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魔法闘技祭編
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しおりを挟む二回戦の対戦相手、ルッチもレオンを狙う「暗殺者」ではなかった。
一回戦で二十人いた出場者は二回戦では十人に、三回戦ではついに五人となった。
レオンは控え室で次の試合を待つ。
回復したルッチは
「興味本位でお前さんのことを見にきたが、思いの外ハマっちまった。残りの試合も見せてもらうぜ」
と言い残した後、控え室を出て行った。
観客席に移動したようだ。
現在二回戦の試合は全て終了しており、会場では少しの休憩の時間が取られている。
客の熱気は増す一方で控室にいるレオンにも度々会場が沸いているのが聞こえていた。
現在、休憩の時間を使って観客たちは三回戦でどの選手に賭けるかを検討しているのである。
対戦形式は一対一のトーナメント戦。
出場選手が五人だとどうしても一人余る。
その一人はシード選手になるわけだが、その決め方が観客のオッズに委ねられている。
一番人気の最も倍率の低い選手がシードになるのだ。
レオンが控室のベンチに座っていると不意に視線を感じた。
顔を上げると扉のところに大柄の男が立っている。
扉の影からジッとこちらを覗いているのだ。
その異様な光景にレオンは戸惑うが、男はレオンと視線が合うと身を翻してその場を去ってしまう。
「あれは……」
その男には見覚えがあった。
本戦に出場した選手の一人だったはずだ。
ただ、三階戦には進んでおらず一回戦か二回戦のどちらかで敗退した選手のはずだ。
大会に出場した選手は敗退すればもうこの会場に用が無くなる。
無理矢理外に追い出されるようなことは無いのだろうが、今もまだ会場内に残りジッとこちらを見ていたことが気になった。
何か用があったのか、あるいは彼が「暗殺者」なのか。
レオンには自分を殺す機会を伺っていたようにも見えて不気味だった。
その時、今度は肩をトンっと叩かれる。
男の存在に気がついたことでレオンの警戒心は一気に高まっていた。
そこに不意をつかれたため心臓に悪い。
「……よかった。君か」
レオンの肩を叩いたのはにこりと笑う小柄な少女だった。
レオンに出場選手のことを教えてくれたあの少女だ。
ずっと控室にいたのだろうか。扉の前に男が立っていたためにレオンの警戒は扉付近に集中していた。
少女が扉から入ってきたのだったら流石に気がついただろう。
しかし、控室に自分以外の人間がいるとも思っていなかった。
「試合見てたよ。お兄さん強いね」
少女は無邪気に笑うとレオンの隣に腰掛ける。
「いいねいいね。お兄さんと早く戦いたいよ。わくわくするよ」
少女は足をぶらぶらとさせながら言う。その表情は本当に楽しみにしているようだ。
その口ぶりから彼女も三回戦に出場することが決まっているようだがレオンはそのことに少し驚いた。
少女は小柄で見るからにレオンよりも年下だ。
別に年齢で魔法使いとしての実力が決まるわけでは無いが、相当な実力を持つ大人達を倒して勝ち上がっているという事実にびっくりしたのだ。
さらには全く緊張もしていない様子。
もしも対戦することになれば相当苦戦するような気がした。
その幼い見た目はレオンにとってかなり攻撃しづらい。
なるべくなら当たりたくはないかもしれないとレオンは一瞬思ったが
「どうしたの?」
とあどけない笑顔で首を傾げる少女を見て考えを改めた。
これだけ純粋に戦うのを楽しみと言ってくれているのだ。
その容姿を理由に手を抜くなど相手に対して失礼にあたる。
「なんでもないよ」
もしも対戦することになったら全力で臨もうと心に決めてレオンも少女に微笑み返すのだった。
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