タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

文字の大きさ
24 / 40

24話 肉食竜の討伐

しおりを挟む
 ――カイツール入りして、五日が経った。

 アンドリューさんと交わした『アイリスをいっぱしの冒険者として仕立て上げる』と言う期日まであと二日だが、慌てることもない。

 宿屋で寝泊まりし、朝早くから酒場で依頼を受けてすぐに出立、完遂・帰還した後は酒場で昼食を取り、午後は商業区で買い物、夕方以降は宿屋で部屋を借りてゆっくり休む……のがここ数日続いたルーチンだ。

 今日もアイリスと共に依頼を受けて、俺は何かあった時の補助として徹し、基本はアイリス一人にやらせている。

 今回受けた依頼は、カイツール近くの森林地帯ではなく、少し足を伸ばして、王都クロスキングス近辺の北東部の平原。
 俺がルイン達と一緒に冒険者になりたての頃から世話になってきた狩り場だ。ここに来るのも久しぶりな感じがする。

 依頼内容は『グアロン十頭の討伐』
 "グアロン“とは、草色の体表に赤い鶏冠が特徴の小型肉食竜の魔物であり、自分よりも小さい魔物や小動物――当然、人間も含まれる――を主食としているが、群れをなすことで中型の草食竜も標的としている。

 どうやら、この平原で大型の魔物であるサイクロプスが暴れていた関係から生態系に乱れが生じ、グアロンが人里近くにも現れるようになったことから、最近新しく依頼が発注されたようだ。

 とは言っても、小型の魔物の中ではゴブリンと同格の弱い部類に当たり、群れに囲まれさえしなければ、新人冒険者でも容易に御せる相手。弱点はトサカだ。

 現に、

「――ふっ!」

 踏み込みと共に放たれるアイリスのレイピアの鋭い一閃が、グアロンの特徴的なトサカを斬り裂き、それが致命傷となってグアロンは断末魔と共に横たわる。
 残るもう二頭のグアロンはアイリスに牙を剥きながらも警戒し、ジリジリと後退る。
 アイリスはレイピアを構え直しつつグアロン二頭の様子を見て――彼女から見て遠い方のグアロンに狙いを付けて走る。
 すると、もう一頭の方――アイリスに狙われていない方のグアロンは、彼女の背後に回り込む。
 一頭がアイリスの相手をしている隙に、もう一頭がその背後を突くつもりなのだろう。
 が、アイリスは狙いを定めた方のグアロンに一撃を与えることなく、咬み付こうとするグアロンの牙を躱し、そのまま背後まで走り抜けてから、

「はっ!」

 振り向き様にレイピアを横薙ぎに振るい、同じく振り向こうとしてきたグアロンの顔面を斬り裂く。
 アイリスの背後に回り込もうとしていた方のグアロンは、彼女が足を止めずに走り抜けてしまったせいで背後を突けず、忌々しそうに唸る。
 アイリスは立て続けに、顔面を斬り裂かれてもがき苦しむグアロンの首筋に素早くレイピアを突き立てて、息の根を止める。
 もはや形振り構わずか、最後のグアロンは甲高い鳴き声を上げて、牙と舌から唾液を滴らせながらアイリスに襲い掛かる。
 彼女もすぐに応戦しようと、仕留めたグアロンの首筋に突き立てたレイピアを引き抜く。
 頭から齧り付こうと飛び掛かってくるグアロン。
 それに対し、アイリスは慌てずに飛び下がって距離を取り、グアロンの牙を躱してからすぐにまた踏み込み、トサカごと頭部を一閃、二閃と斬り裂き、撃破する。

「ふぅ」

 レイピアに付着した血を振り払って鞘に納めてから、倒したグアロンの死骸から魔石や爪、牙などを剥ぎ取っていく。

「リオさん。グアロン十頭の討伐、これで完了しました」

 剥ぎ取りを終えたアイリスは、律儀に俺に報告してきた。

「よし。戦闘も剥ぎ取りもだいぶ慣れてきたな、よくやった」

「はい、これもリオさんのご指導のおかげです」

「いいや、俺の教えた内容は大したことじゃないさ。ちゃんとそれを実行出来たのは、アイリス自身の努力の賜物だ」

「いいえ、リオさんの教え無しでは、こう上手くは行きませんでしたから」

 爽やかな笑顔でそう言ってくれるのは嬉しいんだが……

「……ちょっと、返り血がひどいな」

「え?あ、あぁ……そうです、ね……」

 俺に言われて初めて気付いたのか、アイリスをキャンバスにしたグアロンの返り血で壊滅的な前衛芸術を描いてしまっている。肌も髪も服も明白色だからなおさらだ。
 このままカイツールに帰還しようとしたら、門番の方々に何事かと思われてしまうだろうし、いくら血腥さ上等の冒険者と言えど、女の子としてもこれは良くない。

「帰る前に、拠点で血を落としといた方がいいな」

「シミになるのも嫌ですし……そうさせていただきますね」

 その前に、とアイリスは何か物言いたげに俺の方を向く。どうしたんだ。

「リオさん、拠点に着いたら、ジャケットを貸してください」

「ジャケット?構わないが、何でだ?」

 サイズが合わないから、着てもブカブカだと思うが。
 すると、アイリスの目付きが物凄く細まった目になる。

「…………察してください。それが無理なら黙って貸してください」

「察してくださいって、……あ、すまん。そうだな」

 アイリスが何を言いたくてそんなじとぉぉぉぉぉっとした目をしていたのか、気付くのが遅かった。

 服の血を落とす=服を脱ぐってことだ。

 自分一人だけなら下着姿のままでも良かったかもしれないが、男がいたら絶対嫌だろう。

 そう言えば、ヒルダは同じスラムの仲間だったからあまり意識したことがなかったが……まずい、なんか緊張してきた。

「リオさん?まさかとは思いますが……覗 か な い で く だ さ い ね ?」

 俺の緊張を察したのか、笑顔で圧をかけてくるアイリス。鋭いなぁ……

「分かった分かった、覗かないから、早く拠点に戻るぞ」

 意識も緊張もするが、理性が生きているなら問題ないだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...