没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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人魔都市編

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新たな国王が生まれ、それまでの国の名を捨て新たに生まれ変わった新国家エレオノアール。

その噂は風に乗り、海を越えて諸外国にまで響き渡っていた。

当初、新国王ヒースクリフ・デュエンが想定していた懸念点がある。

それは、新国家の設立と同時に他国がエレオノアールに攻め込んでくるのではないかということだった。

それまでの王国にはおよそ百数十年の間、他国と争ったという事実はなく、表向きは平和な国だと言えた。

友好国も多く、他国間での貿易も決して少なくない数のやり取りがあったが、それらは決してエレオノアールがこの先も無事であると保証するものではない。

新体制になったエレオノアール、さらにその経緯が二人の王子の内戦からなるものと他国が知ればその混乱に乗じて国を乗っ取ろうと企む可能性は十分にあった。


しかし、実際にはそう言った不安要素は実現せずに終わった。

その要因の一つとして考えられるのは「悪魔」の存在である。

エレオノアールでは五年前の王都襲撃以降、悪魔の存在はほぼ確定的なものとなっていたが、他国ではそうではなかった。

それまでと同じように悪魔は伝説的なものとして扱われていて、その存在を信じる者も少なかった。

それが、エレオノアールの誕生から変わったのだ。


ヒースクリフは諸外国に向けて公式に発表したのである。


「悪魔と呼ばれる存在は確かに存在し、その者達はこれから我が国エレオノアールの民となる」


と。

これにより、諸外国はエレオノアールに手を出しづらくなった。

ヒースクリフのこの声明を丸々信じた者はいなかった。

他国の反応としては「悪魔などいるわけがない」とでたらめ扱いする者の方が多かった。

しかし、ヒースクリフが公式にその声明を出したことでエレオノアールに対する警戒は確かに高まった。


「悪魔ではないにせよ、何かしらの策がヒースクリフ王にはあるのだ。でなければ、あんなに堂々とした声明は出さない」というのが諸外国の者達の共通した考えとなった。


このおかげでエレオノアールは他国に攻め込まれずに済んだのである。


そして、ヒースクリフは自らが出した声明に従うように悪魔達に土地を与えた。

王国南部、元々は岩山に囲まれたクルザナシュ地方という場所が悪魔達に与えられた領土である。

水が乏しく、作物も育たない。それまで見放されていた土地である。

しかし、ヒースクリフに用意できる土地はここしかなかった。

過ごしやすい場所には既に人の手が加わっていたからだった。

王国内での悪魔の扱いは未だいいとは言えない。

人間達の間には伝説上の存在だった者達が急に身近な存在になったことに対する戸惑いと、五年前の襲撃も含めた悪魔に対するよくない印象が付き纏ってしまっていた。


そんな彼らを人里に近いところに住まわせるわけにもいかず、苦渋の選択でクルザナシュ地方になったのだ。


そして、このクルザナシュ地方を治める領主こそ、新たに貴族となったレオン・ハートフィリアである。


クルザナシュ地方に初めて足を運んだレオンは戸惑いのあまりに口を大きく開けて放心した。

南部地方ということもあり、故郷の街に似た雰囲気の場所をレオンは想像していたのだがそれは大きな間違いだった。


レオンの目に入ったのは見渡す限りの岩山である。

それを登ればさらにそのお国岩山が見え、それがどこまでも続いていくように見えた。


下見のためにヒースクリフから使わされた案内人がレオンに向けて申し訳なさそうな表情をするのを、レオンは愛想笑いで返すしかなかった。
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