没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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消えた盗賊達編

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古城での戦いから二日後、レオンは王都の王宮を訪れていた。

本当はもっと早く盗賊達と謎の人物のことをヒースクリフに報告したかったレオンだが、友人とは言え相手は国王である。

突発的に王宮を訪れて会うわけにもいかず、他の貴族達の目を気にして正規的な手続きを取るしかなかった。

それでもたったの二日で会えるようになったのはヒースクリフのはからいとそれだけクルザナシュで起こったことが緊急の案件であることを示している。


「レオンとマークの進言を元に騎士団を総動員して探しているが、未だ逃げた盗賊達の足取りは追えていない。その謎の人物とやらの目撃情報もないな」

王宮のヒースクリフの部屋に集まったのはヒースクリフ、ダレン。レオンとマーク、それからルイズの五人であった。

ダレンは手に持った書類を見ながら謎の人物がレオン達の前から姿を消した後のことを話す。

古城の周辺をくまなく騎士団と共に探したが、足跡一つ見つけることはできなかったのだ。

レオンの話した謎の人物が使った「転移」のような魔法はそれだけ長距離の移動を可能にする力だったとわかる。


王都にも長距離感を移動する魔道具は存在するが、謎の人物は魔道具を使った形跡はなかった。

大人数を連れての長距離移動となるとレオンにもできない。


「幸い盗まれた魔道具類は全部帰ってきたからね。盗賊達の狙っていたものが何かわかるように詳しくこちらで分析してみることにしたよ」


とヒースクリフが言う。
レオンが敵の首領、シュレンガーを倒した時に回収した「魔銃」についてはクルザナシュでレオンが調べてもいいとヒースクリフの許可を得られた。

それ以外の魔道具についてはもともと「盗賊達の盗んだ戦利品」という認識だったが、それを改め「盗賊達が持っていた何かの道具」として調査を進める予定だった。

魔道具の使用用途が割れれば盗賊達の狙いも掴めるかもしれないからだ。


「それで、アイツらの素性は割れたのか?」


今度はマークがダレンに尋ねる。
ダレンは微妙そうな顔をして、肯定とも否定とも取れないわずかな反応を示した。


「名前まではわからない。だが最近王国中を賑わせていた盗賊団、『夜明けの三日月』で間違いないだろう。ことを運んだ後いつも姿を暗ますから騎士団でも手を焼いていた連中だ」


「夜明けの三日月」というのも誰が呼び出したのかもわからない噂のようなものでしかなかった。


今まで目撃された情報とレオン達の話をすり合わせてようやく特定できたといった感じである。


「お前達が捕まえてくれてれば大分助かったんだが……」

とダレンが言う。
その言葉にルイズが耳をぴくりとさせて反応した。


「あのね、こっちだって大変だったのよ? それにそもそも、魔法騎士団がしっかり捕まえてればレオンの街だって襲われなかったんだから。そんな言い方はないでしょう」


とすごい剣幕でダレンに詰め寄るルイズをレオンが「まぁまぁ」と嗜める。

ダレンに悪気はなかったが、レオンもマークもルイズも既に王国でもトップクラスの魔法使いである。

特にレオンは悪魔とも対等以上に戦える魔法使いだ。

強力な魔道具を持っているとはいえただの人間に負けるはずもないという思いが少し表面に出てしまったのである。

ダレンはすかさず謝罪の言葉を述べた後、ひとつ咳払いをしてから


「まぁ、なんだ。その『謎の人物』とやらの脅威は確かに気になる。こちらでも調査に最善を尽くすよ」


と取り繕うように言った。

「ヒース、その『謎の人物』だけど、着ている服は神官服のようだった。もしかしてだけど……」


「教会の差金か。あまり考えたくもないことではあるけど……わかった。こちらでそれとなく探りを入れてみよう」


レオンとヒースクリフは互いに頷く。
そこには無言の信頼が確かにあった。
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