こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭

文字の大きさ
7 / 9

7

しおりを挟む
 次の日の朝早く、私達は祖父母の別荘を後にした。王弟殿下との馬車での移動中、王弟殿下とは終始和やかな雰囲気で色々な話しをした。王弟殿下は、お茶目な所があり、話しているととても好感を持てた。昼になり、野原で敷物を敷き、昼食を食べていると、王弟殿下が、トマトが苦手ということががわかり、私は楽しくなって

 「王弟殿下、結婚しましたらトマトがお好きになられる、献立をシェフと考案しなくてわいけませんわね、頑張りますわ」

 「アルカ嬢、トマトが美味しくなるのでしょうか?私にはわかりません……、トマトですよ?」

 「大丈夫ですわ、王弟殿下、みんなで知恵を出せば、食べられるようになりますわ」

 王弟殿下は苦笑しつつ、私に

 「アルカ嬢、私のことは、アンリと呼んでください。王弟殿下では、少し淋しいので」

 「わかりました。アンリ様とお呼びいたしますわ」

 と可愛いことを言うので、アンリ様が大型犬に見えてしまった。道中何事もなく、夕方頃、王都につくと、アンリ様は、私を伯爵家まで送り届けて、

 「今日は疲れていると思うので、伯爵には、また日を改めて、ご挨拶に伺います。アルカ嬢、ではまた」

 「はい、アンリ様もお気おつけて」

 そう会話して、伯爵家の門の前で、アンリ様が馬車を降りると、自分の馬に跨り、護衛の騎士達と帰って行った。

 私が屋敷内に入ると玄関先で、父が嬉しそうな顔をして立っていた。

 「お帰り、アルカ、王弟殿下との婚約が決まったのだって?おめでとう。」

 「お父様、ただいま戻りましたわ。有難うございます。あら?お父様だけですの?」

 屋敷内の静けさに気づくと、父は、

 「あぁ、エマリエルとは、離婚したんだ。アメリアとステファン君は平民になって、屋敷から追い出した、ここはアルカの家だ。お前に大事な話しがある。」

 「大事な話しですか?何でしょうか?」

 「あぁ、エマリエルはアルカの本当の母ではない。アメリアも私ともアルカとも血はつながっていない。つまり、赤の他人だ。アルカだけがこの家の正統な後継者だ。わかるな?」

 「はい、なんとなく……、その方が納得出来ました。お父様の書斎に、飾ってある肖像画、あれが私の本当のお母様……、ですわよね?お父様」

 「そうだよ、メイサというのが、お前の本当の母親の名前だ。黙っていて済まなかった。」

 「お父様、お母様のお墓参りに行きたいですわ。私の婚約のご報告に、今まで行けなかった分まで祈りたいのです」

 「わかった。明日にでも伯爵家の代々の墓がある墓地へ行こう」

 「はい、お父様」

 翌日、私は本当の母に祈りを捧げて、婚約のことを報告した。父は隣で涙を流しながら私の婚約が上手くいくことを祈っていた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

透明な貴方

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。  私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。  ククルス公爵家の一人娘。  父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。  複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。 (カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)

【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします

リオール
恋愛
私には妹が一人いる。 みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。 それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。 妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。 いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。 ──ついでにアレもあげるわね。 ===== ※ギャグはありません ※全6話

見切りをつけたのは、私

ねこまんまときみどりのことり
恋愛
婚約者の私マイナリーより、義妹が好きだと言う婚約者ハーディー。陰で私の悪口さえ言う彼には、もう幻滅だ。  婚約者の生家、アルベローニ侯爵家は子爵位と男爵位も保有しているが、伯爵位が継げるならと、ハーディーが家に婿入りする話が進んでいた。 侯爵家は息子の爵位の為に、家(うち)は侯爵家の事業に絡む為にと互いに利がある政略だった。 二転三転しますが、最後はわりと幸せになっています。 (小説家になろうさんとカクヨムさんにも載せています)

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

処理中です...