グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅱ

第75話 宝条アイコ①

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 オレは武蔵野達に連れられて新オオサカ都市の中央部を歩いていた。
 
 新オオサカ都市の町並みを改めてまじまじと見ると、新トウキョウ都市とはけっこう違うことに気付く。
 新トウキョウ都市は中央部の街は綺麗なビルが整然と並び、何というか直線的な建物が多かった。
 こちらの新オオサカ都市の中央部はいい意味で混沌としている。いろいろな建物が乱立しているように見えるのだが、武蔵野達が言うには無駄のない配置だということだ。
 オレのイメージだと、新オオサ都市はスチームパンク的な外見の街だった。  
 都市の中心とは言え、蒸気を上げて何かを作っている工場のような場所もちらほらと見えた。

「セイくん」
「ここが大本陣ビルや」
「ごっついやろ」

「確かに……」

 オレが見上げた建物は何個ものビルを繋げたような形状で継ぎはぎのコンクリートビルと言う印象だ。高さ的には30階くらいはありそうな高層で、尖塔のように建物からいくつかの高層部分が伸びている。

「「「こっちや」」」

 オレは武蔵野達の息の合いように驚きながら、3人についていった。
 大本陣ビル、新トウキョウ都市では大本営ビルと呼ばれていた、主都の中心にそびえる建物だ。
 その建物の中にに入るとやはり受付のような場所があった。
 新トウキョウ都市は高級ホテル然とした受付だったが、こちらは割りと雑然としている。

 だが、大きな木製のカウンターにはやはり綺麗な女性と紳士の空気を出す男性が並んでおり、モダンな高級旅館を彷彿とさせた。

 武蔵野達の案内で受付から中に入ると大勢の隊員達が行き来しており、活気に満ちていた。

「ここが新オオサカ都市の大本陣ギルドや」
「この建物は中央部隊員の要やし」
「中央部隊の基地でもあるで」

「凄い場所だ、みんな強そうだし……」

 オレは辺りを歩く隊員たちの強さが、明らかにさっきまですれ違っていた人たちよりも上だということを感じ取っていた。

「そらそうや」
「ここにいるのは中央部隊のみやで」
「つまり、みんなA級以上の部隊員のみや」

(なるほど、その仕組みは新トウキョウと同じか)

「こっちのエレベーターや」
「これで大本陣まで行ける」
「はよ乗ろうで」

「あ、ああ」

 なんというか、武蔵野達は動きがけっこうせっかちだ。少しまごついていると3人はどんどん先に進んでいってしまう。
 オレははじめての場所で右も左もわからないので、ついていくので一苦労だ。

 魔導エレベーターに乗りかなり上層まで上がるとエレベーターホールの受付があった。屈強そうな隊員達を見て、これも新トウキョウ都市と同じだなと思いながら、ギルドマスターの居る部屋の前まで歩いた。
 金属調の重厚な扉の前に立ち止まると、武蔵野たちは呼び鈴のようなものを押した。

「アイコさんー」
「武蔵野班や」
「入るでー、開けてや」

 武蔵野達が軽く声を上げると、ドアがガチャリと音を立てて扉が開いた。

「「「失礼しまーす」」」

「し、失礼します」

 武蔵野たちは慣れた様子で無遠慮にずかずかと中に入っていった。
 オレも武蔵野達に続いておずおずと入室した。今さらだが、こんなところに着いてきて良かったかと少し後悔し始めていた。

「みんな、久しぶり」

 新オオサカ都市のギルドマスタールームは新トウキョウよりは広くないが、やはりサッカーが出来るんじゃないかという広さがある部屋だった。
 その広い部屋の何ヵ所かに机や棚があったり、理科の実験室のような器具が並んでいる場所もあった。
 そして部屋の1ヶ所の空中に何十個も映像が投影されている場所があった。
 その中央に人影が見えるが、宙に浮かんだ映像に隠れてよく分からない。
 宝条ギルドマスターだろうがかなり忙しく働いているようだ。その映像の裏から挨拶をしてきた。

「アイコさん」
「1ヶ月以上ぶりやな」
「元気やった?」

 ブン、と音が鳴り大量の映像がほとんど消えた。
 1人の女性が現れたのだが、オレはその服装に驚いた。
 綺麗な灰色の髪で背中までのストレート、長身でスタイルもいいモデルのような体型の女性だが、まず背中ががら空きだ。                                                                      
 もうほとんど首から臀部まで何も身に付けておらず、キラびやかな装飾や模様を施した布地が豊満な胸から腰周りを覆っているのみだ。
 まるで大きな包帯で胸から腰へ斜めに巻き付けてあるような印象だ。布地は薄く、体のラインも丸分かりだ。
 そして綺麗なアクセサリーを首や手首足首に着けており、さらに物凄くセクシーに感じる。

(確か、125歳とかじゃなかったか? 全然若いじゃん! 阿倍野さんと言い、この世界の人たちは老化しないのか??)

 オレがこの世界のちょっとした不思議に疑問を感じていると、宝条がオレのことをちらりと見た。

「うん、わたしは変わらずだね……って、あれ君は誰?」

(やべ、挨拶しないと。しかし、綺麗な人だな!)

「ああ、さっき知りおうた」
「アイコさんに用事があるらしいわ」
「ちょうどええから連れてきたんや」

 武蔵野たちが何気なくそう言うと、宝条は息を吐いた。

「ちょっと、勝手に部外者を連れてこないでよ、んん? あなた……」

「は、はい。オレは佐々木セイと言います! 新トウキョウ都市からさっき着いたばかりで……」

 宝条が急に目を見開いたかと思うと、カカカッとオレに小走りで近付いてきた。

(な、なんだ? 胸が揺れてる! 凄い!)

「す、すみません! お邪魔でしたら失礼しますので……」

 宝条はそのままオレに近付くとなんと抱きついてきた。

(な! な! なんだ!?)

「わお、びっくり」
「なんやなんや」
「一目惚れちゃう」

 武蔵野たちが好奇の目でこちらを見ていた。

「セイちゃん、よくここまで来たわね……」

 オレは抱き締められたまま宝条の言葉を聞いた。

(セイちゃん……??)

 オレは何が何だか分からないまま呆然としていた。
 オレには、新オオサカ都市の一番偉い人にちゃん付けで呼ばれる覚えは全く無かった。

 宝条はそのまま何も言わずにオレを抱きしめ続けた。

(や、柔らかい感触が……、な、なんでこんな状況に??)

「アイコさーん」
「いつまでやってんねん」
「はよ用事すまそうで」

 武蔵野たちの言葉で宝条が我に帰ったようでバッとオレから離れた。

「あ、ああ! ごめん。そうだったわね! あまりにも感極まってしまって……」

 宝条を見ると彼女の整った大きな瞳からは涙が流れていた。

(な、なんなんだ? 一体?)

「あ、あのさっきオレのことセイちゃんて……」

 宝条はオレを見返すと正面からじっと顔を覗き込んできた。何かを確認しているようだ。

(な、何だよ今度は!? ち、近いし、いい匂いがするし、ドキドキするな)

「うん、……そうよね。わたしはね、あなたに会えるのを本当に楽しみにしていたわ」

「え……??」

(何なんだろう……)

「え? 知り合いなん?」
「そうや、さっきセイちゃんて呼んでたで」
「なんや、思いがけず愛しのセイちゃんがいて興奮したんか」

「違うわよ! うるさいわね」

 宝条が凛とした声で武蔵野たちを叱りつけた。

 オレは何が何だか分からないままだ。

「私のことは分からないわよね。セイちゃん」

「……?? は、はい。どこかで会いましたか……?」

 オレはこんな綺麗な人にあった覚えはない。それに新ツクバ都市や、新トウキョウ都市で会ったならば目立つ格好だしさすがに覚えているはずだ。

「……そうよ、ね。あなたには積もる話があるけど今はまずは武蔵野達に任務の話をしましょう、ちょうどいいし」

(ちょうどいい?)

 宝条は何か懐かしい人に会ったかのような目でしばらくオレを見つめると、武蔵野達に向き合った。
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