88 / 298
死者の国
38.逆屋敷(リバースパレス)
しおりを挟む
俺は重力に任せて下へ下へと落ちていった。
着地する前に床を破壊し、ひたすらノンストップで落ち続ける。
地下空間には照明が点在していたけど光が届かない先には広大な闇が広がっている。
その闇の中から殺気が迫ってきた。
襲ってきたのは巨大な顎をもった腐ったゴリラのような屍人だった。
「俺は一層の守護者、ドムイン様だ!貴様はここで殺っ」
台詞を言いきる前にドムインの頭が潰された。
「危ないよ~ってもう聞いてないか」
潰したのはリュースのハンマーだった。
リュースが俺と同じように落下しながらついてきている。
「リュース!なんで来たんだ!」
「いや~、あたしもちょっと下にいる人に用があってさあ。ついでだからテツヤに付き合おうかなって」
「ったく、これ以上余計な手間はごめんだぞ」
そんなことを言い合いながら俺たちはひたすら落ちていった。
「俺は二層の門番、ガマイン!ここで死っ」
ガマインという名前の二体の上半身がくっついた屍人は俺が飛ばした一層目の床材に潰されて動かなくなった。
「悪いけどここで時間をつぶすわけにはいかねえんだ」
「俺は三層の管理者、ズロイッ」
三層のズロイなんとかはリュースのハンマーと共に壁の染みとなった。
「俺は四層の!」
「五層!」
「六!」
「な!」
落下しながらそれぞれの階層で待ち受けていた屍人を倒し、俺たちは最下層である八層へ辿り着いた。
リンネ姫に渡したかんざしがすぐ近くにいることを告げている。
「ライトニング!」
到着したと同時に光の呪文を唱える。
そこは体育館ほどの広さを持った空間だった。
分厚い柱が何本も立ち並んで天井を支えている。
そしてその中央に鎮座した石の壁に鎖で両手を繋がれたリンネ姫の姿があった。
「リンネ姫!」
駆け寄ろうとした俺の足が止まった。
リンネ姫の傍らに一人の影が立っていたからだ。
ワンドだ。
しかしピクリとも動かない。
死んでいる?
ワンドからは生きた気配がしなかった。
やがてその体がぐらりと揺れ、地面に倒れた。
「やれやれ、やはり他人の体というのはやりにくいのう」
ワンドの後ろには別の影が立っていた。
小柄なワンドよりも更に小さい。
それは俺の腰までの背丈しかない老人だった。
しかしその人物が恐ろしい脅威であると俺の勘が告げている。
「てめえが、本体か」
「いかにも、儂が本物のワンドじゃよ」
その老人は得意げにうそぶいた。
リンネ姫を捕らえていた石壁がワンドのすぐわきを通り、俺の元に引き寄せられた。
拘束していた鎖を破壊してリンネ姫を自由にする。
「リンネ、無事か!」
「ん……テ、テツヤ、なのか?私は一体?ここは?」
気を失っていたリンネ姫が目を覚ました。
「ここはカドモインの屋敷の地下だ。あのワンドって爺に攫われてここに来たんだ」
俺の言葉にリンネ姫がハッとしたようにワンドへ目を向けた。
しわくちゃなワンドの顔を見て体を抱えて身震いをする。
「ふむ、こんなに早く目を覚ますとは意外ですな。どうやらその魔具は相当強力な耐魔術式が組み込まれているようじゃな」
ワンドが興味深そうに枯れ木のような指でリンネ姫のかんざしを差した。
「その魔具がなければ今頃儂の目的は果たせていたのですがのう」
残念だと言っている割にその口調は愉快そうですらある。
「てめえ、リンネに何をする気だったんだ?」
「なにって、リンネ姫には儂の人形になってもらうのじゃよ」
俺の問いにワンドは平然と答えた。
「人形だと?」
「そうじゃよ、儂の言うことは何でも聞く生きた人形にのう」
そう言ってワンドは愉快そうに笑った。
その言葉と同時にリンネを拘束していた鎖が針金へと姿を変えてワンドへ殺到する。
しかし、ワンドを拘束するはずだったその針金はその直前で力なく地面に落ちた。
「なにっ?」
「ほっほっほっ、忙しない小僧じゃのう。ゆっくり話を聞く事もできんのか」
驚く俺に満足そうに頷くワンド。
「てめっ…
なおもワンドに攻撃をしようとしたが、それはリンネ姫に制止された。
「無駄だ。この男に魔法の類は効かぬ」
「この男を知ってるのか?」
驚いた俺にリンネ姫は首を横に振った。
「直接知っているわけではない。だがボーハルトを覆いつくす魔力障壁やカドモインを操っていた屍人術、こんなことをできるのはこの世界広しと言えども一人しかおるまい」
リンネ姫がワンドに向き直った。
「追放魔導士ことワンディラルド・ドミディラルド、それがお主の正体なのだな」
着地する前に床を破壊し、ひたすらノンストップで落ち続ける。
地下空間には照明が点在していたけど光が届かない先には広大な闇が広がっている。
その闇の中から殺気が迫ってきた。
襲ってきたのは巨大な顎をもった腐ったゴリラのような屍人だった。
「俺は一層の守護者、ドムイン様だ!貴様はここで殺っ」
台詞を言いきる前にドムインの頭が潰された。
「危ないよ~ってもう聞いてないか」
潰したのはリュースのハンマーだった。
リュースが俺と同じように落下しながらついてきている。
「リュース!なんで来たんだ!」
「いや~、あたしもちょっと下にいる人に用があってさあ。ついでだからテツヤに付き合おうかなって」
「ったく、これ以上余計な手間はごめんだぞ」
そんなことを言い合いながら俺たちはひたすら落ちていった。
「俺は二層の門番、ガマイン!ここで死っ」
ガマインという名前の二体の上半身がくっついた屍人は俺が飛ばした一層目の床材に潰されて動かなくなった。
「悪いけどここで時間をつぶすわけにはいかねえんだ」
「俺は三層の管理者、ズロイッ」
三層のズロイなんとかはリュースのハンマーと共に壁の染みとなった。
「俺は四層の!」
「五層!」
「六!」
「な!」
落下しながらそれぞれの階層で待ち受けていた屍人を倒し、俺たちは最下層である八層へ辿り着いた。
リンネ姫に渡したかんざしがすぐ近くにいることを告げている。
「ライトニング!」
到着したと同時に光の呪文を唱える。
そこは体育館ほどの広さを持った空間だった。
分厚い柱が何本も立ち並んで天井を支えている。
そしてその中央に鎮座した石の壁に鎖で両手を繋がれたリンネ姫の姿があった。
「リンネ姫!」
駆け寄ろうとした俺の足が止まった。
リンネ姫の傍らに一人の影が立っていたからだ。
ワンドだ。
しかしピクリとも動かない。
死んでいる?
ワンドからは生きた気配がしなかった。
やがてその体がぐらりと揺れ、地面に倒れた。
「やれやれ、やはり他人の体というのはやりにくいのう」
ワンドの後ろには別の影が立っていた。
小柄なワンドよりも更に小さい。
それは俺の腰までの背丈しかない老人だった。
しかしその人物が恐ろしい脅威であると俺の勘が告げている。
「てめえが、本体か」
「いかにも、儂が本物のワンドじゃよ」
その老人は得意げにうそぶいた。
リンネ姫を捕らえていた石壁がワンドのすぐわきを通り、俺の元に引き寄せられた。
拘束していた鎖を破壊してリンネ姫を自由にする。
「リンネ、無事か!」
「ん……テ、テツヤ、なのか?私は一体?ここは?」
気を失っていたリンネ姫が目を覚ました。
「ここはカドモインの屋敷の地下だ。あのワンドって爺に攫われてここに来たんだ」
俺の言葉にリンネ姫がハッとしたようにワンドへ目を向けた。
しわくちゃなワンドの顔を見て体を抱えて身震いをする。
「ふむ、こんなに早く目を覚ますとは意外ですな。どうやらその魔具は相当強力な耐魔術式が組み込まれているようじゃな」
ワンドが興味深そうに枯れ木のような指でリンネ姫のかんざしを差した。
「その魔具がなければ今頃儂の目的は果たせていたのですがのう」
残念だと言っている割にその口調は愉快そうですらある。
「てめえ、リンネに何をする気だったんだ?」
「なにって、リンネ姫には儂の人形になってもらうのじゃよ」
俺の問いにワンドは平然と答えた。
「人形だと?」
「そうじゃよ、儂の言うことは何でも聞く生きた人形にのう」
そう言ってワンドは愉快そうに笑った。
その言葉と同時にリンネを拘束していた鎖が針金へと姿を変えてワンドへ殺到する。
しかし、ワンドを拘束するはずだったその針金はその直前で力なく地面に落ちた。
「なにっ?」
「ほっほっほっ、忙しない小僧じゃのう。ゆっくり話を聞く事もできんのか」
驚く俺に満足そうに頷くワンド。
「てめっ…
なおもワンドに攻撃をしようとしたが、それはリンネ姫に制止された。
「無駄だ。この男に魔法の類は効かぬ」
「この男を知ってるのか?」
驚いた俺にリンネ姫は首を横に振った。
「直接知っているわけではない。だがボーハルトを覆いつくす魔力障壁やカドモインを操っていた屍人術、こんなことをできるのはこの世界広しと言えども一人しかおるまい」
リンネ姫がワンドに向き直った。
「追放魔導士ことワンディラルド・ドミディラルド、それがお主の正体なのだな」
28
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~
普門院 ひかる
ファンタジー
ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。
彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。
その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。
そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…
元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!
しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。
そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。
強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。
───彼の名は「オルタナ」
漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。
だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。
そんな彼だが、実は・・・
『前世の知識を持っている元貴族だった?!」
とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに!
そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!!
毎日20時30分更新予定です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる