ヒロインはモブの父親を攻略したみたいですけど認められません。

haru.

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ー番外編ーヴィオレット*隣国編*

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「お嬢様ぁ~!これはどうやって読むの?」

孤児院の庭で黄昏ていると、子供達が私の元へやってきた。どうやらわからない文字があったようで聞きに来たみたいだ。

私は子供達を隣に座らせて、自分達で順番に音読させた・・・そしてわからない文字や困っている時だけ横から少しヒントを与えてあげた。

「えっと・・・こ、こうして、おうじさまとおひめさまはしあわせにくらしました・・・」

パチパチ・・・パチパチ・・・パチパチ・・・

「上手い~♪」
「お姫様幸せになれて良かったね~」
「次ッッッ!次は私が読みたい~」
「ぼ、僕もやってみたいッッ」
「ずる~いッッッ・・・」

子供達のそんなやりとりを聞きながら心を穏やかに過ごしていた、その時・・・御手洗いに行く為に部屋の中へ戻って行った子が、慌てた様子で走りながら戻って来た・・・そして・・・

「お、王子様が来たッッッ!!!
キラキラしてる王子様が人を探してるって言ってる!」

子供達は訝しげな顔で王子様は絵本の中だけなんだよ・・・。と言い、嘘だ嘘だ。と囃したてた・・・
「えぇぇ?!王子様?・・・本当に?」
「こんな所に王子様なんていないよー」

「嘘じゃないよッッッ。キラキラ光ってる王子様がいるんだってッッッ!!!」

そんな子供達を宥めていたら、院長様がやって来て、金髪で菫色の瞳をした女性を探していると言って、金髪の男性がやってきた。・・・ヴィオラ様の事では・・・?と不安そうな表情で問いかけてきた

見に行きたいと駄々こねる子供達を決して部屋の中から出さないように院長様へ伝えると、私はサンとレイを連れてその男性の元へ向かった・・

・・・・・・・・・・・・・・・

一方モーラナ町を出発して数時間経っていたセディル達は・・・

馬車でウィルトリア公爵家へ向かっているた。だがその車内はかなり重たい空気が漂っていた

「どうしたというのだ?・・・この空気は・・セディルの様子も変ではないか?・・・やはり緊張しているのか?」

「いえ、違うと思いますわ・・・この子、ヴィオラさんにフラれてしまったのではないかしら・・・」

「な、何ッッッ?!
セディルがフラれたのか?!・・・あのセディルがッッッ?!」

小声で話しているつもりのロディックとステラだったが、狭い馬車の中で内緒話など出来るはずもなく・・・セディルがフラれたという言葉は正面に座っていた本人の耳にも届く事になった・・・

「人が変わったように、あんなに好きだ、好きだと露骨にアピールしていたのにダメだったのか?」

・・・ピクッ

「・・・そうなのよ・・・照れてはいたと思うのだけど脈はなさそうなのよね・・・」

・・・・・・ピクピクッッ

「やっぱり出会い方が悪すぎたのか・・・」

「そうよね・・・殺気を振り撒いて自分を睨みつけてくる男性なんて・・・」

・・・・・・・・・ピクピクピクッッッ!

「「はぁぁぁぁあああ・・・・・・」」

・・・プチンッッッ!!!

「溜め息をつくなぁーーーー!!!」

「べ、別にフラれてなんかいないからなっ!」

「まだ告白すらしていないし・・・」

「今は脈無しでも、この一件が終わったら直ぐにでも彼女の元へ戻って口説くから問題なんて何も・・・・・・別に別れ際の態度が気になるなんて思ってない・・・」

両親のあまりにも無遠慮な言葉の数々にぶちギレたセディルはと強調して、今後口説き落とすから問題ないと豪語していた。だが別れ際に見た淡々とした姿で挨拶をしてくるヴィオラの顔を思い出し・・・この先ヴィオラが自分を好きになってくれる可能性なんてあるのか?と不安に駆られていたのだった。

そんな様子を見たステラは「あら~これは重症ね・・・」と苦笑いして、息子の落ち込みっぷりを眺めていた・・・

その様子は本当に仲の良い家族で、少し前まで殺気に満ちた息子をどう扱ったらいいかわからなくて腫れ物を触るように距離をとっていた家族には見えなかった・・・

これもそれも皆、ヴィオラが現れてからだ。
セディルが変わったのも・・・
自分達がこんなに軽口をたたける関係になったのも・・・

感謝してもしたりない・・・だから2人は思っていた・・・もし息子がこの先平民としてヴィオラと生きていく事を望むのであれば喜んで送り出してあげようと・・・

そして・・・息子を変えた彼女もまた何かを抱えている女性であり、セディルの好意にすら気づけていない様子ではあった。だが、少なくとも今息子を拒絶する様子もないし、むしろ好意的な態度ではないかとみていた・・・

孤児院で2人の様子を伺っていた時も、時間はかかるかもしれないが、いつかこの2人は・・・と思っていたのだった・・・

そんなほのぼのとした雰囲気だった馬車が急に止まった・・・

まだ日も高く、モーラナ町を離れたばかりの位置なので馬車が止まるなんて事はありえない。
馬車の中から御者に声をかけた。すると・・・
道を塞ぐように馬車が止められていて先に進めない。そう言ってきた・・・

セディルは慌てて前方を確かめてみると、確かに自分達の馬車の前で道を塞いでいる高級そうな馬車が1台いた・・・

ロディックとステラには馬車の中で大人しくしているように告げ、セディルは剣を片手に馬車から降りた・・・

セディルが馬車の外へやって来たのを見た公爵家の護衛達はセディルや馬車を守るように取り囲み、「なるべく大人しくしていて下さい。」と告げてきた。

護衛達は相手の様子を伺いながら、「あちらの馬車にタリディーラ侯爵家の紋章が入っていました。」と言い「ひとまず、我々で様子を探ってきます」と言ってくれた・・・

何故侯爵家?公爵家に呼ばれている今、我等の元に来たという事は・・・侯爵家の悪事の証拠を掴んだ我等を消しに来たということか?・・

セディルは気を引き締めながら剣を握りしめた手に力を込めた。

その時・・・侯爵家の馬車の扉が開き、胸元が大胆に開けられた真っ赤なドレスを身に纏った赤い髪の女性が降りてきた・・・

「久しぶりね、セディルバルド・・・
全く・・・婚約者が馬車から降りるというのに
手を貸すことも出来ないなんて、気が利かなくなったわね・・・」

そこに居たのはランドール伯爵家が没落した時に婚約破棄した筈のエステリーナが不敵な笑みを浮かべてやって来た・・・




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