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魔法闘技祭編
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しおりを挟む思い通りにはいかなかったレオンが戸惑っている間にユーランは次の行動に移していた。
杖を振り、舞台の上に魔力の壁を作る。
壁はレオンを中心にドーム状に包み、彼を閉じ込める。
「本当は土の魔法で作った方が楽なんだけどよ。試合内容がわかるようにしないと観客から不満が出るからな」
ユーランの作り上げた魔力の壁は実際に壁として高い強度を持ち合わせているものの、見た目的にはほとんど透明で観客の視線を妨げるものではなかった。
レオンはすぐに逃げ出そうとしたが、ユーランのその後の行動はとても早かった。
最初から「そうする」と決めていた動きだ。
ユーランが目をつけたのは二人の戦いだけでなく、それまでの全ての選手の戦いでボロボロに傷ついた舞台上である。
一応各試合ごとに「修復」の魔法がかけられているはずだが、時間との戦いのためか仕事が雑で舞台上にはところどころにひび割れや崩れた舞台の欠片が目立つ。
ユーランはその欠片を浮かせて、レオンと共にドーム状の魔力の壁の中に閉じ込めていたのだ。
その欠片がユーランの操作で真っ直ぐにレオンに向かう。
避けられないようなスピードではない。
レオンは斜め前に転がり、飛んできた石の礫のような欠片を交わした。
これまで多角的に攻めていたユーランの攻撃がこれで終わるはずはない。
レオンは追撃を予測していた。
そして、その通りユーランの攻撃は終わっていなかった。
舞台の欠片はレオンをそれて魔力の壁にぶつかる。
すると、不思議なことに魔力の壁がその欠片を押し返したのだ。
欠片は反射して次にドームの天井にぶつかり、また反射を繰り返す。
「魔力の壁に『反射する性質』を掛け合わせた。その中にいる限り、お前はどこから飛んでくるかもわからない石ころに襲われ続ける」
ユーランの言う通り、石はレオンの肩や足に度々ダメージを与える。
避けようにも欠片の数が多く、どれがどの方向から反射してくるのかレオンにはわからない。
魔法でドーム自体を壊すことも考えたが、その隙をユーランが待っているようにも思えた。
レオンにとって「ドームを壊す」というのは最も簡単で、わかやすい解決策だ。
だからこそ、ユーランもそこに気がついていないわけがなく、ドームを壊せば何か別の仕掛けがあるのではないかと思えてならない。
それを覆すにはユーランの想定していない「何か」をしなければならない。
魔法を高速で打ち出すか? いや、ここまでの戦いで魔法を使うスピードは見抜かれている。「仕掛け」はきっとそれすらも想定した何かだろう。
ドームを壊すのと同時にユーランを攻撃してはどうだ?
いや、それも難しい。
例えば何かの魔法を魔力の壁とユーランのどちらにも当たるように放ったとしても多くの魔力が練り込まれた壁を壊すだけで威力は大きく失われる。
そんな残りもののような魔法ではユーランにダメージを与えられないだろう。
レオンは思案した。
コンマ数秒にも満たない時間だったが、その間にも欠片はレオンの身体のいたるところを傷つける。
ただ、その傷を受ける時間をつくったことでレオンは閃いた。
「『混合魔法』か……。本当にすごい。その基本の魔力の『同時発動』ができないとこの盤面を覆すのは難しそうだね」
レオンはフッと笑う。
追い詰められているような者の表情ではない。
それだけにユーランはその表情に「何かを企んでいるな」と悟る。
「『混合魔法』を試すつもりか? やめておきな。基本の『同時発動』でさえ、俺の故郷では幼い頃から何年も修練してようやく手に入れられる技術だ。一朝一夕でできるようなものじゃないとさっきわかっただろう?」
ユーランの予想通り、レオンは「混合魔法」の基本である「魔法の同時発動」をしようとしていた。
片方の魔法でドームを壊し、もう片方でユーランを攻撃すればいい。
ユーランはレオンにそんな真似ができるわけがないと思い込んでいる。
そここそ、彼の思惑を覆えすチャンスだ。
「あるんだよ、僕にも魔法を同時に使う方法が」
レオンは何かを確信したように言った。
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