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不穏な影編
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「魔法闘技祭」の本選の開始は三日後である。
本線の出場者は二十人。その前に行われる予選では数百人の魔法使いがこの町に集まるというからこの大会の規模の大きさがうかがえる。
レオンはこの日、本選参加者を決める予選が始まったと聞いてその見学に赴いた。
マークとルイズ、そしてシミエールも一緒に。
予選はイラリアの町の中央広場で行われる。
広場を数ブロックに区画分けをして、その中で予選出場者が順番に一対一の決闘を繰り広げる。
この時点ですでに町のお祭り感は高まっているようでレオンたちのほかにも見学に来る住人は大勢いた。
「あーあ、いいよな。俺も参加したかったぜ」
安全確保のための策によりかかりながらマークがうらやましそうにしている。
「レオンを守るため」という目的のほかにも世界中から実力者が集まるこの大会に参加したいという純粋な思いがあるようだ。
教皇たちの大胆な手法で参加できなくなってしまった現状を嘆いている。
「マークなら間違いなく本選まで出場できるのにね」
レオンは苦笑しながら言う。
予選の様子を見るに、集まったすべての魔法使いが実力者というわけではないのだとレオンは感じていた。
予選参加者の中にも「すごいな」と思う魔法使いは確かにいるのだが、彼らと比べてもマークが劣っているとは思えない。
それとも、予選に参加している者の中に実力を隠している者がいるのか。
レオンがこの予選を見学しに来たのは、純粋に興味があるというのもあったが一番は「暗殺者」を探すためである。
とはいえ、暗殺者がすぐに見つかると思っているわけではなく、予選を突破する者の中で注意しておく必要のある人物を洗い出しておきたいと思ったのである。
「お、最初の突破者が出たぞ」
羨ましそうに予選を見ていたマークが声を上げる。
この予選はトーナメント形式ではなく、ランダムに決められる対戦相手と戦うことになる。
それを複数回繰り返し、通算五勝した時点で本選出場が決まる早い者勝ちだった。
マークの言う通り最初の予選通過者が出たようで観戦していた者たちから歓声があがる。
「五連勝で一位抜けか。実力者なのは間違いないけど『暗殺者』かは微妙だな」
予選会場の真ん中で拳を突き上げる男を見ながらマークが言った。
「そうね。暗殺を企んでいるならあんな目立つことはしなさそうだもの」
とルイズも答えた。
そのあともレオンたちは予選を観戦し続けて怪しい者がいないか見定める。
「おい、あの仮面のやつ」
マークが突然驚いたように声を出す。
予選の出場者に昨日レオンたちに声をかけてきた仮面の男を見つけたのだ。
「あいつ、やっぱり出場者だったんだな」
「相当な実力者だとは思ったけれど、予選からということは有名な魔法使いというわけではないみたいね」
マークとルイズが食い入るように彼の試合を見ている。
試合は一瞬だった。
仮面の男が杖を振ると対戦相手の魔女の身体が場外に飛ばされる。
判定勝ちで仮面の男の勝利となった。
仮面の男はそのあと自分が負かした女性に手を差し出して助け起こすと、特に喜んだ様子も見せずに本選の出場手続きを済ませて消えていく。
本選の出場者枠は彼が最後で埋まってしまったらしく、予選を終了する旨の説明を大会の運営スタッフが行っている。
「あいつがすごく怪しく見えるな。相当な実力者ってのは間違っていなかった」
マークは仮面の男を警戒しているようだった。
レオンたちの位置からでは少し距離がありすぎて仮面の男がどんな魔法を使ったのかはわからなかった。
しかし、終始見せている余裕の態度が彼の実力に裏付けられているような気がした。
仮面で素顔をかくしているというところも含めて怪しいと感じるのだろう。
レオンたちはその日、予選で見た情報を帰ってからまとめ、本選に備えるのだった。
本線の出場者は二十人。その前に行われる予選では数百人の魔法使いがこの町に集まるというからこの大会の規模の大きさがうかがえる。
レオンはこの日、本選参加者を決める予選が始まったと聞いてその見学に赴いた。
マークとルイズ、そしてシミエールも一緒に。
予選はイラリアの町の中央広場で行われる。
広場を数ブロックに区画分けをして、その中で予選出場者が順番に一対一の決闘を繰り広げる。
この時点ですでに町のお祭り感は高まっているようでレオンたちのほかにも見学に来る住人は大勢いた。
「あーあ、いいよな。俺も参加したかったぜ」
安全確保のための策によりかかりながらマークがうらやましそうにしている。
「レオンを守るため」という目的のほかにも世界中から実力者が集まるこの大会に参加したいという純粋な思いがあるようだ。
教皇たちの大胆な手法で参加できなくなってしまった現状を嘆いている。
「マークなら間違いなく本選まで出場できるのにね」
レオンは苦笑しながら言う。
予選の様子を見るに、集まったすべての魔法使いが実力者というわけではないのだとレオンは感じていた。
予選参加者の中にも「すごいな」と思う魔法使いは確かにいるのだが、彼らと比べてもマークが劣っているとは思えない。
それとも、予選に参加している者の中に実力を隠している者がいるのか。
レオンがこの予選を見学しに来たのは、純粋に興味があるというのもあったが一番は「暗殺者」を探すためである。
とはいえ、暗殺者がすぐに見つかると思っているわけではなく、予選を突破する者の中で注意しておく必要のある人物を洗い出しておきたいと思ったのである。
「お、最初の突破者が出たぞ」
羨ましそうに予選を見ていたマークが声を上げる。
この予選はトーナメント形式ではなく、ランダムに決められる対戦相手と戦うことになる。
それを複数回繰り返し、通算五勝した時点で本選出場が決まる早い者勝ちだった。
マークの言う通り最初の予選通過者が出たようで観戦していた者たちから歓声があがる。
「五連勝で一位抜けか。実力者なのは間違いないけど『暗殺者』かは微妙だな」
予選会場の真ん中で拳を突き上げる男を見ながらマークが言った。
「そうね。暗殺を企んでいるならあんな目立つことはしなさそうだもの」
とルイズも答えた。
そのあともレオンたちは予選を観戦し続けて怪しい者がいないか見定める。
「おい、あの仮面のやつ」
マークが突然驚いたように声を出す。
予選の出場者に昨日レオンたちに声をかけてきた仮面の男を見つけたのだ。
「あいつ、やっぱり出場者だったんだな」
「相当な実力者だとは思ったけれど、予選からということは有名な魔法使いというわけではないみたいね」
マークとルイズが食い入るように彼の試合を見ている。
試合は一瞬だった。
仮面の男が杖を振ると対戦相手の魔女の身体が場外に飛ばされる。
判定勝ちで仮面の男の勝利となった。
仮面の男はそのあと自分が負かした女性に手を差し出して助け起こすと、特に喜んだ様子も見せずに本選の出場手続きを済ませて消えていく。
本選の出場者枠は彼が最後で埋まってしまったらしく、予選を終了する旨の説明を大会の運営スタッフが行っている。
「あいつがすごく怪しく見えるな。相当な実力者ってのは間違っていなかった」
マークは仮面の男を警戒しているようだった。
レオンたちの位置からでは少し距離がありすぎて仮面の男がどんな魔法を使ったのかはわからなかった。
しかし、終始見せている余裕の態度が彼の実力に裏付けられているような気がした。
仮面で素顔をかくしているというところも含めて怪しいと感じるのだろう。
レオンたちはその日、予選で見た情報を帰ってからまとめ、本選に備えるのだった。
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