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25話 憂
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拠点に戻ってくるなり、川の水を野営用の鍋に汲んだもの焚き火に当ててお湯を作る。
ある程度水が温かくなると、アイリスにジャケットをむしり取られた挙げ句、拠点の外へ追い出されてしまう。これから服を脱ぐんだから仕方ないが。
俺に覗かれたくないと言うのも理由のひとつだろうが、他の誰かが入ってこないように見張ってほしいと言うのもある。
まぁとにかく、アイリスがいいと言うまで拠点の出入り口に座っとこう。
………………
…………
……
そうしてしばらくぼけーっと空を眺めていると、
「リオさん、入ってきてもいいですよ」
ようやく洗い終えたらしいアイリスの声が背中に届く。
「あぁ……ょっと」
背伸びしつつ立ち上がり、拠点の中に戻る。
アイリスは俺のジャケットを羽織りながら、洗った自分の服を物干し竿に掛け、焚き火に当てている。
「返り血は落とせたか?」
「はい、なんとか」
それはよかった。アイリスらしい清楚な白いブラウスなんだ、もしシミになっていたら残念なことになるだろう。
アイリスの服が乾くまではこうして焚き火を眺めることになるか。
「リオさん、ひとつお訊きしたいのですが」
「ん、なんだ?」
「私の、【ホワイトナイト】のスキルのことです。光属性の剣技に特化している、とのことでしたけど……その、どうやってそれを使うのですか?」
この説明はとても難しい。
魔力と言う、本来目に見えないものを使った上で分かりやすいように伝えなくてはならないのだ。
「うーん……俺の【タイム連打】スキルは、自分の意志で「発動しよう」「解除しよう」と思ってほんの少し集中するだけで使うことが出来るんだが、属性魔法に関しては門外漢だしな……」
それも、アイリスの場合は特定の属性を持つスキル。
俺の【タイム連打】みたいに、外から見たら使っているかどうかも分からないようなものじゃない。
こう言う時、【賢者】スキルを持つヒルダがいてくれればな。
属性魔法の扱いで言えば、俺達四人の中で一番上手かったし、【魔法剣士】スキルを持つルインも彼女に教えを乞うていたくらいだ。
「すみません、別の質問を……リオさんのスキルの、その、たいむレンダ?って、何ですか?」
そうか、アイリスには俺の【タイム連打】のことについては、何も教えてなかったな。
【タイム連打】によって何が起きて、それを使う俺にとってどんなメリットがあるのかを簡単に説明すると。
「つまり……相手からの攻撃などを、見てから反応出来るようになる、と言うことですか?」
「まぁ、大体そんな感じだ。参考にならなくて悪いな」
「いえ、……うーん」
考え込んでしまうアイリス。
鑑定を受けてから、ヒルダはどうやって魔術を使えるようになったんだっけ……?
魔術を使う練習をしていたのは覚えているんだが。
「カイツールに帰ったら、図書館に行ってみるか?魔術書とかならあるはずだ」
まだ立ち寄ったことはないが、西居住区の方にあったはずだ。
それを聞いて、アイリスはぱっと顔を上げた。
「図書館っ。それは盲点でした」
「禁呪の類いとかは無いだろうが、魔術を扱うに当たっての初歩的なことが書かれた本ならあるはずだしな」
帰って昼飯食べたら、図書館だな。
午後の予定が早速決まったのはいいのだが、
「………………」
今度はどこか物憂げな顔をしてしまう。
「どうした、そんな顔して」
腹でも減ったのかと思ったが。
「いえ、その……王都にいる両親はどうしているのかと思って……」
……そうだった。そう言えばアイリスは、第一王子に濡れ衣を着せられて婚約破棄された挙げ句に 追放されたんだったな。
俺みたいなスラム育ちのガキは、産みの親なんて知らない奴がほとんどだからなぁ。
「王都に、帰りたいのか?」
ホームシックみたいなものだろうか。
「帰れるものなら、そうしたいのですけど。そうしたくても出来ないのが、現状ですね……」
はぁ、と深い溜め息をつくアイリス。
「手紙を送っても、検閲を理由に家族に届く前に弾かれてしまうでしょうし」
「一度追放されたら、手紙を送ることさえ許されないのか?」
爵位を奪われて都を追われた貴族の末路なんて大抵ロクでも無いだろうし、そうなるだろうと決めつけられるとは言え、生きていることすら伝えられないなんて、あんまりだろ。
アイリスは続けて。
「第一王子……『フルス』殿下とは別に心から愛しあっていたわけではありませんでしたし、婚約も親同士が頭ごなしに決めた義務的なものだとお互いに理解していました」
許婚ってやつか。
王族貴族の婚約は、単なる好き同士だけでしていいものじゃないって言うのは分かる。多分に政略的な理由も絡んでいるだろうしな。
「ですが、聖女様が降臨されてから、殿下はまるで人が変わってしまったように聖女様を溺愛するようになりました」
「聖女様?お伽噺とかで語られる聖女のことか?」
聖女に愛された国は永きに渡って豊穣と繁栄が約束される……と言うのが、読み物とかでよく題材にされている。
そう訊ねると、「そうです、その聖女様です」と頷いたアイリス。
「……第一王子が聖女様に一目惚れした、とかか?」
「だったら私を冤罪にかけて追放せずとも、普通に婚約を破棄してくれれば、それで良かったのですが……」
どうもそれだけでは無いような気がして、とアイリスは眉間に皺を寄せる。
わざわざ公爵家の御息女を追放しなければならない大義名分か……想像も出来ないな。
ある程度水が温かくなると、アイリスにジャケットをむしり取られた挙げ句、拠点の外へ追い出されてしまう。これから服を脱ぐんだから仕方ないが。
俺に覗かれたくないと言うのも理由のひとつだろうが、他の誰かが入ってこないように見張ってほしいと言うのもある。
まぁとにかく、アイリスがいいと言うまで拠点の出入り口に座っとこう。
………………
…………
……
そうしてしばらくぼけーっと空を眺めていると、
「リオさん、入ってきてもいいですよ」
ようやく洗い終えたらしいアイリスの声が背中に届く。
「あぁ……ょっと」
背伸びしつつ立ち上がり、拠点の中に戻る。
アイリスは俺のジャケットを羽織りながら、洗った自分の服を物干し竿に掛け、焚き火に当てている。
「返り血は落とせたか?」
「はい、なんとか」
それはよかった。アイリスらしい清楚な白いブラウスなんだ、もしシミになっていたら残念なことになるだろう。
アイリスの服が乾くまではこうして焚き火を眺めることになるか。
「リオさん、ひとつお訊きしたいのですが」
「ん、なんだ?」
「私の、【ホワイトナイト】のスキルのことです。光属性の剣技に特化している、とのことでしたけど……その、どうやってそれを使うのですか?」
この説明はとても難しい。
魔力と言う、本来目に見えないものを使った上で分かりやすいように伝えなくてはならないのだ。
「うーん……俺の【タイム連打】スキルは、自分の意志で「発動しよう」「解除しよう」と思ってほんの少し集中するだけで使うことが出来るんだが、属性魔法に関しては門外漢だしな……」
それも、アイリスの場合は特定の属性を持つスキル。
俺の【タイム連打】みたいに、外から見たら使っているかどうかも分からないようなものじゃない。
こう言う時、【賢者】スキルを持つヒルダがいてくれればな。
属性魔法の扱いで言えば、俺達四人の中で一番上手かったし、【魔法剣士】スキルを持つルインも彼女に教えを乞うていたくらいだ。
「すみません、別の質問を……リオさんのスキルの、その、たいむレンダ?って、何ですか?」
そうか、アイリスには俺の【タイム連打】のことについては、何も教えてなかったな。
【タイム連打】によって何が起きて、それを使う俺にとってどんなメリットがあるのかを簡単に説明すると。
「つまり……相手からの攻撃などを、見てから反応出来るようになる、と言うことですか?」
「まぁ、大体そんな感じだ。参考にならなくて悪いな」
「いえ、……うーん」
考え込んでしまうアイリス。
鑑定を受けてから、ヒルダはどうやって魔術を使えるようになったんだっけ……?
魔術を使う練習をしていたのは覚えているんだが。
「カイツールに帰ったら、図書館に行ってみるか?魔術書とかならあるはずだ」
まだ立ち寄ったことはないが、西居住区の方にあったはずだ。
それを聞いて、アイリスはぱっと顔を上げた。
「図書館っ。それは盲点でした」
「禁呪の類いとかは無いだろうが、魔術を扱うに当たっての初歩的なことが書かれた本ならあるはずだしな」
帰って昼飯食べたら、図書館だな。
午後の予定が早速決まったのはいいのだが、
「………………」
今度はどこか物憂げな顔をしてしまう。
「どうした、そんな顔して」
腹でも減ったのかと思ったが。
「いえ、その……王都にいる両親はどうしているのかと思って……」
……そうだった。そう言えばアイリスは、第一王子に濡れ衣を着せられて婚約破棄された挙げ句に 追放されたんだったな。
俺みたいなスラム育ちのガキは、産みの親なんて知らない奴がほとんどだからなぁ。
「王都に、帰りたいのか?」
ホームシックみたいなものだろうか。
「帰れるものなら、そうしたいのですけど。そうしたくても出来ないのが、現状ですね……」
はぁ、と深い溜め息をつくアイリス。
「手紙を送っても、検閲を理由に家族に届く前に弾かれてしまうでしょうし」
「一度追放されたら、手紙を送ることさえ許されないのか?」
爵位を奪われて都を追われた貴族の末路なんて大抵ロクでも無いだろうし、そうなるだろうと決めつけられるとは言え、生きていることすら伝えられないなんて、あんまりだろ。
アイリスは続けて。
「第一王子……『フルス』殿下とは別に心から愛しあっていたわけではありませんでしたし、婚約も親同士が頭ごなしに決めた義務的なものだとお互いに理解していました」
許婚ってやつか。
王族貴族の婚約は、単なる好き同士だけでしていいものじゃないって言うのは分かる。多分に政略的な理由も絡んでいるだろうしな。
「ですが、聖女様が降臨されてから、殿下はまるで人が変わってしまったように聖女様を溺愛するようになりました」
「聖女様?お伽噺とかで語られる聖女のことか?」
聖女に愛された国は永きに渡って豊穣と繁栄が約束される……と言うのが、読み物とかでよく題材にされている。
そう訊ねると、「そうです、その聖女様です」と頷いたアイリス。
「……第一王子が聖女様に一目惚れした、とかか?」
「だったら私を冤罪にかけて追放せずとも、普通に婚約を破棄してくれれば、それで良かったのですが……」
どうもそれだけでは無いような気がして、とアイリスは眉間に皺を寄せる。
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