異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ

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【降臨13日目】 所持金308万1044円 「大魔王からは逃げられない。」

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深夜。
何となく目が覚めたので、寺之庄に断りを入れてから後藤と夜散歩。
別段遠出をするつもりもなかったのだが、何気なく坂を下って行くと渋谷に近づいてしまったので、そのまま渋谷駅まで行ってみることにする。
後藤がしきりに足を気遣ってくれるが、歩く分には問題がない。



「スクランブル交差点。
この時間やのに、人多いですね。
ハロウィンの時とか地獄でしたよ。
配達で通っただけですけど、暴れる奴らおって怖かったし。」



『あ、俺。
ハロウィンで暴れてたグルーブと東横で飲んでました。』



「ホンマですか!?」



『TV取材の要望に答えて、大袈裟にアウトロー発言したら、モザイクの約束反古にされて全国放送されたみたいです。』



「うおー。
どんな人なんですか?」



『20代前半位のグループですね。
昔は渋谷で暴れてたらしいんですけど
メンバーの半分が結婚して自然消滅したらしいです。
東横で大音量で音楽流してるんで、見たらすぐ分かりますよ。
やっぱり音を出す系の人達は総じて治安悪いですね。
わざわざ名古屋からやって来て身体に括り付けたスピーカー鳴らしてる女の子も居たし。』



「やっぱり東京は怖い所ですね。
女子がそんな所行って大丈夫なんですかね?」



『あまり可愛い子では無かったんですけど、露出が高めだったんでナンパはされてましたね。
オッサン系がチヤホヤしてました。
逆に他の女子勢とは一触即発だったので、見ててヒヤヒヤしました。
女の子でも乱暴な口の利き方する子多くて怖かったです。』



「いや、その女子をマウントパンチしてたトイチさんの方が怖いんですが。」



『あれはあれで言い分があるのですけど。
まあ、一生言われるでしょうね。』



「現在進行系でネットミーム化してますからね。

あ、トイチさん。
フィガロがトイチさんの風刺画を誌面に掲載してますよ。
ほら、これ、昨日の朝刊。
日露戦争の時よりバイアス掛かってますよ。」



『アイツラ、人をフリー素材化しやがって。』



「幕末以来、あっちでは日本ネタが鉄板らしいですからね。
まあ、次は善行での掲載を狙いましょう。」



『後藤さんは話をポジティブに持って行くのが上手いですよね。
指導者向きだと思います。
そっちの道は進まないんですか?』



「いやあ、実は古巣のリトルから声は掛かっているのですけど。
俺なんか、ただの糞ガキですからね。
大体、結婚もしてないモンが、他人様のお子さんを指導するって筋が通ってないですよ。」



『ふふふ、その回答が既に指導者っぽいですw』



「からかわんとって下さいよーw」




2人で居酒屋に入り、1杯ずつだけ飲む事にする。
時間が時間なのでツマミは胡瓜やキャベツなどの、油っ気が無いものだけにしておく。


「江本も言ってましたが、トイチさんのバイタリティーは凄いですね。
東横行ったり千葉行ったり、アチコチ行ってはりますやん。
次はどこへ行きはりますの?」



『実は…
漠然と大阪に行こうと思ってて。』



「ええっ!
ちょw!
何で大阪w!?」



『後藤さん達とご一緒しているうちに、何となく親近感が湧いて来たので。
一度見ておこうかな、と。』



「うおお。
突如始まる大阪編。
お願いですから滅ぼさんとって下さいね。」



『へーきへーき、おカネ配るだけですから。
それにタイミングが合えば、の話ですよ?
東京の事もまだまだ全然分かってないのに。

後藤さんは行ってみたい場所とかあります?』



「うーん、都内であれば、それこそ東横ですかね?」



『え?
そうなんですか?』



「そりゃあ興味ありますよ。
怖いから今まで近寄りませんでしたけど…
何せトイチさんが世界的有名人になった場所ですからね。
俺にとったら聖地ですわ。」



『大袈裟(笑)
でも、一見の価値はあるかもです。
デンジャラスだけど、色々な人が居て勉強になりました。
勤め先のお金盗んで九州から逃げて来た人とか。
自称・援助交際の元締とか。
薬物で逮捕されて執行猶予中の人もいました。』



「怖。
世の中広いですねぇ。」



『全くです。
地球の、日本の、それも首都圏だけでも色々あって驚いてます。』



「ふふっ。」



『ん?』



「今の台詞、異世界帰りっぽかったです。
もっと気を付けな、皆にバレますよ(笑)」



『もう警視庁にはバレました(笑)。
取り調べ室で好きなアニメまで追求されちゃいましたし。』



「え!?
何て答えはったんですか?」



『貴方達の世代と違って忙しいので、好きになるほど必死でアニメなんか見ない。
って返しておきました。』



「ははっ。
それお巡りさん怒ったんとちゃいます?」



『壮絶に怒り狂ってましたよ。
殴り殺されるかと思いましたもの。』



「あんまり警察怒らせちゃ駄目ですよ。」



『俺は警察官大好きなんですけどね。
憧れもありますし。
でも、向こうがこっちを目の敵にしてるんですよ。』



「トイチさん、歳の割に余裕があるから。
一部の大人から見たら、おちょくられてるように感じるんちゃいます?」



『それは取調べ中に何度も指摘されましたね。
《警察ナメンナー》って絶叫してきた方もおられましたし。』



「目に浮かびますわ(笑)」



隣のテーブルに団体客が入って来たので、残ったキュウリを口に放り込んで会計に向かう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

196万4160円
 ↓
196万2790円


※酒代を2740円を後藤響と折半し、1370円を支払


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


しばらく話しながら渋谷の駅前をブラブラ。
忠犬ハチ公像を参拝出来たので満足する。
俺はコボルトのクュ医師に救われたので、犬は贔屓すると決めたのだ。
帰りは登り坂だったので素直にタクシーを拾った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

196万2790円
  ↓
196万2460円

※タクシー代660円を後藤響と折半し、330円を支払


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


明け方に帰って、エモやんに怒られてから再度寝た。
正午に皆でノロノロ起きて、交代でシャワーを浴びた。

寺之庄・飯田・安宅は銀行でキャッシュを引き出して来るとの事だったので、俺はお留守番。

2人と大阪の話題で盛り上がる。
《地域性がオープンなので、外から来た人間でも馴染易い》
との言葉に僅かな期待感を抱く。


エモやんのスマホで、俺の動画の拡散状況をチェック。
英語圏、ラテン語圏、漢語圏、アラビア語圏と、徐々にバズりエリアが伝染している。
事件として捉える文化圏とコメディとして捉える文化圏が半々くらい。
どうやら反日工作っぽい連中が必死で拡散しているようだ。

《日本人はこんなに野蛮な連中だから信用してはならない!》

的な論調の工作である。



「…トイチさん、下手したら
今、最も世界に知られている日本人ですよ。」


『…みたいですね。』


「大変な事になってしまいましたけど、これからどないされます?」


『どのみち有名になってしまう事は織り込み済みだったので…
今の状況を前向きに活用して行きます。』


「…場数踏んではりますねえ。」


『鈍感なだけですよ。』



どうせ、カネが増え続ければ勝手に有名になるからね。
あのネガティブ動画は本当に困るのだが、頭の良い奴に打開策を考えて貰おう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



2時過ぎには全員が戻ってきたので、カネの集計を開始する。
途中、弓長さんと関羽がやって来たので、宗教行為の口裏合わせを再度行う。


「宗教法人、買います?」


安宅の問いに…


『買いませんが、神事の体裁は継続します。』



「宗教法人格がなければ税制面とか…
ああ、すみません。
超然路線で行くのですね?」



『ええ、あまり世俗的な手法は取らないことにします。

宗教団体って、概ね脱税・脱法の為に設立される訳じゃないですか?
それこそ我が国では奈良時代には既に社会問題になってたくらいですし。
現存する宗教法人なんて、ほぼほぼ脱税か外国勢力の諜報の為の装置じゃないですか。
宗教法人って、この世で最も冒涜的な存在ですよ。

…私は、おカネという非常に神聖なものを扱っております。
それも不正という形で運用しています。
だからこそ、己の利得だけの為の制度利用は避けていきたいんです。』



「ふーむ。
御志は素晴らしいと思います。

ただ、現実問題として…
納税とかは、どうお考えですか?
これ、どこの会計事務所も引き受けてくれない案件ですよ?」



『税金は全て、言い値で払います。
払えと言われた額を払います。』



「…おお。
即答ですな。」



『あまり本筋と関係のない部分にリソースを割きたくないんです。
節税はしない、私からは申告しない、皆さんは善意の第三者、徴税に対しては言い値で支払う。
加えて、公的機関からの出頭命令には概ね応じます。
最終的には全額分配。
以上。』



「…遠市先生以上の謀反人を聞いた事がありません。」



『ヤバいと思ったら俺から逃げて下さい。』



「うーーーん、先生から離れる自信がないですね。
ズルズルと添い遂げてしまいそう。」



…そりゃあそうだ。
大魔王からは逃げられない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【信者(出資者)一覧】 ※名簿は出資額順


安宅一冬 (トレーダー) 金2600万円
飯田清磨 (看護師)   金1800万円
寺之庄煕規 (学生)   金0600万円
後藤響 (学生)     金0100万円
江本昴流 (学生)    金0100万円
弓長真姫 (学生)    金0100万円

※合計5300万円


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



俺は敢えて集計作業に加わらない。
横着をしているのではない。
どうせこの先は保有資産を把握出来なくなるに決まっているのだ。
なので、把握してないなりに周囲を納得させ得る振舞を訓練して身に着けなくてはならないのだ。
それも今この場で。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

234万2460円
 ↓
5496万2460円

※合計5300万円を6名から預かり


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『金額膨れましたね。』


「今、あちこちで解約してます。
なので、手元の現金はもう少し増えます。」



飯田の言葉に関羽が振り向いて頷く。
この女が先程から弓長さんばかりに話し掛けているのは、ヒルダから俺の女性関係を監視する様に指示されているからであろう。
煩わしい反面、可愛気もあるので思わずクスリとする。

その女性陣が手料理を提案してくれたが、謝絶しケータリングを頼む。



「あらぁ、遠市先生。
申し付けて下されば、幾らでも作りますのに。
社長も
《いつでもどこでも呼びつけて下さい。》
と仰っておりましたよ。」



『ははは、そこまでして頂いては申し訳ありませんよ。
さあ、森さんもいっぱい食べて下さい。
皆でのんびり食事を摂りましょう。』



…これ以上、こんな奴らに踏み込まれてたまるか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



近所のレストランのケータリングをツマミながら、後藤が23区内での宅配事情を語る。
都内には世界中から富裕層が集まっているのだが、やはり出身国によって頼み方も異なるとのこと。
話し上手な後藤の傾向分析は面白い。
(同じ富裕層でも欧米系と漢人系では思考パターンが部分部分で大きく異なる。)

寺之庄が「僕も配達員をやってみたい。」と言い出し、次の後藤の宅配を見学する流れになる。
安宅も「配達員と雑談してみたい。」と切り出したので、そちらの紹介も快諾されていた。

そんな風にゴロゴロ転がりながら他愛もない時間を過ごしていると、17時が近づき皆の表情に緊張が浮かび始める。



『皆さん。
祈りは先日十分捧げました。
下手をすると一生分の祈りだったかも知れません。

あまり祈り過ぎると聞いて下さる神様も大変でしょうから
今日からはのんびり行きましょう。』



一同笑。



『ヒロノリさん。
何か音楽って聞けます?
リラックスした状態で恩寵の時を待ちましょう。

あ、この合鴨カルパッチョ美味しいです!
かなり好みかも。』



味付けがどことなく王国風で食べやすい。
そう言えば胡桃亭でも何度か出されたな。
今度、ヒルダに喰わせてやろう。




10分前。
流れるヒーリングミュージックに身を任せる。



5分前。
敢えて姿勢は正さない。
時間に気付かないフリをして、デザートに舌鼓を打つ。



1分前。
皆も俺の意図を察してくれたのか、スマホでゲームをやったり転がっていた書籍を読みふけったり。
敢えて配当の話はしない。



《164万8874円の配当が支払われました。》



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

5496万2460円
  ↓
5661万1334円

※※配当164万8874円を取得


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



皆が硬直し虚空を凝視する。



『ああ、すみません。
うっかり箱を使う事を忘れておりました。』


突如、俺の胸元の高さに現れ、そして舞い散る日本銀行券。
派手な音が鳴り響き、床に落ちた硬貨が四方に飛び跳ねる。



『すみません。
汚しちゃって。

今、拾いますね。』



「あ、いえ。
我々が…
あ、でも勝手に触らない方がいいのか。」



『ああ、どうかお気にせずに。
皆のカネじゃないですか。』








「…はい。

さっきの遠市先生、本当に神様みたいでしたよ?」




『そりゃあ、カネをバラ撒く奴なんてみんなそう見えるでしょうw』



「ははっ、確かにw」




関羽が何か言いたそうな表情で、チラチラとこちらを見ている。
わかってるよ。
ヒルダから命令されてるんだよな?
「これ以上利害関係者を増やさせるな」
って。


…あのなあ。
増えない訳がないだろ?
近いうちに霞が関の役人に呼ばれて、遠くないうちにソイツらの上司が日参して来るよ。
或いはどちらかの死。
そんなこと、オマエが一番理解している筈なのにな。



『では皆様。
配当を支払いますので、分配をお任せします。』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】

5661万1334円
  ↓
308万1334円

※元本5300万円を返済+配当金53万を6名に支払い



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



うーーん。
まだ地球での金銭感覚が掴めないな。

俺は労せず100万円以上を増やした。
だが彼らは6名(関羽も入れれば7名)で53万だけのプラス。
相手にメリットあるのか?


『あの、皆さん。
半日拘束されて数十万のプラスですよね?
採算取れてます?

特に安宅さん。
金額が大きい分、一番リスク負われてますでしょ?
それで26万の配当…
ちゃんと採算取れてます?』



「いやいや!
26万と言ったら、新卒初任給の中央値を遥かに上回ってますよ。
それを寺之庄さんの部屋でお食事しながら頂けるなんて…

と言うか…  先程の奇跡!
本来ならアレに見物料 いや! 拝観料を支払わなければならないくらいです!」



拝観と来たか。
まあな。
異世界でもみんな祈ってたもんな。
《天からカネが降って来て欲しい》
なんて全人類(魔族含む)の痛切な願いだもんな。
俺だって拝むわ。



『後藤さんはどうですか?
少し色を付けて貰ってるとは言え
1万円だけで1日を潰すのはコスパ悪くないですか?』



「いえいえ!
逆ですよ!
御存知の通り俺は、勉強の合間に宅配員として走り回っておりました。
だから1万円稼ぐことがどれだけ大変か知っておりますし。

いや! そもそもトイチさんに対して何の貢献もしてないのに。
おカネだけ頂けた訳でしょ。
どうお返ししていいか、想像もつかないです。」



『では皆さん。
損はされておられませんね?』



皆が頷く。
それどころか口々に、「まさしく恩寵」と唱えている。

うーーーん。
現段階では気前の良い成金の域を脱してないな。
俺が地球で勝つには、もう一声、いやもう二声欲しい。
惰性で増やしていれば近いうちに敗亡するだろう。
俺は壁を突き抜けなければならないのだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



関羽が帰宅を申し出る。
と言うよりヒルダに復命するのだろう。
チラチラ見られていた弓長さんが溜息を吐いて、帰り支度を始めた。


「おうちに帰ってあげれば?」


去り際に弓長さんが一言。
死角で聞き耳を立てている関羽を意識してのことだろう。


『ええ、帰ります。
俺がこの世で愛しているのは彼女だけなので!』



納得はしていない顔のまま女性陣は去った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「リン君。
この後、どうする?」


関羽を見送った飯田に尋ねられる。


『東横に行きます。』


「え!? 東横!?」


『ちょっと顔を出すだけですよ。
さっき後藤さんともその話題になって。
皆さんも来られます?』


当然、皆が頷く。
カネの話がなかったとしても彼らは来ただろう。
だって好奇心には勝てないもの。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【所持金】

308万1334円
  ↓
308万1044円


※表参道駅から新宿駅への電車賃として290円を支払い。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



安宅がアプリで大型タクシーを呼んでいてくれたので、駅から歌舞伎町に直行。
道中、jet(山田典弘)に出逢ったので抱き合って再会を喜ぶ。


「ゴメンな。
リンがパクられる前に止めてやりたかったんだけど。
オマエ、かなりエスカレートしてたし。
ガイジン共はカメラ回したままだし。」


『いやいや!
こっちこそjetに貰った服で申し訳ないよ。
迷惑掛かったんじゃない?』



俺がそう言うとjetが一瞬言い淀む。



「…いや、俺は大丈夫だから。」



『え!?
ホントに何かあったの!?』



「大した事じゃねーよ。
シネウンコを狙ってたオッサンが
オマエの事を根掘り葉掘り聞いて来ただけ。
ほら、俺達揃いのパーカーじゃん?
相棒だと思われたらしいんだ。」


『…俺もjetのこと、相棒だって思ってるから。』



「ははは!
そのオッサンに今度逢ったらそう言ってやるよ。
俺がリンの相棒だってな!

…気を付けろ。
かなりガチ目の特殊警棒持ち歩いてる。

俺もいきなり掴み掛かられたからな。」



『ヤクザ?』



「…ヤクザではないと思う。
でもカタギでもなかった。
昔ヤンチャしてた昭和のオッサンって感じ。」



『一番タチが悪いなww』



「ホントホントww」



jetに皆を紹介しながら東横へ。
ゲーセンの植木鉢の隣に座ってロング缶で乾杯。
ストローでちゅうちゅうとストゼロを飲んだ。

途中、ツマミとしてコンビニでチキンを買う時にトイレコインの話をする。
寺之庄が目をキラキラさせながら「僕、一生の宝物にするよ!」と叫ぶ。
この人には世話になりっ放しなので、これほど喜んでくれるなら俺も嬉しい。

コンビニを出る時にオバチャンと再会したので、明るくハイタッチ。
「ウンコちゃんを懲らしめたの良かったよ!
私スッキリしたわ!」
食べ物売ってる店内で《ウンコ》とか《スッキリ》とか言うなよ。
案の定、サンドイッチを買おうとしていたオジサンに睨まれた。


「リン。
あのさあ。
俺、今から。
ふわっち撮るんだけど。

…リンもゲスト出演して貰っていいかな?
30分だけでいいから。
知名度に寄生するみたいで心苦しいんだけど。」



『ああ、いいよ。
そんなこと気にしなくていいって。』



「事件の話とかして大丈夫?」



『全然大丈夫。
jetから貰ったこのパーカー。
着たままでいいんだろ?』



「うん、そうしてくれると嬉しい。」



『ちなみにjetが今着てるパーカーは、ここにいる江本さんから貰った服。
あ、エモやんさん、言い遅れたけど
勝手に服を交換してゴメンね。』



エモやんは思わず吹き出して、jetと軽くグータッチする。



  「江本さん。  後でLineいいっすか?」


  「ええ、配信終わったら交換しましょう。」



俺はjetと並んでライオン像にもたれ掛かる。
ライオンズクラブの理念に合致しているのか相反しているのかは分からない。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【緊急配信】 東横にガルパン少年(リン君)来たる!  [雑談]



「あ、繋がってる?
みんな聞こえてるー?

はーいjetでーす。
ははは、こんちはー。
タヌぴょん久しぶりー。
リョウタさん、ボンボン3つありがとー!
おっ、ぐっさん!
この前はどうもーww

はい。
今日は先程Twitterで告知した通り
俺の相棒のリンが遊びに来てくれたからね。

はーい、はじめましての方はフォローお願いします。
インスタメインなんで、そっちを見て貰えればうれしいでーす。

えっとリン君釈放されたの?」



『うん。
当面はおとなしくしてるつもりだけど。』



「うおっ! コメント凄っ!
読み切れないって!
春曲丼さん、いいね×3感謝ですー!

えっと、改めて。
ガルパンことリン君でーす!」



『ガルパン?』



「え? 知らない?
リンのあだ名、ガルパンで固定されてるよ?

あ、匿名さん原石×3感謝でーす!」



『え?
それ初耳。』


「あーゴメンゴメン
先にそっちの説明した方が良かったな。

あ、コメ欄あざっす。
リンの動画、勝手に拡散されたじゃない?」



『されたねー。』



「ほら、そのタイトルがGIRLS und PUNCHERじゃん?」



『ああ、そんな感じだったか。』



「これ映画か何かのパロディみたいなんだけど。
みんな略してガルパンって呼んでるのね。

あっ、ホライゾンさんコメントありがと。
へー、そういうアニメがあるんですね。

リン、そういうアニメがあるんだって。
それでいつの間にか動画じゃなくて、リンがガルパンって事になったみたい。」



『ほーん。』



「あ、やっぱり批判コメント多いな。
リコ姐、《女子を殴るなんてサイテー》。
猫山猫子、《DV男は日本の恥》
やっぱり女性視聴者はかなり嫌がってるね。

何かコメントある?」



『いや、私もそう思います。
女性に暴力を振るうなんて最低ですよね。』



「お?
予想と違う回答来たね。」



『どんな回答予想してたのww』



「あ、またコメント
たぬき99号さん、《謝れ》
いや、謝れって。」


『すみませーん。』


「早っ、軽っ。
俺の相棒、こういうノリなんですよ。
実際会って話したら、結構情に篤いタイプなんだけどねー。

あ、原石×3.
スービエさん、いつもありがとー。

あっくんのママさん《暴力男消えろ!》
ポレポレさん、《二度とDVしないって約束しろ!》
みんな言葉がキツイね。
リン的にはどう?」



『未来の約束は出来ません。
私はその場その場で最適と考える行動を選択します。
無論、DV行為は論外ですし、私も激しく憎んでおりますが、
それによって自身の行動を制限することはありません。』


「うおー、マジレスしたw
なあ、前から思ってたけどリンって政治家の息子か何か?
妙に喋り慣れてない?」


『政治家って言うか…
成り行きで宗教活動の手伝いをした事があって。
その時に、結構人前でスピーチとかしたのね?
多分、その所為じゃないかな。』


「ああ、宗教…
いきなりディープな話になったな。
ああ、でも分かるわ。
リンってお坊さんみたいな話し方する時あるからな。」



『そう?』



「うん、説教臭いw」



『ゴメンw
お巡りさんにも《その喋り方やめろ》って言われたw』



「警察を説教したら駄目だろww
あ、コメント《DVとカルトでツーアウト》って書かれてるぞ?」


『いや、DVの時点で一発退場でしょ。』


「おお!
リンってそういう価値観だったんだな。
俺、もっとオラオラ系を想像してた。

あ、ヨーチンさん。
この間はコラボありがとうございましたー。」


『えー?
そんな印象?』


「うーーん、その顔の傷だしね。
やっぱり好戦的な雰囲気出てるよ?」


『まあねえ。
未だに夜中に鏡を見てビビるもん。』


「え!?
自分で驚くの!?」



『夜中にこんな顔見たくないよーww』


「あはははw

あの、これ皆から聞かれたんだけど
殴ってたのはカノジョ?
付き合ってるの?」



『いやあ。
付き合って、と言われて。
期限付きならOK、とは答えたよ。』



「それ一番付き合ってる奴!
高校の頃のクラスメートでしょ?
その頃から付き合ってたの?」


『いや、学校の頃はあんまり覚えてないんだけど。
あー、でも言われてみればあんな子も居たかなって感じ。
髪型変わってたからわからなかった。
ほら、学校ってみんな制服じゃん?
外で会ってもわからないよ。

俺、背の高い子が好みだし。
たまたまあの日再会して。
折角だし付き合う?
みたいな流れ。』


「うおー、DV騒動の裏にこんな青春秘話w」


『青春かなーw?』


「どうすんの?」


『ん?』


「いや、コメ欄でも意見分かれてるけど
まだ付き合うの?
俺は止めといた方がいいと思うけど。」


『いやー、何も考えてなかったな。
あー。 でも、相手が生きてるなら怪我の治療費?
そういうのは出してもいいいかな。
まあ、向こうが困ってるなら何とかしてやるよ。』


「あ、コメ欄更に荒れだしたw
あっくんのママさん、《DV男の典型的な手口》
だってさ。」


『あー、そういうものなんですねー。
DVは良くないですねー。』


「うわっ、コメントの躱し方が妙に慣れてるw
流石お坊さんww」


『坊主への風評被害w

はい、全世界の宗教屋さんへ。
私は貴方達が大嫌いですが、迷惑を掛けたみたいなので謝罪します。
ごめんさーい。』


「ああ、やっぱりリンって攻撃的だよね。
最初会った時からコイツはヤベーって思ってたわ。

あ、コンニャク酒場さん、10個投げ感謝でーす。」


『え?
攻撃的かなー?』


「皆言ってたよ?
人殺してそーって。」


『えー?
殺してないと思うよー。』


「あ、一番ヤバい答え方キタ!」


『ヤバいかなー?』


「この部分だけ切り取られてつべのショート動画で拡散される未来。」


『未来見えた?』


「この未来はみんな見えてると思うよ?
見えてないのリンだけ。」


『マジかー。
俺もまだまだ修行足りないなー。』


「あ、また修行とか言ってるww
シンコーシューキョ―w シンコーシューキョ―w」


『そんなのじゃねーよーww』


「あははは、何か宗教っぽいのやってよ♪」


『どうせ、それも切り取られるんだろ?』


「画面の前で100人くらいがスクショスタンバイしてる筈w」


『マジかー。
世も末だなー。』


「どうする?」


『カネカネカネカネナンマイダー。』


「うおっ!?
何それ?

え? なんて?
カネ?」


『うん、おカネのカネ。』


「悪徳宗教きたーーーwww
グッズとか買わされそうww」


『別に売らねーよww』


「それ、何てシューキョー?
最近のカルト?」


『えっとねえ。
神聖教って言うんだけど。
holyの神聖ね。』


「滅茶苦茶うさんくさーいww」


『俺も最初名前聞いた時にドン引きした。』


「え?
でも入信したんでしょ?」


『いや、寄付を強要されたから幾らか恵んでやっただけ。
そしたら感謝されて勝手に役職とか称号とか押し付けられた。』


「うおーーw
宗教こえーーーwww

あ、フカピョンさん。
原石×3ありがとうございます。

なあリン。
俺もその宗教入った方がいいw?」


『やめとけww』


「ははっ、ありがと。
じゃあ念仏だけ付き合うわ。

えっと。」


『カネカネカネカネナンマイダーww』


「うははww
聞けば聞くほどヤバいってww
カネカネカネカネナンマイダーww
あ、コメント欄でも一斉書き込みしてくれてる!」


『みんなおカネ好きだからねー。
いや、ぶっちゃけ好きでしょ?』


「おっ、コメント欄。
おカネの話になった瞬間に、盛り上がってますねー。

よっぴーさん、《好きにきまってるだろ。》」
たぬき072号さん、《ちゅき♪》
あっくんのママさん《政府のシンママ支援が全然足りない》
ははは、それはソーリダイジンに言ってやって下さいよw」


『足りないって…
毎月幾ら位必要なの?』


「うーん20万とか?
おっ。
あっくんのママさん、《最低50万なければ生きていけない!》
とのことです。
相変わらず欲張りだなー。」


『まあ、50万くらいなら。
妥当な要求じゃない?』


「え!?
マジ!?」


『うん。
まあそんなモンじゃない?

カネに余裕が出来たら1人10億くらいはプレゼントするよ。』


「うはーーーーーwww
流石はシューキョ―ww
釣り方エグイよね。

あっくんのママさん《カネカネカネカネナンマイダー》
早速入信しとるやんけwww

うおっ、入信コメント来た。
あ、悟ボールさん原石×3ありがとうございます!

お布施って書くなww
これ以上運営に目を付けられたらヤバいからww」


『あのー。
俺、宗教嫌いなんで。
マジにならないで下さいね。

別に感謝とか入信とかいらないんで。』


「あ、コメント来たね。
《検索しても神聖教なんて無かった。 詐欺じゃん。》
って質問あるけど。」


『アナログな業界だからねえ。
俺もスマホ持ってないし。』


「それな。
俺もリンに連絡取れなくて困ったよ。
えっと、とりあえず今日一緒にいる人達とLine交換しとくから。
オマエに繋がるんだよな?

早くスマホ確保してくれよー。」


『ゴメンゴメン。
俺、銀行口座持ってないからさ。
スマホの契約も難しいんだ。』


「えー、マジかー。
うおコメント欄、マリッジピンクさん。
《反社が正体現した》
ってさ。」


『あー、やっぱり口座持ってないと
そういう扱いされるよな。』


「地方の信金とかなら作ってくれるだろ。
神奈川だっけ?」


『うん、地元神奈川。』


「ちょっと調べとくから。
まずは口座くらい持っとけって。」


『あーい。』


「あ、井上カーズ彦さんがコメントで説明くれた。
《最近は反社チェック厳しいのでガルパン君の場合はメガバンクかなり難しいかもです》
とのことです。
いつもコメントありっす!」


『配信って結構みんな見てるんだな?』


「いやいや!
いつも過疎ってるよ?

同接40前後だもん。
でも今日最大同接521でしょ?
ふわっち的にはランキング上位の数字。

間違いなくリンの人気だわ。」


『えー、批判コメントばっかりだったじゃない。
それって人気かー?』


「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心だよ。
あ、コメント。
長崎奉行さん《おれは嫌いやで》
ははは、厳しーw」


『いや、配信面白いね。
スマホ買ったら誰でも出来るの?』


「出来る出来る!
リンならすぐに登録者数増えるって。
折角バズってるんだから、今始めなきゃ!」


『うーーーん。
わかった、早めにスマホを用意してみるよ。』


「はははw
東横収録、期待してるよー。」


『おっけーw』


「じゃあ、そろそろ時間か…
はい、今日は無理言って出演して貰っただけだから。
今日は延長なし。
リンもそれでいいな?」


『うん、ちょっと疲れたかな。
初配信で緊張したし。』


「嘘だぁーーww
オマエ、滅茶苦茶冷静だっただろーーww
取調室でもそんな顔してたの?」


『あー、してたかも。』


「そりゃあ警察も怒るわww」


『はははw』


「はい、それじゃあ。
今日は色々とありがとうござました。

あ! 寝取られウサギさん!
原石×3感謝です!!

それでは本日のゲストは!
ガルパンことリン君でしたーーーー!!!!

どうも、ありがとうございましたーーー!!」


『どもでした。』


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


jetが配信画面を切り、SNSをチェックし始めた。


「おつかれーっす。」


『お疲れ。』


「リンは凄いな。
配信経験あり?」


『いや?
ガルパンした日が初めてだけど。』


「妙に喋り慣れてた!
俺なんか始めた時は噛み噛みですぐに配信切っちゃったからね。
絶対リンは才能あるよ!」


『ありがと。
あんまり才能とか褒められたことないから、嬉しい。』


「結構マジな話なんだけどさ。
スマホ用意して、配信者になれって。
オマエならてっぺん獲れるから。」


『参ったな。
スマホ買うまでに天下獲っちゃう予定だから。』


「それそれ!
そのビッグマウスがcoolなんだよ!
絶対需要あるって!」


『あんまり真正面から褒めるなよ~
照れるww』


「あはは!
コイツ赤面しとるww」


相棒と拳を合わせて再度乾杯。
心地良い疲労感に酔う。


同行してきたメンバーが拍手してくれる。


「お疲れー。」
「プライバシー晒しすぎw」
「カネカネで爆笑しちゃったよw」

『どもども、お見苦しいところを。』


5人とも地べたに座ってリラックスして配信を眺めてくれていた。
概ね不評。
プライバシーがノーガード過ぎ、とのこと。
向こうの方でアルコール中毒で倒れた者がいたらしいので、清磨さんが介抱に向かった。

俺が一息吐いていると、ふと眼前に人影が差す。


「こんにちゎぁ♡」

『あ、ども。』


売春婦だろうか?
歌舞伎町だけあって積極的だな。


「さっきの配信、すてきでしたぁ♡
まゅカンドー♪」


『ああ、ども。
ありがとうございます。』


「まゅゎぁ♡
まゅゎぁ♡
アイツをボコってくれたのを見てぇ♡
リンきゅん♥に推し変したんですぅ♡」


『え? あ、はい。』


「ずっと探してたんですけどぉ♡
全然見つからなくてぇ、きゃはっ♡
だが、運命! ってカンジ♥」


『え? え? え?』


  「失礼します。
  トイチさんですね?」


『あ、はい。』


  「私はこちらの伊東まゅまの友人の佐々木と申します。」


『あ、これはこれは御丁寧に。』


  「こちらの伊東が是非トイチさんとゆっくり話したいと申しておりまして。」


『な、なるほど。』


「もーーー、さゆっち保護者かっつーの!

リンきゅん♥
まゅとぉ♡
ラブラブしよ♥」


『あー、いや。
今から別件ありまして。』


「え゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!!
ヤダーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


『申し訳ありません。
私も団体行動で動いているものですから。

えっと、それでは佐々木さん、もう行って宜しいですか?』


  「あの!」


『はい?』


  「伊東と連絡先だけでも交換して頂けませんでしょうか?」


『あーいや、配信でも申し上げましたが
私、スマホを持って無いんですよね。
住所もありませんし、交換と仰られましても。』


  「私、jet君とは相互フォロー関係にあるのですが!
   jet君経由なら連絡可能ですか!?」


『あ、いや。
ここに居る江本さんとjetが連絡先を交換しているみたいなのですが。』


  「江本です(ペコリ)」

  「佐々木です(ペコリ)
  jet経由で連絡OKですか?」

  「うーーん。
  まあ、合間程度でしたら。」

  「ご迷惑をお掛けするかも知れませんが。」

  「…俺は構いませんが
  あまりjetさんに負担を掛けない様に配慮して下さいね?」
  
  「ありがとうございます。」

  「jetさんに迷惑が掛かっていると判断した場合  
  切って貰いますから。
  そこは理解しておいて下さいね?」

  「承知致しました。」


「も゛ぉーーーーー!!!
さゆっちどうなったの!!」


  「jet君が繋いでくれるって事だから
  ちゃんとお礼を言って来なさい。」


「え゛ーーーーーーーーーー!!!
まゅ感謝されるのは好きだけど感謝するのはイヤー!!」


  「いい子にしてないとトイチさんに連絡してあげないよ。」


「ぴえーーーーーーーーーーーーん。
ピエピエピエピエピエ♪」


『…。』


  「それでは失礼します。」


『…どうも。』



取り敢えずエモやんに平身低頭して謝罪する。
何か全ての負担がこの男に向かってるよな。


「まあまあ、ヒロイン増えて良かったですやん。」


『エモやん、あの子いります?』


「…佐々木さんの方なら。」


『あの子は?』


「いやあ、一応謹慎中ですので。」


だよな。
俺でもそう答えるわ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


後藤達が広場からやや離れた場所から呼んでいる。
どうやら帰りのタクシーを呼んだらしい。
確かに随分夜も更けて来たしな。
もう見学は十分だろう。


俺がjetと拳を合わせて別れを告げ広場から出ようとすると、背後がざわついている。
何気なく振り返ると、女共が誰かを罵倒したり空き缶を投げつけたりしている。

その人垣を突き抜けて、奇妙な影が…
顔中に包帯を巻いた…
あの独特の背筋が曲がったシルエットは…


鷹見夜色!?


「ダーリン様ぁ!!!!!!
やっぱりウ↑チ↓を迎えに来てくれたんですね!!
ですねですねですねええええ!!!!」


『え? え? え?』


物凄いスピードで走って来た鷹見は両脚を大開脚して飛び掛かって来た。


「しゅきぃ♡
しゅきぃ♡
しゅきしゅきしゅき♥
もう離れない
しゅきしゅき大しゅきぃホールド!!!!」


『ちょ?』


押し倒されて背中を打つ。


『い、痛い。』


「ずっと逢いたいと思ってました。
世界の屑共もウ↑チ↓らを祝福してくれてます。」


『いや、アレは単なる批判なのでは?』


「そーゆーcoolなダーリン様がしゅきぃ♡」


同意なくキスされる。
寿司か何かを喰った直後なのだろう。
少し生臭い。


取り敢えず起き上がる。
その瞬間に空き缶(3割位中身が入っていた)をギャラリーからぶつけられる。


  「あ、ガルパンに当てちゃったw」

  「ちょっとw ちゃんとシネウンコに当てろよーw」


相変わらず鷹見は女子勢から憎悪されているらしい。
まあ、コイツは勝手に人を盗撮して悪口ナレーションを付けて動画化してるからな。
エモやんに見せて貰ったが筆舌に尽くしがたい酷さだった。
まだ殺されていないのが不思議なくらいである。


「うーーーーーーーーーーーん♡
雑魚メス共の嫉妬がきんもちいいよぉおお♥
全世界の弱者女性の皆さぁ~ん♪
御自分の腐ったゴミ羊水にブッサい顔面突っ込んでぇ♡
苦しみもがきながら無間地獄に堕ちて下さいねぇ~♡
ウ↑チ↓は真実の愛を掴み取りましたぁ♡
ましたぁ♡ ましたぁ ましたぁ↑♥」


『相変わらずだな。』


「ダーリン様!
さっきの動画見ましたッス!」


『あ、ども。』


「背の高い女子が好みって言いいましたよね?」


『えー、そんな話したかなあ。
ああ、でも高いのと低いのとなら、俺は高い子派かな。』


「身長182センチッッ!!!!!」


『え?』


「ウ↑チ↓182ッス!!!!」


『あ、うん。
男子に混じっても高い方だよね。
俺、身長コンプあるから羨ましいわ。』


「あの発言!
ウ↑チ↓を思い浮かべてのことですね!!」


…ゴメン、多分そういう場面ではヒルダを思い浮かべるんじゃないかな?


「あのシーンで絶頂しました。
厳密に言えば回転寿司屋で失禁しました。
垂れた小便が隣の半グレみたいな人の鞄に掛かって
思いっきり蹴られました。」


『そっか。
飲食店では清潔を心掛けようね。』


「これは運命なんですよ、ダーリン様。」


『運命?』


「この広い宇宙で!!
たまたま同じ国、同じ県、同じ市の同じクラスメートになり!
虫けら共が惨めに死に絶えて、残った高貴なるウ↑チ↓ら2人!!!

…現代のアダムとイヴッス!!!」


『ええ、そうかなぁ?』


「ダーリン様は私と結ばれる義務があります!」


『え? あるの?』


「だってクラスのゴミ共が豚みたいに泣き喚きながら不様に散体していったんですよ?
残った私達が子供を産みまくって補充しなけりゃ、供養が出来んでしょうが!!」


『え? いや、その理屈はおかしくないかな?』


「ダーリン様はニュースとか見ない人ですか!!!
ちゃんと国会中継見てますか!!!
少子化問題を解決する為に省庁まで出来たんですよ!!!」


『…それは単に国務大臣の席を増やしたかっただけじゃない?
そのうち厚労省に吸収されるでしょ。』


「あーーーーもう!
あーーーーもう!
ダーリン様のそういう小並感がちゅき♥!!

愛してます!」


『…頭、大丈夫か?』


「はい!
来月には包帯もパージ可能だそうです!!」


『…そっか。

病院の治療費、幾らくらい掛かった?
俺、払うわ。』


「キュン♥
塩対応からの急な優しさッ♪
ダーリン様ってDVの才能ありまぁしゅ♥」


『そうかな?
俺、暴力は嫌いなんだけど。』


「ああ、ヤバいッス。
この人マジモンの屑っス。
そこに惹かれるぅ♡
沼るぅ♥」


『屑?
俺は純粋な正義だが?』


「はぁあああ♥
ゴミ特有の根拠なき自己肯定感♥
ポイント高いですねーー♥」


『?
そうか、ありがとう。』


「ねえ、ダーリン様♥
ホテル、行きましょッス♥
それも今すぐに。」


『え?
駄目駄目、友達を待たせてるから。』


「あああん♥
塩対応♥
そこがしゅきぃ♡
ねえ、しぇっくしゅちまちょうよー♥

クラス転移で地獄に落ちたゴミ屑共を
ダブルピースで見送ってやりましょうよぉ♡

っぷw
思い出してまた爆笑モードに切り替わったww

いやあ、それにしてもダーリン様♥
クラスメートが死ぬって気持ちいいですねぇ♡
あ、担任も殺さなきゃ♪

うーーーん。
大嫌いな虫ケラ共は惨めにくたばったし。
最愛のダーリンとも結ばれたし」


『いや、結ばれてはないが。』


「んーーーーーーーー♥
最高ッ------♥

あっ♥ 世界ランキング上昇に伴う~、勝利宣言ッ~♪
ラッキー、ハッピー、トゥルーエンド!!!
鷹見夜色物語ッ、完!!!!! ぶい♥ぶい♥」


鷹見が両手を高々と突き上げ、わざと顎をしゃくらせながらダブルピースの態勢に入った時だった。



「望み通り終わらせたるわああああ!!!!」



突如真横から走り込んで来た男が何かを振り被った。


   「…気を付けろ。
   かなりガチ目の特殊警棒持ち歩いてる。」


鷹見の頭にそれが振り下ろされる瞬間。
不本意ながら身体が動いてしまった。


『逃げろ!!!』


「え?」


鷹見と身体を入れ替えた真正面。
憎悪の表情で今まさに凶器を振り下ろしている壮年の男がいた。


「ブチ殺したるわあああ!!!!!!!」


思わず息を呑む。
おかげで半秒、警棒から頭部を護るのが遅れる。


男の表情は憤怒に満ちていたが、それでも端正な顔のパーツを見た瞬間。
何故か思い出してしまった。
或いは再会を切望していたからかも知れない。


『平原?』


どぐちゃッ!





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






【名前】

遠市 †まぢ闇† 厘



【職業】

詐欺師
自称コンサルタント
祈り手



【称号】

GIRLS und PUNCHER



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)

《LV》  3
《HP》 疲れやすい
《MP》 ずっと悪だくみ可能
《力》  女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 ?
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧

《経験》 30 (仮定)


※キョンの経験値を1と仮定
※ロードキルの有効性確認済



【スキル】

「複利」 

※日利3%

新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。



【所持金】

所持金308万1044円

※但し警視庁が用意した旧札100万円は封印、タイミングを見て破棄するものとする。



【所持品】

jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ 
寺之庄コインケース
奇跡箱          
コンサル看板 



【約束】

 古屋正興     「異世界に飛ばす」
 飯田清麿     「結婚式への出席。」
〇         「同年代の友達を作る」
〇後藤響      「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」
 江本昴流     「後藤響を護る。」
×弓長真姫     「二度と女性を殴らない」
          「女性を大切にする!」   
〇寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行く」
×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」
 中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入する」
〇堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教える。」
〇山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮る」
 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会う!」
 警視庁有志一同  「オマエだけは絶対に逃さん!」
 安宅一冬     「浅草寺周辺を一緒に散策する。」

〇鷹見夜色     「俺が護る」
 
ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる。」
          「王国の酒を飲ませてやる。」
          「表参道のスイーツを喰わせてやる。」 










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