グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅰ

第19話 昇級①

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「面談、ですか?」

 あの任務のあと、すでに10日が過ぎた。
 オレはこの世界の魔術文明の治療魔術のおかげで数日で傷は完治し、また菅原班の一員として訓練を始めていた。
 そんなある日、オレは神田の兄、サガに検査のために呼ばれ話をしていた。

「ええ、そうなんです。前回の面談から大して日にちは経っていなんですがね」

「はあ……」

 神田兄の言葉にとりあえず相槌を打つ。

「それで、市長との面談は明日行います。10:00に市長室へ行って下さい」

(もう決定事項なわけね)

「はあ、それは構いませんが、市長室というのはどこにあるんでしょうか?」

「ああ、そういった心配は不要ですよ。今回呼ばれているのは菅原班全員ですから。菅原さんが場所は知ってますよ」

「全員? うーん、なんだろう?」

「そんなに身構えなくても大丈夫です。昇級の通知ですよ。きっと」

「昇給?」

(好きな響きだ)

「ええ、昇級です。今回の任務は予想を大きく上回る数のグールが現れました。その任務を乗り切った皆さんへの労いじゃないですか?」

「でも、そうすると山崎班の皆さんも呼ばれているんですか?」

「いえ、菅原班だけですね」

「うーん、なんだろう?」

「まあ、あまり気にせず行ってみて下さいよ」

 神田は笑ってそう言った。

「まあ、そうですね」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌日。

 菅原が市長室の扉をノックする。

 市長室はやはりというか中心部の高層ビル、20階ほどにあった。
 オレたちは警備兵とか近衛兵みたいな人たちの検問を抜けて、建物に入った。
 内部にはエレベーターもあり、現代に帰って来たように錯覚したが、エレベーターの動力は魔素であり、ビルの素材も魔術で作られた疑似コンクリートだ。
 木製の重厚な扉の向こうから返事がした。

「入りたまえ」

 市長の声がする。

「「失礼します!」」

 オレたちは部屋に入ると6人横並びになり、直立した。

「菅原班、6名、参りました!」

「そう固くならなくていい、楽にしたまえ」

 後から聞いたのだが、大河内はこの都市の軍隊のトップでもあるらしい。菅原が言う本営、その頂点が大河内というわけだ。つまり彼ははあらゆる面で都市を纏め上げる存在ということになる。

 市長室は広く、予想通りにガラス窓を背に大きな木製の机に座っている。大物の部屋はこうでなくてはならない。
 外は冬晴れの気持ちのいい眺望が広がっている。
 大河内の机の横には譲原が控えていて、オレに軽く手を振ってきた。

「はっ、ありがとうございます!」

(菅原班長、緊張してるのか? あまり見れない光景だ)

「さて、今回集まってもらったのは先日の任務について直接話を聞きたかったからだ。こちらの予想を大きく上回った数のグールが出現した。これについてどう考えているね?菅原くん」

 市長が質問をすると、菅原は身を正して答えた。

「はっ! 今回のグール討伐任務は、点滅型の大量発生、及びグール群体同士の連携により、かつてない程に追い込まれました。特に点滅型の数は異常でした。今までは点滅型が群れで潜む、ということはありませんでした。せいぜい数十体です。これは、何ヵ月も前から少しずつ、索敵に掛からないように都市に近づき、潜んでいたものと予測されます。そして前回任務において点滅型の殲滅は完了出来ていないと想定するべきかと存じます!」

(は? 殲滅できてない? 全部倒したじゃん)

「そうだな。我々本営も同じ結論を出したよ」

(え?)

「都市周囲には点滅型群体が多数潜んでいる。索敵性能を考慮すると、D級以下だとは思うが……」

 大河内が顎に手をやり、考えている。

(あれがもっといるってことか……? それはかなりマズイ状況では?)

「まずは、点滅型を発見できる索敵装置を目下、開発中だ。合わせて都市周囲の警ら任務を強化している」

「はっ! 我々には警ら任務についてのお話ですね?」

 菅原が大河内に言う。

「察しが良くて助かるよ。ところで佐々木くん」

「えっ、はい!」

 オレは突然話し掛けられて焦る。

「君は点滅型群体が潜んでいるのにいち早く気付いたそうだが、その判断はどうしてできたんだ? 通常の群体のグールと交戦中だったんだろう?」

(説明が難しいな……)

「ええと、なんと言いますか、敵がいるって感覚がしたと言いますか」

「……」

 大河内が黙ってオレの言葉を聞いている。視線は鋭い。

「……うまく説明できません。一言で言うと、勘です」

「佐々木、勘かよ」

 思わずアオイが突っ込んでくる。

「いや、良く分かったよ。君は感覚強化を少なくとも3感覚持っているね」

「ああ、はい」

「おそらくだが君は第6感覚も発現しているんだろう」

「第6感覚?」

「うむ、今までに数人そういう感覚を持つ人間に会ったことがあるがね。まあ、勘とか、予感という言葉を使う。」

「はあ……」

 大河内は真面目に何の話をしているんだろうとオレは困惑する。

(この世界は超能力も存在するのか?)

 みんなはオレと大河内の話しを真剣に聞いている。

「佐々木くんは理解し難いのかもしれないが、そういう能力は確かにある。君の場合は、グールの探知能力かな」

「そうなんですか……」

 やや理解に苦しむが、そういうものと受け入れるしかない。

「そこで、君たち菅原班には特別警ら任務を任せたい」

(あ、やっと分かったよ)

「つまり、点滅型グールをオレに見つけろということですか?」

「ああ、その通り」

「なるほど……」

(だけど、またあの時みたいにうまく見付けられるかな……)

「そこまで気負わなくてもいい。索敵装置開発までの次善策としてこの任務を任せたいんだ。だが、少しは期待もしている」

(どっちだよ……)

「わ、分かりました」

「ああ、宜しく頼む。あとは……」

 大河内が机の上に銃を置く。オレが使っているものよりだいぶゴツい。菅原の物よりも大きいようだ。

「君たち菅原班は、前回の任務では、獅子奮迅の働きをしてくれた。よってその功績を認め、隊員等級の昇級を申し伝える」

「!!」

 皆の顔が喜びに染まる。

「まずは、菅原くん、君はB級隊員を任命する。これは、君へ支給する新しい銃だ」

「ありがとうございます!」

「そして、月城くん、安城くん、神田くん、大原くん、君たちも全員C級隊員を任命する。励んでくれ」

「「ありがとうございます!」」

「そして、佐々木くん」

「はい」

「君は現在特別F級隊員だが、もうすでにD級グールを何体も倒す実力があるようだ。そしてたった10日たらずでE級用の魔銃を魔素の過剰入力で故障させる程の魔素出力がある。さらには、複数の強化感覚を発現している点も踏まえて……君は、D級隊員に任命する」

「はい、ありがとうございます」

(D級か! もう次でC級になれるのか、そしたらギルドマスターって人がいる都市へ行けるんだったよな!)

「本来C級以下の隊員に私が直接�昇級任命をすることはない、今回は特別だよ。そして、佐々木くんの出力に合うよう、魔銃も特別製だ。これを受け取りたまえ」

 そう言って机からもう一丁の銃を出した。
 さっき菅原が受け取ったものと似ているが、細かい部分が少し違うようだ。

(カッコいいな! これをくれるのか!)

「ありがとうごさいます!」

「それは、本来ならA級隊員が使うような代物だが、君の魔素なら問題ないだろう、励みたまえ」

「はい!」

 そうしてオレたちは市長室を後にした。
 警ら任務は明日からということになった。
 
 このまま任務を続ければ、C級は遠くない、そうすれば妹弟たちのいる時代に戻る方法もわかるはずだ。
 新しい銃を握りしめ、オレは明るい未来を見据えていた。
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