没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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二つの国編

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マークは眠らせた山賊達を縄で縛ると、近くに停車させていた馬車の一団を呼んだ。


「十六人か。まぁまぁいたな」


山賊の数を数えていたマークはその多さに少し意外そうに声を漏らした。

十六人ともなるとそれなりの大所帯である。
野宿を繰り返し、移動するには多すぎるので砦を見つけて拠点にしたかった気持ちもわかる気がした。


「とにかく、今日一日はここで拘束して明日何人かで街まで連れて行ってもらうしかないな」


やれやれ、といいう感じでマークは手に持っていた書類に目を通す。

書類には目を覚ました山賊達から聞き出した名前と、彼らが砦の中に運び込んでいた荷物のリストが載っているのだ。

山賊の名前と盗品の詳細が書かれたリストを作り、レオン達が中継地点に使った街までとりあえず山賊達を護送して、書類と被害状況をまとめる必要があるのだ。


幸い二国の使者を出迎えるためにヒースクリフが用意された大型の馬車は数が多く、何台かは荷物を運ぶための予備として同行している。


余裕のある馬車に荷物を詰め込めれば山賊と盗品を移送する分くらいの空きは作れそうだった。


「ごめんね、マーク」


書類を見ていたマークにレオンが再び申し訳なさそうに謝る。

護衛として連れてきた魔法騎士団も人数がギリギリというわけでもなく、十分な余裕を持って配備されている。

明日の行程はおよそ半日ほどでクルザナシュに到着する予定であり、何人かが山賊の護送のために護衛を離れても問題はないだろう。


しかし、それでもマーク達に余計な負担をかけたことには違いないとレオンは反省していた。


マークは一度書類から目を離し、レオンの方に向き直る。


「もういいって、さっきも言ったけど確認を怠った俺にも責任はあるんだ。それに、結果として要人に怪我もなく済んだし、時間も喰ってない。あまり気にしすぎんなよ」


紛れもなく本心からマークはそう言った。

砦を山賊達に奪われて驚きはしたものの、言葉にした通りそんなに大きな失敗にはならなかった。

それに、貴族としてレオンが他国の要人を迎えるのは初めてのことだ。

張り切りすぎることも、どこか上手く立ち行かないこともわかっていた。


「マーク隊長、盗品のリストができました」


残っていた盗品を馬車に運び込み、リストを作っていたマークの部下がマークに追加分のリストを持ってきた。


「ほぉ、大したことない連中だと思ったけど盗んだものはまぁまぁ良いものがあるな」


追加分の書類に目を通したマークは素直に感心したようだ。


「現物は積み込んだか?」


「はい、既に馬車に。確認しますか?」


リストに載っている物をしっかりと確認するためにマークは馬車の方へと向かう。

レオンも少し興味があったのでその後をついて行った。


大型の馬車に積み込まれた盗品はそこそこ数が多かった。


「こんだけ盗んだんならさっさと売っちまえばそれなりの金額になっただろうにな」


マークはそれとなく手に取った金のゴブレットを見ながら言った。

芸術には詳しくないし、目利きにも自信はなかったがゴブレットが純金で出来ていて、相当高価な物であることくらいはマークにもわかった。


「大方盗んだはいいものの、売る相手に目処がつかなかったのでしょう。小規模な山賊にありがちなことです」


部下の一人がマークの疑問に答える。

盗品は街でそのまま売ろうにも足がつきやすく、盗品だとバレればそもそも買ってももらえない。

山賊達は盗んだ物を売る相手を見つけられずに溜め込むしかなかったようだ。


「どっちにしろこんだけ盗んでれば立派に指名手配だ。捕まるのは時間の問題だったな」


後ろに立っていたレオンにも聞こえるようにマークはそう言った。


「お、魔道具まであるぞ」

馬車の中で何かを発見したマークはゴブレットを置くとその魔道具を手に取り、レオンの方に投げてよこした。


「何に使うものかわかるか?」


「うーん、これだけだと何とも……起動させてみるしかないかな」


レオンは渡された魔道具をくるりと回して観察する。

見たこともない魔道具だった。

丸い円盤上で、真ん中に小さな窪みがある。

窪みに嵌め込まれたガラスのような何かは魔法を通すための物だと推測できるが使い方はわからなかった。


「起動はダメですよ、一応盗品なので……。後で被害届を確認して持ち主に返さないと」


荷物を整理していた部下が慌ててレオンから魔道具を受け取る。


レオンはもう少し魔道具を調べてみたい気持ちに駆られたが、それは今すべきことではないと自重した。
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