没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

不穏な影編

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食事をした後、三人は町を少し見て回ることにした。
就いたばかりの時は気づかなかったが注意してみてみると町のいたるところに「魔法闘技祭」のポスターが張られている。

そういう催しがあるとわかって町を見てみると町には活気があふれているのがわかる。
町の人たちが純粋に「魔法闘技祭」を楽しみにしている様子がレオンにも伝わった。


「なんだあれ？」


町の大通りに何やら人だかりを見つけて、マークが興味を示す。
三人はその人だかりに近づき、後ろから人だかりの中心を眺める。


「さあさあ、見てってくれよ。この魔法は俺の故郷の秘術！　ここらじゃ珍しいものだぜ」


中心にいるのは民族衣装のような独特な服装をした男で、手のひらを上に向けて魔法の球を作り出し、それを集まった人々に見せつけるように操っている。


「興行かしら？　随分と大々的ね」


その魔法を興味深そうに見ながらルイズが言った。
レオンも彼の使う魔法が気になった。


言葉の通り、レオンもルイズも見たことがない魔法だったのだ。


魔法の球は一見するとただ魔力を練って作られただけのもので、魔法使いであれば誰でも簡単に作れるようなものに見える。
その魔法の球の周りにパチパチと青白い火花が散っているところを見るに、その球は雷の性質を纏っているようだ。


ただその球の中にもう一つ魔力の球がある。
二重になっているのだ。


「よく見といてくれよお客さんたち。これは『複合魔法』って言って魔法を同時に発動して掛け合わせる高等技術だ！」


男はそう言って魔法の球を空に放つ。
すると空中で雷の球が弾け、青白い火花が四方に飛ぶ。

その火花はただ空で弾けるだけならば空の青さと重なってしまい見づらいものになっていただろう。
しかし、二重になっていた魔法の球の一層目もともに弾け、空を黒い雲が覆う。

そのおかげで青白い火花が見やすくなり、空には一凛の花が咲いたようになった。


その魔法に集まっていた人たちから歓声が上がる。
レオンも「複合魔法」という知らない魔法技術に素直に感心した。


「すごいわね。でもただの興行じゃないみたい。あの人お金を集めているわけじゃなさそうよ」


ルイズも感心しつつ、男の方を指さす。
男はすでに次の魔法の準備に取り掛かっていて、対価を求めるようなそぶりはなかった。

見ている町の人たちも彼に金銭の類の報酬を与えるわけではないようだ。


そうなると、「彼はなぜ人々に魔法を見せて回っているのか」という疑問が生まれる。

ただ目立ちたいだけなのか、それとも何か目的があるのか。


「おやおや、君たち何も知らないようだね」


その時、背後から声をかけられて三人は驚いて振り向いた。
そこに立っていたのは黒く長い髪を後ろで束ねた男だった。

「男」というのをレオンたちは声で判断するしかなかった。
その男が仮面で顔を隠していたからだ。


見るからに怪しいその男にレオンたちは警戒心を抱く。
三人とも一流の魔法使いだ。常に周囲に気を配っているし、何かに興味を惹かれたからといって他への注意をおろそかにすることはない。

それなのに、その男はレオンたちに気づかれることなく背後に立っていたのだ。

それだけで男がかなりの実力者だとわかる。

彼はレオンたちが警戒しているのを意にも介さず、ひょうひょうと話を続ける。


「あれはね、『魔法闘技祭』の出場者さ。ああして観客からの注目を集めているのさ」


男はそのあと、見ず知らずのレオンたちに丁寧にその理由を説明する。

「魔法闘技祭」では選手に対して観客が賭けをすることが国によって認められている。
そして、その賭け金の一部は賭けられた選手にも支払われるのだという。


賭けられた金額が多ければ多いほど選手に支払われる金額は高くなる。
そのため、「魔法闘技祭」の開催前に自分を売り込もうとする魔法使いが町には多く現れるのだという。