没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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盗まれた魔道具編

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盗まれた物を確認したマークはすぐに後を追う準備を整える。

「でも、彼らがどこに逃げたのかわかるの?」

尋ねるレオンに対し、マークは胸をドンと叩いて「ああ」と自信ありげに言う。


「実はファルトスにアイツらの跡をつけさせてたんだ」


ファルトスはマークの体の中に住み着いた火精霊の名前である。

襲撃して来た盗賊達が引き上げる際、やけにあっさりとした引き際を疑問に思ったマークはファルトスに命じてその後を付けさせているのだという。

レオンは驚いた。
マークの咄嗟の機転についてもそうだが、体の中に宿した精霊にそんなことができるとは思っていなかったのだ。


「二人は離れても大丈夫なの? その、繋がりが切れたりはしないのかい?」


「ああ。悪魔と精霊じゃまた別みたいだしな。精霊は人間界でも存在を保っておくことができるし、離れていてもお互いの魔力を感じるから繋がりは切れてないと思うぜ」


マークの話によればファルトスとある程度の距離が離れていてもお互いにその位置を察することができるという。


つまり、マークがファルトスのことを追いかければ必然的に盗賊達に追いつけるというわけである。


「とにかく、お前はこっちのことは心配すんな。早く広場に戻って住人達にその姿を見せてやれよ。襲撃された日の翌日に領主の姿が見えないんじゃ余計不安になるぞ」


マークにそう言われて、レオンは頷く。
そこに、ルイズが姿を現した。
それからその後ろには先ほどまで広場にいたダルブとドルマの姿もある。


「レオン、起きてたのね。よかったわ」

ルイズはレオンの姿を見て笑顔を見せ、それからマークの姿を見て


「どこか行くの?」

と聞いた。

マークは三人に簡単に事情を説明する。


「なるほどね。魔道具が盗まれたってことはさっき聞いたわ。よければ、私も手伝うけど」


支度をほぼ済ませたマークにルイズが提案する。

課外授業に来ていた魔法学院の一年生達は皆広場に集まっていて学院の教師が見守っている。

人手的にはルイズも襲撃者達を追いかける方がいいだろう。

マークはルイズに協力を求めた。
それから、その後ろにいたダルブとドルマも何か言いたげな様子だった。


「どうした、お前ら。何かあるのか?」


マークがキョトンとした顔でそう聞くとダルブがオロオロとしながら答える。

その大きな体躯には似合わない反応だったが、彼なりに何か伝えたいことがあるようだ。


「いや、その。俺も行ってやろうかと思ってな……ほら、あれだろ。大きな戦力がいるだろう。俺とドルマのような」


どうやらダルブも何か力になれないかとやって来たようだ。


「ありがたいけど、いいのか? お前ら人間嫌いだろ。街のこととはいえ、これは人間同士の問題だ。お前らが無理する必要はねぇぞ」


マークはレオンに同意を求めるように顔を見た。
レオンはその言葉に同意するかどうか迷った。

確かに悪魔達は元々人間を見下している節があったが、それはこの街で過ごすうちにだんだんと変わって来たように思う。

レオンが答えないでいると、代わりにドルマが答える。


「いいから行かせろ! 暴れ足りないんだよ! それとも何か、アタシらじゃ不満か?」


声を荒げてはいるが、その顔はやや赤い。どうやら照れ隠しのようだ。

本人達が自分たちの意識の変化をどれくらい自覚しているのかはわからないが、嫌々ではないように見える。


「いや、そんなことねぇけど……来てくれるならありがたいが……いいか?」


最後の「いいか?」はレオンに向けられた言葉だった。

一応街の領主でもあるレオンにマークは判断を委ねたのだ。

レオンはこれにはすぐに頷く。

できたばかりの街、そして初めて襲撃されたのだ。

街は混乱に陥っているが、襲撃して来た盗賊達を捕まえられればある程度住人達を安心させられるだろう。

そこに悪魔たちの力が加わっていると知ってもらえれば、また悪魔たちの評判を上げることになる。


それに、敵は未知の魔道具を使う連中だ。
マークやルイズの魔法使いとしての才能を認めているレオンだが、やはり何が起こるのかわからないという不安もあった。

悪魔達がついていってくれるのは心強いと思ったのだ。
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