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9話 スライム十匹の討伐
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カイツールから出立して一時間強ほど。
ギルドから支給された地勢図と見比べて、ここが目的地の森であることを確認する。
「ここだな」
俺の呟きに対して、同行しているアイリスも頷く。
王都周辺の"狩り場“は、冒険者の手によって踏破されていることもあって、人々に甚大な被害をもたらすような危険な魔物は比較的少ないし、いたとしても森の奥にでも踏み込まなければ、そうそう出くわすこともない。
「さて、拠点はどこかね……」
「リオさん、拠点と言うのは?」
地勢図を見て拠点の場所を確認しようと思ったら、早速アイリスに質問された。
そうだ、冒険者にとって必要な専門用語なんかも説明しないとな。
「俺達が言うところの"拠点“って言うのは、安全地帯みたいな場所だ。完全に気を抜いていいってわけじゃないが、戦闘準備や食事、休憩や仮眠をするにはちょうどいいくらいのものだな」
こっちだな、と森の中に入ってすぐに、木々に囲まれた岩壁があるのだが、人一人が入れそうな空洞がある。
ロングソードの柄を引っ掛けないように身体の向きを変えながら入り込むと、ちょっとした開けた空間になっている。
テントが張られたその中には仮眠用の簡易ベッドに、道具の保管庫、ギルドが無償で提供してくれるキャンピングの備品がいくつかに、誰かが作ったものを残したのか、切り株で作られた椅子やテーブル、さらには手頃な石を並べた竈もあるな。
俺に続いて入ってきたアイリスも、「森の中にこんな場所が?」と拠点の中を物珍しそうに見回している。
「冒険者の狩り場の近くには、こう言う拠点が必ずあるんだ。依頼の途中で休憩したい時なんかは、よく世話になる」
とは言え今回の依頼はスライム十匹の討伐、大掛かりな荷物などは持ってきていないし、その日で行って帰って来る予定なので、ここでちょっと足を休めるくらいだが。
「これから魔物のテリトリーに踏み込むことになるが、今の内に休憩しておくか?」
「いえ、大丈夫です。行きましょう」
休憩せずとも良いと言うアイリス。
まぁ、徒歩一時間強からの小型の魔物相手なら休憩は必要ないか。
無理をさせないようにだけ気を付けよう。
拠点を一歩出れば、目前には鬱蒼とした森が人の侵入を拒むかのように広がっている。
ここからは魔物達の縄張りだ、安全な場所などどこにもない。
冒険者達が出入りしているからと言って、街道のよくに通り道が整備されているわけではない、道があるとすればそれはむしろ獣道。
俺が先頭を進みつつ、アイリスがはぐれていないか時折背後を確かめつつ、討伐目標であるスライムを捜す。
同時に道すがら、アイリスにスライムのことについて説明する。
「スライムは雑食性で、比較的明るく広い場所に複数で行動している場合が多い。基本は臆病ですぐに逃げるんだが、体当たりの威力は侮れない。冒険者の中には、スライムの体当たりで首を折って即死した者もいるらしいからな」
「そ、即死……」
具体的な命の危険を感じてか、アイリスは青ざめながら首に手を添える。
弱くて臆病であろうとも魔物、人にとっての脅威になり得ることに変わりはない。
森の中でも比較的開けた場所に出ると、草木の緑色の中では保護色っぽいんだが微妙に目立つ、一抱えはある大きさの丸っこい水色の塊が二つ、プルプルと微動しているのが見えた。
点々とした目と口で剽軽そうな面構えだが、見間違いない。
「いたぞ、アレがスライムだ」
足を止めて、手で制止しつつアイリスに呼び掛けると、彼女はすぐにレイピアの柄に手を掛ける。すぐに武器を抜けるように身構えられるのは、いい反応だ。
「……かわいい」
スライムの姿を見てか、アイリスからそんな呟きが漏れた。
「気持ちは分かるが、あれでも魔物だからな」
むしゃむしゃと何か頬張っているが、足元(こいつらに足らしい足は見えないが)にキノコの群生が見えるので、食事の最中らしい。
さらに言えば、食事に夢中なのかこちらに注意を向けていないので、不意打ちする絶好の機会だ。
アイリスに近付いて、小声で伝える。
「向こうはこっちに気付いていない、背後から不意打ちするチャンスだ」
「わ、分かりました……」
アイリスは緊張しつつも、手に掛けていたレイピアを抜き、極力足音を立てないようにそーっと二匹のスライムの後ろから近付く。
俺はすぐに介入出来る位置から見守る。
二匹のスライムはまだ暢気にキノコを食べている。
やがてレイピアの間合いにまで踏み込んだところで、僅かにレイピアを持つ腕を引き――
「ッ!」
二匹並んでいる内の、右のスライムに切っ先を突き込む。正確で鋭い刺突だ。
プギュッ、と言う断末魔を上げて、スライムは弾け飛び、体内にあった魔石だけが残って地面に転がる。
それと同時に、もう一匹のスライムがアイリスの奇襲に気付いて、ビクッと跳ね上がる。
「よしっ……」
奇襲に成功し、アイリスはもう一匹のスライムも同じように仕留めようとレイピアを突き出すが、襲われていると分かればスライムの身のこなしは素早い、レイピアの刺突を躱してしまう。
もう一度、二度とレイピアを突き出すアイリスだが、スライムはぴょいんぴょいんと躱し、ついでとばかりアイリスに体当たり。
「ぁんっ」
ぶつかられたのは腰辺り、アイリスは尻餅を着いてしまう。
彼女が体勢を崩したその隙に、スライムはすたこらと逃げ出してしまった。
「あ……逃げられました……」
尻餅から立ち上がったアイリスは、スカートに付いた土を払う。
「まぁまぁ、スライムはまだまだいる。ゆっくり慣れていけばいい」
まだ一匹。討伐目標数の十匹まで、あと九匹だ。
ギルドから支給された地勢図と見比べて、ここが目的地の森であることを確認する。
「ここだな」
俺の呟きに対して、同行しているアイリスも頷く。
王都周辺の"狩り場“は、冒険者の手によって踏破されていることもあって、人々に甚大な被害をもたらすような危険な魔物は比較的少ないし、いたとしても森の奥にでも踏み込まなければ、そうそう出くわすこともない。
「さて、拠点はどこかね……」
「リオさん、拠点と言うのは?」
地勢図を見て拠点の場所を確認しようと思ったら、早速アイリスに質問された。
そうだ、冒険者にとって必要な専門用語なんかも説明しないとな。
「俺達が言うところの"拠点“って言うのは、安全地帯みたいな場所だ。完全に気を抜いていいってわけじゃないが、戦闘準備や食事、休憩や仮眠をするにはちょうどいいくらいのものだな」
こっちだな、と森の中に入ってすぐに、木々に囲まれた岩壁があるのだが、人一人が入れそうな空洞がある。
ロングソードの柄を引っ掛けないように身体の向きを変えながら入り込むと、ちょっとした開けた空間になっている。
テントが張られたその中には仮眠用の簡易ベッドに、道具の保管庫、ギルドが無償で提供してくれるキャンピングの備品がいくつかに、誰かが作ったものを残したのか、切り株で作られた椅子やテーブル、さらには手頃な石を並べた竈もあるな。
俺に続いて入ってきたアイリスも、「森の中にこんな場所が?」と拠点の中を物珍しそうに見回している。
「冒険者の狩り場の近くには、こう言う拠点が必ずあるんだ。依頼の途中で休憩したい時なんかは、よく世話になる」
とは言え今回の依頼はスライム十匹の討伐、大掛かりな荷物などは持ってきていないし、その日で行って帰って来る予定なので、ここでちょっと足を休めるくらいだが。
「これから魔物のテリトリーに踏み込むことになるが、今の内に休憩しておくか?」
「いえ、大丈夫です。行きましょう」
休憩せずとも良いと言うアイリス。
まぁ、徒歩一時間強からの小型の魔物相手なら休憩は必要ないか。
無理をさせないようにだけ気を付けよう。
拠点を一歩出れば、目前には鬱蒼とした森が人の侵入を拒むかのように広がっている。
ここからは魔物達の縄張りだ、安全な場所などどこにもない。
冒険者達が出入りしているからと言って、街道のよくに通り道が整備されているわけではない、道があるとすればそれはむしろ獣道。
俺が先頭を進みつつ、アイリスがはぐれていないか時折背後を確かめつつ、討伐目標であるスライムを捜す。
同時に道すがら、アイリスにスライムのことについて説明する。
「スライムは雑食性で、比較的明るく広い場所に複数で行動している場合が多い。基本は臆病ですぐに逃げるんだが、体当たりの威力は侮れない。冒険者の中には、スライムの体当たりで首を折って即死した者もいるらしいからな」
「そ、即死……」
具体的な命の危険を感じてか、アイリスは青ざめながら首に手を添える。
弱くて臆病であろうとも魔物、人にとっての脅威になり得ることに変わりはない。
森の中でも比較的開けた場所に出ると、草木の緑色の中では保護色っぽいんだが微妙に目立つ、一抱えはある大きさの丸っこい水色の塊が二つ、プルプルと微動しているのが見えた。
点々とした目と口で剽軽そうな面構えだが、見間違いない。
「いたぞ、アレがスライムだ」
足を止めて、手で制止しつつアイリスに呼び掛けると、彼女はすぐにレイピアの柄に手を掛ける。すぐに武器を抜けるように身構えられるのは、いい反応だ。
「……かわいい」
スライムの姿を見てか、アイリスからそんな呟きが漏れた。
「気持ちは分かるが、あれでも魔物だからな」
むしゃむしゃと何か頬張っているが、足元(こいつらに足らしい足は見えないが)にキノコの群生が見えるので、食事の最中らしい。
さらに言えば、食事に夢中なのかこちらに注意を向けていないので、不意打ちする絶好の機会だ。
アイリスに近付いて、小声で伝える。
「向こうはこっちに気付いていない、背後から不意打ちするチャンスだ」
「わ、分かりました……」
アイリスは緊張しつつも、手に掛けていたレイピアを抜き、極力足音を立てないようにそーっと二匹のスライムの後ろから近付く。
俺はすぐに介入出来る位置から見守る。
二匹のスライムはまだ暢気にキノコを食べている。
やがてレイピアの間合いにまで踏み込んだところで、僅かにレイピアを持つ腕を引き――
「ッ!」
二匹並んでいる内の、右のスライムに切っ先を突き込む。正確で鋭い刺突だ。
プギュッ、と言う断末魔を上げて、スライムは弾け飛び、体内にあった魔石だけが残って地面に転がる。
それと同時に、もう一匹のスライムがアイリスの奇襲に気付いて、ビクッと跳ね上がる。
「よしっ……」
奇襲に成功し、アイリスはもう一匹のスライムも同じように仕留めようとレイピアを突き出すが、襲われていると分かればスライムの身のこなしは素早い、レイピアの刺突を躱してしまう。
もう一度、二度とレイピアを突き出すアイリスだが、スライムはぴょいんぴょいんと躱し、ついでとばかりアイリスに体当たり。
「ぁんっ」
ぶつかられたのは腰辺り、アイリスは尻餅を着いてしまう。
彼女が体勢を崩したその隙に、スライムはすたこらと逃げ出してしまった。
「あ……逃げられました……」
尻餅から立ち上がったアイリスは、スカートに付いた土を払う。
「まぁまぁ、スライムはまだまだいる。ゆっくり慣れていけばいい」
まだ一匹。討伐目標数の十匹まで、あと九匹だ。
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