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26話 専属冒険者になってくれないか?
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アイリスの服が乾いて着替え直してから、俺達二人はカイツールへ帰還する。
本当ならもう少し早く帰還して、ちょうどいい頃合いで昼食を……と、思っていたんだが、アイリスの服の乾燥に時間がかかってしまったので、カイツールの酒場に戻ってきたのはお昼時が過ぎた頃だった。混雑しない時間帯なので、それはそれで悪くは無いんだが。
さて、さっさとエトナに依頼達成を報告したら昼食にしようと思ったら、何故かアンドリューさんがエトナと話し込んでいる。
アンドリューさんが何か書類を手渡し、エトナがそれを目に通して頷き、判を押して半券を返す。
「では、よろしく頼むぞ」
「かしこまりました」
やり取りを終えたようなので、こちらから話しかける。
「アンドリューさん、こんにちは」
「こんにちは」
するとこちらの声に気付いて、アンドリューさんとエトナが同時にこちらに目を向ける。
「おぉ、二人とも今帰還してきたところか。ちょうどいいところに来たな」
「ちょうどいいところ?」
「あぁ、すまん。依頼の達成報告が先だったな。ちょいとそこの席で待たせてもらおう」
どうやらアンドリューさんは、俺とアイリスに何か用があるようだが、俺達二人の依頼の達成報告と手続きがあるので、先にこちらを優先させてくれた。すいませんね。
ギルドカードの提示と、受注依頼の内容確認、討伐証拠であるグアロンの魔石や牙、爪、皮などを提出して鑑定、グアロン十頭分の魔石によって依頼達成、さらに他に剥ぎ取った素材の提出によって少額ながら上乗せされた報酬を受け取り、依頼は完了。
契約上の報酬金は二人で半分ずつだが、上乗せされた分はアイリスの取り分だ。彼女が自分で剥ぎ取った素材によって上乗せされた分だから、これも俺と分けるのは違う。
「依頼達成おめでとうございます。またのご利用をお待ちしております」
今日も眉ひとつ動かさないエトナの声と共に見送られて、アンドリューさんの待つテーブル席へ着く。
「それで、私とリオさんに何かご用でしょうか?」
席に着いて開口一番、アイリスが用件を訊ねる。
「うむ、今日から三日後の早朝にカイツールを出発する予定だからな。護衛の冒険者を募るために依頼状を提出していたところだ」
俺が王都クロスキングスでアンドリューさんの商隊の護衛依頼を受けた時と同じと言うことか。
それはそれとして、とアンドリューさんは俺と目を合わせる。
「リオ、お嬢さんはどうだ?そろそろ冒険者として一人立ちしてもいい頃合いか?」
「そうですね……少なくとも、もう小型の魔物なら普通に倒せるようになりましたし、青銅級として見ればかなり優秀だと思います」
アイリスを気遣っているつもりはない、俺から見た忌憚の無い評価だ。
「うむ、それなら良かった。さすがはリオだ」
いつもならもっと大声で「ハッハハッ!」と笑うアンドリューさんだが、今日はいつもと違って真面目な話をするそうだ。
「でだ、お前さん達二人に、冒険者として依頼をしたいことがある」
なんだなんだ、次に向かう予定の町への道中にトロールでも出たから討伐してほしいとかそう言う話か?ちなみに、トロールは黒鉄級に相当する大型の魔物だから、俺一人でも討伐は可能だが。
どんな依頼かと思いきや。
「二人とも、オレの商隊の専属冒険者になってくれないか?」
「「え?」」
予想してなかった誘いに、俺とアイリスの声が重なる。
「もちろん無理にとは言わんし、引き受けてくれるなら、相応の報酬は確約する。……ここ数日、顔を合わせて何かするってことも多かったし、お前さん達二人のことを他人とは思えなくてな」
アンドリューさんが言いたいことはつまり、単なる契約主と冒険者としての関係ではなく、"旅の仲間“として迎え入れたいと言うことだろう。
「そのお話、ぜひお引き受けさせてください!」
大して間も置かず即答するように、アイリスは引き受けると言い出した。
それ自体に反対はしないし、そもそも俺の口は関係ない。
彼女もこれから先、冒険者として活動するに当たっての後援が欲しいと言うのもあるだろうが、これだけは言っておきたい。
「アイリス、引き受けること自体は反対しないが、そうなると今よりもっと王都から離れることにもなる。……両親のことも、ロクに知れなくなるかもしれないぞ?」
「ぁっ……」
王都に住む両親のことを引き合いに出されて、アイリスはハッとなる。
そこにアンドリューさんも。
「うむ、オレの商隊がこれから向かうのは、歓楽街の『ネオライト』だ。ついでに、そこの古い知り合いにも会っておきたくてな」
歓楽街ネオライトか。
そこまで来ると王都からはそこそこ離れた位置にあり、俺も過去に依頼の関係で立ち寄ったことがあるが、最後に行ったのがいつだったか思い出せないくらい前だ。
「確かに王都から離れることになるから、ご両親との連絡も付きにくくなってしまうが……なに、既にギルドに依頼は出しているから、前日の夜までに決めてくれりゃいい。今日と明日で、じっくり考えてくれ」
それだけ話し終えると、アンドリューさんは席を立って酒場を後にしていった。
アンドリューさんの商隊の、専属冒険者か。
町から町へあちこち歩き回ることになりそうだが、俺の本来の目的である、『王都から離れたどこかに永住地を見つける』にとっては都合がいい。
一緒に旅して回って、ここだと思った場所に腰を落ち着けて、そこで後生を暮らす……
いいな、それはいい。俺個人としては賛成だ。
「…………」
先ほどからずっと考え込んでいるアイリスは、どうするのだろうか。
やはり王都から離れることに抵抗はあるか。
だが、手紙を送っても検閲に弾かれて届かないのなら、距離はあまり関係ないのかもしれない。
……こればかりはアイリスの人生だからな、俺が上から横からあれこれ言うのは違う。
だが、彼女にとって後悔の無い選択をしてほしいものだ。
本当ならもう少し早く帰還して、ちょうどいい頃合いで昼食を……と、思っていたんだが、アイリスの服の乾燥に時間がかかってしまったので、カイツールの酒場に戻ってきたのはお昼時が過ぎた頃だった。混雑しない時間帯なので、それはそれで悪くは無いんだが。
さて、さっさとエトナに依頼達成を報告したら昼食にしようと思ったら、何故かアンドリューさんがエトナと話し込んでいる。
アンドリューさんが何か書類を手渡し、エトナがそれを目に通して頷き、判を押して半券を返す。
「では、よろしく頼むぞ」
「かしこまりました」
やり取りを終えたようなので、こちらから話しかける。
「アンドリューさん、こんにちは」
「こんにちは」
するとこちらの声に気付いて、アンドリューさんとエトナが同時にこちらに目を向ける。
「おぉ、二人とも今帰還してきたところか。ちょうどいいところに来たな」
「ちょうどいいところ?」
「あぁ、すまん。依頼の達成報告が先だったな。ちょいとそこの席で待たせてもらおう」
どうやらアンドリューさんは、俺とアイリスに何か用があるようだが、俺達二人の依頼の達成報告と手続きがあるので、先にこちらを優先させてくれた。すいませんね。
ギルドカードの提示と、受注依頼の内容確認、討伐証拠であるグアロンの魔石や牙、爪、皮などを提出して鑑定、グアロン十頭分の魔石によって依頼達成、さらに他に剥ぎ取った素材の提出によって少額ながら上乗せされた報酬を受け取り、依頼は完了。
契約上の報酬金は二人で半分ずつだが、上乗せされた分はアイリスの取り分だ。彼女が自分で剥ぎ取った素材によって上乗せされた分だから、これも俺と分けるのは違う。
「依頼達成おめでとうございます。またのご利用をお待ちしております」
今日も眉ひとつ動かさないエトナの声と共に見送られて、アンドリューさんの待つテーブル席へ着く。
「それで、私とリオさんに何かご用でしょうか?」
席に着いて開口一番、アイリスが用件を訊ねる。
「うむ、今日から三日後の早朝にカイツールを出発する予定だからな。護衛の冒険者を募るために依頼状を提出していたところだ」
俺が王都クロスキングスでアンドリューさんの商隊の護衛依頼を受けた時と同じと言うことか。
それはそれとして、とアンドリューさんは俺と目を合わせる。
「リオ、お嬢さんはどうだ?そろそろ冒険者として一人立ちしてもいい頃合いか?」
「そうですね……少なくとも、もう小型の魔物なら普通に倒せるようになりましたし、青銅級として見ればかなり優秀だと思います」
アイリスを気遣っているつもりはない、俺から見た忌憚の無い評価だ。
「うむ、それなら良かった。さすがはリオだ」
いつもならもっと大声で「ハッハハッ!」と笑うアンドリューさんだが、今日はいつもと違って真面目な話をするそうだ。
「でだ、お前さん達二人に、冒険者として依頼をしたいことがある」
なんだなんだ、次に向かう予定の町への道中にトロールでも出たから討伐してほしいとかそう言う話か?ちなみに、トロールは黒鉄級に相当する大型の魔物だから、俺一人でも討伐は可能だが。
どんな依頼かと思いきや。
「二人とも、オレの商隊の専属冒険者になってくれないか?」
「「え?」」
予想してなかった誘いに、俺とアイリスの声が重なる。
「もちろん無理にとは言わんし、引き受けてくれるなら、相応の報酬は確約する。……ここ数日、顔を合わせて何かするってことも多かったし、お前さん達二人のことを他人とは思えなくてな」
アンドリューさんが言いたいことはつまり、単なる契約主と冒険者としての関係ではなく、"旅の仲間“として迎え入れたいと言うことだろう。
「そのお話、ぜひお引き受けさせてください!」
大して間も置かず即答するように、アイリスは引き受けると言い出した。
それ自体に反対はしないし、そもそも俺の口は関係ない。
彼女もこれから先、冒険者として活動するに当たっての後援が欲しいと言うのもあるだろうが、これだけは言っておきたい。
「アイリス、引き受けること自体は反対しないが、そうなると今よりもっと王都から離れることにもなる。……両親のことも、ロクに知れなくなるかもしれないぞ?」
「ぁっ……」
王都に住む両親のことを引き合いに出されて、アイリスはハッとなる。
そこにアンドリューさんも。
「うむ、オレの商隊がこれから向かうのは、歓楽街の『ネオライト』だ。ついでに、そこの古い知り合いにも会っておきたくてな」
歓楽街ネオライトか。
そこまで来ると王都からはそこそこ離れた位置にあり、俺も過去に依頼の関係で立ち寄ったことがあるが、最後に行ったのがいつだったか思い出せないくらい前だ。
「確かに王都から離れることになるから、ご両親との連絡も付きにくくなってしまうが……なに、既にギルドに依頼は出しているから、前日の夜までに決めてくれりゃいい。今日と明日で、じっくり考えてくれ」
それだけ話し終えると、アンドリューさんは席を立って酒場を後にしていった。
アンドリューさんの商隊の、専属冒険者か。
町から町へあちこち歩き回ることになりそうだが、俺の本来の目的である、『王都から離れたどこかに永住地を見つける』にとっては都合がいい。
一緒に旅して回って、ここだと思った場所に腰を落ち着けて、そこで後生を暮らす……
いいな、それはいい。俺個人としては賛成だ。
「…………」
先ほどからずっと考え込んでいるアイリスは、どうするのだろうか。
やはり王都から離れることに抵抗はあるか。
だが、手紙を送っても検閲に弾かれて届かないのなら、距離はあまり関係ないのかもしれない。
……こればかりはアイリスの人生だからな、俺が上から横からあれこれ言うのは違う。
だが、彼女にとって後悔の無い選択をしてほしいものだ。
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