没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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盗まれた魔道具編

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マーク達が襲撃者を追うために街を出ていくのを見届けてからレオンは広場へと戻った。

広場に避難していた住人達と視線が一斉にレオンの方を向く。

そのうちの多くの人の表情から不安の色が見て取れた。


「レオンさん、大丈夫ですか?」


と真っ先に駆けつけて来たのはエイデンである。
その後ろにはミアとマルクスもいる。
さらには魔法学院の一年生達もレオンの方を不安そうに見ていた。

学生達が取り乱したりしないようにエイデンがついていてくれたらしい。


レオンはエイデンにマーク達が襲撃者を追っていったことを伝えた後、街の具体的な被害状況を確認するために街に住む魔法使い達を集めた。


「商業地区の方は被害が大きいです。火事による影響は少ないんですが、砲撃でもされたかのように壁が崩れている家が何軒かあります」


「居住区の方も同じです。幸いその砲撃をまともに喰らった方はいなかったみたいですが、突然燃え上がった火に混乱し、逃げ遅れて火傷を負った方が多いです」


報告を受けてレオンはすぐに次の指示を出す。

魔法使いの何人かには広場に残って治療魔法を駆使した手当を頼み、残りの者はライル達職人組と共に被害のあった建物の修繕をお願いした。


「皆夜通しで疲れてると思うけど、街の人たちのためにもお願いできるかな」


レオンの言葉に集まった魔法使い達は頷く。
街の被害は確かに軽いとは言えないが、魔法を使えば今日の昼過ぎには住民達が自分たちの家に帰ることはできるだろう。


レオン達が話しているとそこに一人の男がやってきた。

街の住人である。

中年の男性で、短い茶色によく似合う同色の髭を蓄えた人物だ。商業地区で雑貨屋をやっていたはずだ。

確か、名前はセドリクさんだったかなとレオンは近づいてくる男を見て思った。


「あの……レオン様」


おどおどとした様子でセドリクは言葉を発する。
他の街では住んでる住人がその街の領主と直接話をする機会などない。

セドリクが緊張している理由は明白だった。

レオンは威圧感を与えないように優しく聞こえる口調を心がけながら


「どうしました?」


と尋ねた。

そのレオンの対応にホッとしたのか、セドリクはやや落ち着いた様子を取り戻して話の続きを述べる。


「襲撃者達を追わなくてよいのですか?」


セドリクのその言葉にレオンはキョトンとしてしまう。

てっきり街はどうなっているのか、とかこの街の警備システムに対する文句を言われるのではないかと構えていたのだ。

それが、セドリクの口から出たのはレオンの想定していたものとはややズレた言葉だった。

レオンはすぐに平静を取り戻して、襲撃者達はマーク達が魔法騎士団が追っているということを伝えた。

しかし、セドリクはまだ納得がいっていないようだ。


「あの……私みたいな者が言うことではないとは思うのですが、本当はレオン様がご自分で追われたいのではないですか?」


続くセドリクのその言葉にレオンはドキリとした。

いつの間にかレオンを取る囲むように街の住人達が集まり始めていた。

そして皆、心配そうにレオンのことを見つめている。

セドリクの言葉にレオンが何も返せないでいると、集まった住人達の中から他の者の声が聞こえた。


「そうですよ。レオン様は一生懸命に街を発展させていたのに……それをあんな奴らに邪魔されて」


「レオン様! どうか俺たちのことは気にしないで、アイツらをやっつけて来てください」


口々に上がる声は全てレオンを心配したものだった。

そして、その言葉はどれもレオンの心情にしかと寄り添っていた。


レオンは腹を立てていたのである。

領主になり、街を作り始めた。
貴族としての礼儀も住人達との触れ合い方も何もかもが手探りの状態で、それでも懸命に街とそこに住む人のことを考えてやってきたのだ。

それを、突然現れた盗賊達に壊された。
もちろんそこに自分の落ち度もある。

魔法使いに対する対策しかできておらず、魔道具で襲われるという可能性を微塵も考えていなかった。

自分にも腹は立つが、やはり一番腹正しいのは襲撃者達だった。

本音でいえば、真っ先に襲撃者達を追いかけたかったのだ。
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