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10話 不穏の予感
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アイリスの冒険者デビューたる、スライム十匹の討伐依頼は、順調に進行している。
何度か逃げられることはあったものの、アイリスも、スライムの挙動などを見て学習しており、最初はレイピアで攻撃すると見せかけてスライムに攻撃を躱させ、躱した隙を突くことで確実に仕留めている。
「はっ!」
ここまでと同じように、最初に牽制してスライムに回避運動をさせ、その隙を文字通りレイピアで突く。
倒したスライムから零れ落ちた魔石を回収し、採取用の麻袋に入れる。
回収した魔石や剥ぎ取った素材は、ギルドに提出することで本当に討伐したかどうかを確かめられるのだ。逆に、魔石や素材を提出しなければ、実際に討伐してもそうだと見なされないので、討伐した魔物から得られる物は必ず持ち帰らなくてはならないのだ。
「ふぅ」
一息ついてレイピアを鞘に戻すアイリス。
「どうだ、少しは戦いにも慣れてきたか?」
かく言う俺は、戦闘に手出しはしていないが、逐一大丈夫かどうかを確かめている。
「はい。スライム相手なら、なんとか」
今のところはスライム以外の魔物と戦ってはいないが、今日はそれを考えなくていいだろう。ギルドから発注された依頼を受注し、現地に赴いて依頼を遂行、達成したら帰還し、報酬を受け取るまでの一連の流れを覚えてもらうのが、今回の主目的だからな。
「無理せず慌てずに進めればいい。休憩がしたいなら、すぐに言ってくれていいからな」
「大丈夫です」
アイリスの顔を見る限り、疲労感や落ち込みは見られないし、むしろまだまだやる気に満ちている。
「そうか。ならあと三匹、頑張ろうか」
「はい!」
指定討伐数まで、あと三匹。
だが、
――グオォァァァァァーーーーー……――
「!」
どこか遠くから、咆哮が聞こえた。
アイリスにもそれが聞こえたらしい、すぐにレイピアの柄に手を添える。
「リオさん、今のは?」
「……魔物の咆哮だ」
しかも、大型の魔物だろう。
聞こえてきた方向を見やれば、森の中でも高い丘の上にある岩場の方向だ。
今の季節が春頃……繁殖期であることを鑑みると、
「大型の飛竜種辺りが、縄張り争いでもしているのか?」
繁殖期では、大型の飛竜種の魔物が高台に巣を作って産卵することもあって、大型飛竜同士が巣を作ろうとして鉢合わせし、巣作りの場所の奪い合いを始めることがあるのだ。
「縄張り争い……」
縄張り争いに巻き込まれるのではないかと、アイリスは不安を感じているようだ。
「ここから距離もあるし、下手に近付かない限りは問題ないはずだ」
大抵はすぐに決着が着くものなので、そう言った縄張り争いが発生した場合は下手に近付かずに静観するようにと、ギルドからは言い含められている。
少なくとも、スライムの討伐依頼に当たってはほぼ無関係だろう。
そう、思っていたんだが……
「これ、でっ!」
アイリスのレイピアの刺突がスライムを貫き、プニプニしてそうな水色の身体が弾け飛び、魔石が残る。
レイピアを納め、魔石を回収し、
「えーと、これでスライム十匹分の魔石が集まりました」
アイリスは一度麻袋の中を確かめて、手のひらサイズをしたスライムの魔石を数える。
確かに十個あるな。
「よし、これで規定の討伐数は達成だ。あとは帰還して、受付カウンターにこの魔石を提出すれば、依頼完了だ」
「よかった……」
安堵に一息つくアイリス。
「さて、それじゃぁ早いところ帰還するか。丘の上の方は何だか騒がしいし、危険に巻き込まれない内にさっさとカイツールへ帰ろう」
「そうですね」
万が一、気が立っている大型飛竜なんかと出会したら目も当てられない。
ひとまずは拠点まで戻ろうと踵を返そうとしたら、
不意に、複数の足音が近付いてくるのを耳にする。
即座に意識を警戒のそれに切り替えて、背中のロングソードの柄に手を添える。
アイリスの方もすぐに足音の方に振り返って、いつでもレイピアを抜けるように身構える。
すると、木々の隙間を縫うように武装した人間――同業者らしい冒険者が三人、飛び出してきた。
「はぁっ、はぁっ、はっ、た、助けてくれ!」
三人とも息絶え絶えで、表情も怯えており、その内の一人は、布を被せた大きな物を運んでいる辺り、物資か何かの運搬中に襲われたのだろうか。
「どうした、何があった?」
努めて冷静さを保って、何があったのかと訊ねてみれば。
「ヴェ、『ヴェイルワイバーン』がっ、すぐそこまで来てるんだ!」
「ヴェイルワイバーンだと!?」
彼が口にした名前は、飛竜種の中でもポピュラーで、"陸の覇者“と呼ばれ恐れられる飛竜だが、最低でも銀級冒険者で無ければ討伐依頼を受けられないほどには、危険性が高い。
それに、彼らが逃げてきた方向は丘の方……飛竜の縄張り争いに巻き込まれ、目を付けられてしまったのだろうか?
すぐそこまで来てるんだ、と言うことは……
次の瞬間、バキバキと森の木を薙ぎ倒しながら、その深緑色の巨駆が姿を現した。
ヴェイルワイバーン――陸の覇者と呼ばれ恐れられる、そいつが。
何度か逃げられることはあったものの、アイリスも、スライムの挙動などを見て学習しており、最初はレイピアで攻撃すると見せかけてスライムに攻撃を躱させ、躱した隙を突くことで確実に仕留めている。
「はっ!」
ここまでと同じように、最初に牽制してスライムに回避運動をさせ、その隙を文字通りレイピアで突く。
倒したスライムから零れ落ちた魔石を回収し、採取用の麻袋に入れる。
回収した魔石や剥ぎ取った素材は、ギルドに提出することで本当に討伐したかどうかを確かめられるのだ。逆に、魔石や素材を提出しなければ、実際に討伐してもそうだと見なされないので、討伐した魔物から得られる物は必ず持ち帰らなくてはならないのだ。
「ふぅ」
一息ついてレイピアを鞘に戻すアイリス。
「どうだ、少しは戦いにも慣れてきたか?」
かく言う俺は、戦闘に手出しはしていないが、逐一大丈夫かどうかを確かめている。
「はい。スライム相手なら、なんとか」
今のところはスライム以外の魔物と戦ってはいないが、今日はそれを考えなくていいだろう。ギルドから発注された依頼を受注し、現地に赴いて依頼を遂行、達成したら帰還し、報酬を受け取るまでの一連の流れを覚えてもらうのが、今回の主目的だからな。
「無理せず慌てずに進めればいい。休憩がしたいなら、すぐに言ってくれていいからな」
「大丈夫です」
アイリスの顔を見る限り、疲労感や落ち込みは見られないし、むしろまだまだやる気に満ちている。
「そうか。ならあと三匹、頑張ろうか」
「はい!」
指定討伐数まで、あと三匹。
だが、
――グオォァァァァァーーーーー……――
「!」
どこか遠くから、咆哮が聞こえた。
アイリスにもそれが聞こえたらしい、すぐにレイピアの柄に手を添える。
「リオさん、今のは?」
「……魔物の咆哮だ」
しかも、大型の魔物だろう。
聞こえてきた方向を見やれば、森の中でも高い丘の上にある岩場の方向だ。
今の季節が春頃……繁殖期であることを鑑みると、
「大型の飛竜種辺りが、縄張り争いでもしているのか?」
繁殖期では、大型の飛竜種の魔物が高台に巣を作って産卵することもあって、大型飛竜同士が巣を作ろうとして鉢合わせし、巣作りの場所の奪い合いを始めることがあるのだ。
「縄張り争い……」
縄張り争いに巻き込まれるのではないかと、アイリスは不安を感じているようだ。
「ここから距離もあるし、下手に近付かない限りは問題ないはずだ」
大抵はすぐに決着が着くものなので、そう言った縄張り争いが発生した場合は下手に近付かずに静観するようにと、ギルドからは言い含められている。
少なくとも、スライムの討伐依頼に当たってはほぼ無関係だろう。
そう、思っていたんだが……
「これ、でっ!」
アイリスのレイピアの刺突がスライムを貫き、プニプニしてそうな水色の身体が弾け飛び、魔石が残る。
レイピアを納め、魔石を回収し、
「えーと、これでスライム十匹分の魔石が集まりました」
アイリスは一度麻袋の中を確かめて、手のひらサイズをしたスライムの魔石を数える。
確かに十個あるな。
「よし、これで規定の討伐数は達成だ。あとは帰還して、受付カウンターにこの魔石を提出すれば、依頼完了だ」
「よかった……」
安堵に一息つくアイリス。
「さて、それじゃぁ早いところ帰還するか。丘の上の方は何だか騒がしいし、危険に巻き込まれない内にさっさとカイツールへ帰ろう」
「そうですね」
万が一、気が立っている大型飛竜なんかと出会したら目も当てられない。
ひとまずは拠点まで戻ろうと踵を返そうとしたら、
不意に、複数の足音が近付いてくるのを耳にする。
即座に意識を警戒のそれに切り替えて、背中のロングソードの柄に手を添える。
アイリスの方もすぐに足音の方に振り返って、いつでもレイピアを抜けるように身構える。
すると、木々の隙間を縫うように武装した人間――同業者らしい冒険者が三人、飛び出してきた。
「はぁっ、はぁっ、はっ、た、助けてくれ!」
三人とも息絶え絶えで、表情も怯えており、その内の一人は、布を被せた大きな物を運んでいる辺り、物資か何かの運搬中に襲われたのだろうか。
「どうした、何があった?」
努めて冷静さを保って、何があったのかと訊ねてみれば。
「ヴェ、『ヴェイルワイバーン』がっ、すぐそこまで来てるんだ!」
「ヴェイルワイバーンだと!?」
彼が口にした名前は、飛竜種の中でもポピュラーで、"陸の覇者“と呼ばれ恐れられる飛竜だが、最低でも銀級冒険者で無ければ討伐依頼を受けられないほどには、危険性が高い。
それに、彼らが逃げてきた方向は丘の方……飛竜の縄張り争いに巻き込まれ、目を付けられてしまったのだろうか?
すぐそこまで来てるんだ、と言うことは……
次の瞬間、バキバキと森の木を薙ぎ倒しながら、その深緑色の巨駆が姿を現した。
ヴェイルワイバーン――陸の覇者と呼ばれ恐れられる、そいつが。
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