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不穏な影編
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しおりを挟む歓迎の式典を終えたことでレオンたちは首都内でのある程度の行動の自由を与えられるようになった。
ライナスが言っていた通りレオンの「魔法闘技祭」への参加はすでに決まっているらしく、その通達は教皇の名前を使い、教会を通して昨日のうちに連絡されている。
有無を言わせるつもりもないようでまるでレオンが出場を望んだかのように大会の詳細と登録選手の名簿が滞在する屋敷に送られてきたのだ。
「あまりも強引なこのやり方、正直腹が立つわ」
と明らかに気分を害しているのはルイズである。
その横にはマークもいて、苦笑いしながらルイズをたしなめる。
そこにはレオンもいて、三人は町に出て見つけた飲食店で昼食をとっているところだ。
屋台で出される食事が屋外に設置されたテーブルで食べるができるタイプの店で、三人はそれぞれ違ったものを頼みそれを食べながら「魔法闘技祭」について話している。
ここにはいないシミエールはイリファとともに屋敷に残っていて、その警護のためにマークを除いた魔法騎士団も屋敷の方にいる。
狙われているのはレオンだが、教皇がどのような手段に出てくるかわからない以上、シミエールとルイズも警護対象になると判断したのはマークだった。
そのうえで戦力的なものを見れば実力のある魔法使いのレオンやルイズにはマーク一人の警護で十分だった。
話はもどるが、ルイズが憤慨しているのは単に「レオンが勝手に出場者にされていた」ということだけではない。
そもそもこの話をルイズとマークが聞いたのは昨日の夜。
歓迎の式典が終わり、レオンたちがライナスと話した後のことである。
その時点でルイズはすでに怒りをあらわにしていたが、それが今朝の出来事でさらに増長している。
今朝、ルイズはマークを連れて教会に出向いた。
魔法闘技祭の一般受付が今日から教会で始まると聞いたからだ。
レオンが勝手に出場させられるのならば、自分たちも出場しようとルイズは考えたのだ。
それはマークも同じで、仮にレオンが大会の途中で事故に見せかけて狙われるのであれば暗殺者は選手の誰かになる。
「魔法闘技祭」は一対一の決闘形式で、トーナメントになるらしい。
それならば自分たちが参加すればレオンが暗殺者と対戦する前に暗殺者を倒せるかもしれないとルイズとマークは思ったのだった。
しかし、教会の受付係が二人に言った言葉はたった一言。
「すでに既定の上限人数に達してしまったため、参加の受付は終了しいました」
というのである。
参加者の一般受付は今日開始。二人は朝一番といってもいいくらいには早く教会を訪れた。
「そんなはずないでしょ!」
とルイズは思ったことを率直に受付係に伝えた。しかし、受付係はにこにことほほ笑むだけでそれ以上会話にならなかったのである。
「あの態度……強引なんてものじゃないわよ。いっそのこと国民にすべてばらしてやろうかしら」
ルイズは起こりながら芋をスライスして油で揚げた食べ物をつまんでいる。
「多分、意味ないんだろうぜ。昨日今日町の様子を見てるけどこの国はなんかおかしい」
屋台で買った飲み物を一口飲んでマークが言った。
「おかしい」というのはマークが感じた直感でしかなかったが、まわりの住民たちの話している内容、その態度など歩いているだけで得られる情報が増える度にその直感は強くなる。
町の人々は「レイテリア教」のことを決して悪く言わないのだ。
それは当然なことなのかもしれないが、そこら中で教会をほめる声やリターネ神に感謝を述べる言葉が聞こえてくる。
それはエレオノアールではあまり見ない光景で、聖レイテリア神聖国でリターネ神とレイテリア教会がいかに崇拝されているのかを表していた。
マークはあえて口にはしなかったが、その様子を「洗脳みたいだな」と思っていた。
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