【完結】鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

はづも

文字の大きさ
10 / 39
1章 突然のプロポーズまでの道のり

8 妖精姫の再来

しおりを挟む
 ドレスは既に仕立て始めている。
 髪や肌の手入れを担当する者は、近々マニフィカ家に送る。
 パーティー当日は、アークライト家で送迎を行う。
 当日の準備から、解散までのスケジュール。

 そんなことを、アーロンと共に確認していく。
 貴族のお嬢さんらしいことなどしてこなかったマリアベル。
 ドレスの好みを聞かれてもちんぷんかんぷんだったため、デザインはアーロンとアークライト家にお任せしてある。

 先に行われたドレスの打ち合わせと採寸の際、マリアベルがおずおずと

「あのう……。まっっったく、それはもうびっくりするほど、今の流行も、なにが似合うのかもわからないので、お任せしてもよろしいでしょうか……?」

 と言ってきた際には、アーロンは天にも昇る気持ちになったものだ。
 自分好みの、彼女に似合うと思ったドレスを着せていい。
 大事な晴れ舞台で身に着けるものを、自分が選んでいい。
 好きな子が、自分という男の選んだドレスを身に着ける――!
 そういうことだからだ。
 申し訳なさそうにする彼女への、アーロンの答えは。

「もちろん! 任せて!」

 だった。



 ほどなくして、アークライト家の使用人が、マニフィカ家に出入りするようになった。
 普段は、アーロンの姉妹の身の回りの世話を担当しているメイドだそうだ。
 そんな人を私につけていいの!? と思ったものだったが、メイド――ディーナは、なんの不満も疑問もなさそうだ。

「マリアベル様は、アーロン様の大切な人ですから」

 そんなことを言いながら、彼女はマリアベルの世話をする。
 朝と夜の手入れが大事だとかで、ディーナはパーティーの日までマニフィカ家に泊まり込むことになっている。
 入浴中も肌を磨かれ、そのあとは髪にオイルを揉みこまれ、丁寧に乾かされて……。
 同性とはいえ、他者に裸を見せる機会などほとんどなかったマリアベルは、「ひゃー!」と恥ずかしい気持ちになったものだった。

 手入れの効果は、徐々に現れ始めた。
 長さはそれなりだったものの、ぱさぱさのもさもさで、おろして人前に出ることはほとんどなかった髪は、ふわふわのつやつやに。
 かさつき、日に焼けた肌も白く透き通り始めた。
 ふと鏡を見たときに、これは本当に自分なのかと疑ってしまうほどの変わりようだった。

「……お嬢さんっぽい!」

 美しきご令嬢へと変わりつつある本人の感想は、これだったが。



 アーロンとの打ち合わせも重ね、髪や肌の手入れをされ。
 そんな風に過ごしているうちに、あっという間に入学を迎えた。
 入学式の朝。
 制服に着替えたマリアベルは、鏡の前でくるっと一回転する。

 美より修業と戦いよ! だった彼女だが、見た目がきれいになれば、やはり嬉しくはなるもので。
 ふわふわの銀髪に自分で触れて、えへへと笑った。
 こうなるよう手配してくれたアーロンには、大大大感謝である。

 自宅から通学するか、学院内の寮で暮らすか。
 通学に使える馬車などないマリアベルは、迷った。迷ったというか、通学手段がないのだから通常なら寮一択である。
 そんなマリアベルが自宅から学校へ迎える理由。それは――

「お嬢様、アーロン様がお迎えにいらっしゃいましたよ」
「今行くわ!」

 執事の言葉に、マリアベルは元気に返事をした。
 ついでだからと、アーロンが送迎をしてくれることになったからである。
 流石に甘えすぎではと思ったが、学園生活と寮暮らしが同時に始まるのは大変だろう、せめて慣れるまでは送らせて欲しい、と言ってくれたので、彼の優しさを素直に受け取ることにした。
 後々、寮暮らしに移行するつもりだ。

「お待たせしました!」
「……!」

 髪をおろし、制服に身を包んだマリアベルを見て、アーロンが息をのむ。
 マリアベルは、過去、その見目のよさを称賛されていた。
 その頃の輝きが、戻ってきていた。

「……妖精姫」
「アーロン様?」

 アーロンが、ぽつりとなにか呟いた。
 その声はとても小さくて、目の前のマリアベルでも聞きとることができなかった。
 どうかしましたか、というマリアベルの言葉にはっとしたアーロンは、柔和な笑みを浮かべる。

「なんでもないよ。さあ、出発しようか」

 こうして、マリアベルの学園生活が始まる。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

【3話完結】幼馴染改造計画 〜世界を滅ぼすダサ男をプロデュースしたら、私の外堀が埋まってました〜

降魔 鬼灯
恋愛
 推し活に励む令嬢クラウディアは、占いで衝撃の未来を見てしまう。 それは、失恋した幼馴染のアルフレッドが、ショックで世界を滅ぼすという滅亡ルート。 「私への婚約破棄はいいとして、アルフレッドが闇落ちするのは絶対に阻止しなきゃ!」 決意した彼女は、ボサボサ頭で無精髭のダサ男・アルフレッドを、最高にモテる男へと作り変える『幼馴染改造プロデュース』を開始する。 清潔感を叩き込み、髪を切り、最高に似合う服を選び、手作り弁当で胃袋を掴む。 全ては彼に、私以外の素敵な花嫁を見つけてもらうため……だったのに。 「クラウディア、約束だよ。優勝したら、俺に花をくれるって」 騎士交流試合で覚醒した幼馴染が、国中の前で仕掛けた「とんでもない罠」とは!? 天然プロデューサー令嬢と、彼女に一途すぎる最強騎士の、勘違いから始まる逆転溺愛ラブコメ!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

25番目の花嫁 ~妹の身代わりで嫁いだら、冷徹公爵が私を溺愛し始めました~

朝日みらい
恋愛
王都の春。 貴族令嬢リリアーナ・エインズワースは、第一王子ライオネル殿下との婚約を一方的に破棄された。 涙を見せないことが、彼女に残された唯一の誇りだった。だが運命は、彼女を思いがけない方向へ導く。 「氷の公爵」と呼ばれる孤高の男、ヴァレンティーヌ公爵。 二十四人の花嫁候補を断り続けた彼の元へ、「二十五番目の花嫁」として赴いたリリアーナ。 家の体裁のための結婚――そう割り切っていたはずなのに、氷のような瞳の奥に垣間見えた孤独が、彼女の心に小さな炎を灯してゆく。

白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

処理中です...