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第2×
食べてください
しおりを挟むガシャーーン!!
ルチアは驚き、持っていた食器を落としてしまった。
無数の花模様が描かれた陶器の大皿は、地面に落ちて粉々に砕け散った。
もう二度と戻らない幸せを暗示するように。
「なにを言っているの?私は、毎日家族の為に早朝から働いてきたわ。貴方も知っているでしょ。どうして離婚だなんて」
「確かに君は、よくしてくれた。だけど、どうして僕に内緒であんなことをしたのだ?倉庫の販売用の米に手を出すだなんて!あれは、もう取引先が決まっている。勝手に売りさばくなんて、正気じゃない。どうやって!」
「怒鳴らないで。そんなたいした事じゃないでしょ。米は沢山あるじゃない。野菜も米も好きなだけ使っていいって言ったのは貴方よ。私はただ、タブレット学習の為、あの娘の学校から貸し出されたWi-Fiルーターのネットに私のスマホを接続しただけ。倉庫の米が、フリマアプリで飛ぶように売れたわ。貴方だって美味しそうに食べていたじゃない。手に入れたお金でズワイガニの缶詰、フカヒレの姿煮、熟成肉の牛肉。どれもネットで購入した一級品よ」
「お前のせいで。我が家の、僕の信用が!!おかしいだろ。商品に手を出したら駄目な事くらい分かるだろ!」
「信用…。先に裏切ったのは貴方でしょ。こんなに家族の為に家事をしているのに、5000円ですって。作っても、作ってもお義母さんは文句ばかり。それに子供達だって私を母だと認めようとしない。そもそも貴方が私の事を、本当に妻だと思っているの?私は、一生懸命頑張っているのに。少しくらい思い通りにしてもいいはずよ。今年は卸値が高くて収入が増えたのでしょう。貴方とお義母さんの話を聞いていたのだから!」
「君は…もういい。出て行ってくれ。君とはやっていけない」
「待って。貴方も美味しいって言っていたじゃない。少しくらい贅沢したって」
「少しじゃない。ただの食材に幾ら使った!君は、数日の食事で何枚もの万札を使った。信じられない。そんなに贅沢な食事をしたいのなら、実家に帰ってくれ。」
「違うわ。私は家族に美味しい食事をと思って、家族の為に」
「僕が作った野菜も米も、親戚から分けてもらっている卵も購入した物じゃない。だけど、何か月も時間をかけて、肥料から拘って、丁寧に育てて収穫した貴重な食べ物だ。毎日感謝をして家族でいただいている。君にも伝わっていると思った僕が馬鹿だった。本当に残念だよ。さようなら。ルチア」
夫は、ルチアを冷たい瞳で一瞥し電話を持ってキッチンから離れて行った。
「すみません。お義父さん。ルチアと離婚させてください。彼女が勝手に販売予定の特Aの新米をネットで売りさばいてしまいました。卸先も決まっている貴重な新米なのに。こんな事をされたら、わが家もどうしようもありません。明日にでも彼女を迎えに来てください。慰謝料?こちらが戴きたいくらいです。必要なら警察や弁護士への相談も検討します…ええ、よろしくお願いします」
「私は…」
ルチアは、ただ夫に、家族に分かってもらいたかっただけだ。
離婚するなんて考えていなかった。
ただ、ただ。
ルチアの頬から一筋の涙が落ちた。
雫は、割れた陶器に落ちてキラキラと輝きながら花模様をゆっくりと伝っていった。
砕け散って二度と元に戻らない花模様をゆっくりと。
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