グールムーンワールド

神坂 セイ

文字の大きさ
116 / 264
CHAPTER Ⅲ

第115話 未踏領域開拓任務⑤

しおりを挟む
「え! 山崎さん! どういうことですか!?」

 オレは山崎がこの任務から降りると聞いて焦りを隠せない。

「いや、佐々木。勘違いしているかもしれんが、任務は続行するぞ。ただグールの矢面に立っての戦闘は辞退する」

「……?」

「佐々木くん。私が提案したの」

「鈴子さん?」

「私たちはあなた達と比べるとやはり戦力として劣っている。この一連の戦闘で痛感したわ。ユメちゃんも同じ気持ち。山崎班長とユウジくんは最初反対だったけど、この先を考えて折れてくれた」

「ええ? 劣ってる? そんなことありませんよ」

 オレは正直な気持ちを口にした。鈴子も山崎も、南も高野も新ツクバで共に任務をした経験がある。オレは何度も助けられたし、頼りになる先輩という認識しかない。

「……ありがとう。でも群体との戦いでは結城班とは少し離れていたから。私たちは危ない場面が何度もあったし、柊さんや鏑木さんにも助けられた。いいえ、足をひっぱってしまった」

 そういう鈴子の顔は暗い。

「え? そうなんですか?」

 オレは思っても見ないことだったのでつい声に出して柊を見た。

「あなただったら助けずにトドメを刺していたわ」

(こ、答えになってないよな……、いちいちオレの命を狙ってくるな……)

「とにかく、これ以上の戦闘では私たちは役に立てない。だから、シェルターベースで後衛の援護要員になることにしたの」

「援護要員……」

 オレは山崎班のような強部隊が援護に回るということが納得出来なかった。というよりも何故? という疑問だらけだった。 

 オレの疑問に答えるように山崎が言葉を続けた。
 
「佐々木、援護要員というのはそれで重要な役割がある。都市で言う防衛隊員と同じだ。都市での防衛戦争の際も、討伐隊員だけでは勝てないのはわかるだろう? 戦線の移動手配。武器弾薬の供給、負傷した隊員の救護、索敵情報の管理。まだまだたくさんの仕事がある。この任務でこれから起こる大規模な戦闘となると、こう言った役割の隊員も必要だ。オレたちがその役割を担うことが、この部隊にとって最善だと判断したんだ」

 オレは返す言葉が見つからないでいた。
 すると、柊が仕方ないといった態度で口を開いた。

「まあ、そうね。確かにあなた達ではこの先は実力不足でしょう。私は賛成よ」

「え!?」

「おいおい……」

 オレは柊の突然の発言には驚きと少しの怒りを感じた。横にいる天沢も言いやがったという顔をしている。

「……」

 山崎は特に反論はしないようだ。

「いや! 実力不足ってことはないだろ! 柊さん、さすがに言い過ぎだ!」

「セイ、止めろ」

 セイヤがオレをなだめた。

「山崎さん達が実力不足、それは確かにオレも少し感じていた」

 今度はセイヤが思いもよらないことを言った。

「は?」

「佐々木さん、私達は強くなったんです。分かってください。山崎班への尊敬と信頼は変わらないんです」

「ああ、そうだな。佐々木。適材適所ってやつだよ」

 ユウナとアオイもセイヤに続いた。
 オレはこの3人がこんなことを言うのが信じられなかった。

「ユウナにアオイも! そんなこと言うのか!? 山崎さん達だぞ!」

「……」

 誰も返事はしない、重い沈黙だ。

「佐々木、お前はいいやつだな。だけど、それだけお前らは成長したってだけだ。気にすんな」

「山崎さん……」

「柊班長もハッキリ言ってくれて助かるよ」

「いいわよ。別に」

 オレは釈然としないが、みんな納得したような顔だ。

「オレたちは明日から援護要員になる」

 その2日後、オレたちはC地点での基地設営を終えた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後もさらに2度、問題なく基地設営の任務を終え、オレたちはC地点での作業は終了した。

 山崎班は先日の宣言の通り、援護要員になった。
 山崎班が前線から抜けて、数千ものグールとの戦いが厳しくなるとオレは考えていたが、なんと逆に楽になった。
 
 シェルターベースからの砲撃や爆撃によって巧みに敵戦力を分断したり、詳細な索敵情報を元に地形をも考慮した戦場の設定などを即座に送信してくれたり、オレたちの戦いやすいように彼らは何でもしてくれる。
 
 オレは援護要員がどこか戦力外通告みたいに感じていたが、とてもそんなことは無かったのだと痛感した。
 山崎が前線から退くと言うのは本当に部隊の事を考えてのことだった。
 
 そうして6月も終わりに近づき、かなり暑い季節になってきた。
 オレたちは今、開拓部隊全員で新トウキョウ都市の作戦室の一室に集まっていた。
 次からはD地点での基地設営、つまり、未踏領域の最奥に向かう。グールの大群が現れることが予想されるからだ。
 都市に帰って来たオレたちは、部隊長である千城が阿倍野と面談して、その後に部隊全員でその内容を共有して解散。そして、数日後に再度出発という流れで毎回進んでいた。
 今は阿倍野との面談を終えた千城が部屋の椅子に腰かけたところだ。

 いつも通り、まずは千城が皆に声を掛けた。

「出発は3日後だ! 各自今回も宜しく頼む! 以上!」

(いや、以上じゃないだろ)

「千城隊長、私から補足させてもらってもいいですか?」

「おお! 鏑木! 頼む!」

 千城は毎回いつもああなのでここ最近はいつも鏑木がこの開拓部隊のメンバーにいろいろと説明や補足をしてくれるようになっていた。

 何故か彼女は千城と同じ情報を持っていたりするが、姉がS級隊員だからだろうとオレは勝手に納得していた。

「今回の目的地はここ。まずは立体地図を出すわ。今、皆にも送信しておく」

 鏑木がそう言うと、宙に地図が現れ、光のラインがオレたちの移動ルートを示してくれた。

(さすが鏑木さん! やっぱりあなたがオレたちの真の隊長です! )

 オレは内心で千城に対してかなり失礼なことを考えてしまう。

 当たり前だが、今回はかなり北部まで進む事になる。詳しい地名は忘れてしまったが、確か福島県の最北部とか、宮城県の最南部あたりだ。
 この場所に中継基地を設営すれば新センダイ都市まではあと1日程度の時間距離だろう。
 
 ずっと海側のルートを進んでいたのは今回も変わらない。おそらく海側の方が平坦な地形が多いからだろう。これもオレは勝手に推測して納得していた。
 
 その後鏑木からもいろいろな説明を受け、一通りの話は終わった。千城は隣でうむうむ言っている。

「それで、援軍については何か話はあったのか?」

 山崎が鏑木に質問を投げた。

(援軍?)

「ああ、援護要員の補助班の要請についてよね。確かに山崎班の働きは素晴らしいけど、明らかに人手不足だからね。阿倍野マスターは何か言ってましたか? 千城隊長」

 ここのところ確かにオレたちはかなり戦いやすくなっているが、それは山崎班の抜群のサポートのお陰だ。
 そういえば鈴子がこの前にもう手が回らないと言っていたなとオレは思い出していた。

「いや、ないな! 皆忙しいからこのまま頑張ってとのことだ!」

 (阿倍野さん、また軽い感じで返事したんだろうな……)

「……やっぱりね。阿倍野さんらしいわ」

 オレは鏑木も阿倍野のノリは知っているんだなと感じた。

「まあ、仕方無いな。D地点に向けて努力を重ねよう」

 山崎は少し苦い顔をしている。それだけ援護要員の仕事が大変なのだろう。

「その補助班が来たらオレたちが援護要員になろうなかー」

「あなた達はダメよ。御美苗班長」

 御美苗が何か言っていたが、鏑木に冷たく却下されていた。
 山崎班の仕事を軽減させるため、今回は新開発されたという広範囲索敵装置、爆撃装置など色々な兵器がシェルターベースに搭載された。

 3日後、オレたちは再度、基地設営へ向けて新トウキョウ都市を出発した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

処理中です...