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第4×
離婚してください
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彼の強い希望もあり、ルチアは籍だけ入れて彼のマンションへ引っ越しをした。
勤務年数が長く資格手当がある彼の年収は、百万円以上ルチアより多いみたいだった。
給料は各自で管理をして、マンションの費用は彼が負担し、それ以外の費用はルチアが、1/3を負担する事になった。
仕事が終わってから買い物をして家へ帰る。掃除やゴミ出しは彼が担当する。
結婚前と比べ金銭的な負担が減り自由になる金額が増えた。
働きながら、家事を分担して生活する。
彼との結婚生活について満足していた。
ただ一つを除いては、、、
3交代制勤務の為、夜勤前は昼間寝ておかなければならない。就職したばかりのルチアは夜勤を振り当てられる事も多い。資格があり、副主任の役職がついている夫は日勤が多く、すれ違う日も多かった。日勤が終わった彼が帰ってきてから夕食を一緒に取り、ルチアが夜勤勤務へ向かう。
でも、夫が休日の時は、、、
ルチアは早朝に睡眠薬を飲んで眠りについた。今晩は夜勤になる。日中寝ておかなければいけない。
寝室のカーテンを閉め切り、柔らかいベッドで眠りにつく。ぼんやりとする意識の向こうで、誰かから話しかけられているような気がする。
「ルチア。いいよね」
ルチアは、眠りの中で首を振り否定をした。
眠らなければいけない。仕事がある。今寝ていなければ。
「ルチア、好きだよ。早く子供をつくろう」
子供なんて欲しくない。
無事に生まれる保証なんてどこにもない。障害がなくても、障害があっても、他人の子供でも、自分の子供でも時間を取られ、自由がなくなる。
ルチアは、重い体を必死に動かして、触ってくる何かを振り払おうとした。
目を開け、嫌だと伝えようとした。
「好きだよ。ルチア。早く俺の子供を」
朦朧とする頭で、薄っすらと瞳を開けて目の前の夫を見る。
夫は、ルチアを抱きしめながら満足そうに笑っていた。
夕方になりルチアは目を覚ました。
体が重く、痛みを感じるほどの怠さがある。今から仕事にいかなければならない。
しっかり休まないと朝まで持たないのに。
ルチアの隣で、休日の夫が満足そうに寝ている。
何故かわからないけど、ルチアは急に込み上げてくる涙を止める事ができなかった。
なぜか悔しくて、酷く辛い。
夫には、何度も伝えている。
夜勤前に睡眠薬を飲む事も。しっかりと休む必要がある事も。
でも、彼が休みの日にこうなる事が何度もある。
ルチアの言葉なんて、一度も聞いた事がないかのように。
ルチアが涙を拭っていると、夫が目を覚ましルチアの腹部を愛おしそうに撫でる。
「ルチア。起きたの?もうすぐ結婚して一年だね。そろそろここに僕たちの子供がやってきてもいいと思うだろう。」
「ねえ、何度も伝えたでしょ。夜勤前は睡眠薬を飲むから、ゆっくり寝かせてって。どうして何度言っても分かってくれないの?」
「そうだっけ。そんな事、気にしなくていいよ。俺が頑張るから。ルチアは寝ていれば」
「そういう事じゃないの。私が嫌なの。この後仕事にいかないといけないのよ。」
「ルチアが仕事を大事にしている事は知っているよ。でも俺は早く子供が欲しい。子供を授かったルチアは仕事を辞めても、育休を取ってもいい。」
「子供はできないわ。結婚前に伝えたでしょ。私は子供を育てるつもりが無いって。できないのよ」
「それは、離婚歴がある男は嫌だって事だろ」
「違う。子供が嫌なの。確かに遠目で見る分には子供は可愛いと思うわ。でも育てるとなったら凄く大変なのよ。自分の時間も無くなるし、少しの買い物も苦労するようになる。貴方と結婚して、少しは余裕ができたわ。でも化粧品を買ったり、休日に遊びに行ったりすると、私の給料なんてすぐに無くなる。子供を育てる余裕なんてないのよ。余裕ができるまでは産めないでしょ。そもそも私は、2年前に月経過多症と診断されて避妊具を子宮に入れているの。子供ができるはずなんてないわ」
「ルチア?避妊具ってどういう事?俺を騙したのか!!」
「?なにを言っているの?騙すだなんて。そんな怒るような事じゃないでしょ。私が伝えたいのは、睡眠薬を飲んで寝ている時は止めて欲しいって事。凄く怠いし仕事中も違和感があって」
夫は、ルチアの目の前でぶるぶると震えだした。
「俺は、俺は君との子供が欲しくて、だから結婚して」
「子供は欲しくないの。ねえ、大丈夫?急にどうしたのよ」
「聞いていない。避妊具をしているなんて、俺は知らなかった。そんな事なら…」
「貴方が私に強請ったのよ。私の事が好きだから一緒に暮らそうって、結婚してくれって言っていたでしょ」
「こんな田舎じゃ出会いなんてない。こんな辺鄙な場所の工場に働きに来る若い女なんて君くらいだよ。俺は、両親から何度も早く結婚して跡取りを作るように言われてきた。このマンションだって両親の資産だ。結婚相手を見つけて、子供が出来たら結婚式を挙げて親戚に紹介する予定だった。君ならすぐに子供ができると思ったのに!!」
「何を言っているの?子供?そんな事って。だから私が寝ていても、何度も?嫌よ。もうあんな苦労なんてしたくないわ。子供を作るつもりなんてないの」
「避妊具だろ。外せるだろ。仕事を休んで婦人科に行こう。すぐにそれを外せば、俺達は若いし直ぐに子供ができるだろう」
「何を言っているの。嫌よ。私は行かないわ。ねえ、止めて。こんな事で喧嘩なんてしたくない。この一年上手くやってきたじゃない。食事を取って仕事に行かないと」
「ルチア⋯離婚してください」
勤務年数が長く資格手当がある彼の年収は、百万円以上ルチアより多いみたいだった。
給料は各自で管理をして、マンションの費用は彼が負担し、それ以外の費用はルチアが、1/3を負担する事になった。
仕事が終わってから買い物をして家へ帰る。掃除やゴミ出しは彼が担当する。
結婚前と比べ金銭的な負担が減り自由になる金額が増えた。
働きながら、家事を分担して生活する。
彼との結婚生活について満足していた。
ただ一つを除いては、、、
3交代制勤務の為、夜勤前は昼間寝ておかなければならない。就職したばかりのルチアは夜勤を振り当てられる事も多い。資格があり、副主任の役職がついている夫は日勤が多く、すれ違う日も多かった。日勤が終わった彼が帰ってきてから夕食を一緒に取り、ルチアが夜勤勤務へ向かう。
でも、夫が休日の時は、、、
ルチアは早朝に睡眠薬を飲んで眠りについた。今晩は夜勤になる。日中寝ておかなければいけない。
寝室のカーテンを閉め切り、柔らかいベッドで眠りにつく。ぼんやりとする意識の向こうで、誰かから話しかけられているような気がする。
「ルチア。いいよね」
ルチアは、眠りの中で首を振り否定をした。
眠らなければいけない。仕事がある。今寝ていなければ。
「ルチア、好きだよ。早く子供をつくろう」
子供なんて欲しくない。
無事に生まれる保証なんてどこにもない。障害がなくても、障害があっても、他人の子供でも、自分の子供でも時間を取られ、自由がなくなる。
ルチアは、重い体を必死に動かして、触ってくる何かを振り払おうとした。
目を開け、嫌だと伝えようとした。
「好きだよ。ルチア。早く俺の子供を」
朦朧とする頭で、薄っすらと瞳を開けて目の前の夫を見る。
夫は、ルチアを抱きしめながら満足そうに笑っていた。
夕方になりルチアは目を覚ました。
体が重く、痛みを感じるほどの怠さがある。今から仕事にいかなければならない。
しっかり休まないと朝まで持たないのに。
ルチアの隣で、休日の夫が満足そうに寝ている。
何故かわからないけど、ルチアは急に込み上げてくる涙を止める事ができなかった。
なぜか悔しくて、酷く辛い。
夫には、何度も伝えている。
夜勤前に睡眠薬を飲む事も。しっかりと休む必要がある事も。
でも、彼が休みの日にこうなる事が何度もある。
ルチアの言葉なんて、一度も聞いた事がないかのように。
ルチアが涙を拭っていると、夫が目を覚ましルチアの腹部を愛おしそうに撫でる。
「ルチア。起きたの?もうすぐ結婚して一年だね。そろそろここに僕たちの子供がやってきてもいいと思うだろう。」
「ねえ、何度も伝えたでしょ。夜勤前は睡眠薬を飲むから、ゆっくり寝かせてって。どうして何度言っても分かってくれないの?」
「そうだっけ。そんな事、気にしなくていいよ。俺が頑張るから。ルチアは寝ていれば」
「そういう事じゃないの。私が嫌なの。この後仕事にいかないといけないのよ。」
「ルチアが仕事を大事にしている事は知っているよ。でも俺は早く子供が欲しい。子供を授かったルチアは仕事を辞めても、育休を取ってもいい。」
「子供はできないわ。結婚前に伝えたでしょ。私は子供を育てるつもりが無いって。できないのよ」
「それは、離婚歴がある男は嫌だって事だろ」
「違う。子供が嫌なの。確かに遠目で見る分には子供は可愛いと思うわ。でも育てるとなったら凄く大変なのよ。自分の時間も無くなるし、少しの買い物も苦労するようになる。貴方と結婚して、少しは余裕ができたわ。でも化粧品を買ったり、休日に遊びに行ったりすると、私の給料なんてすぐに無くなる。子供を育てる余裕なんてないのよ。余裕ができるまでは産めないでしょ。そもそも私は、2年前に月経過多症と診断されて避妊具を子宮に入れているの。子供ができるはずなんてないわ」
「ルチア?避妊具ってどういう事?俺を騙したのか!!」
「?なにを言っているの?騙すだなんて。そんな怒るような事じゃないでしょ。私が伝えたいのは、睡眠薬を飲んで寝ている時は止めて欲しいって事。凄く怠いし仕事中も違和感があって」
夫は、ルチアの目の前でぶるぶると震えだした。
「俺は、俺は君との子供が欲しくて、だから結婚して」
「子供は欲しくないの。ねえ、大丈夫?急にどうしたのよ」
「聞いていない。避妊具をしているなんて、俺は知らなかった。そんな事なら…」
「貴方が私に強請ったのよ。私の事が好きだから一緒に暮らそうって、結婚してくれって言っていたでしょ」
「こんな田舎じゃ出会いなんてない。こんな辺鄙な場所の工場に働きに来る若い女なんて君くらいだよ。俺は、両親から何度も早く結婚して跡取りを作るように言われてきた。このマンションだって両親の資産だ。結婚相手を見つけて、子供が出来たら結婚式を挙げて親戚に紹介する予定だった。君ならすぐに子供ができると思ったのに!!」
「何を言っているの?子供?そんな事って。だから私が寝ていても、何度も?嫌よ。もうあんな苦労なんてしたくないわ。子供を作るつもりなんてないの」
「避妊具だろ。外せるだろ。仕事を休んで婦人科に行こう。すぐにそれを外せば、俺達は若いし直ぐに子供ができるだろう」
「何を言っているの。嫌よ。私は行かないわ。ねえ、止めて。こんな事で喧嘩なんてしたくない。この一年上手くやってきたじゃない。食事を取って仕事に行かないと」
「ルチア⋯離婚してください」
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