タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

文字の大きさ
11 / 40

11話 陸の覇者

しおりを挟む
「も、もう追い付いて来やがった!?」

 ヴェイルワイバーンから逃げてきただろう冒険者達が慌てふためく。
 グォガァァァァァッ!!とまるで怒り心頭の咆哮を上げるヴェイルワイバーン。どうやらかなり気が立っているらしい。
 ヤツの狙いが何かは分からない――恐らく彼らが運んでいる荷物が目当てか?――が、このままでは俺はともかくアイリスまでもが危ない。

 ならば……ヴェイルワイバーンが彼らに攻撃を仕掛ける前に先手を打つ。

 地面に指を突っ込んで湿った土を掘ると、それをヴェイルワイバーンの顔に投げ付け、同時に冒険者達から離れるように駆け出す。
 すると、顔に土を掛けられたヴェイルワイバーンの怒りが俺に向けられる。

「アイリス!彼らと一緒に拠点まで逃げろ!」

「リオさん!?」

「こいつは、俺がなんとかする!」

 黒鉄級の俺が、銀級レベルのヴェイルワイバーン相手にどこまでやれるかは分からないが、最低でもアイリスと彼らが拠点に逃げ込むまでの時間稼ぎは出来るだろう。
 ロングソードを抜き、ヴェイルワイバーンの頭部甲殻を一当てして、すぐに手を引っ込めて距離を置く。
 ヴェイルワイバーンの怒りの矛先が完全に俺に向けられ、その威圧感と恐怖に足が震えそうになるが、敢えて強く地面を踏んで音を立て、ヤツの注意を俺に向けさせる。
 よし、素直でいい子だ。が、アイリスはまだ戸惑ってこの場にいる。

「早く行け!ここにいたら死ぬぞ!」

「ッ……」

 ヴェイルワイバーンの注意がアイリスに向かないように、彼女には目を向けずに声を荒げる。
 アイリスが踵を返して、先に逃げた冒険者達を追うように走っていくのを尻目にしながら、

「さぁ、俺の相手をしてもらおうか」

 左手の中指を立てて、クイクイと手前側に向ける。
 それを挑発と見たか、ヴェイルワイバーンは俺を見据え、口蓋からメラメラと燃えるものを滾らせて、

 ――【タイム連打】、発動――

 同時にピタリと世界が止まり、俺は動けない身体のまま思考だけを回転させ、ヴェイルワイバーンの生態を思い出す。

 ヴェイルワイバーンは、陸上での戦闘力に秀でており、その強靭な脚力を活かした突進や跳躍で動き回り、牙による噛み付きや、翼爪や尻尾の棘をぶつけてくるなど、地に脚を着けた戦いを得意とするが、それとはもうひとつ脅威がもうひとつある。
 それは、球状の火炎ブレスを吐き出してくることだ。
 火属性の初級攻撃魔法の『ファイアボール』などとは比べ物にならない熱量と破壊力を持ち、頑丈な煉瓦造りの建造物でさえ、直撃すれば損壊は免れない。
 火炎ブレスの前触れとして、ヴェイルワイバーンの口周りには炎が見えるので、それが見えたら絶対に正面には立つな、すぐに横へ躱すべし……と、魔物図鑑で読んだことがある。

 ――【タイム連打】、解除――

 と同時に地面を蹴り上げ、ヴェイルワイバーンの正面から飛び退き、その一秒後に火炎ブレスが通り過ぎた。
 流れ弾がアイリスや冒険者達に当たらないように立ち回っているので、後ろは気にしない。と言うか後ろを気にしている暇はない。
 火炎ブレスを吐き出した隙は大きい、飛び退いて着地した足でそのまま地面を蹴り、ヴェイルワイバーンの側頭部に肉薄し、

「しっ!」

 短く呼吸、踏み込みと共にロングソードをヴェイルワイバーンの側頭部に叩き込む。
 頭部甲殻を砕き、その下の脆い肉に明確な裂傷を刻み込んだそれは、ヴェイルワイバーンを苦しげに唸らせ、手応えも合わせて良好な一撃。
 が、それだけでは魔物――特に飛竜種のこいつらは倒れない。
 すぐさま反撃とばかり牙を剥こうとするヴェイルワイバーンだが、

 ――【タイム連打】、発動――解除――発動――解除――発動――解除――発動――と、【タイム連打】の発動と解除を高速で繰り返す。

 スキルの恩恵によって習得、会得した魔法や特技などは、基本的に魔力を代償として発動させるもので、使いすぎれば代償に必要な魔力が足りず、代償の代償として体力を奪われる。
 ようは、下手な連発は出来ないと言うものだ。

 だが、俺のこの【タイム連打】は、
 全く魔力が必要ないわけでは無いのだが、短時間で何度発動しても、魔力の消耗を全く感じないのだ。
 つまり、実質的にノーリスクで何度でも使える。

 それをいいことに利用し、【タイム連打】の発動と解除を高速で繰り返すことで、

 

 当然、俺自身の動きもスローモーションになってしまうのだが、それを認識出来ているのは【タイム連打】の術者である俺だけ。

 敵の動きを遅らせて視認し、それに合わせるこちらは最も安全な手段で対応し、反撃を打ち込む。

 これが俺の、【タイム連打】と言う謎スキルを有効活用するために導き出した答えだ。

 有効活用している、と言うのは俺にしか分からないし、そう言った理由もルイン達には話したのだが……ルイン達からすれば、俺が本当に【タイム連打】なんてハズレスキルを使いこなしているのかどうか分からないのだ。何せ、【タイム連打】で時を止めていることを自覚出来るのは俺だけなのだから。

 そうしてヴェイルワイバーンが噛み付こうとしているのを見抜くなり、深追いはせずにすぐに飛び退いてヤツの牙を躱す。

 ひとまずはこいつを撃退にまで持ち込みたいが、俺一人でどこまでやれるか……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...