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2章 学園生活
10 コレット・コルケットはわからない
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コレット・コルケットは、ごく普通の田舎町の、裕福ではないが特別に貧乏なわけでもない家庭に生まれた。
家族仲は良好で、妹と弟がいる。
まだ幼い弟妹と外で遊んでいたとき、はしゃいだ弟に向かって農具が倒れてきて、弟は大きな怪我をした。
家庭にある傷薬や包帯では、とても治せないような傷で。
倒れてうめく弟から、どくどくと流れる血を見て、コレットは誰かに助けを求めようとしたが、近くに大人はおらず。
どうにかして助けたい、治したいと強く願いながら患部の止血をしていたとき、コレットの手がまばゆく光り始めた。
これが、彼女が初めて治癒魔法を使用した瞬間だった。
魔力を持つ者は珍しくもないが――というより、量を考慮しないなら、ほとんどの者が有しているのであるが――魔法の勉強をする機会のある者は限られている。
魔法を使うには、それなりの訓練が必要なのだ。
なにも独占しているわけではないが、教育を受ける機会があるのも、魔力量が多い傾向にあるのも貴族であるため、魔法は貴族が使うもの、と認識している者も多い。
平民にすぎないコレットには、魔法を学ぶ場などなかったし、魔力量の測定なんてこともしたことがなかった。
なのに、医者が必要になるような怪我を、治癒術であっという間に直してしまったのだ。
気持ち1つで高度な治癒術を扱ってみせた彼女には、天賦の才があるとしか言いようがない。
コレットが治癒術を使った話は瞬く間に広がって、町の魔法使いの元で指導を受けるようになり。
気が付けば、師匠の推薦によって、ソルシエ王立学院への特待入学が決まっていた。
学院の寮で暮らすことになるコレットを、家族は泣きながら「おめでとう」「いってらっしゃい」と見送ってくれた。
貴族の多い学校だから、平民でお金持ちの生まれでもないコレットは、他の生徒たちから嫌みを言われたりもしていた。
それでも、ミゲルが早くに魔法研究会に誘ってくれたおかげで、なんとか居場所もでき。
魔研で知り合った魔法特待生同士のマリアベル・マニフィカとも、仲良くなることができた。
貴族階級でありながらも、平民の自分を下に見たりせず、友人として扱ってくれるマリアベルのことを、すぐに好きになった。
お弁当を持参していることを知り、一緒にランチをするようにもなって。
マリアベルと二人で過ごす昼休みが、コレットの毎日の楽しみになっていた。
そして最近になり、そこに国の剣とまで言われる名門公爵家の嫡男、アーロン・アークライト――平民のコレットからすれば、雲の上の存在である――が加わった。
聞けば、二人は幼馴染で、アーロンは昔からマニフィカ家に出入りしているそうだ。
アーロンがコレットを邪険に扱うようなそぶりはなく、むしろ、マリアベルの友人として歓迎してくれているようだったが……。
コレットは、思うのだ。
私、お邪魔なのでは……?
そもそもこの二人、どういう関係なの……? どこまで進んでるの……?
と。
平民のコレット。アーロンに会ったのも、彼の存在を知ったのも、学院入学後。
それでも、彼がマリアベルに向ける気持ちには、すぐに気が付いた。
貴族は私服登校の人が多いのに、マリアベル入学後からアーロンも制服登校! ちなみに、これは魔研会長で、アーロンの昔なじみの友人でもあるミゲル情報である。
学食の代金なんて簡単に払えるはずなのに、お弁当を持参して一緒に食べている!
寮もあるのに、毎日マリアベルをマニフィカ家まで送迎!
これだけでも「そりゃわかるだろ!」状態だが、さらには――。
「ベル。今日もきれいだね。でも、きみは昔からずっと輝いてるよ」
「お弁当、手作りなんだよね。ベルはいつだって頑張り屋さんだ」
「よかったら、おかずを交換しない?」
「魔研での活動はどう? 実は僕も、武術だけでなく魔法の腕ももっと磨くべきだと思って。入会を考えてるんだ」
ベル、ベル、ベル、と昼休み中ずっと、マリアベルに笑顔を向け続けているのである。
コレットから見たって、アーロンはたいそうな美丈夫だ。
その金の瞳にも、心地よいテノールボイスにも、たしかな愛情がにじんでいて。
甘くとろけるはちみつ色の瞳は、自分に向けられたものではないとわかっている。
なのに、近くにいるだけでドキっとしてしまう。
他の女生徒がアーロンに憧れ、きゃあきゃあと盛り上がるのも理解できる。
マリアベルに合わせた行動の数々と、この態度。
アーロン様って、マリアベル様のことが好きなんだな、と気が付かないほうが無理である。
これでわからない者がいたら、相当に鈍感か、恋愛事への興味がこれっぽっちもない人のどちらかだろう。
そして、それだけの好意を向けられるマリアベルはと言えば。
ときめく様子もなく、普通に対応し続けている。
二人を間近で見続けるコレットからすれば、「ええ……? どういうこと……?」状態である。
もっとなんかこう、照れるとか、マリアベルからも甘い言葉や態度を返すとか、そういうものがあってもいいのではないだろうか。
アーロンの一方通行のようにも見えるが、マリアベルが嫌がる様子はなく。
かといって、同じ気持ちを返しているようにも見えなくて。
二人と最近知り合ったばかりのコレットは、混乱していた。
家族仲は良好で、妹と弟がいる。
まだ幼い弟妹と外で遊んでいたとき、はしゃいだ弟に向かって農具が倒れてきて、弟は大きな怪我をした。
家庭にある傷薬や包帯では、とても治せないような傷で。
倒れてうめく弟から、どくどくと流れる血を見て、コレットは誰かに助けを求めようとしたが、近くに大人はおらず。
どうにかして助けたい、治したいと強く願いながら患部の止血をしていたとき、コレットの手がまばゆく光り始めた。
これが、彼女が初めて治癒魔法を使用した瞬間だった。
魔力を持つ者は珍しくもないが――というより、量を考慮しないなら、ほとんどの者が有しているのであるが――魔法の勉強をする機会のある者は限られている。
魔法を使うには、それなりの訓練が必要なのだ。
なにも独占しているわけではないが、教育を受ける機会があるのも、魔力量が多い傾向にあるのも貴族であるため、魔法は貴族が使うもの、と認識している者も多い。
平民にすぎないコレットには、魔法を学ぶ場などなかったし、魔力量の測定なんてこともしたことがなかった。
なのに、医者が必要になるような怪我を、治癒術であっという間に直してしまったのだ。
気持ち1つで高度な治癒術を扱ってみせた彼女には、天賦の才があるとしか言いようがない。
コレットが治癒術を使った話は瞬く間に広がって、町の魔法使いの元で指導を受けるようになり。
気が付けば、師匠の推薦によって、ソルシエ王立学院への特待入学が決まっていた。
学院の寮で暮らすことになるコレットを、家族は泣きながら「おめでとう」「いってらっしゃい」と見送ってくれた。
貴族の多い学校だから、平民でお金持ちの生まれでもないコレットは、他の生徒たちから嫌みを言われたりもしていた。
それでも、ミゲルが早くに魔法研究会に誘ってくれたおかげで、なんとか居場所もでき。
魔研で知り合った魔法特待生同士のマリアベル・マニフィカとも、仲良くなることができた。
貴族階級でありながらも、平民の自分を下に見たりせず、友人として扱ってくれるマリアベルのことを、すぐに好きになった。
お弁当を持参していることを知り、一緒にランチをするようにもなって。
マリアベルと二人で過ごす昼休みが、コレットの毎日の楽しみになっていた。
そして最近になり、そこに国の剣とまで言われる名門公爵家の嫡男、アーロン・アークライト――平民のコレットからすれば、雲の上の存在である――が加わった。
聞けば、二人は幼馴染で、アーロンは昔からマニフィカ家に出入りしているそうだ。
アーロンがコレットを邪険に扱うようなそぶりはなく、むしろ、マリアベルの友人として歓迎してくれているようだったが……。
コレットは、思うのだ。
私、お邪魔なのでは……?
そもそもこの二人、どういう関係なの……? どこまで進んでるの……?
と。
平民のコレット。アーロンに会ったのも、彼の存在を知ったのも、学院入学後。
それでも、彼がマリアベルに向ける気持ちには、すぐに気が付いた。
貴族は私服登校の人が多いのに、マリアベル入学後からアーロンも制服登校! ちなみに、これは魔研会長で、アーロンの昔なじみの友人でもあるミゲル情報である。
学食の代金なんて簡単に払えるはずなのに、お弁当を持参して一緒に食べている!
寮もあるのに、毎日マリアベルをマニフィカ家まで送迎!
これだけでも「そりゃわかるだろ!」状態だが、さらには――。
「ベル。今日もきれいだね。でも、きみは昔からずっと輝いてるよ」
「お弁当、手作りなんだよね。ベルはいつだって頑張り屋さんだ」
「よかったら、おかずを交換しない?」
「魔研での活動はどう? 実は僕も、武術だけでなく魔法の腕ももっと磨くべきだと思って。入会を考えてるんだ」
ベル、ベル、ベル、と昼休み中ずっと、マリアベルに笑顔を向け続けているのである。
コレットから見たって、アーロンはたいそうな美丈夫だ。
その金の瞳にも、心地よいテノールボイスにも、たしかな愛情がにじんでいて。
甘くとろけるはちみつ色の瞳は、自分に向けられたものではないとわかっている。
なのに、近くにいるだけでドキっとしてしまう。
他の女生徒がアーロンに憧れ、きゃあきゃあと盛り上がるのも理解できる。
マリアベルに合わせた行動の数々と、この態度。
アーロン様って、マリアベル様のことが好きなんだな、と気が付かないほうが無理である。
これでわからない者がいたら、相当に鈍感か、恋愛事への興味がこれっぽっちもない人のどちらかだろう。
そして、それだけの好意を向けられるマリアベルはと言えば。
ときめく様子もなく、普通に対応し続けている。
二人を間近で見続けるコレットからすれば、「ええ……? どういうこと……?」状態である。
もっとなんかこう、照れるとか、マリアベルからも甘い言葉や態度を返すとか、そういうものがあってもいいのではないだろうか。
アーロンの一方通行のようにも見えるが、マリアベルが嫌がる様子はなく。
かといって、同じ気持ちを返しているようにも見えなくて。
二人と最近知り合ったばかりのコレットは、混乱していた。
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