没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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盗まれた魔道具編

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目を覚ますと、そらは薄らと明るくなっていてレオンは夜が明けたのだとわかった。

起きあがろうとして、頭に少しの痛みを感じて躊躇する。

ズキズキと痛む頭を抑えながら仰向けで空を眺め、そこが普段のベッドとは違うことにようやく気がついた。

なぜここに……と考えるのよりも先に気を失う直前の情景を思い出して反射的に体が起き上がっていた。

頭の痛みなどすぐに忘れて、レオンは辺りを見回す。

レオンが眠っていたのはクルザナシュの街の広場であった。

辺りを見回して、レオンは広場で横になっていたのが自分だけではないと知った。

王都から来た魔法騎士団の団員達とクルザナシュに住む人々のうちの何人かが、先程までのレオンと同じように広場で横になっていた。

眠っている人達は皆、大なり小なり怪我を負っているようで手やら足やらに何がしかの処置がされている。

かくいうレオンも頭に包帯を巻かれていた。


襲撃者に襲われて負傷した者は全員この広場に集められて処置されたようだ。


さらには避難した残りの街の住人全員と、怪我人の治療のために甲斐甲斐しく動き回る魔法使い達の姿が広場にはあった。

そのうちの一人が目を覚ましたレオンに気がついて駆け寄ってくる。


「レオン、起きたか。大丈夫か?」


マークである。
マークは自身も戦いの後が目立つ切り傷だらけの格好をしていながらも誰よりも懸命に働いていたらしい。

手に持った救急箱からその様子が伺える。


「うん、僕は平気。それより、街はどうなったの?」


レオンはゆっくりと立ち上がり、マークに問う。

頭は少し痛むが、それ以外の外傷はないようだった。


「襲撃者は逃げたよ。あの厄介な魔道具で騎士団の団員達が何人か魔力切れを起こしてるけど大きな怪我をした奴はいない。住人達も全員無事だ。今は安全のためにこの広場に集まってもらってる」


マークの説明を聞いて、レオンは心からホッとした。

怪我人が出ている以上、とても「よかった」などと言える状況ではないが死者が出なかったことに安心したのである。

レオンが詳しい状況を聞く前に、マークの方からことの成り行きを説明してくれた。


レオンが襲撃者達のリーダー格であると思われる男と戦った後の話である。

謎の巨大な魔道具により魔力を一気に奪われたレオンは飛行の魔法が制御できなくなり落下した。

気を失い、頭を打ったのはその時だろう。



「それから、数が少なくなった俺たちは苦戦してたんだけどアイツらが助けてくれたよ」


と広場の一角を見ながらマークが言うので、レオンはそちらに目を向けた。


そこにいたのは悪魔達である。


「駆けつけた悪魔達と襲撃者達の戦闘になって、敵も大分焦ってたぜ。悪魔達もあの魔道具に手を焼いてたみたいだけどおかげで街にそれ以上の被害を出さずに済んだ」


マークの話によれば襲撃者は悪魔達の出現に驚き、少し戦った後で逃走していったらしい。


レオンはマークに支えられながら悪魔達のところに向かう。

広場の片隅で悪魔達だけで固まったそのグループの中には当然ディーレインもいた。

その横にはシュドラもいて、彼女は右足を怪我しているようだ。

その右足だディーレインが包帯を巻いているところだった。


「シュドラ、大丈夫?」


レオンがそう声をかけるとシュドラは顔を上げる。他の悪魔達もレオンに気がついた。


「レオン、目が覚めたか。……安心しろ、大した怪我ではない。この体の持ち主とディーレインには悪いが……」


シュドラは右足を摩りながらディーレインの方を申し訳なさそうに見る。


他の悪魔達がどう思っているのかわあらないが、シュドラは人間界で与えられたこのシドルト族の肉体に対して「借り物である」という意識が強いようだ。

ディーレインは特に反応を示さなかったが、優しく包帯を巻き終えた後で短く一言


「気にするな」


と伝えていた。
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