グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅳ

第181話 新加入

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 オレは体が治るとさっそくみんなと訓練を始めた。

 かなり鈍ってはいたのだが、驚いたことに魔素の保有量。というか体内に蓄積できる力は大きく伸びていた。
 アオイや吻野にはやはりオレは異常だと言われたりもした。

 オレは完全に復活したのだがナナを始めとした菅原班もオレたち吻野班と共に訓練に励んでおり、いつまで一緒にいるのかちょっと気になっていた。

 オレはその事について菅原に尋ねてみた。

「あれ? 菅原さんたちはまだ新ツクバ都市に帰らなくても大丈夫なんですか?」

「佐々木。お前は本気で言ってるのか?」

「え? ええ」

 菅原がため息を吐く。

(ん? 何だ?)

「やっぱり佐々木くんだね」

「ああ、いくら強くなってもこういう所は変わらないなあ」

 チバと大原もやれやれと首を振ってオレを見ている。

「な、何だよ!」

「佐々木。ナナを見ろ」

 菅原が首でナナの事を指した。

(ん?)

「!」

 ナナがオレを睨んでいる。
 明らかに怒っている。
 これは間違いなくオレが何らかのミスをした時の雰囲気だ。


「な、ナナさん? 兄ちゃんは何かを間違えたのかな?」

 オレは恐る恐るナナに聞いた。

「は? マジで覚えてないの? あり得ないんだけど? ホント使えない。その耳と頭はちゃんと動いてる訳?」

(うう……、ひどい言われようだ)

「セイさん、セイさん」

 ユウナがオレに近寄って来てくれて、オレにそっと耳打ちした。

「ナナちゃんは私たち吻野班に誘って欲しいんだよ。ほら、南部奪還戦争の前に話してたでしょ」

「おお!!」

「おおじゃねーだろ! お前はホントに……」
「セイは少し物忘れが酷すぎる。真剣に治療も検討した方がいいかもしれない」

 アオイとセイヤがオレをナチュラルでディスってきている。特にセイヤはオレを心配するふりをしてからの精神攻撃だ。

 吻野に至ってはオレを冷たい目で一睨みするだけだった。

(うう……、その冷たい目が1番こたえるかも……)

「ご、ごめんごめん……、ほら兄ちゃんは2ヶ月も寝たきりだったから……」

「ホントムカつく。みんな知っちゃってるじゃん。わたし恥ずかしいんだけど!」

「い、いや! それはモモさんたちもナナの気持ちをよく分かってくれてるだけで! 別に恥ずかしいことじゃないだろ!」

「だから! こういう話をしてる時点でもう恥ずかしいって言ってんの!! マジ鈍感!!」

「そ、そうなの? そんなに怒って……、難しい年頃になったな……」

「ズレすぎなんだけど! 兄ちゃんと話してると疲れる! いっつもそう!」

「はいはい。もういいでしょ」

 ここで見かねた吻野がオレたちの間に入ってきた。

「も、モモさん……」

「……」

 ナナも不満げだがとりあえず口は閉じてくれた。

「えーと? それで佐々木くんはナナにどんなことを話すつもりだったの? 思い出したんでしょう?」

 吻野がかなり気を使ってオレに話を振ってくれた。これはこの場でナナを吻野班に誘え、そうしたら加入を認めてあげるよと、そういうことだろう。

 吻野たちには南部奪還戦争が終わったらナナを吻野班に誘いたいと、かなり前の戦争の前に話はしてあった。

「あ、はい。えっと、ナナ。 お前は南部奪還戦争をくぐり抜けて、AAA級にまでなったな」

「……うん」

「オレたちはラクとユキと再会するって目標がある。だから、お前も新トウキョウ都市に来ないか? オレたち吻野班の一員として」

「うん」

「うん?」

 ナナは不機嫌そうにやや下を向いている。

「……ナナ? オレたちと一緒に来るよな?」

「うんって言ってるでしょ!」

(な、なんで怒ってんの??)

「では、新ツクバ都市と新トウキョウ都市での手続きが必要だな」

 セイヤがアゴに手を当てて呟いている。

「手続きがいるのか……」

「まあそれはそうだろう。だが新ツクバ都市の大河内市長にはすでに話はしてある。佐々木たちの方で阿倍野マスターに話を通してくれればいいだけだ」

(おお、さすが菅原さんだ! 仕事のできる大人!)

「ちょうど明後日に阿倍野さんと面談があるわよ。そこで話しましょう。菅原班も同席してもらえるかしら」

「もちろんです。吻野隊員」

 話はまとまった。

「良かったな。ナナ」

「うるさいし。もうちょいスマートにやってよ」

「ええ!?」

 オレたちは笑い合いながら、訓練を続けた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「おおー、元気になったね! 佐々木くん」

 2日後、オレたち。吻野班と菅原班は阿倍野のいるギルドマスタールームを訪れていた。

「はい。ご迷惑をお掛けしました」

「いやいや。よく戦ってくれたよ。みんなもな。お陰であの人型グールも撃退できた」

「阿倍野さん。しかしヤツにはまた逃げられてしまいましたね」

 セイヤも人型グール、ディリップとの戦いを思い出しているのだろう。悔しそうにしている。

「まあ、ね。しかしオレたちは二度あいつに勝ったんだ。このまま特級隊員が増え続け、セイヤやマサオミのような実力者が増えれば人型グールの脅威度も下がっていくだろう」

「……ええ」

 今回はセイヤの覚醒がオレたちを救った。
 山崎と南、そして庄司の命がセイヤを目覚めさせたとも言える。

 そしてそのセイヤの覚醒を促したのは阿倍野だ。
 阿倍野が最後にディリップに吹き飛ばされたとき、セイヤの側へ倒れた。阿倍野がそこでセイヤに何か言葉を掛けたらしい。それがきっかけでセイヤを目覚めさせた。
 
 しかしセイヤのように覚醒する討伐隊員はまだまだ稀だろう。
 因子を開いたと言われる隊員はこの都市ではまだ二宮とセイヤだけらしい。

「引き続き研鑽を続けよう。……さて、今回集まってもらったのは例のワイズとの会談の件だ」

「ついにですね」

 オレも思わず声が漏れたが、阿倍野は首肯で答えてくれた。

「佐々木くんが再起したということでさっそくワイズの桐生に打診してね。先日返事が来た」

 桐生。ワイズのスーツ姿の男性のことだ。

「ワイズとの会談は1ヶ月後に決まった。9月10日だ」

(1ヶ月か……)

「まあそれまでは訓練などに時間を充ててくれ。討伐任務は保留とする」

「保留か……」

 アオイがやや残念そうな顔をしている。
 おそらくS級隊員になるためにグール討伐をしたかったのだろう。

「まあ、大事な時期になったからね。堪えてほしい。……それで、吻野班と菅原班からもオレに話があるってことだけど?」

「ええ。じゃあ佐々木くん。ナナ」

 阿倍野の言葉に吻野がオレとナナを前に出るようにと促した。

「……」

 阿倍野もだいたい話は分かっているようだ。

「阿倍野さん。オレとナナは一緒にラクとユキのところへ行きたいんです。みんなで再会したいんです。だから、ナナを新トウキョウ都市の隊員として、吻野班の一員として迎えたいんです。その許可をお願いします」

 オレとナナはペコリと頭を下げた。
 この話はまあ許諾されるだろう。オレはそう思っていた。

「いやあ、それにはちょっと条件があるな」

(は!?)

「阿倍野さん。なんで条件なんかいるんですか?」

 ナナが明らかに不満げに口を尖らせている。

「ナナ!」

「いやあいいよ。何でと言うか、ナナさんが吻野班に参加したら6人編成になるでしょ?」

「は、はあ……」

(それが何なんだ?)

「通常だったらまあいいんだけど、君たちはS級部隊だからね。そんな精鋭が6人揃うのは都市としては許容出来ないんだよね」

「はあ!? また面倒くさいこと言って! じゃあわたしは新トウキョウ都市に来ちゃダメってことですか!」

 ナナが物凄い勢いで怒り出した。

「ナナ! 落ち着けよ!」

「落ち着けるわけないでしょ!」

「ナナさん。オレはダメとは言ってないでしょ」

「え?」

 ナナはキョトンとして阿倍野を見返した。

「吻野班で6人は認められないけど、2班編成に変えてくれれば大丈夫だよ」

「えーと? どういうことですか?」

 ナナが今度は思案顔で周りを見ている。
 何と言うか感情の振れ幅が凄い。

「なるほど、班を2つに分けろと言うことですね」

 吻野がいち早く阿倍野の条件を理解していた。

「そうそう。3、3でもいいし。4、2でもいいよ」

(ああ、なるほど。確かにセイヤやモモさんは都市の精鋭だし、オレだって一応S級隊員だ。そんなに戦力を集中させるより2ヶ所に分けて運用したいんだろうな。都市のお偉いさんは)

「では、オレとモモで1班にして下さい。セイとユウナ、アオイ。そしてナナ。この4人でもう1班が良いだろう。みんなはどうだ?」

 セイヤが当たり前のように班編成を提案した。

「セイヤはそれでいいの?」

 吻野が意外そうにセイヤに聞いた。

「もちろんさ」

「ちょ、ちょっと待った! セイヤと別れるのか? じゃあオレたちは……?」

「まあ、残念だが仕方ない」

(なんか軽いな!)

「私はセイヤにもちろん賛成よ」

 吻野が嬉しそうにしている。
 これからセイヤと水入らずになれると思っているようだ。吻野はこうやってたまに女の子っぽくなる。

「私はセイさんと一緒なら……」

 ユウナが少し顔を赤くして呟いた。

「うー。アツイこと言うね。ユウナは! まあ、私もユウナと一緒なら問題ねーけど」

 ユウナとアオイもセイヤの意見に賛成のようだ。

「ナナは?」

 ナナは今度は申し訳なさそうに顔を少し伏せている。

「私のせいでみんなバラバラになるんなら……」

「それは関係ない。気にしなくていい」
「そうね。ナナは佐々木くんについてあげて」

 セイヤとモモがすかさずナナに気にしずきだと言うが、これは間違いなく2人にさせろという願望から出ている。
 
「じゃあ……お願いします。ユウナさん、アオイさん。あとついでに兄ちゃん」

「ついでかよ!」

 オレたちはこうしてナナを新加入の班員として迎えた。
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