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とある最強の我儘
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裏社会に通ずる者たちが集まる会合が、何者かによって襲撃された。俺たちは未だ視界の悪い会場で姿勢を低く保ちつつ移動している。
一体誰が襲撃なんて…、しかもこんな無差別なやり方、正気じゃない!
『ぐ、…』
『刃斬の兄貴…?! 大丈夫ですか!』
背後で低い呻き声がしたから振り返って見れば、刃斬が膝をついて喉を押さえながら咳をしていた。どうやら少なからず煙を吸い込んでしまったらしい。
なんとか立ち上がる刃斬だが額には汗が浮かび、キツそうだ。早く応援が来てくれることを願いつつ移動を始めるが入口は爆破と侵入者によって近付けない。
出口といえば…。
『ボス。さっき犬飼さんに違う脱出場所があるって聞いたんです』
『隠し部屋か。そっちから出る。先導出来るか?』
『はい!』
ボスを抜いて壁沿いに歩き、先程いた部屋を目指して進む。まさかあのおやつタイムが活用されるなんて思わなくて変な高揚感を抑えつつ進んだ。
少し不安だったけど迷うことなく部屋へと辿り着くことができ、全員で中へ入る。
『…此処もガスの影響が少なからずある。用心しろ。刃斬、容態は』
『問題ありません。…どうしますか?』
刃斬の問い掛けは、今後どうするか? という類いかと思ったが違うニュアンスがあるらしい。何故なら刃斬が少し心配そうに見つめる先には俺がいた。
…なんだ?
『…宋平。お前はこの部屋に隠れてろ。必ず誰か寄越すから、それまで待て』
『え…? い、嫌です! だって俺はボスをバース性から守る為に…』
『これから起こるのは銃撃戦やら肉弾戦だ。バーストラップは上位のアルファに効くようなオメガをそんなに用意できるモンじゃねェよ。初動はお前が抑えた。これ以上は警戒するアルファにゃ無意味だと相場は決まってるもんよ』
確かに。
ボスや刃斬はアルファの中でも最上位に位置する。そんな彼らに不意打ちでもフェロモンで身動きを封じられるオメガは少数だ。
でも、それでも…。
『でも万が一にも何かあったら…!』
『…なんでそこまでする』
冷静で、重たい一言に続けて出そうとしていた言葉が失われる。
『俺たちは、テメェの兄貴の人生をぶち壊そうとした連中だ。お前が借金の肩代わりをしてんのは、その体質が全て。ただのガキなら連れて来たりしねェ。
…銃撃戦でテメェは役に立たねェよ。むしろ荷物だ。弁えろ、宋平。
お前は仮初の構成員に過ぎねェ。要らねェってんだ、引っ込んでろ』
床にぺちゃり、と座り込んだ俺の前をボスが通り過ぎてしまう。通り過ぎる時にマスクが膝に置かれるも、反応出来なかった。慌てて追い掛ける刃斬がそっと俺を抱えてテーブルの下へ優しく押し込む。
『…後で必ず誰か迎えに来るから、大人しくしてろ』
切なそうに眉を顰めた刃斬は上着を脱いでホルダーから拳銃を取り出して戦いに備える。ボスは一切俺を気に掛けることなく、黙って扉を開いて廊下へと出て…行ってしまった。
…どうして。
置いて行かれた俺は、ボロボロと溢れる涙を止められないまま膝を抱えて小さくなる。
『だって、…俺だってっ』
俺だってわかってる。
兄ちゃんを苦しめた人たちを、どんどん大好きになる自分のこと。ダメだとわかってる。
でも、わかってる、ボス?
兄を苦しめたのは弐条会だけど、俺を救ってくれたのもまた、弐条会なのだと。
『…誰が荷物だってんだ』
上等だ畜生。
こちとら世界最強種なんだぞ、強いんだぞ。普通に過ごすことを世界に望まれたバランサー。秩序と平等を愛し、健やかにと願われた。それがやがて凶器とならぬよう世界から距離を置かれるほどに。
そうわかっていたから何もしないように、ただ秩序を守っていた。自分のやりたいことに力を使うなんて間違ってるはずだ。
『っ嫌だ。置いて行かれたくない…』
建物全体に響くような爆音に肩を揺らす。パラパラと天井から木屑らしきものや埃が落ちてきて咄嗟に頭を抱えた。
約束したんだ。今日は、ボスから離れないって…そう言われた! 俺もっ…離れたくない!
『一緒にいたい!』
飛び上がるように立ち上がり、部屋から駆け出した。
我儘だって怒られるかもしれない。命令違反って突き放されるかもしれない。それでも、隣に。
あなたの傍に、行きたい。
『わっ!?』
廊下を曲がると沢山の武装した集団が現れる。俺の声に気付いて武器を構える防護服を着た連中。
刹那、浮かび上がるコントローラーを連打。
超、連打!!
『はっはっは! そのまま蹲ってろーい!』
アルファのボタンを連打して凄まじい威嚇フェロモンを放ち、連中を地面に崩してみせた。何人か意識はあるがマトモに立てるには時間が掛かりそうだ。
気配を消す時はベータ、圧倒的な力で相手を平伏させる時はアルファ、相手を油断させる時はオメガ。そして、どの上位種にぶつかっても勝てるバランサー。
そうやって性別を上手く切り替え、城の中を走り回ってボスと刃斬を探す。中々見つからなくて息を切らしてきた頃、地下への道を見付けて下りてみた。
『…ボス、兄貴…?』
暗くて足元はよく見えない。スマホで辺りを照らそうかと思ったけど、リスクが高い。バランサーに切り替えて辺りの気配を探る。
暫く歩くと何処からか風が吹いているようで、そっちに向かう。
『ぇ…?』
外から荷物を運ぶ為の搬入口だ。城の雰囲気から一変して、辺りには鉄臭い匂いが充満し、外の冷たい風が容赦なく吹きつける。
段差の下にある駐車スペースで引き摺られている一人の男。大柄で重いせいか運ぶスピードも遅い。目を凝らして確認出来たのは、スーツと靴。
日頃からそれらを大切にして身なりに気を遣っていた男と、同じもの。
刃斬なのか確信に至らなかったのは顔が血と髪で隠れて確認出来なかったから。
『っ、ぁ…にき…、?』
どうして。何故。負けた? そんなはずない、だって兄貴は強い。万が一にも…そんな、なら。
それなら、ボスは…?
『さわんな』
自分に気付いた防護服の男が刃斬から手を離して銃を構える。すぐに奥からも何人かやって来て、その手には警棒のようなものや銃器が握られていた。
…なにそれ。
それ。なぁに?
『っ俺の前で』
キン、と空気が張った。目の前が、全てが、止まってしまったようだ。
『何を、するの?』
全員が立ち止まってから、次々と倒れる。これは一種のショック症状。バランサーという生き物を怒らせると敵意や闘争心を一気に奪い取り、戦闘不能に陥らせる絶対の権限がある。
…らしい。初めて使った…。
『兄貴!!』
すぐに下に降りて刃斬に駆け寄る。近くで倒れる敵を足でグイグイと退かし、必死に刃斬を背負ってその場から離脱しようとするが、どうにもならない。
だって重い…! この筋肉ダルマ!!
『取り敢えずこの部屋に…! 兄貴っ、兄貴しっかりしてよ…! 傷だらけだ…は、早く手当てをっ』
初めて見る出血量に手が震えて上手くポーチが開けられない。刃斬は頭部と左腕、脇腹から出血していて左腕以外は裂傷。一番重症なのは腹からの出血だろう、一番酷い。
『確か今日肌着…、これ脱いでっ。後は上着でしっかり結んで止血っ…どうしよ、後は何をしたら…ていうか救急車? 警察?』
『…そ、ぅ…?』
混乱して頭を抱えていたら膝に置いていた刃斬の頭が動いたので慌てて掴んで固定する。
『兄貴ダメっ! 止血してるんだから動かないで』
『おま、え…来ちまったの、か…』
呆れたように言われて思わず体が跳ねる。でも、何度もシュミレーションしたんだ。どんなに怒られてても、拒絶されても、譲らないと。
『奴等は…』
『が、頑張って撒いた…感じで』
苦しい言い訳だ。どんなに頑張っても非力な俺が武装した連中から重たい刃斬を背負って逃げるなんて不可能だ。
冷や汗ものの嘘だが、恐らく碌に思考する余力もなかったのか刃斬はすんなりと受け入れた。
『…、すまん。少し肩を借りるぞ』
『兄貴っ…! ダメだよ起き上がったら! 傷が広がっちゃう!』
額に手を当てながらも俺の肩に手を置いてなんとか起き上がるが、息も絶え絶え。それでも上位アルファ故に彼は頑丈だった。
『チッ…、んなこと言ってる場合じゃねぇ。早くボスの元に行かねぇと…妙な追手が混じってやがんだ。だから、はや、く…っ』
『うわ、危なっ!?』
ズルりと崩れ落ちる身体をすぐに支える。潰れそうになる身体を叱咤して、なんとか刃斬も持ち堪えるが顔色は真っ青で苦痛からか時々眉を顰めた。
『っクソが…!
宋平…、置いて行った俺が言うのもアレだが…ボスんとこに行ってくれるか。あの人はお前をここまで巻き込みたくはなかったんだ。堅気で、お前はまだ子どもで…ウチの大切な一員だからな。
あの方を失うわけにはいかねぇんだ。あの方は裏社会の重鎮だからな…いなくなれば土台から世界は崩れ始める。だから、頼む…必ず俺も追い掛ける』
わかっている。刃斬はずっと、ボスに何か言いたげだった。
刃斬は、特別俺には甘いもんな。すぐに手は出るし怒りの鉄拳めちゃくちゃ痛いけど。
『…無事帰って来たら、ボスと一緒に謝ってくださいよ?』
シャツの袖を捲り、ネクタイを取る。それを使ってしっかりと刃斬の止血をしてから外へ走り出した。
『めちゃくちゃ悲しかったんですからね! 兄貴こそ死んだら許しませんから!!』
『縁起の悪ぃこと言うな馬鹿たれ。
…頼んだぞ、宋平』
.
一体誰が襲撃なんて…、しかもこんな無差別なやり方、正気じゃない!
『ぐ、…』
『刃斬の兄貴…?! 大丈夫ですか!』
背後で低い呻き声がしたから振り返って見れば、刃斬が膝をついて喉を押さえながら咳をしていた。どうやら少なからず煙を吸い込んでしまったらしい。
なんとか立ち上がる刃斬だが額には汗が浮かび、キツそうだ。早く応援が来てくれることを願いつつ移動を始めるが入口は爆破と侵入者によって近付けない。
出口といえば…。
『ボス。さっき犬飼さんに違う脱出場所があるって聞いたんです』
『隠し部屋か。そっちから出る。先導出来るか?』
『はい!』
ボスを抜いて壁沿いに歩き、先程いた部屋を目指して進む。まさかあのおやつタイムが活用されるなんて思わなくて変な高揚感を抑えつつ進んだ。
少し不安だったけど迷うことなく部屋へと辿り着くことができ、全員で中へ入る。
『…此処もガスの影響が少なからずある。用心しろ。刃斬、容態は』
『問題ありません。…どうしますか?』
刃斬の問い掛けは、今後どうするか? という類いかと思ったが違うニュアンスがあるらしい。何故なら刃斬が少し心配そうに見つめる先には俺がいた。
…なんだ?
『…宋平。お前はこの部屋に隠れてろ。必ず誰か寄越すから、それまで待て』
『え…? い、嫌です! だって俺はボスをバース性から守る為に…』
『これから起こるのは銃撃戦やら肉弾戦だ。バーストラップは上位のアルファに効くようなオメガをそんなに用意できるモンじゃねェよ。初動はお前が抑えた。これ以上は警戒するアルファにゃ無意味だと相場は決まってるもんよ』
確かに。
ボスや刃斬はアルファの中でも最上位に位置する。そんな彼らに不意打ちでもフェロモンで身動きを封じられるオメガは少数だ。
でも、それでも…。
『でも万が一にも何かあったら…!』
『…なんでそこまでする』
冷静で、重たい一言に続けて出そうとしていた言葉が失われる。
『俺たちは、テメェの兄貴の人生をぶち壊そうとした連中だ。お前が借金の肩代わりをしてんのは、その体質が全て。ただのガキなら連れて来たりしねェ。
…銃撃戦でテメェは役に立たねェよ。むしろ荷物だ。弁えろ、宋平。
お前は仮初の構成員に過ぎねェ。要らねェってんだ、引っ込んでろ』
床にぺちゃり、と座り込んだ俺の前をボスが通り過ぎてしまう。通り過ぎる時にマスクが膝に置かれるも、反応出来なかった。慌てて追い掛ける刃斬がそっと俺を抱えてテーブルの下へ優しく押し込む。
『…後で必ず誰か迎えに来るから、大人しくしてろ』
切なそうに眉を顰めた刃斬は上着を脱いでホルダーから拳銃を取り出して戦いに備える。ボスは一切俺を気に掛けることなく、黙って扉を開いて廊下へと出て…行ってしまった。
…どうして。
置いて行かれた俺は、ボロボロと溢れる涙を止められないまま膝を抱えて小さくなる。
『だって、…俺だってっ』
俺だってわかってる。
兄ちゃんを苦しめた人たちを、どんどん大好きになる自分のこと。ダメだとわかってる。
でも、わかってる、ボス?
兄を苦しめたのは弐条会だけど、俺を救ってくれたのもまた、弐条会なのだと。
『…誰が荷物だってんだ』
上等だ畜生。
こちとら世界最強種なんだぞ、強いんだぞ。普通に過ごすことを世界に望まれたバランサー。秩序と平等を愛し、健やかにと願われた。それがやがて凶器とならぬよう世界から距離を置かれるほどに。
そうわかっていたから何もしないように、ただ秩序を守っていた。自分のやりたいことに力を使うなんて間違ってるはずだ。
『っ嫌だ。置いて行かれたくない…』
建物全体に響くような爆音に肩を揺らす。パラパラと天井から木屑らしきものや埃が落ちてきて咄嗟に頭を抱えた。
約束したんだ。今日は、ボスから離れないって…そう言われた! 俺もっ…離れたくない!
『一緒にいたい!』
飛び上がるように立ち上がり、部屋から駆け出した。
我儘だって怒られるかもしれない。命令違反って突き放されるかもしれない。それでも、隣に。
あなたの傍に、行きたい。
『わっ!?』
廊下を曲がると沢山の武装した集団が現れる。俺の声に気付いて武器を構える防護服を着た連中。
刹那、浮かび上がるコントローラーを連打。
超、連打!!
『はっはっは! そのまま蹲ってろーい!』
アルファのボタンを連打して凄まじい威嚇フェロモンを放ち、連中を地面に崩してみせた。何人か意識はあるがマトモに立てるには時間が掛かりそうだ。
気配を消す時はベータ、圧倒的な力で相手を平伏させる時はアルファ、相手を油断させる時はオメガ。そして、どの上位種にぶつかっても勝てるバランサー。
そうやって性別を上手く切り替え、城の中を走り回ってボスと刃斬を探す。中々見つからなくて息を切らしてきた頃、地下への道を見付けて下りてみた。
『…ボス、兄貴…?』
暗くて足元はよく見えない。スマホで辺りを照らそうかと思ったけど、リスクが高い。バランサーに切り替えて辺りの気配を探る。
暫く歩くと何処からか風が吹いているようで、そっちに向かう。
『ぇ…?』
外から荷物を運ぶ為の搬入口だ。城の雰囲気から一変して、辺りには鉄臭い匂いが充満し、外の冷たい風が容赦なく吹きつける。
段差の下にある駐車スペースで引き摺られている一人の男。大柄で重いせいか運ぶスピードも遅い。目を凝らして確認出来たのは、スーツと靴。
日頃からそれらを大切にして身なりに気を遣っていた男と、同じもの。
刃斬なのか確信に至らなかったのは顔が血と髪で隠れて確認出来なかったから。
『っ、ぁ…にき…、?』
どうして。何故。負けた? そんなはずない、だって兄貴は強い。万が一にも…そんな、なら。
それなら、ボスは…?
『さわんな』
自分に気付いた防護服の男が刃斬から手を離して銃を構える。すぐに奥からも何人かやって来て、その手には警棒のようなものや銃器が握られていた。
…なにそれ。
それ。なぁに?
『っ俺の前で』
キン、と空気が張った。目の前が、全てが、止まってしまったようだ。
『何を、するの?』
全員が立ち止まってから、次々と倒れる。これは一種のショック症状。バランサーという生き物を怒らせると敵意や闘争心を一気に奪い取り、戦闘不能に陥らせる絶対の権限がある。
…らしい。初めて使った…。
『兄貴!!』
すぐに下に降りて刃斬に駆け寄る。近くで倒れる敵を足でグイグイと退かし、必死に刃斬を背負ってその場から離脱しようとするが、どうにもならない。
だって重い…! この筋肉ダルマ!!
『取り敢えずこの部屋に…! 兄貴っ、兄貴しっかりしてよ…! 傷だらけだ…は、早く手当てをっ』
初めて見る出血量に手が震えて上手くポーチが開けられない。刃斬は頭部と左腕、脇腹から出血していて左腕以外は裂傷。一番重症なのは腹からの出血だろう、一番酷い。
『確か今日肌着…、これ脱いでっ。後は上着でしっかり結んで止血っ…どうしよ、後は何をしたら…ていうか救急車? 警察?』
『…そ、ぅ…?』
混乱して頭を抱えていたら膝に置いていた刃斬の頭が動いたので慌てて掴んで固定する。
『兄貴ダメっ! 止血してるんだから動かないで』
『おま、え…来ちまったの、か…』
呆れたように言われて思わず体が跳ねる。でも、何度もシュミレーションしたんだ。どんなに怒られてても、拒絶されても、譲らないと。
『奴等は…』
『が、頑張って撒いた…感じで』
苦しい言い訳だ。どんなに頑張っても非力な俺が武装した連中から重たい刃斬を背負って逃げるなんて不可能だ。
冷や汗ものの嘘だが、恐らく碌に思考する余力もなかったのか刃斬はすんなりと受け入れた。
『…、すまん。少し肩を借りるぞ』
『兄貴っ…! ダメだよ起き上がったら! 傷が広がっちゃう!』
額に手を当てながらも俺の肩に手を置いてなんとか起き上がるが、息も絶え絶え。それでも上位アルファ故に彼は頑丈だった。
『チッ…、んなこと言ってる場合じゃねぇ。早くボスの元に行かねぇと…妙な追手が混じってやがんだ。だから、はや、く…っ』
『うわ、危なっ!?』
ズルりと崩れ落ちる身体をすぐに支える。潰れそうになる身体を叱咤して、なんとか刃斬も持ち堪えるが顔色は真っ青で苦痛からか時々眉を顰めた。
『っクソが…!
宋平…、置いて行った俺が言うのもアレだが…ボスんとこに行ってくれるか。あの人はお前をここまで巻き込みたくはなかったんだ。堅気で、お前はまだ子どもで…ウチの大切な一員だからな。
あの方を失うわけにはいかねぇんだ。あの方は裏社会の重鎮だからな…いなくなれば土台から世界は崩れ始める。だから、頼む…必ず俺も追い掛ける』
わかっている。刃斬はずっと、ボスに何か言いたげだった。
刃斬は、特別俺には甘いもんな。すぐに手は出るし怒りの鉄拳めちゃくちゃ痛いけど。
『…無事帰って来たら、ボスと一緒に謝ってくださいよ?』
シャツの袖を捲り、ネクタイを取る。それを使ってしっかりと刃斬の止血をしてから外へ走り出した。
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