とある伯爵の憂鬱

如月圭

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 コーナー伯爵が顔面蒼白になりながら、馬車から降りると、ジルを見て、ジルの隣り居たマリアに礼を言い、ジルは父の伯爵にしこたま怒られた。父が連れて来た医者に診察されると、

 「打ち身だけです」

 と言われて、ジルと父は安堵する。何度も礼を言い、マリアと別れたジルは、それから真面目に学校へ通い、騎士として、王立中等学校を首席で卒業した。そして、父にスチュワート伯爵家のマリアと婚約したい胸の内を話すと、父は、スチュワート伯爵家の当主カナンにマリアとの婚約を打診した。けれど、カナンは、もう反対した。自分の素行が悪かったことが原因で、それは仕方ないと思い、何度もカナンに会いに行き、マリアとの婚約を許してもらえるように、説得した。まりあには 、季節の花を送り、文通もした。一人娘のマリアを目に入れても痛くない程、溺愛していたカナンは、ジルがどれだけ本気なのか試すように、

 「王立騎士学校を首席出来たら、婚約者として認めよう」

 と言われて、ジルは本気で王立騎士学校を首席で卒業した。その間、マリアとは文通と長期休暇のときに、会いに行き、カナンに

 「まだ、マリアに会うのは早い!」

 と言われては、追い返された、そんな押し問答に耐えて、三年、ジルはようやく、マリアとの婚約を叶えて、王立騎士団の近衛騎士の試験にも首席で合格して、さぁ、これから……、という時期に、父が倒れて、伯爵家を継ぐことになった。父は伯爵家の領地で静養する事になり、継母と十歳年の離れた弟は、王都の屋敷に残った、元々、仲の良くなかった親子だった継母との 関係は、余計にこじれた。近衛騎士になり、寄宿舎生活になると、実家へは寄りつかずに生活をしていた。すると、父が、

 「スチュワート伯爵家をマリア嬢が継ぐことになれば、お前はスチュワート伯爵家に婿入りすることになる。我が家の伯爵の座は、弟のビーバーに継がせるんだ良いな!」

 と言い、継母は歓喜した。それ以来、継母とは会っていない……。実家の領地経営も父から教わり、忙しい中こなした。しかし、そのぜいしゅうを 継母が湯水のように使い、コーナー伯爵家の台所事情は芳しくない。それをちちにいうと、父は、

 「継母の事は、私が何とかするから、お前は気にしなくて良い」

 と言われた。それから……。

 そんな事を思い出していると、夕方になっていた。ハッとして、書類の束を処理すると、寄宿舎に戻った。
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