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人魔都市編
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しおりを挟む岩に囲まれた山の中腹にレオンは盆地を見つけた。
周囲を高度の高い山に囲まれたその場所はまさに天然の要塞と言える。
クルザナシュ地方でそこに以上に住むのに適した場所はないだろう。
そう判断したレオンはそこに街を作ることにした。
本来であれば新たな街を作る時には予めそこに住む住人を集め、人材を確保した上で山や森を切り開いていく必要がある。
しかし、このクルザナシュ地方においてはやり方はレオンに一任されていた。
レオンは特に人手を集めることはなく、一人で開墾を始める。
その作業を可能にしたのはまさに魔法の力であった。
盆地に散った大小様々な岩を浮かせて排除し、平らにするために上から圧力をかける。
ほぼ一日中かかりつけになることで、レオンはその作業を終わらせた。
二日目、十分な平地が出来上がった土地にレオンは数軒の家を建てた。
魔法で運んできた木材を魔法で組み上げる。
レオンに建築の知識はなかったが、予め準備はしていた。
王都のとある建築士に頼み、簡単な家の設計図を書いてもらっていたのだ。
その通りに組めば、あっという間に簡素な家は完成した。
二日目にして、クルザナシュ地方に村と呼べる風貌の場所ができたのである。
その頃合いを見計らい、王都からの来客もあった。
ディーレインを始めとする悪魔達だ。
「すごいな、ここは……」
クルザナシュ地方の地形に若干言葉を失ったディーレインだったが、他の悪魔達は違うらしい。
「いいところだ!」
「うむ、心落ち着く気配がする」
とドリスとダルブははしゃいでいた。
どうやらクルザナシュ地方の岩肌は彼らに魔界の故郷を思い出させる物だったようだ。
村はできたが、悪魔達のためにレオンにはやることが残っていた。
シドルト族という、悪魔との相性が良い肉体を手にした悪魔達には関係のないことだが、未だに魔界に住む悪魔達には人間界で暮らすための依代がない。
その依代は現在レオンの先輩であるクエンティン・ウォルスが魔道具として開発しているのだが、それが出来上がるまでの間悪魔達の魂が住める場所が必要だった。
そこでレオンは岩山の一角に大きな穴を開け、その中を下に掘り進んで行った。
足場を一つ一つ確認しながら、魔法で慎重に地下への道を広げて程よいところで空間を広げる。
その場にいた悪魔達の力も借り、すぐに村の下には大きな地下空間が出来上がった。
「ここに、僕とディーレインで魔法をかけるよ」
精霊王から教わった陰と陽の魔力を併せ持つ空間を作り出す魔法。
それを地下に広げることで、村の下の地下には人間の体を持たない悪魔達が魂だけでも暮らせる空間が出来上がったのである。
レオンは目の前にある問題を一つずつ確認するように解決していった。
順調に進んでいるように見えたクルザナシュの開拓であったが、当然行き詰まることもある。
その一つが、悪魔以外の住人の確保だった。
悪魔と共に住みたいという人間がいるかどうかという懸念点もあるが、それ以上に厄介なのは「クルザナシュで人間が暮らしていくだけの食糧を確保できるのか」という問題だった。
周囲を岩に囲まれたクルザナシュでは木がほとんど生えておらず食用の植物が育つのかも怪しい。
飲み水の確保でさえ危ぶまれるほどの地域だ。
幸い、地下に空間を掘る途中でレオンは地下水脈を見つけていた。
何とかしてそれを汲み上げることができれば、水の確保には困らなそうだったが、問題なのは食べ物の方だった。
狩りをしようにもクルザナシュには生息している生き物が乏しい。
数人ならばまだしも、数十人の領民ができると三日と持たないだろう。
やはり、クルザナシュほどの荒れた環境でも育つ食物を見つける必要があった。
そこでレオンは友人を訪ねることにした。
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