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ルリジオンの過去
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三十年ほど昔。
神聖国家ファロスの上級神官であるクラーレ家に一人の神童が生まれた。
彼は幼い頃から女神の申し子と呼ばれるほど神聖魔法を使いこなし、何れは神聖国家ファロスを治める教皇になる器だと誰もが考えるほどだったという。
彼の元には将来の教皇に取り入ろうと沢山の人たちが日々訪れ、賄賂をクラーレ家に送る者も少なくなかった。
しかし彼はその心も女神の申し子であった。
神聖国家ファロスが建国され数百年。
国の内部は腐敗にまみれ、賄賂を送ることも当たり前のように誰もが思っていた。
だが彼はその全てを断った。
それどころか齢十二歳にして国内の腐敗を正そうと動き出したのである。
しかし彼はやはり子供であった。
せめてあと十年、彼自身が足下を固め、味方を増やしていたならば彼の正義は成し遂げられたかも知れない。
だが早すぎた。
潔癖すぎた。
彼に味方する者は少なく、表立って共に行動する者は一人もいなかった。
なぜなら今彼に見方をしても結果は火を見るように明らかだったからだ。
そして彼は――次代の教皇と言われたルリジオン・クラーレはクラーレの名を抹消され、新館の中でもひときわ地位の低い旅神官へと身をやつすことになる。
「んで、まぁ、いろんな所を巡り巡ってバスラール王国に辿り着いたってわけだ」
あとは前に聞いた通り、バスラール王国へやって来た彼は、懺悔室でリリエールのことを知り、幼い頃から変らない正義感で彼女を助け。
そして見ず知らずの俺も、この開拓村で救ってくれた。
「リリが『クラレ』なんていう俺を捨てた家と似た名前の貴族だって知って他人事とは思えなかったってのもあんだろうな」
その言葉を最後にルリジオンの話は終わった。
俺は大きく一つ息を吐くと「なるほど。すっきりしました」と笑顔でルリジオンの顔を見る。
「で、話を聞いてお前さんはどうするんだ?」
「どうもこうもしませんよ」
ただ俺は半年以上も一緒に暮らしてた彼らとの間に秘密を持ちたくなかった。
それだけのことだ。
リリエールがお姫様だろうと、ルリジオンが教皇候補だろうと関係ない。
そもそも現代の日本で生まれ育った俺には姫や教皇なんて縁遠すぎてよくわからないし。
「それじゃあ聞きたいことは聞けたんで昼の準備してきますね」
俺はそう言って立ち上がると教会の出口へ向かう。
「そういう所、本当にお前が異世界人なんだって思うよ」
後ろから呆れたような、それでいて安心したような声が聞こえ、俺はもう一つ大事なことを伝え忘れていることを思い出し振り返った。
「あ、そうそう。明日そのサツマイモ使ってサツマイモチップス作るんで油の浄化しておいてくださいね」
「お前、神聖魔法をなんだとおもってんだ」
「お腹を壊したりしなくなる便利な魔法ですよね?」
こんな辺境の開拓村では使えるものは何でも使わないと生きていけない。
立ってるものは親でも使えは名言である。
「あーっもう、しゃーねぇなっ。女神様に謝ってから俺様もすぐ行くから油の準備しとけ!」
「おねがいします。あ、他にもとんかつっていうめちゃくちゃ美味しい料理も作るから期待しててくださいね」
俺はそれだけ言い残すと女神様に懺悔の祈りを始めたルリジオンを残して教会を出た。
薄暗い教会の中に長時間いたせいで一瞬目が光で見えなくなる。
「今日もいい天気だな」
俺は段々と慣れてきた目に映る青い空を見上げながら誰に言うでもなく呟くと家路につく。
それから半年後。
俺たちの元に王国が北方侵略に失敗し、逆に北方国家に滅ぼされたという報告が勇者クケンジーによって届けられ自治権を認められ、俺が初代領主に任命されることになるのだが。
それはまた別の機会に語ることにしよう。
神聖国家ファロスの上級神官であるクラーレ家に一人の神童が生まれた。
彼は幼い頃から女神の申し子と呼ばれるほど神聖魔法を使いこなし、何れは神聖国家ファロスを治める教皇になる器だと誰もが考えるほどだったという。
彼の元には将来の教皇に取り入ろうと沢山の人たちが日々訪れ、賄賂をクラーレ家に送る者も少なくなかった。
しかし彼はその心も女神の申し子であった。
神聖国家ファロスが建国され数百年。
国の内部は腐敗にまみれ、賄賂を送ることも当たり前のように誰もが思っていた。
だが彼はその全てを断った。
それどころか齢十二歳にして国内の腐敗を正そうと動き出したのである。
しかし彼はやはり子供であった。
せめてあと十年、彼自身が足下を固め、味方を増やしていたならば彼の正義は成し遂げられたかも知れない。
だが早すぎた。
潔癖すぎた。
彼に味方する者は少なく、表立って共に行動する者は一人もいなかった。
なぜなら今彼に見方をしても結果は火を見るように明らかだったからだ。
そして彼は――次代の教皇と言われたルリジオン・クラーレはクラーレの名を抹消され、新館の中でもひときわ地位の低い旅神官へと身をやつすことになる。
「んで、まぁ、いろんな所を巡り巡ってバスラール王国に辿り着いたってわけだ」
あとは前に聞いた通り、バスラール王国へやって来た彼は、懺悔室でリリエールのことを知り、幼い頃から変らない正義感で彼女を助け。
そして見ず知らずの俺も、この開拓村で救ってくれた。
「リリが『クラレ』なんていう俺を捨てた家と似た名前の貴族だって知って他人事とは思えなかったってのもあんだろうな」
その言葉を最後にルリジオンの話は終わった。
俺は大きく一つ息を吐くと「なるほど。すっきりしました」と笑顔でルリジオンの顔を見る。
「で、話を聞いてお前さんはどうするんだ?」
「どうもこうもしませんよ」
ただ俺は半年以上も一緒に暮らしてた彼らとの間に秘密を持ちたくなかった。
それだけのことだ。
リリエールがお姫様だろうと、ルリジオンが教皇候補だろうと関係ない。
そもそも現代の日本で生まれ育った俺には姫や教皇なんて縁遠すぎてよくわからないし。
「それじゃあ聞きたいことは聞けたんで昼の準備してきますね」
俺はそう言って立ち上がると教会の出口へ向かう。
「そういう所、本当にお前が異世界人なんだって思うよ」
後ろから呆れたような、それでいて安心したような声が聞こえ、俺はもう一つ大事なことを伝え忘れていることを思い出し振り返った。
「あ、そうそう。明日そのサツマイモ使ってサツマイモチップス作るんで油の浄化しておいてくださいね」
「お前、神聖魔法をなんだとおもってんだ」
「お腹を壊したりしなくなる便利な魔法ですよね?」
こんな辺境の開拓村では使えるものは何でも使わないと生きていけない。
立ってるものは親でも使えは名言である。
「あーっもう、しゃーねぇなっ。女神様に謝ってから俺様もすぐ行くから油の準備しとけ!」
「おねがいします。あ、他にもとんかつっていうめちゃくちゃ美味しい料理も作るから期待しててくださいね」
俺はそれだけ言い残すと女神様に懺悔の祈りを始めたルリジオンを残して教会を出た。
薄暗い教会の中に長時間いたせいで一瞬目が光で見えなくなる。
「今日もいい天気だな」
俺は段々と慣れてきた目に映る青い空を見上げながら誰に言うでもなく呟くと家路につく。
それから半年後。
俺たちの元に王国が北方侵略に失敗し、逆に北方国家に滅ぼされたという報告が勇者クケンジーによって届けられ自治権を認められ、俺が初代領主に任命されることになるのだが。
それはまた別の機会に語ることにしよう。
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