透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

文字の大きさ
82 / 252
第三章 子供たちと隠れ里

082 シュトル王国の子供たち

しおりを挟む


 王都は国の中心部だけあって、規模も大きく人も多い。人間族が中心となって治めているシュトル王国も決して例外ではなく、今日も賑やかな声があちこちで絶え間なく響き渡っている。
 子供たちが集まる広場は、その筆頭だと言えていた。

「あ、ジェイラスが来た!」

 整えられた金髪に眼鏡をかけた少年が、ゆっくりと向かって来る緑髪で大柄な少年の存在に気づいた。
 それに続いて、その場にいたほかの三人も振り向く。

「なんか、ちょっとボロボロに見えるような……」

 銀髪で大人しい印象の強い少女が、不安そうな表情を浮かべる。

「なんとなく想像はつくけどね」
「あぁ、そうだな」

 呆れた表情を浮かべる赤髪の少女に続いて、青髪で整った表情が特徴的な少年も苦笑気味に頷く。

「よぉ、ジェイラス。またケンカしてきたのか? 今回は手酷くやられたな」
「あぁん? うっせぇよアレク! こんなのどうってこたぁねぇんだ!」

 青髪の少年アレクに、大柄な少年ジェイラスが、喧嘩腰の口調で返す。それに対してこれ見よがしに深いため息をついたのは、赤髪の少女であった。

「こりないわねー。よくもまぁ、そこまで殴り合えるもんだわ」
「メラニーに同感だね」
「……ゴメン。サミュエルにだけは、同感されたくない」
「なっ、なにおう?」

 赤髪の少女メラニーに、金髪の少年サミュエルが突っかかる。しかし微妙に腰が引けており、如何せん迫力に欠けていた。
 そんな中動き出したのは、銀髪の少女であった。

「はい、ジェイラス。練習がてら作ったポーションで良かったら……」
「悪いなリリー。全然助かるぜ」

 ジェイラスはポーションを受け取りながら、銀髪の少女リリーにニカッと笑みを浮かべる。問題ないという意思表示も兼ねていたのだが、その傷はやはり生々しいと言わざるを得なかった。
 しかしそんな心配そうにするリリーをよそに、ジェイラスは勢いよくポーションを飲み干していく。

「――ぷはぁっ! 体に染み渡るぜ。リリーの錬金の腕も、また少し上がったんじゃねぇのか?」
「そりゃ上がるってもんでしょ」

 酒を飲んだ親父のような反応を示す彼に、メラニーがため息をつく。

「今までアンタがケガする度に、リリーがポーション作ってきてたんだから」
「皮肉にもいい練習にはなってるよな」
「んだとぉっ?」

 メラニーとアレクが立て続けに居れたツッコミに、ジェイラスが突っかかる。ガキ大将らしく拳を構えてのことあったが、これもまたいつものことであり、二人は全く臆していない。
 仮に本気で殴り掛かられても、対処のしようがあるからでもあったが。

「はいはい、その拳をしまいなさいっての。あたしだってアンタに魔法なんか使いたくないんだからね?」
「俺も、お前相手に戦うマネだけは勘弁願いたい。これでも大切な幼なじみだと思ってるんだからな」
「――くっ!」

 ばつが悪そうな表情を浮かべ、ジェイラスが視線を逸らす。
 魔導師の適性を得たメラニーと剣士の適性を得たアレクの実力は、子供たちの間でもかなり有名であった。
 二人とも高い【攻撃色】に恵まれ、将来の冒険者は確実だとも言われている。
 無論、アレクとメラニーもそのつもりであった。そしてそれは、この場にいる五人の共通している目標でもあった。

「一応言っておくが……お前も程々にしておけよ、ジェイラス?」

 腕を組みながらアレクが言う。

「俺たちは皆で冒険者になるんだ。問題ばかり起こしていると不利になるぞ」
「そーそー。少しは僕みたいに平和主義にならないとね♪」

 人差し指を立てて、弾むような声を出すサミュエル。あからさまに調子に乗った態度を見せたのがいけなかったのだろう。
 それに対してジェイラスは、一瞬にして苛立ちの表情と化した。

「あぁんっ!? うっせぇんだよ、テメェは!」
「ひぃ!」

 荒ぶる声にサミュエルは情けない声を出し、尻餅をついてしまう。その姿もまた毎度のことであり、よくもまぁ繰り返すもんだと言わんばかりのため息が、アレクたちの口から漏れ出るのだった。

「それぐらいにしておけ、ジェイラス。今日皆で集まった目的を忘れたのか?」

 呆れた表情でアレクが言うと、ジェイラスは拗ねた表情でそっぽを向いた。

「……忘れてねぇよ。もうすぐ始まる課外活動のことで話し合うんだろ?」

 冒険者を目指す子供たちのための学校――通称、冒険者養成学校に、アレクたちはもうすぐ入学しようとしていた。
 十二歳を迎え、適性鑑定を受けた子供たちが試験を受け、それに合格すれば入学の資格が与えられる。それから数年間の訓練を受け、無事に卒業できれば、冒険者ギルドへの登録試験の免除と、初期ランクの上乗せが成されるのだ。
 更に卒業資格なしでいきなり登録した冒険者に比べると、ランク昇格試験へのステップが大幅に緩和されることでも有名である。
 早い話が、冒険者ギルドのエリートコースみたいなものである。
 もっとも危険と隣り合わせである冒険者を育成する学校なだけあって、卒業はおろか進級ですら容易ではない。貴族や平民も関係なく、金を積めばなんとかなることも決してあり得ない。
 危険な世界へ飛び込む者に甘い汁は吸わせない――それを知らずに気楽な気持ちで養成学校に入学してくる子供たちも、決して少なくないのが現状であった。
 アレクたち五人も、それは十分に心得ていた。
 絶対に五人で卒業しよう――そう決意を改めて固める意味も兼ねて、こうして集まっているのだ。

「僕たちは五人とも無事に養成学校に合格した。そして入学前に、合格者を対象とした課外活動がある――ここまではいいな?」

 アレクの問いかけに他の四人が頷き、そしてメラニーが口を開く。

「えぇ。そしてその課外活動が、事実上の最終試験だってことでしょ?」

 メラニーの言うとおり、公にこそなってはいないが、冒険者を目指す子供たちならば当たり前に知っているくらい、有名な話だったりする。
 表向きは『合格者の顔合わせを兼ねたレクリエーション』なのだが、その裏には合格した子供たちが、本当に冒険者としてやっていけるかどうかを見極める目的があるという噂が広まっているのだ。
 ギルドや王宮、そして学校でも知れ渡っている噂なのだが、今までにその噂が否定されたことは一度もない。
 つまり噂は本当だということだ――そう判断されるのも自然なことであった。
 実際、毎年この課外活動を終えた子供の何人かが、入学を辞退している。それも噂を真実と見なされる要因にもなっていた。
 そしてアレクたちも、たった一人を除いて、その噂を心の底から信じていた。

「……本当に、最終試験も兼ねてるのかなぁ?」

 そのたった一人ことリリーが、首を傾げていた。

「私たち、まだ十二歳だよ? 魔物と戦ったことすらない子供なんだよ? なのにそんな不意打ちみたいなことするとは、正直思えないけど……」
「リリーは甘いねぇ」

 そんな彼女の意見を、サミュエルが得意げにぶった切る。

「冒険者という職業は決して甘くないんだ。子供だからと言って、大人たちが容赦してくれることを期待するほうが、どうかしていると思うよ」
「そうだな。今回ばかりは、俺もサミュエルに同感だ」
「うん。流石はアレク――って、こらぁ! 今回『ばかりは』って何だよ! まるで僕がいつも的外れなことを言っているみたいじゃないか!」
「……アンタ自覚なかったの?」

 声を荒げるサミュエルに対し、メラニーが呆れた表情で呟く。もっともサミュエルは聞いていなかったが。

「まぁ、とにかくだ――」

 気を取り直すべくコホンと咳ばらいをし、アレクは改めて切り出す。

「今回の課外活動で、なんとしてでもいい成果を出すんだ! こんなところでつまずくワケには絶対にいかない!」

 拳を握り締めながら、アレクは熱弁する。仲間たちが呆然とする中、ジェイラスだけがニヤリと笑みを浮かべていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...