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忍び寄る影編
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しおりを挟むクルザナシュの正門前にたどり着いたレオンは、さらに驚くことになる。
正門の前ではマークを筆頭に魔法騎士団の団員達が魔法による戦闘を繰り広げていた。
護衛のためにクルザナシュに訪れていた魔法騎士団の団員の人数は十数人。
襲撃してきた相手の数はその倍以上はいる。
団員達は「飛行」魔法で空を自由に飛び回り、多角的な攻撃を普段から訓練しているが、今回は数に押されて少し苦戦しているようだった。
襲撃者達も空を飛び、的を絞らせないように常に動きながら撹乱しているのだ。
とはいえ、襲撃者達は「飛行」の魔法を使っているわけではなかった。
「なんだあれ……」
見たことのないその魔道具にレオンは目を奪われる。
一見すると箒のように見えるその魔道具に襲撃者達はまたがり、それを使って空を飛んでいるようなのだ。
魔道具を作るのは魔法使いであり、魔法使いであれば大抵の人間は「飛行」の魔法を使えるため、空を飛ぶ魔道具というものをレオンは見たことがなかった。
それだけではなく、襲撃者達は皆同じようなグローブを腕につけていてそこから「火球」の魔法を放っている。
しかし、実際に襲撃者達が魔法を使っているのを目にしても、レオンはそこに魔法の反応を感知することができなかった。
「深追いするな! お互いの背中を守りあって時間を稼げ。魔道具の魔力が切れるのを待つんだ」
空を飛び、三人の襲撃者を相手にしながらマークが檄を飛ばす。
「そうか、魔道具!」
マークの声を聞いてレオンは納得した。
魔道具にはその中に魔法の核となる「魔石」が必ずあり、そこに込められた魔力を使って不思議な力を発揮する。
つまり、本来魔道具は常時「魔法を発動している状態」に近いのだ。
しかし、国にそんな物が流通した場合、その国を守る魔法使い達の感知魔法の妨げとなってしまう。
なにせ、至る所で魔法の反応が常にある状態では「どこでいつ魔法が使われたか」がわかりづらくなってしまうのだ。
そのため、魔道具には「魔力の反応を遮断する」仕組みが施されているのだ。
襲撃者達が腕につけているグローブは魔道具で、その魔道具を使った攻撃だったためにレオンには魔法の反応を感知できなかったのだ。
魔道具は基本的には「生活をより豊かにするための物」であり、「人を傷つけるための物」は珍しい。
この国の内部に武器となる魔道具はほとんど存在しない。
レオンが襲撃者達の使う魔道具に戸惑うのも無理はなかった。
「とにかく、襲撃者を捕らえないと」
レオンは「飛行」で空を駆け回り、襲撃者達の不意をつくことにした。
魔法騎士団と戦っている襲撃者達はまだレオンの存在に気がついていない。
レオンは魔法騎士団の中でもより劣勢になっていた団員のところまで一気に近づくとその団員を襲っていた二人の襲撃者達目掛けて魔法を発動する。
「テト!」
使い魔のテトが現れて黒い二本の剣に姿を変えた。
レオンはそれを二人の襲撃者めがけて投げつける。
くるくると回りながら、二本の剣はそれぞれ襲撃者の背後から近づいていき、その体を少しそれて乗っていた箒のような魔道具を切り裂く。
「うわああぁ」
飛行手段を失った襲撃者達が叫びながら落ちていく。
レオンはその落下地点に魔法で風の壁のようなものを作り、地面にぶつける衝撃を減らす。
それと同時に土魔法で地面の土を操り、落ちた襲撃者達の体を土の中に沈め、顔だけが出るような状態にして拘束した。
「レオンさん、助かりました」
助けられた団員がレオンに礼を言い、そのまま戦闘に戻っていく。
先程の襲撃者の叫び声で、他の者達もレオンの存在に気がついたようだ。
レオンが顔を上げると、さらに三人の襲撃者がレオンめがけて飛んでくるところだった。
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