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仲 奈華 (nakanaka)

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ルチアは、毎朝5時に起きて1升の米を研ぐ。

大きなタライに冷たい水を入れて、手で米をかき混ぜる。

透明だった水が白く濁り、米粒が徐々に透き通ってくる。

濁った研ぎ汁は捨てずに、重いタライを持ち上げて足元のバケツに移す。

米一粒でも無駄にすると、義母に怒鳴られる。

慎重に、でもできるだけ早く。

結婚後、彼の家に嫁ぎ、彼の家族と一緒に暮らす事になった。

作らないといけない食事は、彼の分だけではない。義祖父母、義両親、前妻二人の子。毎日8人分の食事を用意しなければならない。

田植えや稲刈りをする繁忙期には、夫がアルバイトを雇う事になっている。

義母から繁忙期は、アルバイトの人の賄をルチアが用意をするように言われた。

冷たい水と、無数の米粒を何度も何度もかき混ぜて、指先が冷え、痛みを感じる。

バケツに入れたコメのとぎ汁は、畑へ運び栽培している野菜に撒く事になっている。

米が研ぎ終わった。

一升用の大きな炊飯窯に、米と水を入れて両手で持ち上げ、炊飯器へ運び入れる。

スイッチを押して時計を確認すると、5時20分を針が示していた。

ルチアは、慌てて米のとぎ汁が入ったバケツを持って、勝手口から外へ向かった。



研ぎ汁が入った重いバケツを運び、畑の片隅に置く。

畑から、ネギと白菜を取り、家へ戻った。

「ルチアさん。食事の用意はまだなの?本当に愚図な嫁だね」

「すみません。お義母さん。今野菜を取ってきたところです。すぐに味噌汁を作りますから」

「私達は、仕事があるの。ずっと家にいる貴方とは違って遅れるわけにはいかないのよ。まったく、いくら孫たちの為に嫁が必要だからってこんな子を連れてくるなんて。本当に見る目がないよ」

ルチアは、痛みをこらえるように俯き、野菜を持ってキッチンへ向かった。

包丁で、収穫したばかりのネギと白菜を切っていく。

水を入れた鍋をコンロに置き、お湯を沸かす。

冷蔵庫から揚げを出し千切りにする。顆粒だしと野菜、揚げを鍋に入れて煮込む。

8個の卵をボウルに割り入れて、箸でかき混ぜる。だし入り醤油を入れ、熱した玉子焼き機に卵液を流しいれた。

ジューーー。ジュワーーー。

流し込まれた卵液は、熱され白い煙と香ばしい音を立てながら所々膨らんでいく。箸で、ふくらみを潰しながら、かき混ぜ、持ち手を持ってひっくり返して形を整える。

何度も、何度も、ただひたすら繰り返し。







洗面所から声が聞こえてきた。

「ルチアさん。まだ洗濯機を回していないの?本当に遅いわね」

「すみません。お義母さん。今手が離せなくて」

「後で、洗っておいてね。早く干さないと乾かないわよ」

「・・・はい」

ルチアは嫁いで、また専業主婦になった。
ルチアの新しい夫は、老いた祖父の後を継ぎ米農家を営んでいる。義両親は、家計を支える為に会社員として働いている。前妻と離婚してルチアが嫁ぐまでの間は、義母が有休を取りながら家事と育児を引き受けていたらしい。ルチアが結婚した後は8人分の家事を全てルチアがこなす事になった。

鍋の火を止めて味噌を入れてかき混ぜる。

卵焼きを切り分け皿に盛り付ける。

子供たちはまだ小さい。先に味噌汁をお椀に入れて冷ましておかなければならない。

広い食卓に、朝食を並べていると、夫と義祖母、義父、二人の子供達が起きてきた。

「おはよう。ルチア」
穏やかに笑う夫は、3歳の息子を抱き上げている。

6歳の娘が、食卓に並んだ食事を見て不満を口にする。
「ええー?また卵焼き?私、もう飽きたよ。毎日一緒だもん」

「ミナ。せっかく、お母さんが作ってくれた料理だよ。そんな事をいうな」

「…おかあさんじゃないもん」

「そうよね。毎日味噌汁と卵焼きばかりだもの。ミナちゃんがそう言うのも仕方がないわ」

ルチアは、食事を並べながら、義母へ頼み込んだ。
「お義母さん。車を貸してくれませんか?食材を買いに行きたいのです。私も子供たちの為に栄養がある物を作るようにしますから」

ルチアの言葉に、義両親と夫が顔を見合わせ困った表情で笑った。

「ルチア。買い物は僕たちがするよ。野菜も米も卵も沢山あるから、好きなだけ使っていいから。他に必要な食材があれば、教えてくれ。僕か母が買ってくるから。」

「でも、食材は自分で選びたいし、他にも必要なものがあるわ。スーパーまで遠くて買い物に行けないから、車があれば、私が、、」

「私の職場の隣にスーパーがあるわ。必要な物があれば仕事終わりに私が買ってきます。いつも通りメモをして渡してちょうだい。」

「…はい」






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