グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅳ

第157話 菅原班

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「お前、オレにだけ連絡を寄越さないってのはどういうわけだよ?」

「ウケたっしょ?」

「はあ?」

 阿倍野との面会が中止となり、オレたちはナナ含め菅原班と共に昼食をとることとなった。

 吻野は何故か遠慮して、今は結城班と菅原班の8人が食堂に集まっていた。

 集まって開口1番にナナに文句をつけたが、ナナからは笑って返されるだけだ。まあ、いつも通りではある。

「まったく……」

「相変わらずだな、佐々木」

 前よりも精強になったように感じる菅原がオレに少し気の毒そうに声を掛けた。

「菅原さん。こいつ、迷惑掛けてますよね? 先に謝ります。すいません」

「なにそれ。決めつけないでよ」

 ナナが口を尖らすが、オレからすればそんなことを言われる筋合いはない。

「いや、ナナには助けられてるよ。階級もA級になったしな」

「え? ナナが?」

「私もやるっしょ?」

「本当かよ? まだ1年経ってないだろ? 早くないか?」

「兄ちゃんより才能あるって言ったじゃん。A-級の魔術士になったよ」

「うそお……」

「ナナは凄いな。 だけど、1年でFからAってなれないんじゃなかったか?」

 アオイの言葉にはオレもそう言えばと思った。

「まあ、魔導石が少しずつ各都市に行き渡ってきたからね。昇級についても少し規制が緩んだらしいよ」

 この疑問にはチバが答えてくれた。

「へえ、そうなんですね。チバくんとユウダイくんもやっぱり昇級したんですか?」

「ユウナたちと比べちゃうとあれだけどね。少しだけあがったよ。オレとチバはB+級になったよ」

「へえ! 頑張ってるじゃん」

「アオイの言い方はバカにしてるだろ!」

「悪い悪い。でもじゃあナナの方が階級は上になったんだ?」

「う……、それを言うなよ」

 ひとしきり皆が笑い合っていると、菅原が話題を切り替えた。

「ところで、この後オレたちは新オオサカ都市へ出発するんだが、全隊員が集合した時に宝条ギルドマスターから一言もらえるらしくてな」

「ああ、それはさっき聞きましたね。モモがそのせいで阿倍野さんから約束をすっぽかされたと怒っていましたよ」

「そうなのか。それで宝条マスターは佐々木とナナとは知り合いなんだろう?」

「え、はい。そうですね。100年前は近所に住んでましたね」

「兄ちゃんは一回会ったんでしょ? 私はまだだからこの機会に一度会おうってアイちゃんから連絡もらってさ」

「なるほどね。じゃあオレも……」

「いや、兄ちゃんはいいから」

「なんでだよ!」

「女同士の感動の再開に水刺されたくないから。積もる話もあるし」

(あれ、これは冗談じゃないやつだ)

「折角の機会なんだけどなあ」

「セイ、ナナも宝条マスターもいざ会ったら平常心では居られないだろう。それを見られたくないのさ」

「え? ああ、そういうことか」

「セイヤさん!」

「おっと、済まない。だが、セイにしつこく頼まれるよりはと思ってね」

「それは……」

 ナナは顔を赤くしてセイヤに抗議したが、一言で黙ってしまった。

「またキザな言葉を吐きますね。セイヤは……」

 もう慣れたが、オレはセイヤのイケメンボイスに一応嫌味を言っておいた。

「まあそういうことだな。我々は同席するが。それでその面会が終われば南部開拓任務に出発という訳だ。今回は人数も人数だからな。道中多くのグールとの戦いが予想される。気を引き締めて行かないとな」

「菅原さん。今回はどの程度の規模で行軍するんですか?」

「ユウナは聞いてないのか? 今回は東部都市圏から800人だ」

「800!?」

「あー、出たよ。佐々木のビックリアクション」

 アオイが耳を押さえている。

「あ……、だけど! そんなに大勢新オオサカ都市へ行くのか!」

「ああ、だけどこれだけじゃないぞ。来月、再来月もさらにそれぞれ同程度の部隊を送り込むらしいからな」

「そんなにですか。それは、新ヒロシマ都市がそれだけ危険ということですか?」

「司令資料によると、新センダイ都市の5割増しの脅威として軍を編成しているらしいよ。西部都市圏からも最終的には10000人は新ヒロシマ都市に送り込む手筈みたいだね」

「チバくん、その資料にはSSS級グールについても何か書いてあるの?」

「佐々木くん……、いや。特に記載はないよ。ただ、SS級グールが7体は現れる想定をしておくようにとは書いてある」

「そうか……、だけど多分出てくるだろうな……」

「……」

 ちょっとした沈黙が場を包んだ。
 新センダイ都市で相対したあの脅威、何も出来ずに奪われた仲間を思い出した。

「言っとくけど、兄ちゃんは南部に来ちゃダメだよ」

「え?」

 ナナの言葉がオレは理解できなかった。

「大河内さんと譲原さんが言ってたけど。兄ちゃんたちは新トウキョウ都市でも有数の強部隊だって」

「……」

「だから南部奪還を仕掛けたら必ずこの都市にもグールが攻めて来る。前回の反省で行くと10万規模の大群が来てもおかしくない。その備えにならないといけない人材だって」

「オレたちが強部隊? 大河内さんがそんなことを……」

「ああ、そうだな。北部開拓時とは違い、南部開拓は数千人規模で行われる。心配は不要だ。佐々木たちはこの都市の守備に徹しろ」

「……」

(そこまで言われるとな、ナナは心配だけど……)

「分かりました」

「ところで、開拓任務時点でその人数規模なのですか? 菅原班長」

 今度はセイヤが質問を投げた。

「ああ、南部はどうもグールの数が多いらしい。結城くんたちがしたように現在は中継地点を設けているんだが、現状はA地点。つまり最初の1つしか終了していないらしいな」

「その先でそれだけ多くのグールが出てきたと言うことですか?」

「そうだ。資料によると連日軍格群体が攻めてきたらしいな」

「じゃあ、毎日1万以上のグールに群がられたのか……! それは隊員の数も増えるな……」

「そういうことだ」

「ちなみに新ヒロシマ都市までに設置する中継基地は3ヶ所だ。これから始まるB地点での基地設置任務ではさらに多くのグールが攻めて来る見込みだ」

「それで数千人規模っていうことか……」

「そうだな」

「セイヤ。お前たちは新オオサカ都市へ行ったことがあるんだろ?」

 チバがセイヤに気安い感じで話しかけた。そう言えばチバとセイヤは幼なじみだったなとオレは思い起こしていた。

「ああ。なぜだ?」

「今回の開拓部隊の隊長はさ、天王寺さんていう人らしいけど知ってるかなって思って」

「いや、会わなかったな」

「そうなんだ。まあ、どんな人かだけ聞ければと思ったんだけどね」

「武蔵野くんたちに来てもらえばよかったな」

 天王寺という名前はオレも知らない。新オオサカ都市に住んでいる武蔵野たちなら当然知っていることだろう。

「会ってはいないが、新オオサカ都市最強と言われるS級隊員だな。それは知っている」

「そうそう。西部都市圏最強のSS級隊員だってさ」

「西部最強? 新オオサカにもやっぱり二宮さんみたいな人がいるんだ……」

「あ、二宮さんて人は東部最強って人でしょ? 佐々木君」

「そうだね。この前始めて会ったよ」

「へえ、そうなんだ。でもそれじゃあ、新オオサカの虎影隊員と司隊員て人も知らない? この2人が副隊長だって」

「あ! 司さんは知ってるな!」

「司隊員も開拓任務に参加するのか? 新オオサカ都市のS級隊員3人全員か」

「S級全員?」

「ああ、セイ。オレたちが新オオサカ都市にいた時にS級隊員はその3人だった。まあ、今は魔導石で増えたかもしれないが」

「へえ、そうなんだ」

「そうなんだじゃねーよ。隊報を読めって何回言わせんだよ、佐々木。皆知ってるぞ」

「え?」

 アオイの突っ込みには皆がどっと笑った。

 オレたちはその後気兼ねない話を続け、菅原班を見送る為に兵宿舎の外へと出ていった。

 菅原班を含む800の遠征部隊は防壁の近くで出立式を行い、宝条からの一言をもらうらしい。
 ナナたちも宝条とはその近辺で会う約束とのことだ。
 オレも会いたかったが、ナナに再三止められたので今回は諦めることにした。

「じゃあ、ナナ。気をつけてな」

「うん。兄ちゃんもね」

「ああ」

「ねえ。兄ちゃん」

「なんだ?」

「私はA級になったよ」

「うん、そうだな。頑張ったな」

「いや、そうじゃなくて」

「?」

 ナナが何かを言いたそうにしている。いつもはっきりとものをいうナナがどうしたのかと思う。

「佐々木さん。ナナちゃんは言ってもらいたいことがあるんですよ。前に別れた時にナナちゃんが言っていた、ほら……」

(前に……? 確か、ナナは……)

「!」

「早く分かれよ」

「お前は……! いや、A級になったらオレと一緒にラクとユキを探すって話か?」

「そう。私は西部へ行っちゃうから、その後。考えといてね」

「……」

「ねえ、どうなの?」

「ああ、分かった。その前に開拓任務は危険だぞ。本当に気をつけて行ってきてくれ」

「……うん」

 ナナの少ない言葉でオレは理解した。

 ナナはオレたち吻野班に参加して最前線で弟妹たちを探したいのだ。
 だが、新ツクバ都市での討伐任務で自分と吻野やセイヤたちとの力の違いを否応なしに理解して、オレたちに迷惑が掛からないか、菅原班に迷惑を掛けないかと考えているのだろう。

 だけど、弟妹はどうしても探したい。
 
 『吻野班に入れて下さい』その言葉はまだ強くは言えないが、必ず西部で強くなってくる。
 そしてその土台が出来たその時に自分を吻野班に誘えということだ。

「素直じゃないな、全く……」

 オレたちは菅原班の背中を見送った。
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