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聖レイテリア神聖国編
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ライナスが差し出した紙は広告のようなものだった。
リアルに描かれた人の絵にカラフルな文字が記載されている。
「魔法闘技祭?」
レオンはその広告に大きく書かれた文字を読み上げる。
杖を持った魔法使いが向かい合わせで戦っている絵の上に太い文字でそう書かれている。
その下には少し小さい文字で参加の受付場所や開催日時、応募条件などが載っていた。
「魔法闘技って、あの魔法闘技ですか?」
レオンは学生時代に学園祭で行った「魔法闘技」を思い出す。
文字通り魔法を使った戦いで、学園では寮ごとに分かれて同じ学年同士で競い合っていた。
魔法使いにとって「魔法闘技」といえばそれしかない。
「聖レイテリアでは四年に一度、世界中から参加者を募ってこの大会を開いている。『全魔法使いの技術の向上』と謳ってな」
とライナスが説明する。
「これの開催が今年なんですか?」
レオンが尋ねるとライナスは首をひねる。
「なんの因果か周期的にちょうど開催年にあたる。受付の開始はまだだが、すでに参加希望の魔法使いがちらほら集まりだしているよ」
レオンはシミエールの方を向き
「知ってました?」
と聞いた。シミエールは頷く。
正直、レオンはこの大会のことを知らなかった。
世界中の魔法使いが集まるということは有名な大会のはずなのだが、いままでその名前を聞いたことがない。
学園に入学し、今ここにいたるまでレオンは激動の時を過ごした。
そのせいで情報の入手に漏れが出たと考えるとすこし悔しかった。
ただ、今この瞬間にライナスがこの話をするということは「魔法闘技祭」が「レオンの暗殺にかかわってくるということだ。
本来の開催目的とは異なる企みがあるのだろうと予想ができる。
「この大会の主催はレイテリア教会だ。それも新興派が実権を握っている。教皇にとっては手足を動かすのと変わりなく罠を仕掛けられるだろう」
「なるほど、世界中から魔法使いが集まるということは激闘は必至。暗殺者を紛れ込ませるのも、事故にみせかけるのもたやすいというわけか」
ライナスの話を聞き、シミエールが核心をつく。
レオンにはひとつ気になることがあった。
「でもこれ、僕が参加を表明しないと意味がないですよね? 普段の僕なら間違いなく出たでしょうけど命を狙われるとわかってて参加はしませんよ」
レオンがそういうとライナスはため息をつきながら首を横に振る。
そして懐から紙をもう一枚取り出す。
「これはすでに参加が決定している者たちのリストだ。前回の優勝者、それと事前に参加を表明した大物貴族などはすでにここに名前が記載されている」
ライナスはその紙のとある箇所を指さす。そこにはレオンの名前があった。
「なんで?」
「新興派は細かいことは無視して力づくで話を進めるつもりのようだ。この紙の内容はすでに参加者に知らされているし、国民にも周知されている。エレオノアールの英雄とまで呼ばれるようになった以上もう断ることはできないぞ」
「魔法闘技祭」に参加するには一般の受付から参加登録をし、予選を勝ち抜く必要がある。
しかし、あらかじめ実力が保証されている者に限り予選を行わずに直接本選に参加できるという仕組みだった。
レオンが勝手に登録されたのはこのいきなり本選に参加する方で、これは魔法使いにとって「実力を認められた証」であり、参加を辞退すれば不名誉なことだと蔑まれる。
自分にも、自国にも泥を塗ることになってしまうのだ。
「君ならばそう簡単に負けることはないと思うが……何もできなかった私を許してくれ。そして、どうか実力で切り抜けてほしい」
ライナスは最後に本当に申し訳なさそうにそういった。
なすすべなく教皇の暴走を許してしまったことを後悔しているようだった。
レオンは勝手に選手登録されていた不満を一度飲み込み、力強くうなずくのだった。
リアルに描かれた人の絵にカラフルな文字が記載されている。
「魔法闘技祭?」
レオンはその広告に大きく書かれた文字を読み上げる。
杖を持った魔法使いが向かい合わせで戦っている絵の上に太い文字でそう書かれている。
その下には少し小さい文字で参加の受付場所や開催日時、応募条件などが載っていた。
「魔法闘技って、あの魔法闘技ですか?」
レオンは学生時代に学園祭で行った「魔法闘技」を思い出す。
文字通り魔法を使った戦いで、学園では寮ごとに分かれて同じ学年同士で競い合っていた。
魔法使いにとって「魔法闘技」といえばそれしかない。
「聖レイテリアでは四年に一度、世界中から参加者を募ってこの大会を開いている。『全魔法使いの技術の向上』と謳ってな」
とライナスが説明する。
「これの開催が今年なんですか?」
レオンが尋ねるとライナスは首をひねる。
「なんの因果か周期的にちょうど開催年にあたる。受付の開始はまだだが、すでに参加希望の魔法使いがちらほら集まりだしているよ」
レオンはシミエールの方を向き
「知ってました?」
と聞いた。シミエールは頷く。
正直、レオンはこの大会のことを知らなかった。
世界中の魔法使いが集まるということは有名な大会のはずなのだが、いままでその名前を聞いたことがない。
学園に入学し、今ここにいたるまでレオンは激動の時を過ごした。
そのせいで情報の入手に漏れが出たと考えるとすこし悔しかった。
ただ、今この瞬間にライナスがこの話をするということは「魔法闘技祭」が「レオンの暗殺にかかわってくるということだ。
本来の開催目的とは異なる企みがあるのだろうと予想ができる。
「この大会の主催はレイテリア教会だ。それも新興派が実権を握っている。教皇にとっては手足を動かすのと変わりなく罠を仕掛けられるだろう」
「なるほど、世界中から魔法使いが集まるということは激闘は必至。暗殺者を紛れ込ませるのも、事故にみせかけるのもたやすいというわけか」
ライナスの話を聞き、シミエールが核心をつく。
レオンにはひとつ気になることがあった。
「でもこれ、僕が参加を表明しないと意味がないですよね? 普段の僕なら間違いなく出たでしょうけど命を狙われるとわかってて参加はしませんよ」
レオンがそういうとライナスはため息をつきながら首を横に振る。
そして懐から紙をもう一枚取り出す。
「これはすでに参加が決定している者たちのリストだ。前回の優勝者、それと事前に参加を表明した大物貴族などはすでにここに名前が記載されている」
ライナスはその紙のとある箇所を指さす。そこにはレオンの名前があった。
「なんで?」
「新興派は細かいことは無視して力づくで話を進めるつもりのようだ。この紙の内容はすでに参加者に知らされているし、国民にも周知されている。エレオノアールの英雄とまで呼ばれるようになった以上もう断ることはできないぞ」
「魔法闘技祭」に参加するには一般の受付から参加登録をし、予選を勝ち抜く必要がある。
しかし、あらかじめ実力が保証されている者に限り予選を行わずに直接本選に参加できるという仕組みだった。
レオンが勝手に登録されたのはこのいきなり本選に参加する方で、これは魔法使いにとって「実力を認められた証」であり、参加を辞退すれば不名誉なことだと蔑まれる。
自分にも、自国にも泥を塗ることになってしまうのだ。
「君ならばそう簡単に負けることはないと思うが……何もできなかった私を許してくれ。そして、どうか実力で切り抜けてほしい」
ライナスは最後に本当に申し訳なさそうにそういった。
なすすべなく教皇の暴走を許してしまったことを後悔しているようだった。
レオンは勝手に選手登録されていた不満を一度飲み込み、力強くうなずくのだった。
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