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6 尽くします
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あてがわれた自室に通されると、シリカは思わず目を見開いた。
華美な天蓋つきのベッド、豪華な家具に、クローゼットには幾つものドレスが入っていた。
通常の王妃の部屋というにはやや物足りないだろうが、それでもロンダリアの状況を考えればこれはかなり優遇されていると言える。
聖女の時はやや手狭な部屋だったし、家具や衣装は質素なものだった。
しかも服は白ばかりで、飾りっけは一切なかった。
不満があったわけではないが、予想以上のおもてなしに自然と高揚した。
ヴィルヘルムの寝室も同じ、いやそれ以上の部屋なのだろうが。
シリカが部屋を見回していると、クラウスが声をかけてくる。
「こちらがシリカ様の部屋です。お食事は二時間後。沐浴はいつでも可能でございます。外出時には私クラウスに御声掛けください。他に何かあればこちらの侍女アリーナにお申し付けください」
「わかりました。ありがとうございます」
アリーナとクラウスは同時に一礼すると、すぐに部屋を出ていった。
しんと静まり返った私室。
どっと疲れが押し寄せ、自然とシリカはベッドに倒れ込んだ。
「ふわぁ……疲れたぁ……」
こんな寝方をしたら聖女補佐官であるソフィーに大目玉を食らうだろう。
もう彼女はいないのだから、そんな心配はいらないのだが。
(教団の皆は元気かしら……)
ソフィー以外にも侍女や護衛、聖神教徒の人々と、多くの人間に関わってきた。
突然シリカがいなくなり、何も思わずにはいられないはずだ。
いや、そうであって欲しいとシリカは考えてしまう。
物心ついた時から共にあった人たちが、少しでも自分のことを思ってくれていたら、それだけで嬉しい。
もう会うことはできないけれど。
シリカは仰向けになり天井を見上げた。
(聖女ではなくなった私との結婚なんて、陛下はお望みではないはず。それでも教団には逆らえなかったのでしょう……私が巻き込んでしまったのね)
聖女であったシリカに縁談を持ちかけてきたのに、元聖女がやってきたのだから、ヴァルヘルムからすれば厄介払いされたと感じるのが当たり前だ。
しかしそれでもヴァルヘルムはそんな感情をおくびにも出さず、婚姻を受け入れると言った。
それは縁談を申し出たという立場からの責務か、あるいはあまりに不憫で放っておけなかったのか。
教団から押し付けられたとなれば、多少はぞんざいに扱うだろうし、もう少し毛嫌いしてもよさそうなものだ。
しかし彼にそんな素振りは微塵もなかった。
それはヴァルヘルムという王は、噂で聞くような不遜な男ではない、ということの証左でもあった。
先ほどのヴァルヘルムの顔を思い出す。
病的に痩せており、目に光がなく、表情も乏しく、力強さはなく、世間一般的には魅力的な男とは程遠い容姿だった。
しかしシリカにそんな考えは微塵もなかった。
彼と結婚するのは嫌ではない、そう思ったほどだ。
その感情の出所が何かは、シリカ自身にもわかっていない。
一目惚れとは違う。
恋とも違う気がする。
では一体なんなのだろうか。
「……ああ、もう! 考えるのやめやめ! 性にあってないわ!」
そもそもシリカはぐじぐじするより行動するタイプだった。
無駄なことは考えない。考えてもわからないなら行動する。
シリカは立ち上がるとグッと拳を握った。
「せっかく王妃になるんだから、陛下と国に尽くすの! それが私の務めなんだから!」
どうせやることは変わらないと、シリカは大きくうなずいた。
「まずは陛下のことを知る! そして国のことを知る! そのあと、自分がすべきことをする! うん、これだわ!」
単純明快。半ば猪突猛進的な考えに、シリカは自信満々のしたり顔を浮かべた。
「さて、荷物を整理しようっと」
侍女のアリーナを呼ぼうかと少し迷ったが、小さな荷物を片付けるくらいで呼ぶのは憚られたため、さっさと自分でやることにした。
華美な天蓋つきのベッド、豪華な家具に、クローゼットには幾つものドレスが入っていた。
通常の王妃の部屋というにはやや物足りないだろうが、それでもロンダリアの状況を考えればこれはかなり優遇されていると言える。
聖女の時はやや手狭な部屋だったし、家具や衣装は質素なものだった。
しかも服は白ばかりで、飾りっけは一切なかった。
不満があったわけではないが、予想以上のおもてなしに自然と高揚した。
ヴィルヘルムの寝室も同じ、いやそれ以上の部屋なのだろうが。
シリカが部屋を見回していると、クラウスが声をかけてくる。
「こちらがシリカ様の部屋です。お食事は二時間後。沐浴はいつでも可能でございます。外出時には私クラウスに御声掛けください。他に何かあればこちらの侍女アリーナにお申し付けください」
「わかりました。ありがとうございます」
アリーナとクラウスは同時に一礼すると、すぐに部屋を出ていった。
しんと静まり返った私室。
どっと疲れが押し寄せ、自然とシリカはベッドに倒れ込んだ。
「ふわぁ……疲れたぁ……」
こんな寝方をしたら聖女補佐官であるソフィーに大目玉を食らうだろう。
もう彼女はいないのだから、そんな心配はいらないのだが。
(教団の皆は元気かしら……)
ソフィー以外にも侍女や護衛、聖神教徒の人々と、多くの人間に関わってきた。
突然シリカがいなくなり、何も思わずにはいられないはずだ。
いや、そうであって欲しいとシリカは考えてしまう。
物心ついた時から共にあった人たちが、少しでも自分のことを思ってくれていたら、それだけで嬉しい。
もう会うことはできないけれど。
シリカは仰向けになり天井を見上げた。
(聖女ではなくなった私との結婚なんて、陛下はお望みではないはず。それでも教団には逆らえなかったのでしょう……私が巻き込んでしまったのね)
聖女であったシリカに縁談を持ちかけてきたのに、元聖女がやってきたのだから、ヴァルヘルムからすれば厄介払いされたと感じるのが当たり前だ。
しかしそれでもヴァルヘルムはそんな感情をおくびにも出さず、婚姻を受け入れると言った。
それは縁談を申し出たという立場からの責務か、あるいはあまりに不憫で放っておけなかったのか。
教団から押し付けられたとなれば、多少はぞんざいに扱うだろうし、もう少し毛嫌いしてもよさそうなものだ。
しかし彼にそんな素振りは微塵もなかった。
それはヴァルヘルムという王は、噂で聞くような不遜な男ではない、ということの証左でもあった。
先ほどのヴァルヘルムの顔を思い出す。
病的に痩せており、目に光がなく、表情も乏しく、力強さはなく、世間一般的には魅力的な男とは程遠い容姿だった。
しかしシリカにそんな考えは微塵もなかった。
彼と結婚するのは嫌ではない、そう思ったほどだ。
その感情の出所が何かは、シリカ自身にもわかっていない。
一目惚れとは違う。
恋とも違う気がする。
では一体なんなのだろうか。
「……ああ、もう! 考えるのやめやめ! 性にあってないわ!」
そもそもシリカはぐじぐじするより行動するタイプだった。
無駄なことは考えない。考えてもわからないなら行動する。
シリカは立ち上がるとグッと拳を握った。
「せっかく王妃になるんだから、陛下と国に尽くすの! それが私の務めなんだから!」
どうせやることは変わらないと、シリカは大きくうなずいた。
「まずは陛下のことを知る! そして国のことを知る! そのあと、自分がすべきことをする! うん、これだわ!」
単純明快。半ば猪突猛進的な考えに、シリカは自信満々のしたり顔を浮かべた。
「さて、荷物を整理しようっと」
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