【完結】鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

はづも

文字の大きさ
16 / 39
2章 学園生活

4 ようこそ魔法研究会へ

しおりを挟む
 その日の放課後、マリアベルはアーロンとともに魔法研究会の部室を訪れた。

「場所もわからないだろうから、案内するよ」
 
 などと言ってついてきたアーロンだが、本音は「魔法オタクたちからベルを守りたい」だった。
 扉を開けば、そこには――

「マリアベルちゃーん! 魔法研究会へ、ようこそ!」

 魔法特待生の来訪に大喜びのミゲルと、期待の目を向ける会員たち。
 それに、おずおずと控えめにマリアベルに視線をやる、女の子の姿も。
 チェリーブロンドの髪に、ピンク色の瞳の、大人しそうな子だ。
 肩につかないほどの長さの髪は、ふわっとしていて愛らしい。
 まだ慣れていないのか、他の会員とは様子が違う。
 マリアベル、ぴんとくる。あの子が1年の特待生ね! と。

 その後、マリアベルは会員たちにもみくちゃにされた。
 飛んできた質問は、ミゲルがしてきたものとほぼ同じ。
 流石は授業だけでは足りない、魔法オタクの集団である。
 家柄も、学年も、性別も関係なく、みんながマリアベルを歓迎し、魔法の話をふってくる。

 家の事情で領地に引きこもり、学院に通うようになった今も、まだ友達のいないマリアベルは、こんなこと初めてで。
 同年代の人たちとわいわいするこの時間を、楽しい、と思った。
 魔法特待の子とはまだあまり話せていないが、もうこの時点で、マリアベルはこの研究会に入りたくなってしまっていた。

「……あの、アーロン様」
「なんだい?」

 近づきすぎた男子を引き剥がしたりもしつつ、マリアベルを見守っていたアーロン。
 マリアベルの表情の変化や、楽しそうな様子から、彼女がなにを言いたいのかは、もうわかっていた。

「送迎していただいている身で、申し訳ないのですが……。私、ここに入りたいです」
「……そっか。時間のことは気にしなくて大丈夫だから、きみは、きみの望むように……」
「そうだよお! 時間なんて気にすることないよ! アーロンだって部活に入ってるんだから!」
「え!?」

 そんな話は聞いていなかったマリアベル、ミゲルの言葉に驚いた。
 
「で、でも、今まで、授業が終わったらすぐ一緒に帰ってましたよね!?」
「あ、あー……。ええと……。たまには休養も必要かなーと……」

 アーロンは、武の家の人間らしく、武術系の部活を兼部している。
 そのことを黙って、マリアベルの送迎に名乗りをあげたアーロン。
 彼は新学期に入ってからずっと、部活を休んでいた。
 とはいえ、まだ2週目が始まったばかりだから、たいした期間ではないのだが。
 慌てるマリアベルと、しどろもどろなアーロン。
 制服姿の二人が並ぶ姿を見て、ミゲルはぴんときた。

「ああ……。ベルちゃんの送迎してるんだっけ? 1年生の彼女に合わせて部活休んでた感じ? 制服なのも、ベルちゃんとお揃いがよかったってわけだ」
「ちょっと黙ってろ。ベルちゃん呼びもやめろ」
「制服……? そういえば、さっき、前は私服登校だったって」
「……お揃いに、したかったんだ」
「え?」
「ベルが制服登校だから、じゃあ、僕もって……」

 素直にこう答えてから、アーロンはちょっとだけ後悔した。
 好きな子とお揃い! 勝手にペアルック! とか流石にちょっと気持ち悪くないか? と。
 しかしマリアベルは、「そうだったんですね」と朗らかだ。
 
「アーロン様とお揃い、嬉しいです!」

 無邪気にそんなことまで言い出すものだから。
 アーロンは、彼女の言葉を深読みしそうになり、どきっとした。
 ちなみに、マリアベルの発言に深い意味はない。
 まあ、幼馴染が自分とお揃いにしたことを喜んでいる時点で、彼のことを嫌ってはいないし、「好き」ではあるのだが。
 彼に対して抱く「好き」の種類を、マリアベル自身もよくわかっていない。

「べ、ベル。それって、どういう……」

 お揃いが嬉しいって、つまりそういうことでは?
 もしかして、好意……を少しは抱いてくれている!?
 てれてれのアーロンが、マリアベルの意図を聞き出そうとしたとき。

 ととと、と一人の女の子が近づいてきた。
 アーロンとミゲルという公爵家の人間同士が話し始めたため、ちょっとだけ静かになったこのタイミングを狙い、彼女はやってきたのだ。

「あ、あの……。マリアベル様、ですよね」
「え、ええ!」

 髪も瞳もピンクの、可愛らしいお嬢さん。
 小柄で、控えめな雰囲気で。男であれば、彼女を守りたい、と思ってしまうことだろう。
 彼女はマリアベルと同じく、学院の制服に身を包んでいる。

「おお、コレットちゃん! こちら、きみと同じ魔法特待の、マリアベル・マニフィカ伯爵令嬢だよ! やっと連れてこれたんだ! アーロンのやつにずっと邪魔されててねえ~」

 もっと早く声をかけたかったのにさあ、と愚痴を言うミゲルを、アーロンがどついた。
 マリアベルのことが大好きなくせに、お昼休みもずーっと一緒! ではなかったアーロン。
 実は、ミゲルがマリアベルの元へ向かおうとするのを食い止めていたのである。
 今日、ついに折れてミゲルにマリアベルを紹介したのだった。

「コレット・コルケットと申します。その……同じ魔法特待生だと聞いて、ずっとお話したいと思っていたのですが、なかなか勇気が出なくて……」

 口に手をあて、もじもじとするコレットは、同性の目から見てもたいそう愛らしかった。

「この学院は無礼講とはいえ、ベルちゃんも伯爵家のご令嬢だからねえ」

 貧乏娘とはいえ、マリアベルは伯爵家のご令嬢で、コレットは平民の出。
 ミゲルの言う通り、この学院では家柄による力関係などはさほど影響せず、学生同士、対等な立場で接することができるとされている。
 しかし、実際には、権力を振りかざす高位貴族もいるし、出自ゆえに居心地の悪さを感じる者もいる。

「平民の出の私が、マリアベル様に話しかけるなんて、本当にいいのかなって……」

 そう話すコレットは、俯き、自身なさげで。
 マリアベルの前に出てきたことを、後悔し始めているのかもしれない。
 だんだんと、声がしぼんでいく。
 そんなコレットに対する、マリアベルの返しは。

「大歓迎です~~!」

 だった。
 両手を合わせ、ちょっと泣きそうになっている。
 マリアベルのあまりの感激っぷりに、コレットも呆気にとられている。
 マリアベルは、魔法研究会にて、入学後初めてのお友達をゲットした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

【3話完結】幼馴染改造計画 〜世界を滅ぼすダサ男をプロデュースしたら、私の外堀が埋まってました〜

降魔 鬼灯
恋愛
 推し活に励む令嬢クラウディアは、占いで衝撃の未来を見てしまう。 それは、失恋した幼馴染のアルフレッドが、ショックで世界を滅ぼすという滅亡ルート。 「私への婚約破棄はいいとして、アルフレッドが闇落ちするのは絶対に阻止しなきゃ!」 決意した彼女は、ボサボサ頭で無精髭のダサ男・アルフレッドを、最高にモテる男へと作り変える『幼馴染改造プロデュース』を開始する。 清潔感を叩き込み、髪を切り、最高に似合う服を選び、手作り弁当で胃袋を掴む。 全ては彼に、私以外の素敵な花嫁を見つけてもらうため……だったのに。 「クラウディア、約束だよ。優勝したら、俺に花をくれるって」 騎士交流試合で覚醒した幼馴染が、国中の前で仕掛けた「とんでもない罠」とは!? 天然プロデューサー令嬢と、彼女に一途すぎる最強騎士の、勘違いから始まる逆転溺愛ラブコメ!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

25番目の花嫁 ~妹の身代わりで嫁いだら、冷徹公爵が私を溺愛し始めました~

朝日みらい
恋愛
王都の春。 貴族令嬢リリアーナ・エインズワースは、第一王子ライオネル殿下との婚約を一方的に破棄された。 涙を見せないことが、彼女に残された唯一の誇りだった。だが運命は、彼女を思いがけない方向へ導く。 「氷の公爵」と呼ばれる孤高の男、ヴァレンティーヌ公爵。 二十四人の花嫁候補を断り続けた彼の元へ、「二十五番目の花嫁」として赴いたリリアーナ。 家の体裁のための結婚――そう割り切っていたはずなのに、氷のような瞳の奥に垣間見えた孤独が、彼女の心に小さな炎を灯してゆく。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

処理中です...