俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨

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2章 バイト先で偶然出逢わない

2章34 零ノ捌キ~Eighth note beats feel FREE to DEATH~ ⑤

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 奇声をあげながらレイスが突進してくる。

 弥堂はそれをどうにか躱した。


「――さっきよりも速いな……!」


 現状では反撃どころか、回避をするだけでもそれなりに苦労をしている。

 全貌も見えない奥義に辿り着いてそれを打ち込むどころの話ではない。

 レイスはまた元の人狼ワーウルフの躰の近くへと戻った。


 その人狼の肉体から伸びる10本の霊体の蛇が人間に絡みついている。

 先程よりも活発に魔力吸収マナドレインを行っているように視えた。


 人狼の肉体を狙われることも警戒している。

 そうしながらも、吸った魔力で大きなイヌの頭――レイス部分の本体とも謂えるような霊体を強化しているようだ。

 ヤツもここが勝負どころだと理解している。


 レイスの霊体は人狼の首から伸びる大蛇のような首で繋がって空中を浮遊している。

 その首はもう人狼の躰のすぐ近くまで霊体化していた。


 レイスは身を撓める。

 大きなイヌの顏を不細工に歪めると、一気に突進してきた。


 弥堂は反撃を打ち込むためにギリギリまでそれを引き付けるが、相手の速度を見切れずに断念する。

 身体を大きく横に転がして霊体の体当たりを避けた。

 すると、空振りをしたことで長く伸びた首をゴムのように戻し、レイスはまた人狼の傍に戻っていく。


 弥堂は反撃のタイミングがつかめず、またそれが出来たとしても何をどう打ち込んでいいのかわからない状態だ。

 そんな弟子の醜態にお師匠さまが焦れた。


『しっかりしなさい、ユウキ』
「速いんだよあいつ」

『きちんと見切りなさい。速いとはいっても一定速度での直進だけです。一度見ればわかるでしょう』
「お前と一緒にするな」


 極まった達人基準でモノを言われても困ると、弥堂は口答えをする。


『大体、その速度もナナミや、あのクルードという悪魔ほどでもないです』
「……クラスのギャルが大悪魔と並べられるのはおかしいだろ」

『そうは言いますが、あの娘相当速いですよ。そうですね、このレイスはナナミの距離の詰め方と似ています。学園で見たでしょう? 中距離から一気に詰めてくるあの歩法、覚えていますか?』
「……ち、ムカついてきたな。見とけよ」

『……なるほど』


 同じ学校の女子にぶっ飛ばされたシーンのハイライトを頭に浮かべると、弥堂の闘争心が沸き立つ。

 エルフィーネが何かを小さく呟いていたが、それを無視してレイスに集中した。


 先程と同じ、突進前の予備動作のようにレイスが身を撓める。

 弥堂は魔力を使って右手から霊子の糸を創り出した。


 レイスの突撃に対して先程よりもリスクをかけ、小さく横に避ける。

 そうしながら魔力糸をレイスの霊体へと触れさせた。


 そして――


「――死ね」


 強烈な殺意の意思を発する。

 だが――


『…………』

「…………」


 特に何事も起こらず、レイスは不思議そうにパチパチと瞬きのような仕草をした。

 大きなイヌの顏でそれをやられると非常にシュールに写り、弥堂はレイスの顏をジッと見る。


 2秒間だけ見つめ合い、そしてレイスは奇声をあげて襲ってきた。


「【falsoファルソ héroeエロエ】――」


 枯れた老人のような腕を生やしての抱きつき攻撃を、弥堂は仕方なく緊急回避する。

『世界』から自分を引き剥がして、少し距離を空けた場所に自分を戻した。


 弥堂の姿を探してキョロキョロするレイスを視ながら嘆息する。


「――ダメだな。もう終わりだ」


 師の要求する奥義とはこうではないかと――そう思われたものを試してみたが、それは不発に終わった。

 最早打つ手なしと諦める。

 その弟子の態度にお師匠さまは眦を上げた。


『なにをバカなことを言っているんですか……!』

「やれることはやった。ダメだった。潮時だ」

『貴方は見切りが速すぎます!』


 自分の生命に執着を失くしてからずっと彼はこうだった。

 戦いで死のうがどうでもいいし、その結果目的が叶えられなくなっても自分はもう死んでいるから関係ないと考えている。

 しかしそのくせ、軽々しく自分の生命を消費する。


 結果に執着がないのに、結果を求める為の行為は死ぬまで続けようとする。

 この行動論理が余人には理解不能で、エルフィーネは彼のそんなところをどうにか理解してあげようと苦心し続けていた。


 とはいえ、今言うべきはそこではない。

 やれるだけのことをやったというのは彼の勘違いだ。

 まずはそこを正す。


『大体、貴方は零衝を打っていないでしょう』
「あ? 霊子で触れて意思を流すんだろ? 今やっただろうが」

『あれはただ触れて念じただけです。零衝ではありません』
「まさかいつもの型どおりにやって、なおかつ霊子で触れろってのか?」

『当たり前でしょう』


 どうやら根本から間違っていたようだ。

 弥堂としては、イメージしたのは聖剣エアリスフィールを使った時の糸で触れて【切断ディバイドリッパー】の加護を徹す技だった。

 それと同じ感覚でやってみたが、零衝はあくまで零衝らしい。


 しかし――


「――避けて触るだけでも難儀してるってのに、そんなの出来るか」


 霊子の糸を創り出して維持するだけでも簡単ではない。

 それを行うことと、あの速度の霊体に零衝を打ち込むことを同時に熟すのは非常に難しい。

 当然そんなことは彼女にもわかった上で、しかしそれでも師は許してくれない。


『糸は糸。それは貴方ではありません。其処に最初から貴方の意図は無い』
「また意味のわからんことを」

『いいですか、ユウキ。ルナリナの火の魔術と、ルビアの火は同じですか?』
「違う」


 それには即答をする。


『そう。魔術はあくまで技術。ナイフや銃と同じ道具のようなもの。術者本人と決して同一ではない』


 魔術自体が一般人にとっては特別なものではあるが、それでも一定の魔力や扱う技量の条件を満たせば誰でも同じ効果が望めるものではある。

 それに対して――


『――一方で、ルビアの火は“加護ライセンス”です。加護はその人物そのもの。魂に刻まれている。これは私よりも貴方の方がよく知っていますよね?』
「あぁ」

『だから、ルビアの火は彼女の失った左腕の代替にも為れる。それは彼女の一部なのだから。彼女の望んだとおり何にでもなれる。これは魔術には不可能。別の目的を満たすには別の魔術を使う必要がある』
「糸で触れて【切断ディバイドリッパー】を徹せるのも加護だからってことか?」

『おそらくそうです』
「この場で自力で“加護ライセンス”を創り出せって言うのか? 無茶を言うな」


 無茶どころかそれは不可能なことだ。

『世界』から能えられ、それを許されるからこそ“加護ライセンス”なのだ。


 当然、エルフィーネは首を横に振る。


『加護ではないです。それは神が能えるモノ』
「じゃあどうしろってんだ」

『いいですか、ユウキ。加護であることが重要なのではありません。“それ”がどれだけ自分自身であるか――どこまで己そのモノと出来るか、です』
「俺、そのモノ……?」


 それはずっと以前からも繰り返し聞かされてきたことでもある。

 しかし、弥堂にはその感覚が理解出来ない。


『“武”とは、“零衝”を極めるだけで足りると何度も言いました』
「武術は技術だ。それは魔術と同じだろ。矛盾する」

『いいえ。“零衝”を極めるとは、己そのモノを“武”とすることだと教えました。今ならその意味がわかるはずです』
「ちょっと何を言ってるのかわからねえな」

『ですから。“ゼロ”なのです。零は零。貴方以外には何も無い。貴方と武との境界を失くすのです。しかし、自分自身を無に帰してはなりません。己の発する意を以て事を成す。敵は零に帰す。いいですね?』
「……くそ、一周まわって楽しくなってきたな」

『それはよかったです』
「…………」


 せめてもの仕返しで口にした皮肉も通じない。

 彼女はどこまでも本気だ。


(だが――)


 エルフィーネの言った、『己と武術の境界を失くす』という話。

 これを聞いた時に愛苗の姿が浮かんだ。

 当然普段の女子高生の彼女ではなく、魔法少女ステラ・フィオーレだ。


 彼女の扱うものは武術ではないが、『自分と技術の境界を失くす』という点で、彼女の魔法はその域にあるように思いついた。

 つまり、彼女の次元にまで己を持っていけということだ。


『本当なら、“弐式”で――“魔討まうち”で事足りるのですが。でもユウキ、貴方は――』
「――あぁ。自分の身体の外に撃ちだす系統の魔術にはとことん適性がない」

『ならばやるしかないでしょう』
「そうだな、クソッタレめ」


 毒づき唾を吐き、半ばヤケクソ気味に自身を奮い立たせる。

 二人揃って、レイスへと眼を向けた。


『とにかく。私が指示をします。貴方は零衝を打つことに集中をしてください』
「集中たってな……」

『どのようにして、霊子で干渉して“威”を撃ちだすのか――それは私には教えてあげることは出来ません。でも貴方は一度出来ている。その時の感覚を思い出してください』
「あれは無意識だぞ」

『出来るという確信が必要。似たことをついこの間ルビアやエアリス、様にも言われたばかりでしょう? 幸いにも貴方は記憶を正確に思い出せるのです。やりなさい』
「……わかったよ」


 言葉遣いは丁寧だが、圧は強い。

 昔と何も変わらない。

 文句を言いつつ、弥堂がそれに従うのも。


 再び突っこんできたレイスを躱して、弥堂は精霊の龍に零衝を打ち込んだ時のことを思い出す。

 好都合なことに、レイスも人狼を守る為に深追いまではしてこない。


 確かにあの時も普段と同じ零衝のフォームから打ち込んだ。

 だが、霊子で干渉をしたのかと言われると、あの時はそんなことを考えていなかったのもあって、まるで覚えがない。


 拳で触れて、足を捻じり、意を威として加速させて、相手の裡に徹す。

 全体的には弥堂に唯一出来る“壱式・徹威とおい”と同じだ。


 だとすると、インパクトの瞬間に何かを変える必要があるのだろうか。

 例えば“弐式・魔討まうち”では、物理衝撃力ではなく魔力として威を打ち込む。

 それと同じ感覚で、霊子の糸を創るように魔力弾のようなものを霊子で創って撃てばいいのだろうか。

 出来る出来ない以前に何か違うような気がした。


『まず、貴方は型が雑で稚拙なのです。正しい意は正しい姿勢で。何事もそうでしょう?』
「これでもマシになった方だろ?」

『最秘奥に至ろうという者が、“マシ”で満足されては困ります』
「そう言われてもな」

『訓練を怠るからです。何故貴方はちっとも鍛練をしようとしないのです。昔から何かと理由を付けては――』
「――今言ったってしょうがねえだろうが」


 鍛練大好きなお師匠さまは、弥堂のそういった部分に強い不満を持っているので、以前からこのお説教を始めるとなかなか止まらなくなる。

 しかし、この場でそれをされても困るので、弥堂は強引に彼女の話を切った。


 本人も自覚があるのか、少しだけ恥ずかしそうにエルフィさんは咳ばらいをして体裁を整えた。


『んんっ……、まぁ、そっちは私がどうにかしてあげます。本来は望ましくないですが今回は特別です。だから貴方は肝心な部分を解決なさい』
「その肝心な部分が最難解なんだが。丸なげかよ」

『だって、貴方自身の事でしょう?』
「ハッ――そりゃそうだ」


 師の説法に論破されてしまったので、弥堂は仕方ないと割り切る。

 そして考える――


 霊子での干渉。

 それにまるで答えを見出せない。


 パッと思い浮かぶのはやはり霊子の糸だ。

 糸で触れて【切断ディバイドリッパー】を徹す時の要領。


 だが【切断ディバイドリッパー】は加護であり、零衝は加護ではない。

 糸で触れて念じただけで相手を殺せるなどという都合のいいことは起きなかった。


 それに、エルフィーネも加護を創れとは言っていない。

 あくまで“零衝”として打ち込めと彼女は云うが、しかしそれは何をどうすればそういうことになるのだろうか。


(霊子を撃つ……? 魔力弾のように)


 だが、それなら零衝の体を保つ必要もない。


 考えながらまたレイスの突進を避ける。

 何度も繰り返しているので少しだけ回避に余裕が生まれた。

 答えが出ずに苛立っていたので、つい避け様に手が出そうになってしまう。


 だが、触れれば魔力を吸われるだけなので、当てる前に拳を止める。


(妙な話だ――)


 本当の意味ではこちらは霊体には触れられない。

 なのに、霊体のあちらはこちらに触れることが出来る。

 理不尽にも程があると一層苛立ちを強めた時――


(――ん……? 霊体からは触れられる……?)


――何か着想を得た。

 二代目の残した知識から、霊体について思い出す。


 肉体は霊体には触れられない。

 透けるように通り抜けてしまう。


 見た目上では接触が出来ていないように見えるが、事実はむしろ逆の意味に近くなる。

 すり抜けているのではなく、阻まれているのだ。


 霊子というのは全ての物質の奥底、根幹に在る。

 どんな物質も霊子に結び付いた不純物で構成されている。


 つまり、肉体の手を霊体に伸ばして透けてしまうのは――

 霊体に逃げられているわけではなく、自身の霊子に結び付いた肉や骨といった不純物によって阻まれているというのが正しい説明なのだ。


(――と、いうことは……)


 少し考え方を変えてみる。


(自分で創った霊子を撃つのではなく、相手の霊子に触れる……、そのためには――)


 何か近づいたような気もするが、その先はどうにもわからなかった。


「チッ――」


 再度の突進を躱しながら弥堂は舌を打つ。


 大体、今までの歴代の達人どもの誰にもわからなかった難題を、自分のような凡夫にこんな土壇場で解けだなんて話がそもそもの無茶なんだと――


(――あ? く……?)


――弥堂が投げ出しそうになった時に、また何か思い浮かびそうになった。

 しかし、今度は少しも具体的な考えには発展しない。


 その様子をエルフィーネは案じた。


『やはり、難しいですか?』

「当り前だろ。それよりお前の方はどうなんだ?」

『私、ですか?』

「俺の型をどうにかするって言ってただろ。それだって一朝一夕でどうにかなることじゃねえぞ」


 自分の考えが行き詰まったので、何割かは八つ当たりで彼女の進捗を責めてみる。

 だが、彼女は一度不思議そうに首を傾げただけで、意図も容易いとばかりに頷いてみせた。


『それなら簡単です。手本を見せます』
「手本? そんなもん見て出来るならとっくに――」

『――いいえ。見稽古のことではありません。エアリス……様が、仕込んだものがあるはずです』
「エアリスが……? そうか、そういうことか」


 何のことだと一瞬眉を顰めるが、弥堂はすぐにエルフィーネの言わんとしていることを察した。


『見てください――』


 彼の理解を確認して、エルフィーネは人狼の傍に浮遊するレイスを指差す。


『あれは本体から動かず、イヌの頭だけを凄い速度で伸ばしてきます』


 先程から繰り返されているレイスの突進技だ。


『その為、長時間肉体を離れて留まり攻撃を繰り返したりはしない。大きく回りこんだり複雑な動きはせず、常に一直線。魔力を惜しんでいるから魔術も滅多に使わない』


 今も本体である人狼の肉体から生えた10本の蛇が兵士たちを襲って魔力を集めていた。

 それを大きなイヌの頭のレイスが守っている。


『仮にあれが霊体ではなく実体を持った敵なら非常に与し易い。それなら貴方にも零衝を打ち込めるでしょう?』
「いや、割と難しいが」

『学園でナナミ相手には出来たでしょう』
「あれは間の空間の霊子運動をデタラメにして、あいつの認知から俺を外したからだ」

『なんですかそれは?』
「だから、その辺の霊子を適当に乱して正しく情報を……。霊子の情報……、情報が伝わり変化が起きるのが影響……、それが霊子運動……。情報を伝える……、正しく、直接……。情報が意……、そして威……、それを伝えるのが徹すということ……」

『何か掴めたようですね』


 ブツブツと呟く弥堂の様子を見て、エルフィーネは満足げに頷く。

 そしてさらに先へと導く。


『とりあえずやってみましょう。実戦に勝る修行はありません』

「それは生き延びられるのならの話だろ」

『それは己次第です。死線を越えるとはそういうこと――』


 彼女はもう一度基本的な心得を弥堂へ語る。


『貴方はいつからか死線を越えるという感覚が曖昧になってしまいました。それは間違いなく“死に戻り”のせい』
「……だが、あれがあったから――」

『そうですね。そのおかげで生き延びたのもまた事実。今はその欠点を話しています。自分か相手か――どちらかは死ぬ。どちらかが無に帰す。戦いとはそういうものです』
「…………」

『“死に戻り”はそこを曖昧にします。相手が勝ち、貴方は死に、しかし生き返る。それは零の境地とは真逆です。死んでも生き返る。それが失敗しても、自分が死んだら後のことは関係ない。そんな弛緩した神経ではいけません。もっと己の全てを研ぎ澄ませなさい。この一戦に、この一手に』


 それで勝ち残れるのは勝者だけで、才のある者だけだ――

 そんな反論をしたくなるが、弥堂は呑み込む。

 境地に辿り着けないというのは事実だからだ。


 そうして気を逸らすと、レイスの突進の回避をしくじりそうになる。

 レイスの爪が身を掠りそうになった。

 これに触れられれば魔力を吸われる。

 そしてそれが枯渇すれば『死に戻り』も発動出来なくなる。


『今回はちょうどいいですね。魔力を吸われればそれで死ぬ。此処に死線があります。超えてみせなさい』

「簡単に言ってくれるぜ。こんな時まで鍛練気分かよ」

『いいえ。死合いです。掛け値なしの真剣勝負です。でないと意味がない。其処に“意”は生じない』


 ガンギマリの彼女の目を見て、出会ったばかりの頃の彼女を思い出してしまう。

 これがエルフィーネだった。


『マナは超えましたよ』
「あ?」

『自分か、魔王か――その死線を超え、マナは自分を残し、魔王を零に帰しました』
「…………」

『それと同じことが出来ないで、どの口で彼女を守ると?』
「安い挑発だ。だが、いいだろう――」


 この死線を超えられねば後が無く――

 そうなれば彼女を守れない。


 それは目的の否定だ。


 弥堂 優輝とは――

 目的の為ならどこまでも、なんでもする――


 その為の手段は選ばない。

 そういう装置だ。


 ならば――


「やってやるよ――」


 弥堂の魂に火が入る。


 死線に立つ気分が曖昧だと言われて腹も立っていた。

 そこだけは誰よりも何よりも超えてきたと自負している。


 死んでも死んでもまた生命を失う為に戻ってきて、何度も懸ける。


 死ぬことなど、失うことなど、何も恐れはしない。


 例えいつかそれで己の存在が潰えたとしても――


「――知ったことか」


 彼のそんな奮起にエルフィーネは苦笑いをする。


『ですから、それではいけないと』

「実際死んだ後のことなんて知ったこっちゃねえだろ」

『よくも私の前で言えますね。私も、ルビアも。死んだ後もこうして貴方の面倒を見にきているでしょう?』

「……うるさい黙れ」


 自分も彼女たちのように、愛苗に対して振舞えということなのだろうか。


 そこはまだわからない。

 認めることは出来ない。


 しかし、それはまだ、この死線を超えた先でのことだ。


 今はただ、目の前の敵を撃ち滅ぼすことを考える。

 それに集中することが研ぎ澄ませるということだ。


 弥堂はそれをよく知っている。

 才は無くともそれだけは『世界』の殆どの者に負けない。


 それは――殺“意”だ。


 その“意”を正しく伝える方法を視る。


 一度成功させたというあの時の感覚を――
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