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婚約解消の原因は、テオバルトではなく私・アメリにあった。
この魔法国家ソルマギアでは、ほとんどの王侯貴族が魔法を使うことができる。
炎、水、風、地の四属性が基本で、たまにその四種には分類できない特殊能力持ちが生まれる。
魔力を持つ者同士が結婚し子を為したのが今の貴族の源流であるため、魔法を使える者の多くは貴族だ。
魔法使いとしての能力が抜きんでていれば、平民が貴族と結婚することも少なくない。
この国の人々は、それほどまでに魔法使いとしての力を重視するのだ。
魔力の有無やその量がわかるのは、10歳ほどのころ。
それぐらいの年の貴族の子供を対象に、水晶玉を用いた能力検査を行う。
そのとき、流し込んだ魔力で水晶玉を割り、
「素晴らしい!」
「天才だ!」
「きっと王家に嫁ぐことになる」
と担ぎ上げられたのがアメリ・フローレイン……つまり私だ。
水晶が耐えられないほどの魔力を持つ者は、数年に一人見つかるかどうか。
私の年にはもう一人、子爵家の女の子が水晶を割ったそうでそちらも大いに話題になっていた。
同い年の第一王子・テオバルトの婚約者は、私たちのどちらかから選ばれるだろうとみなが噂して……。
結局、魔法の名家でもある伯爵家生まれの私が選択された。
ここまではよかったのだ。
問題はその数年後。魔力量だけでなく、どんな能力を持つのかがわかってからだ。
魔力の有無と属性は10歳前後で判明するが、実際に魔法が使えるようになるのは少しあとなのだ。
水晶が赤く光ったら炎属性、青く光ったら水、と色と属性を紐付けることができる。
私のときは……無色。特殊能力枠だった。
四属性に分類できない場合、どんな力が発現するかわからない。
実用性のない力のこともあれば、国家を揺るがすほどの能力を秘めている場合もある。
私は後者のはずだと期待され、能力が発現するときを皆が今か今かと待っていたけれど……。
12歳の誕生日を迎える直前に私が使った魔法は、花を咲かせる。たったそれだけだった。
それでも、最初はみな大盛り上がりだったのだ。
「食料問題が解決する!」
「薬効のある花を大量に咲かせれば、薬が作れる!」
「農作物を育てるために使う水を減らせる!」
なんてふうに。
種も水もない場所に、ぽんっと花を咲かせる力。
必要なのは私の魔力のみ。その魔力は底なしに近い。
みんな沸いて沸いて、救世主だ、王子の婚約者にふさわしいって、これでもかというほどに私を褒めたたえた。
このままいけば、私と結婚するテオバルトも王太子決定だろうと言われたりもした。
けれどその波も、すぐに引くことになる。
私が出した花は数日で消える。育つこともなければ、香りも効能もない。
ただただ、花の見た目をした魔力の塊がぽんと出てくるだけ。
私の能力は、ただ綺麗なだけで実用性は皆無だったのだ。
最初とは打って変わって、こんな力が王家に遺伝したらどうするの、と聞こえるように言われるようにもなった。
そして、私の力がなんの役にも立たないことがわかって間もなく――。
「すまない。アメリ。僕との婚約を解消してほしい」
第一王子テオバルトに、婚約を解消された。
この魔法国家ソルマギアでは、ほとんどの王侯貴族が魔法を使うことができる。
炎、水、風、地の四属性が基本で、たまにその四種には分類できない特殊能力持ちが生まれる。
魔力を持つ者同士が結婚し子を為したのが今の貴族の源流であるため、魔法を使える者の多くは貴族だ。
魔法使いとしての能力が抜きんでていれば、平民が貴族と結婚することも少なくない。
この国の人々は、それほどまでに魔法使いとしての力を重視するのだ。
魔力の有無やその量がわかるのは、10歳ほどのころ。
それぐらいの年の貴族の子供を対象に、水晶玉を用いた能力検査を行う。
そのとき、流し込んだ魔力で水晶玉を割り、
「素晴らしい!」
「天才だ!」
「きっと王家に嫁ぐことになる」
と担ぎ上げられたのがアメリ・フローレイン……つまり私だ。
水晶が耐えられないほどの魔力を持つ者は、数年に一人見つかるかどうか。
私の年にはもう一人、子爵家の女の子が水晶を割ったそうでそちらも大いに話題になっていた。
同い年の第一王子・テオバルトの婚約者は、私たちのどちらかから選ばれるだろうとみなが噂して……。
結局、魔法の名家でもある伯爵家生まれの私が選択された。
ここまではよかったのだ。
問題はその数年後。魔力量だけでなく、どんな能力を持つのかがわかってからだ。
魔力の有無と属性は10歳前後で判明するが、実際に魔法が使えるようになるのは少しあとなのだ。
水晶が赤く光ったら炎属性、青く光ったら水、と色と属性を紐付けることができる。
私のときは……無色。特殊能力枠だった。
四属性に分類できない場合、どんな力が発現するかわからない。
実用性のない力のこともあれば、国家を揺るがすほどの能力を秘めている場合もある。
私は後者のはずだと期待され、能力が発現するときを皆が今か今かと待っていたけれど……。
12歳の誕生日を迎える直前に私が使った魔法は、花を咲かせる。たったそれだけだった。
それでも、最初はみな大盛り上がりだったのだ。
「食料問題が解決する!」
「薬効のある花を大量に咲かせれば、薬が作れる!」
「農作物を育てるために使う水を減らせる!」
なんてふうに。
種も水もない場所に、ぽんっと花を咲かせる力。
必要なのは私の魔力のみ。その魔力は底なしに近い。
みんな沸いて沸いて、救世主だ、王子の婚約者にふさわしいって、これでもかというほどに私を褒めたたえた。
このままいけば、私と結婚するテオバルトも王太子決定だろうと言われたりもした。
けれどその波も、すぐに引くことになる。
私が出した花は数日で消える。育つこともなければ、香りも効能もない。
ただただ、花の見た目をした魔力の塊がぽんと出てくるだけ。
私の能力は、ただ綺麗なだけで実用性は皆無だったのだ。
最初とは打って変わって、こんな力が王家に遺伝したらどうするの、と聞こえるように言われるようにもなった。
そして、私の力がなんの役にも立たないことがわかって間もなく――。
「すまない。アメリ。僕との婚約を解消してほしい」
第一王子テオバルトに、婚約を解消された。
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