39 / 39
エピローグ
二人の歩幅で、未来へと
しおりを挟む
あの合同授業を機に、二人の仲は、ゆっくりと、けれど着実に前に進み始めた。
いつしかマリアベルは、自分の中に嫉妬心があることや、彼に笑顔を向けられたい、優しく触れて欲しい、と思っていることに気が付いて。
アーロンは、照れや甘え、嫉妬心をだんだんと見せるようになった彼女が愛おしくてたまらなかった。
マリアベルとアーロンのあいだに甘い雰囲気が漂い始めたことに、最初に気が付いたのはクラリスだ。
元々勝気な彼女は、
「ベルお姉さまから離れてくださいませ!」
とアーロンにつっかかったが、
「婚約者なのに、なにか問題が?」
と、笑顔でかわされてぐっと言葉に詰まっていた。
まあ、人目のある場所でべたべたしすぎたり、甘ったるい雰囲気を出しすぎたりするのがよくないのは確かなため、クラリスの苦言もある程度は聞き入れられた。
彼女はマリアベルをいじめようとした過去を持ち、今はアーロンを敵視しているが、言っていること自体はさほど間違っていなかったりもするのだ。
彼女も在学中に婚約者が決まったが、それはそれ、これはこれで、マリアベルに憧れる気持ちは変わらない……らしい。
コレットは、もう完全に友人たちを見守るモードだった。
昼休みなどは、アーロンに食って掛かるクラリスを眺めながら、
「今日もやってますねえ……」
と、のほほんとしている。
元々魔法特待生であったことに加えて、魔法の名家のミゲルの推薦もあり、王立学院卒業後は、魔法省で働くことが早期に決まっていた。
王都に住むことになるため、卒業後も、学院でできた友人たちと顔を合わせる機会があるだろう。
特にマリアベルは、正式にアーロンと結婚したあとも、魔法省に出入りすることになっている。
こちらもミゲルの推薦……もとい、彼女に奥様業だけをさせるわけにはいかない! この才能を逃すべきではない! という熱弁のもとに決まったことである。
貴族と平民という違いこそあれど、魔法特待生二人の関係は、これからも続いていく。
マリアベルの王立学院入学から2年近い時が経ち、アーロンの卒業が近づいたころには。
「……アーロン様」
馬車の中で二人きりになると、マリアベルのほうから、ぽすん、と、アーロンの肩に身体を預けてくるようになったりもした。
彼女がアーロンに対して「好き」とはっきり口にすることは少ないが、こういった行動や表情から、気持ちを読み取ることはできた。
まだ戸惑いはあるようだが、彼女は元々、アーロンのことが大好きだったのである。
その感情に、恋、という名前がついていなかっただけ。気が付いていなかっただけ。
婚約者、という関係を与えられ、他の女性への嫉妬心も感じるようになったマリアベルは、彼女なりのやり方とスピードで、アーロンに自分の気持ちを伝えるようになっていた。
幼い頃から大好きだった子にそんなことをされたアーロンは、もちろん幸せいっぱいで。
いつだかに彼女が言っていた「あなたの厚意に報いたい」という話は、とっくに達成されているのだが、マリアベルがそのことに気が付いているかどうかは、定かではない。
このソルシエ王国の貴族は、20歳前後で正式に婚姻を結ぶことが多い。
マリアベルとアーロンも、互いに学院を卒業した数年後には、結婚することになるだろう。
こんなふうに、触れ合う機会の増えた二人だったが、まだ、一線は超えていない。
学生とはいえ、想い合う婚約者なのであれば、既に関係を持っている者たちも存在はする。
けれどアーロンは、正式に結婚するまで待つつもりだった。
マリアベルが自分に対して嫉妬心や好意を見せるようになるまで、10年ほど待ち続けたのだ。
今更、急いてことを進めるつもりはなかった。
彼女の自己評価の低さについても、これからたっぷりと時間をかけて、きみは素晴らしい人だ、と伝えていくつもりである。
想いは、通じ合ったのだ。
急ぎすぎて彼女に負担をかけたりせず、今まで通り、ゆっくりと進んでいけばいい。
アーロンがそんな考え方だったため、学院卒業後から結婚までのあいだのマリアベルは、なかなか手を出してくれない彼に悶々とすることになり、これまでとは立場が逆転するのであるが……。
それはまた、ちょっと先の未来のお話。
いつしかマリアベルは、自分の中に嫉妬心があることや、彼に笑顔を向けられたい、優しく触れて欲しい、と思っていることに気が付いて。
アーロンは、照れや甘え、嫉妬心をだんだんと見せるようになった彼女が愛おしくてたまらなかった。
マリアベルとアーロンのあいだに甘い雰囲気が漂い始めたことに、最初に気が付いたのはクラリスだ。
元々勝気な彼女は、
「ベルお姉さまから離れてくださいませ!」
とアーロンにつっかかったが、
「婚約者なのに、なにか問題が?」
と、笑顔でかわされてぐっと言葉に詰まっていた。
まあ、人目のある場所でべたべたしすぎたり、甘ったるい雰囲気を出しすぎたりするのがよくないのは確かなため、クラリスの苦言もある程度は聞き入れられた。
彼女はマリアベルをいじめようとした過去を持ち、今はアーロンを敵視しているが、言っていること自体はさほど間違っていなかったりもするのだ。
彼女も在学中に婚約者が決まったが、それはそれ、これはこれで、マリアベルに憧れる気持ちは変わらない……らしい。
コレットは、もう完全に友人たちを見守るモードだった。
昼休みなどは、アーロンに食って掛かるクラリスを眺めながら、
「今日もやってますねえ……」
と、のほほんとしている。
元々魔法特待生であったことに加えて、魔法の名家のミゲルの推薦もあり、王立学院卒業後は、魔法省で働くことが早期に決まっていた。
王都に住むことになるため、卒業後も、学院でできた友人たちと顔を合わせる機会があるだろう。
特にマリアベルは、正式にアーロンと結婚したあとも、魔法省に出入りすることになっている。
こちらもミゲルの推薦……もとい、彼女に奥様業だけをさせるわけにはいかない! この才能を逃すべきではない! という熱弁のもとに決まったことである。
貴族と平民という違いこそあれど、魔法特待生二人の関係は、これからも続いていく。
マリアベルの王立学院入学から2年近い時が経ち、アーロンの卒業が近づいたころには。
「……アーロン様」
馬車の中で二人きりになると、マリアベルのほうから、ぽすん、と、アーロンの肩に身体を預けてくるようになったりもした。
彼女がアーロンに対して「好き」とはっきり口にすることは少ないが、こういった行動や表情から、気持ちを読み取ることはできた。
まだ戸惑いはあるようだが、彼女は元々、アーロンのことが大好きだったのである。
その感情に、恋、という名前がついていなかっただけ。気が付いていなかっただけ。
婚約者、という関係を与えられ、他の女性への嫉妬心も感じるようになったマリアベルは、彼女なりのやり方とスピードで、アーロンに自分の気持ちを伝えるようになっていた。
幼い頃から大好きだった子にそんなことをされたアーロンは、もちろん幸せいっぱいで。
いつだかに彼女が言っていた「あなたの厚意に報いたい」という話は、とっくに達成されているのだが、マリアベルがそのことに気が付いているかどうかは、定かではない。
このソルシエ王国の貴族は、20歳前後で正式に婚姻を結ぶことが多い。
マリアベルとアーロンも、互いに学院を卒業した数年後には、結婚することになるだろう。
こんなふうに、触れ合う機会の増えた二人だったが、まだ、一線は超えていない。
学生とはいえ、想い合う婚約者なのであれば、既に関係を持っている者たちも存在はする。
けれどアーロンは、正式に結婚するまで待つつもりだった。
マリアベルが自分に対して嫉妬心や好意を見せるようになるまで、10年ほど待ち続けたのだ。
今更、急いてことを進めるつもりはなかった。
彼女の自己評価の低さについても、これからたっぷりと時間をかけて、きみは素晴らしい人だ、と伝えていくつもりである。
想いは、通じ合ったのだ。
急ぎすぎて彼女に負担をかけたりせず、今まで通り、ゆっくりと進んでいけばいい。
アーロンがそんな考え方だったため、学院卒業後から結婚までのあいだのマリアベルは、なかなか手を出してくれない彼に悶々とすることになり、これまでとは立場が逆転するのであるが……。
それはまた、ちょっと先の未来のお話。
13
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
【3話完結】幼馴染改造計画 〜世界を滅ぼすダサ男をプロデュースしたら、私の外堀が埋まってました〜
降魔 鬼灯
恋愛
推し活に励む令嬢クラウディアは、占いで衝撃の未来を見てしまう。 それは、失恋した幼馴染のアルフレッドが、ショックで世界を滅ぼすという滅亡ルート。
「私への婚約破棄はいいとして、アルフレッドが闇落ちするのは絶対に阻止しなきゃ!」
決意した彼女は、ボサボサ頭で無精髭のダサ男・アルフレッドを、最高にモテる男へと作り変える『幼馴染改造プロデュース』を開始する。 清潔感を叩き込み、髪を切り、最高に似合う服を選び、手作り弁当で胃袋を掴む。 全ては彼に、私以外の素敵な花嫁を見つけてもらうため……だったのに。
「クラウディア、約束だよ。優勝したら、俺に花をくれるって」
騎士交流試合で覚醒した幼馴染が、国中の前で仕掛けた「とんでもない罠」とは!? 天然プロデューサー令嬢と、彼女に一途すぎる最強騎士の、勘違いから始まる逆転溺愛ラブコメ!
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
25番目の花嫁 ~妹の身代わりで嫁いだら、冷徹公爵が私を溺愛し始めました~
朝日みらい
恋愛
王都の春。
貴族令嬢リリアーナ・エインズワースは、第一王子ライオネル殿下との婚約を一方的に破棄された。
涙を見せないことが、彼女に残された唯一の誇りだった。だが運命は、彼女を思いがけない方向へ導く。
「氷の公爵」と呼ばれる孤高の男、ヴァレンティーヌ公爵。
二十四人の花嫁候補を断り続けた彼の元へ、「二十五番目の花嫁」として赴いたリリアーナ。
家の体裁のための結婚――そう割り切っていたはずなのに、氷のような瞳の奥に垣間見えた孤独が、彼女の心に小さな炎を灯してゆく。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。
同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。
おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。
幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。
しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。
実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。
それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ご感想、ありがとうございます!
番外編…!いちゃいちゃ…!書きたいですね…!笑
ベルに迫られて「結婚まで待つ」という決意をぐらんぐらんにされるアーロン、お届けできればと思います☺️
2人を見守っていただきありがとうございました!
ご感想、ありがとうございます!
そう言っていただけますと嬉しいです…!
書いてよかった、と思えます。
鮮血(鼻血)のアーロン…焦れたベルに押されて鼻血を…!?
ご感想、ありがとうございます!
自分の気持ちに少しずつ気が付いていって、ベルなりに頑張っております…!
学園卒業後~結婚までのあいだの二人の様子については、後日番外編を投稿できたらいいなと思います。
アーロン側は唇へのキスも結婚式までとっておく気ですね…笑
ニンマリ笑 そう言っていただけますと嬉しいです、ありがとうございます…!