【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話

凍星

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第6章 ◇問題発生⁉の 2nd WEEK

◆2 泉水Side:新しい朝の景色②

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まるで現実味はないけど………でも実は一度、横浜市のパートナー申請について調べたことがある僕は、その言葉に少なからずドキリとしてしまったのだ。

もしも、ずっと一緒にいられるなら――
なんて。
そういう形を取ってもいいのかなとか、ふと考えたことがあったから。
ただそれだけで、まだとてもふわりとした、夢みたいな思いだ。

だから、まさか蓮くんの口からそんな単語が出てくるとは思わなくて……!

嬉しくてドキドキする反面――

仕事で何かあったってことかな?
と、冷静に考える自分もいる。

『ホストが出来ない体になったみたい』

子供みたいな呟き。
あれはどういう意味だったんだろう。

もしかして、何かトラブルがあったとか……?

店に向かう道のりをそんな事を考えながら歩いていたら、小さな公園の近くでふいに声を掛けられた。

「あら!泉水ちゃん、おはようー。今からお仕事?大変ね」
「あ、澤田さんにエマちゃん!おはようございます。珍しい所で会いますね」

僕を「泉水ちゃん」と親しげに呼ぶこの人は、ご近所に住んでいる昔からの知り合いの澤田さんだった。
子供の頃を知っているので、今でも孫みたいな感覚で接してくれる年配の女性で、『セレスタイト』の常連さんでもある。

「エマちゃん」はいつもお散歩に連れているコーギーの名前だ。今日も元気よく尻尾を振って、可愛らしく下から僕を見上げてくる。

「今日は随分早いお散歩ですね?」
「そうなの、エマが我慢できないって起こしに来て」

困っちゃうわよね、と可愛らしく笑う。
大体いつもは『セレスタイト』が開店した後に、エマちゃんと一緒にお店に来てくれていた。

「そうそう、気になってたんだけど、開店時間頃によく来ていたあのイケメンくん、最近、見かけないわねぇ?いつもニコニコ話しかけてくれて、スゴく良い子だったのに……泉水ちゃん、何か知ってる?」
「えっ!?」

僕は焦ってしまった。
――まさか、「いま、その彼の家から出てきた所です」とも言えず……

「あ、えーっと、お仕事のシフトが変わったみたい、ですよ?今は、たまに夕方頃に来たりする……かな」
「あらそう!まだお店には来てるのねー。ねぇ思ったんだけど、いっそあの子を店員さんとしてスカウトしちゃったらどう!?あの子と泉水ちゃんが2人で接客したら、セレスタイトは今より大繁盛、間違いなしよ!」
「え、ええっ!?いや、それはさすがに無理――だと思います……向こうにも色々都合が、ありますから」
「あらダメ?絶対良いと思うけど。2人の相性も良さそうだったし、あの子、絶対接客に向いてるわ。私の目に狂いはないわよ?」

残念だわーなどと柔らかく笑い、またお店に行くわねと言ってくれるのを笑顔で見送り、内心では冷汗をかきながら別れた。

……びっくりした。
まさか、こんな所で蓮くんの話題が出るとは。何も知らない筈なのに、妙に鋭い。

たまに会うだけの澤田さんに、あそこまで気に入られてるなんて……まぁ蓮くんだからね……さすが、オブリビオンのNo.2ホスト。恐るべし。笑顔の威力が半端ないなぁと、改めて感心してしまった。
そう、仰るとおり彼は接客のプロなんです。ホストという仕事で、すでに成功してますよ?なんて。
つい、ふふっと一人で笑ってしまった。

ちょっと自慢したくなる気持ちになりながらも――僕と出会わなかったら、蓮くんはこの先も売れっ子ホストで。
単純に仕事を楽しんで、目標以上のお金を貯めて、もっとゆとりのある状態で転職していたかも、なんて。

今でも時々、そんな思いはよぎる。


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