「…しゃ、釈放されたの?」
『あ、逮捕申し訳ありませんでした。』
「無事なんだね?
あの日、身元を引取りに行ったんだけど
新宿署に着いた時には既にトイチ君が消えていて…
お巡りさんも少しパニックになってるみたいで…」
『え?
俺、追われてるんですか?』
「わからない。
ただ、聞こえていたお巡りさん同士の話だと
現時点では君を逮捕は出来ない状態らしい。
あくまで観測範囲だからね!」
…だろうな。
俺を逮捕する為の犯罪構成要件が揃っていれば、あの時点で釈放される事は絶対無かっただろう。
何せ偽札疑惑だからな。
「ご友人の家から連絡くれたって事は安全な環境ではあるんだよね?」
『あ、はい。
のんびりしてます。』
「そうか…
一安心だ。」
『…あの。
ヒルダ… 怒ってました?』
「…俺の口からは、ちょっと。
ノーコメントで。
…なんかその。
…怖かった、です。」
『ご迷惑をお掛けしたようで。』
「あの。
三田に顔だけ出して貰えない?
出来れば、早急に。
一応、俺とあの人も田町で寝泊まりしているので。」
『…お仕事は。』
「行くわけないじゃない、常識的に考えて。」
『まあ、俺でもそうしますけど。』
そんな遣り取りがあって、電話を切る。
ヒルダ、絶対怒ってるよな。
顔合わせたくないな。
でも顔を出さなきゃ恨みポイントが蓄積されるんだろうな。
俺が行かなきゃ、清磨さんがとばっちりを喰うんだろうな。
(既に喰ってるに違いないが…)
行きたい気持ちと嫌な気持ちが4:6だったが、セックスがしたかったので三田に顔を出すことに決める。
「今から田町に向かいます。
17時までには、ここに戻ります。」
『何か引き止めちゃってゴメンね。』
「もしも俺が志半ばに斃れて戻らなければ
痴情の縺れの恐怖を後世に伝えて戒めて下さい。」
『わかった!
僕は大丈夫だけど、皆に語り継ぐよ!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9667円
↓
116万9377円
※表参道駅から三田駅への電車賃として290円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれ?
一瞬で到着してしまったぞ!?
電車に乗ってから20分も経ってないんじゃないか?
あー、嫌だなあ。
着くな着くなって思ってると、すぐに着いちゃった。
どこかでメシでも食って時間潰そうかな…
等と思ってキョロキョロしていると、背後から肩を鷲掴みにされる。
『ッ!?』
心臓が凍るような恐怖を感じて恐る恐る振り返ると…
『や、やあヒルダ。
あ、逢いたかったよ。
元気してた?』
「…。」
『ははは、何か迷惑掛けちゃったみたいだね。』
「…。」
あ、ヤバ。
この顔は怒り狂っている時の顔だ。
『あ、あはは。
肩、そんなに強く握られると
ちょっと痛いっていうか…
うわっッ!!!!
痛い痛イタタタタタタタ!!!!
ゴメンナサイゴメンナサイ!!!!』
部屋に連行されるまでも2発も肩パンされた。
痛かった。
その後セックスした。
気持ち良かった。
『あ、じゃあ俺。
そろそろ仕事だから。
また来るよ。』
「…。 (ガシッ!)」
『イタタタタタタッ!!!!
折れる!! 折れる!!』
「…リン。」
『あ、はい。』
「順調のようですね。」
『地球は難易度高いけど。
でも。
俺、弱くてニューゲーム。
そういう生き方的なチートがあるから
俺なりの処世術って言うのかな。
概ね有利には話が進んでるんじゃない?』
「それは見ていて分かります。
余裕を持ってペースを落としているようですし。」
『まあ、どうせカネもすぐにカンストするしね。
心身を慣らしながら、腰を据えて戦いたい。
カネだけ持っても、俺に器が伴わなければ、意味ないしね。』
「リンは既に器ですよ。
金甌無欠の王器です。」
…さっきの肩パンで王器割れてるんですけど、それは。
『そうありたいね。
じゃあ、清磨さんと表参道に戻るよ。』
「相変わらず慌ただしいのですね。」
『怒ってる?』
「…殿方とはそういう生き物です。」
『また戻って来るよ。
俺、ヒルダだけだし。』
「殿方とはそういう事を言う生き物です(怒)。」
『ひえっ!
ゴメンゴメン。
あの辺、小洒落た洋菓子屋が多いからさ。
次はヒルダに買って来るよ。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
義理も通したので、足早に出立する。
途中、飯田清磨と合流。
「軽く何か食べてから行く?」
『…向こうの駅についてからで。』
「あ(察し)。」
『でも、そんな簡単に職場って辞めれるものなんですか?
警察病院って厳しそうな印象ありますけど。』
「…まあ、出勤しなければいいだけじゃない?」
『ああ、確かに。』
思い出した。
ピット会長の側近もカネを持った瞬間、全員がバックれたからな。
異世界では一番厚遇されていたであろう会長の直属部隊でもあの体たらくなので、あれこそが忌憚のない労働者の本音だったのだろうな。
『清磨さん。
やっぱりおカネがあったら仕事を辞めるものですか?』
「うーーん。
そりゃあ皆辞めたがってるから。
おカネさえあれば、あんな仕事…
誰だって嫌だよ。」
『もしも清磨さんが10億円持った状態で
仕事に戻ってくれって頼まれたらどうします?』
「え?
10億もあるのに、あんな仕事する人っているかなあ。
そりゃあ、友達や親戚が苦しんでれば学んだ医療技術は発揮すると思うけど。」
『他人は、助けない?』
「うーーーーん。
目の前で倒れてたら…
まあ応急処置くらいはするんじゃない?
だって何かあったら後味悪いし。」
この人ならそう考えるだろうな。
もしも天下万民が富を手にしてそう考えたのなら、自助の世になる。
看護師とか料理人のような生存に必要不可欠な技能を持った人間は、何だかんだで優遇されるだろう。
逆に俺やピット会長みたいに、カネだけ持ってる人間は辛いだろう。
周囲に対して提供出来るものが何もなくなる。
結局、生活が成り立つのは生活能力のある人間だけ、という当たり前の結論に至る。
それって極めて妥当な社会だよな、俺は絶対窮死するけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9377円
↓
116万9087円
※三田駅から表参道駅への電車賃として290円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
駅に江本が居たので、飯田を紹介しながら一緒に寺之庄宅に向かう。
どうやらボディーガード的な役割を担ってくれているらしい。
正直、ありがたい。
16時04分、寺之庄宅に到着。
しばらくは自己紹介タイム。
全員、かなり慎重に互いを観察し合っている。
持てるだけのキャッシュを持って来ているからね、仕方ないね。
後藤江本組は穏やかな表情ではあるが、どことなくギクシャクしている。
そりゃあね、謹慎処分の話がほんの数日前だからね。
『なんかいつもバタバタしていてスミマセン。』
誰に言った訳でもなく、世間様に向けてそう詫びておく。
「あー、いえいえ。
カノジョさん、大切にしてあげてね。」
寺之庄が無難に返答。
『ええ、まあ。
さっき顔も見せたし、義理はちゃんと果たしてます。
…では、早速本題に入ります。
ここにおられる皆様は全員御存知だと思うのですが、再度確認。
お預かりしたおカネはに対して1%の利子を付けて元本ごとお支払いします。
原理は私も知りません。
まあ、宗教的奇跡という事でお茶を濁しておきましょう!』
「結局、宗教にしはるんですか?」
挙手した後藤が遠慮がちに問う。
『うーーん、実質的には商売以外の何物でもないのですが…
ビジネスと銘打ってしまうと、色々な法律に真正面から違反してしまいますので…
無難に、神様から啓示を受けた事にしておきます。
一応口裏合わせて下さいね?
安宅さん、そっちの方が無難ですよね?』
「ええ、素晴らしい御判断だと思います。
そもそも個人が不特定多数からカネを集めて配当を約束する行為が出資法違反ですので。
皆さん、口が裂けても《投資》という言葉は使わないようにして下さい。
遠市先生が逮捕されてしまいますので。」
『安宅さん、補足感謝します。
先程も申し上げた通り、私が警察当局をかなり怒らせてしまっています。
特に現場の刑事さんを本気にさせてしまっているので…
言葉を慎重にチョイスする所存です。
私と一緒に居て危険だと感じたら、すぐにフェイドアウトして下さい。』
「江本。
何かアイデアある?」
「そうですね。
《トイチさんの起こす奇跡を目撃して信者になった》
というストーリーを前面に出すのが無難かと。」
『今、江本さんが仰られたように…
宗教活動のアリバイを大至急用意致します。
それまで不自由をお掛けするかも知れませんが…
誠心誠意取り組みますので、宜しくお願いします!』
「「「「「「お願いします!」」」」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【信者(出資者)一覧】 ※名簿は出資額順
安宅一冬 (トレーダー) 金1900万円
飯田清磨 (看護師) 金1300万円
寺之庄煕規 (学生) 金0400万円
後藤響 (学生) 金0100万円
江本昴流 (学生) 金0100万円
※合計3800万円を神事用にレンタル。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『はい!
神様へのお供えとして3800万円もの御浄財が集まりました!
不肖、遠市厘!
祈り手を務めます!!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9087円
↓
3916万9087円
※御幣3800枚を取り纏め。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やっぱり浄財という言葉選びも訂正!
御幣! これはあくまで御幣!
円じゃないよ!
あくまで信仰用品を3800枚預かっただけだからね!
「宗教行為!」
「信心!」
「祈念!」
「世界平和!」
「神、神、神!」
『それでは皆様…
共に祈りましょう。
我々を常に見守って下さっている神に!』
「「「「「はいッ!!!」」」」」
でも、まあ。
こんなもん起訴されたら一発有罪だよな。
裁判所だってガキの使いじゃないからね、当たり前だよね。
16時41分。
配当までは、まだまだ時間があるが…
皆で心を合わせて一心不乱に祈りの言葉を唱える。
『カネカネカネカネナンマイダー!』
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
俺達の祈りは真剣である。
当たり前だ、カネが懸かっているからな。
皆が汗をダラダラ流しながら、苦悶の表情で神に祈る。
精神力の全てを振り絞り神に祈る!
「「「「「『カネカネカネカネナンマイダー!!!』」」」」」
いつしか俺達6人の祈りは合わさり、部屋内には神々しい感情の波が満ち溢れていた。
ああ、光が見える…
《117万5073円の配当が支払われました。》
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3916万9087円
↓
4034万4160円
※神から神託117万5073円(円とは言ってない)を受領
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『御光臨です!!!』
「「「「「うおー! うおー!」」」」」
『これはおカネではありません。
神の恩寵です。
我々の祈りに神が応えて下さったのです。』
「恩寵! 恩寵!」
「*1 非課税! 非課税!」
「神! 神! 神!」
「うおー! うおー!」
「*2 出資法的にセーフ!!」
『神よ!!
感謝致します!!
感謝、感謝、感謝ぁ!!!』
「「「「「感謝ぁッッッ!!!!!」」」」」
俺達6人は号泣しながら抱き合って神への感謝を口々に唱えた。
いやあ、信仰って美しいですねえ。
御先祖様から受け継いだ宗教なるフォーマット。
これからも大切にして行きたいですねぇ。
『それでは!
神からの恩寵を皆様にお配り致します!
お供え返し!
あくまでお供え返しですからねー!』
「神事! 神事! 神事!」
「宗教行為! 宗教行為!」
「神! 神! 神!」
「信心! 信心! 信心!」
「祈り! 祈り! 祈り!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
4034万4160円
↓
196万4160円
※御幣3800枚を信者に分配
※神の恩寵として御幣38枚を追加分配
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『神よ! 我らを導き給え!!!』
「「「「「うおー! うおー!」」」」」
キッチンから様子を眺めていた弓長さんが揚げ物とスティック野菜を持って来てくれたので、涙を拭きながら皆で頬張った。
腹が膨れると流石に冷静になる。
『…次回からお祈りは省略の方向で。』
「せやね。」
「妥当ですな。」
毎日、こんな体力使ってたら命が幾らあっても足りないからな。
弓長さんの揚げてくれた塩麹唐揚げはかなりの美味であり、幾らでも腹に入った。
うーん、満腹感が気持ちいい~♪
見れば、安宅が後藤・江本組に多めに分配を渡している。
「いやいや、我々のお供えは100枚ずつなのに
こんなにお供え返しは受け取れませんよ。」
「ははは、金融業界でもあるまいし。
我々は同じ神を信じる信徒仲間じゃないですか。」
「はい、御同胞。」
「若い貴方達がある程度余裕を持って下さらないと
遠市先生の動きが制限されてしまいます。」
「「心掛けます!」」
「まあ、私が余計な気を回すまでもなく
遠市先生はすぐに社会の頂点まで駆け上がってしまうと思いますが…」
その後、寺之庄が開けてくれたシャンパンだかワインだかで再度乾杯。
アンチョビの乗ったクラッカーをムシャムシャ頬張る。
『弓長さん、すみません。
男だけで盛り上がっちゃって。』
「見てる分には楽しいからいいよ。
流石に皆が絶叫しながら祈ってる時は怖かったけど。
ドン引きよ。」
『すみません。
あの、料理とか作って貰ったし
幾らか謝礼を…』
「あのねえ。
友達同士で宅飲みしてるのに。
一々おカネの遣り取りしてたらおかしいでしょ?」
『理屈ではそうですけど。』
「じゃあ今度からここに来る時は纏まったおカネを持って来てあげる。
それでいい?」
『ええ、勿論です!』
「私はシューキョーとか苦手なんだけど。
祈らなくても大丈夫なんだよね?」
『ええ、あれは男同士の単なるギャグなので。』
「…要するに、オトコ社会の構築に必要ってことなのね?」
『ある程度オブラートに包んでおかないと…
この金額でマジな空気になったらヤバいでしょう。』
「まあ、遊びじゃ済まない額よね。
4000万あれば都内の中古戸建も普通に買えるし。」
『弓長さんが冷静で居てくれて助かってます。』
「男の人のあんな必死な表情見てたら…
大抵の女は感情醒めるよ?」
そりゃあそうだ。
後藤と江本が窓の外を眺めながら2人でボソボソ喋ってる。
それとなく観察するが、悪い雰囲気ではない。
『2人共、飲んでますかー?』
冗談めかして呼び掛けてみると、照れたように微笑み返されたので、やや安堵する。
俺はここまで。
これ以上は俺なんかが踏み込んでいい領域ではない。
順番にシャワーを借りた俺達は、安宅が涙ながらに語る銀行の引出限度への愚痴を子守唄に眠りについた。
*1 国税庁 「いや、普通に課税対象でしょ?」
*2 金融庁 「どうみてもアウトですよね?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
遠市 †まぢ闇† 厘
【職業】
詐欺師
自称コンサルタント
祈り手
【称号】
サイコキラー
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 3
《HP》 全てを神に捧げた!
《MP》 全てを神に捧げた!
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 ?
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧
《経験》 30 (仮定)
※キョンの経験値を1と仮定
※ロードキルの有効性確認済
【スキル】
「複利」
※日利3%
新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。
【所持金】
196万4160円
※但し警視庁が用意した旧札100万円は封印、タイミングを見て破棄するものとする。
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばす」
飯田清麿 「結婚式への出席。」
〇 「同年代の友達を作る」
後藤響 「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」
江本昴流 「後藤響を護る。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らない」
「女性を大切にする!」 ←new
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行く」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入する」
堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教える。」
山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮る」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会う!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策する。」
×鷹見夜色 「俺が護る」
ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる。」
「王国の酒を飲ませてやる。」
「表参道のスイーツを喰わせてやる。」
寝そべったまま、心地良い気怠さを楽しむ。
「トイチ君、朝ご飯食べる?」
『あ、はい。
ちょっとお腹すきました。』
見ていると寺之庄はキャンプ場でも使っていたスキレットでホットサンドを作ってくれた。
「あ、ゴメン!
オイスターソース入れ忘れちゃった。」
『あー、いえいえ。
作って頂けるだけで恐縮ですよ。
ゴロゴロしてばかりで申し訳ありません。
何か、お手伝いできることはありませんか?』
「うーーん。
君が手でも怪我しちゃったら大変だからね。
温存の方向で!」
『ははは、それ皆から言われますよ。』
まあ、早かれ遅かれ《作業》はさせて貰えなくなるよな。
俺が寺之庄でも同じコメントをするだろう。
「さっき安宅さんからメッセージ来たよ。
銀行回ってからだから、こっちに来るのは午後になるって。」
『あの人、ヒロノリさんから見てもおカネ持ってますか?』
「そりゃあ、あの人は事業でやってるからね。
その気になればかなりのキャッシュを用意できるはずだよ。
あ、それとトイチ君ゴメン。」
『はい?』
「手元の現金400万ちょっとしか無かったよ。
ゴメンね。」
『あ、いえ。
端数が無ければ幾らでもOKです。』
「江本君は友達と一緒に来るって。
後藤って子、面識あるんだよね?」
『はい、元々後藤さんの紹介で江本さんと会ったので。』
あれから日も経ってないが、和解したのだろうか?
まあスポーツマンってさっぱりしたイメージがあるからな。
切り替えてくれたものと信じたい。
まあ体育会系秩序に俺なんかが入り込める訳もないし、問題があってもスルーの方向で。
「ああ、なるほど理解した。
真姫も来るけど大丈夫?」
『あ、どうぞ。』
俺は別に構わないんだが…
婚約者さんは弓長さんが入り浸っていること知ってるのか?
いや、話が通ってないなんて、流石にそれはあり得ないよな。
うん。
年上の人同士の男女関係なので、スルーの方向で。
『それで昨夜の続きですが…』
「警察病院の人?
えっと、僕はそういうの疎いんだけど。
お巡りさんってことなのかな?
トイチ君、逮捕されちゃったりしない?」
『あ、いえ。
看護師さんですね。
かなり熱心に売り込んで来られたので…
顧客にしてあげる約束はしています。
もしもヒロノリさんから見てNGなら連絡は取りません。』
「…こういう言い方良くないんだけど
トイチ君がどんな面子を顧客に選んだのか、かなり興味ある。
飯田さんだったよね?
彼さえ差し支えなければ歓迎するよ。」
『じゃあ、ちょっと呼びに行きます。』
「人力で?」
『俺、スマホ持ってませんし。』
「いやいや!
江戸時代の人でも狼煙とか飛脚とか使ってたよ!
僕の端末、使ってくれていいから。
着信に応じてくれるかは相手次第だけど。」
『ああ、気を遣わせてしまって恐縮です。
これ先方の番号です。
イイダキヨマロさんです。』
「了解。
トイチ君、どうぞ。」
寺之庄が無造作にスマホを渡してくる。
『あ、スミマセン。
操作方法がわからなくて…』
「あー、失礼失礼。
じゃあ一旦僕からコールするね。
(ピ・ポ・パ)
もしもし突然の電話申し訳御座いません。
私、遠市厘先生の代理で連絡させて頂いております寺之庄煕規と申します。
はい、ええ。
飯田清麿様。
はい、伺っております。
ははは、御丁寧にありがとうございます。
こちらこそ是非、宜しくお願い致します。
あの、遠市先生が居られるのですが
代わっても宜しいでしょうか?
はい、はい。
お気遣いありがとうございます。」
改めてスマホを渡される。
『あ、清磨さん。
どうも、御無沙汰しております。』
「…しゃ、釈放されたの?」
『あ、逮捕申し訳ありませんでした。』
「無事なんだね?
あの日、身元を引取りに行ったんだけど
新宿署に着いた時には既にトイチ君が消えていて…
お巡りさんも少しパニックになってるみたいで…」
『え?
俺、追われてるんですか?』
「わからない。
ただ、聞こえていたお巡りさん同士の話だと
現時点では君を逮捕は出来ない状態らしい。
あくまで観測範囲だからね!」
…だろうな。
俺を逮捕する為の犯罪構成要件が揃っていれば、あの時点で釈放される事は絶対無かっただろう。
何せ偽札疑惑だからな。
「ご友人の家から連絡くれたって事は安全な環境ではあるんだよね?」
『あ、はい。
のんびりしてます。』
「そうか…
一安心だ。」
『…あの。
ヒルダ… 怒ってました?』
「…俺の口からは、ちょっと。
ノーコメントで。
…なんかその。
…怖かった、です。」
『ご迷惑をお掛けしたようで。』
「あの。
三田に顔だけ出して貰えない?
出来れば、早急に。
一応、俺とあの人も田町で寝泊まりしているので。」
『…お仕事は。』
「行くわけないじゃない、常識的に考えて。」
『まあ、俺でもそうしますけど。』
そんな遣り取りがあって、電話を切る。
ヒルダ、絶対怒ってるよな。
顔合わせたくないな。
でも顔を出さなきゃ恨みポイントが蓄積されるんだろうな。
俺が行かなきゃ、清磨さんがとばっちりを喰うんだろうな。
(既に喰ってるに違いないが…)
行きたい気持ちと嫌な気持ちが4:6だったが、セックスがしたかったので三田に顔を出すことに決める。
「今から田町に向かいます。
17時までには、ここに戻ります。」
『何か引き止めちゃってゴメンね。』
「もしも俺が志半ばに斃れて戻らなければ
痴情の縺れの恐怖を後世に伝えて戒めて下さい。」
『わかった!
僕は大丈夫だけど、皆に語り継ぐよ!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9667円
↓
116万9377円
※表参道駅から三田駅への電車賃として290円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれ?
一瞬で到着してしまったぞ!?
電車に乗ってから20分も経ってないんじゃないか?
あー、嫌だなあ。
着くな着くなって思ってると、すぐに着いちゃった。
どこかでメシでも食って時間潰そうかな…
等と思ってキョロキョロしていると、背後から肩を鷲掴みにされる。
『ッ!?』
心臓が凍るような恐怖を感じて恐る恐る振り返ると…
『や、やあヒルダ。
あ、逢いたかったよ。
元気してた?』
「…。」
『ははは、何か迷惑掛けちゃったみたいだね。』
「…。」
あ、ヤバ。
この顔は怒り狂っている時の顔だ。
『あ、あはは。
肩、そんなに強く握られると
ちょっと痛いっていうか…
うわっッ!!!!
痛い痛イタタタタタタタ!!!!
ゴメンナサイゴメンナサイ!!!!』
部屋に連行されるまでも2発も肩パンされた。
痛かった。
その後セックスした。
気持ち良かった。
『あ、じゃあ俺。
そろそろ仕事だから。
また来るよ。』
「…。 (ガシッ!)」
『イタタタタタタッ!!!!
折れる!! 折れる!!』
「…リン。」
『あ、はい。』
「順調のようですね。」
『地球は難易度高いけど。
でも。
俺、弱くてニューゲーム。
そういう生き方的なチートがあるから
俺なりの処世術って言うのかな。
概ね有利には話が進んでるんじゃない?』
「それは見ていて分かります。
余裕を持ってペースを落としているようですし。」
『まあ、どうせカネもすぐにカンストするしね。
心身を慣らしながら、腰を据えて戦いたい。
カネだけ持っても、俺に器が伴わなければ、意味ないしね。』
「リンは既に器ですよ。
金甌無欠の王器です。」
…さっきの肩パンで王器割れてるんですけど、それは。
『そうありたいね。
じゃあ、清磨さんと表参道に戻るよ。』
「相変わらず慌ただしいのですね。」
『怒ってる?』
「…殿方とはそういう生き物です。」
『また戻って来るよ。
俺、ヒルダだけだし。』
「殿方とはそういう事を言う生き物です(怒)。」
『ひえっ!
ゴメンゴメン。
あの辺、小洒落た洋菓子屋が多いからさ。
次はヒルダに買って来るよ。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
義理も通したので、足早に出立する。
途中、飯田清磨と合流。
「軽く何か食べてから行く?」
『…向こうの駅についてからで。』
「あ(察し)。」
『でも、そんな簡単に職場って辞めれるものなんですか?
警察病院って厳しそうな印象ありますけど。』
「…まあ、出勤しなければいいだけじゃない?」
『ああ、確かに。』
思い出した。
ピット会長の側近もカネを持った瞬間、全員がバックれたからな。
異世界では一番厚遇されていたであろう会長の直属部隊でもあの体たらくなので、あれこそが忌憚のない労働者の本音だったのだろうな。
『清磨さん。
やっぱりおカネがあったら仕事を辞めるものですか?』
「うーーん。
そりゃあ皆辞めたがってるから。
おカネさえあれば、あんな仕事…
誰だって嫌だよ。」
『もしも清磨さんが10億円持った状態で
仕事に戻ってくれって頼まれたらどうします?』
「え?
10億もあるのに、あんな仕事する人っているかなあ。
そりゃあ、友達や親戚が苦しんでれば学んだ医療技術は発揮すると思うけど。」
『他人は、助けない?』
「うーーーーん。
目の前で倒れてたら…
まあ応急処置くらいはするんじゃない?
だって何かあったら後味悪いし。」
この人ならそう考えるだろうな。
もしも天下万民が富を手にしてそう考えたのなら、自助の世になる。
看護師とか料理人のような生存に必要不可欠な技能を持った人間は、何だかんだで優遇されるだろう。
逆に俺やピット会長みたいに、カネだけ持ってる人間は辛いだろう。
周囲に対して提供出来るものが何もなくなる。
結局、生活が成り立つのは生活能力のある人間だけ、という当たり前の結論に至る。
それって極めて妥当な社会だよな、俺は絶対窮死するけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9377円
↓
116万9087円
※三田駅から表参道駅への電車賃として290円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
駅に江本が居たので、飯田を紹介しながら一緒に寺之庄宅に向かう。
どうやらボディーガード的な役割を担ってくれているらしい。
正直、ありがたい。
16時04分、寺之庄宅に到着。
しばらくは自己紹介タイム。
全員、かなり慎重に互いを観察し合っている。
持てるだけのキャッシュを持って来ているからね、仕方ないね。
後藤江本組は穏やかな表情ではあるが、どことなくギクシャクしている。
そりゃあね、謹慎処分の話がほんの数日前だからね。
『なんかいつもバタバタしていてスミマセン。』
誰に言った訳でもなく、世間様に向けてそう詫びておく。
「あー、いえいえ。
カノジョさん、大切にしてあげてね。」
寺之庄が無難に返答。
『ええ、まあ。
さっき顔も見せたし、義理はちゃんと果たしてます。
…では、早速本題に入ります。
ここにおられる皆様は全員御存知だと思うのですが、再度確認。
お預かりしたおカネはに対して1%の利子を付けて元本ごとお支払いします。
原理は私も知りません。
まあ、宗教的奇跡という事でお茶を濁しておきましょう!』
「結局、宗教にしはるんですか?」
挙手した後藤が遠慮がちに問う。
『うーーん、実質的には商売以外の何物でもないのですが…
ビジネスと銘打ってしまうと、色々な法律に真正面から違反してしまいますので…
無難に、神様から啓示を受けた事にしておきます。
一応口裏合わせて下さいね?
安宅さん、そっちの方が無難ですよね?』
「ええ、素晴らしい御判断だと思います。
そもそも個人が不特定多数からカネを集めて配当を約束する行為が出資法違反ですので。
皆さん、口が裂けても《投資》という言葉は使わないようにして下さい。
遠市先生が逮捕されてしまいますので。」
『安宅さん、補足感謝します。
先程も申し上げた通り、私が警察当局をかなり怒らせてしまっています。
特に現場の刑事さんを本気にさせてしまっているので…
言葉を慎重にチョイスする所存です。
私と一緒に居て危険だと感じたら、すぐにフェイドアウトして下さい。』
「江本。
何かアイデアある?」
「そうですね。
《トイチさんの起こす奇跡を目撃して信者になった》
というストーリーを前面に出すのが無難かと。」
『今、江本さんが仰られたように…
宗教活動のアリバイを大至急用意致します。
それまで不自由をお掛けするかも知れませんが…
誠心誠意取り組みますので、宜しくお願いします!』
「「「「「「お願いします!」」」」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【信者(出資者)一覧】 ※名簿は出資額順
安宅一冬 (トレーダー) 金1900万円
飯田清磨 (看護師) 金1300万円
寺之庄煕規 (学生) 金0400万円
後藤響 (学生) 金0100万円
江本昴流 (学生) 金0100万円
※合計3800万円を神事用にレンタル。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『はい!
神様へのお供えとして3800万円もの御浄財が集まりました!
不肖、遠市厘!
祈り手を務めます!!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
116万9087円
↓
3916万9087円
※御幣3800枚を取り纏め。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やっぱり浄財という言葉選びも訂正!
御幣! これはあくまで御幣!
円じゃないよ!
あくまで信仰用品を3800枚預かっただけだからね!
「宗教行為!」
「信心!」
「祈念!」
「世界平和!」
「神、神、神!」
『それでは皆様…
共に祈りましょう。
我々を常に見守って下さっている神に!』
「「「「「はいッ!!!」」」」」
でも、まあ。
こんなもん起訴されたら一発有罪だよな。
裁判所だってガキの使いじゃないからね、当たり前だよね。
16時41分。
配当までは、まだまだ時間があるが…
皆で心を合わせて一心不乱に祈りの言葉を唱える。
『カネカネカネカネナンマイダー!』
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
「カネカネカネカネナンマイダー!」
俺達の祈りは真剣である。
当たり前だ、カネが懸かっているからな。
皆が汗をダラダラ流しながら、苦悶の表情で神に祈る。
精神力の全てを振り絞り神に祈る!
「「「「「『カネカネカネカネナンマイダー!!!』」」」」」
いつしか俺達6人の祈りは合わさり、部屋内には神々しい感情の波が満ち溢れていた。
ああ、光が見える…
《117万5073円の配当が支払われました。》
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3916万9087円
↓
4034万4160円
※神から神託117万5073円(円とは言ってない)を受領
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『御光臨です!!!』
「「「「「うおー! うおー!」」」」」
『これはおカネではありません。
神の恩寵です。
我々の祈りに神が応えて下さったのです。』
「恩寵! 恩寵!」
「*1 非課税! 非課税!」
「神! 神! 神!」
「うおー! うおー!」
「*2 出資法的にセーフ!!」
『神よ!!
感謝致します!!
感謝、感謝、感謝ぁ!!!』
「「「「「感謝ぁッッッ!!!!!」」」」」
俺達6人は号泣しながら抱き合って神への感謝を口々に唱えた。
いやあ、信仰って美しいですねえ。
御先祖様から受け継いだ宗教なるフォーマット。
これからも大切にして行きたいですねぇ。
『それでは!
神からの恩寵を皆様にお配り致します!
お供え返し!
あくまでお供え返しですからねー!』
「神事! 神事! 神事!」
「宗教行為! 宗教行為!」
「神! 神! 神!」
「信心! 信心! 信心!」
「祈り! 祈り! 祈り!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
4034万4160円
↓
196万4160円
※御幣3800枚を信者に分配
※神の恩寵として御幣38枚を追加分配
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『神よ! 我らを導き給え!!!』
「「「「「うおー! うおー!」」」」」
キッチンから様子を眺めていた弓長さんが揚げ物とスティック野菜を持って来てくれたので、涙を拭きながら皆で頬張った。
腹が膨れると流石に冷静になる。
『…次回からお祈りは省略の方向で。』
「せやね。」
「妥当ですな。」
毎日、こんな体力使ってたら命が幾らあっても足りないからな。
弓長さんの揚げてくれた塩麹唐揚げはかなりの美味であり、幾らでも腹に入った。
うーん、満腹感が気持ちいい~♪
見れば、安宅が後藤・江本組に多めに分配を渡している。
「いやいや、我々のお供えは100枚ずつなのに
こんなにお供え返しは受け取れませんよ。」
「ははは、金融業界でもあるまいし。
我々は同じ神を信じる信徒仲間じゃないですか。」
「はい、御同胞。」
「若い貴方達がある程度余裕を持って下さらないと
遠市先生の動きが制限されてしまいます。」
「「心掛けます!」」
「まあ、私が余計な気を回すまでもなく
遠市先生はすぐに社会の頂点まで駆け上がってしまうと思いますが…」
その後、寺之庄が開けてくれたシャンパンだかワインだかで再度乾杯。
アンチョビの乗ったクラッカーをムシャムシャ頬張る。
『弓長さん、すみません。
男だけで盛り上がっちゃって。』
「見てる分には楽しいからいいよ。
流石に皆が絶叫しながら祈ってる時は怖かったけど。
ドン引きよ。」
『すみません。
あの、料理とか作って貰ったし
幾らか謝礼を…』
「あのねえ。
友達同士で宅飲みしてるのに。
一々おカネの遣り取りしてたらおかしいでしょ?」
『理屈ではそうですけど。』
「じゃあ今度からここに来る時は纏まったおカネを持って来てあげる。
それでいい?」
『ええ、勿論です!』
「私はシューキョーとか苦手なんだけど。
祈らなくても大丈夫なんだよね?」
『ええ、あれは男同士の単なるギャグなので。』
「…要するに、オトコ社会の構築に必要ってことなのね?」
『ある程度オブラートに包んでおかないと…
この金額でマジな空気になったらヤバいでしょう。』
「まあ、遊びじゃ済まない額よね。
4000万あれば都内の中古戸建も普通に買えるし。」
『弓長さんが冷静で居てくれて助かってます。』
「男の人のあんな必死な表情見てたら…
大抵の女は感情醒めるよ?」
そりゃあそうだ。
後藤と江本が窓の外を眺めながら2人でボソボソ喋ってる。
それとなく観察するが、悪い雰囲気ではない。
『2人共、飲んでますかー?』
冗談めかして呼び掛けてみると、照れたように微笑み返されたので、やや安堵する。
俺はここまで。
これ以上は俺なんかが踏み込んでいい領域ではない。
順番にシャワーを借りた俺達は、安宅が涙ながらに語る銀行の引出限度への愚痴を子守唄に眠りについた。
*1 国税庁 「いや、普通に課税対象でしょ?」
*2 金融庁 「どうみてもアウトですよね?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【名前】
遠市 †まぢ闇† 厘
【職業】
詐欺師
自称コンサルタント
祈り手
【称号】
サイコキラー
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 3
《HP》 全てを神に捧げた!
《MP》 全てを神に捧げた!
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 ?
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧
《経験》 30 (仮定)
※キョンの経験値を1と仮定
※ロードキルの有効性確認済
【スキル】
「複利」
※日利3%
新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。
【所持金】
196万4160円
※但し警視庁が用意した旧札100万円は封印、タイミングを見て破棄するものとする。
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばす」
飯田清麿 「結婚式への出席。」
〇 「同年代の友達を作る」
後藤響 「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」
江本昴流 「後藤響を護る。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らない」
「女性を大切にする!」 ←new
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行く」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入する」
堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教える。」
山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮る」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会う!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策する。」
×鷹見夜色 「俺が護る」
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